2008年07月19日
東方永夜城日記・6
ちょっと立ち止まって、キャラの表情について。
twoさんの指摘のなかで、ちょっとだけ抵抗のあった部分もある。
かなり初期の方、霊夢のカットインの表情だ。
twoさんは「もうちょっと表情を無邪気に」と言っていた。(従ってなおしたのが右)
ここに違和感を覚える。
たとえば、目の前に居る人物が、あきらかに自分に眼を合わせてニッコリ微笑みながら、弓矢を向けてきたり、剣を振りかざしたり、攻撃魔法の指先を思い切り向けてきたりしたら、どうだろう。
怖いし、なにより「ニッコリ」というあたりが不気味だと思う。
テイルズオブなんとかのシリーズで、攻略本の表紙になってた絵が、そんな感じだった。書店時代に見て「ううむ」と唸った覚えがある。剣や弓矢を使うファンタジーな世界のコスプレをしたアイドルが、カメラ目線で・・・というならまだかろうじて納得はいくが、それでも向けられているのは、腕や足を切り落とす刃であり、心臓を貫く矢だったり、全身を黒こげにする火炎だったりするのだ。殺意ならともかく、キミタチなんでニッコリしてるの? と疑問に思う。
そういう、武器もしくは攻撃行動をとっているキャラクターの絵を描くとき、やはりそのキャラは真剣な表情か、攻撃的な表情をしているべきだと思うのだ。
そういうわけで、やはり私は霊夢や魔理沙を真剣な表情か、攻撃的な表情に描いたのだが、先述のようにクライアントから修正が入った。「もっと無邪気な表情で」「表情が激しすぎます」「しょうがないですね・・・という表情に」などなど。
わかる。言いたいことはよく分かる。
無邪気な顔で逃げようも無い弾幕はったり、穏やかな表情でえげつない弾幕はったり、困り顔でこっちの逃げ道ふさぐような弾幕をはったりするのが、そのゲームの世界なのだ。実際にキャラは死なないみたいだし。
いうままに直してみると、いちおうソレっぽい顔にはなった。
そしてオーケーも出た。ゲームとしては正しい文法なので、依頼者の言うとおりの絵を実現するアプリケーション魔法使いとしては満足だが、やっぱりちょっとひっかかるものを感じるのだ。
絵を描いてるうちに、この考えにとくそんさんからコメントをもらった。
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個人的には、天野さんの見解(真剣な表情か、攻撃的な表情をしているべきだと思う)に賛成ですし、そーゆー表情の方が好きなのですが、最近Extraがクリアできるようになってきてようやく理解したことがあります。
紅魔郷オフィシャルページのトップに「誰もが、見た目とは裏腹に異様に簡単でびっくりするかもしれません。」とあります。ずーと、"騙された"と思ってたわけですが、わしのようなダメ&ロートルゲーマがそこそこクリアできるようになることからすると、これZUN氏が本来ターゲットとしていたハードシュータにとっては本当に簡単なのかも。
彼女達(シュータ)からすれば、この程度の弾幕は「おあそび」に過ぎない。真剣な顔で臨む必要すらない
その攻撃(相手の弾幕)が自身にとって脅威であればともかく、目を瞑っても避けられる程度のモノなら、なにも怖い顔をする必要はないだろう……。
とか考えてみたのですが、いかがでしょうか。
Twoがその発想(ゲームの文脈)をベースにしてるってのは、「ゲームの文脈しか知らない」からで、わしの教育の偏りが。あーうー。
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東方的にも、そういう背景があるのだろう。
わたしも「あそび」という観点が得られて、絵が楽になったように思う。
とりあえず、このまま描いても気持ち的にも問題ないようだ。
ついでに、もうひとつ。
ゲームのキャラクターのデザインについて、あらためて思い知ったことがある。
衣裳や髪型、アクセの類は、ありえないほど強調しなければならないということだ。
魔理沙の絵など、見ようによっては「メイド服っぽい魔法使いの絵」なわけだが、これがリアルに描こうとすると、もうびっくりするほど絵的に映えない。逆に、袖を布地では絶対に縫製できないくらい大きくしてみたり、帽子を肩幅の倍くらいにしてみたり、手のひら×2枚くらいのリボンをあちこちにつけてみたり、そういったハッタリと強調を加えると、おどろくほどすんなりハマる。
スト2の春麗がつけてたトゲ付きリストバンドとかがいい例だと思う。ハッタリが必要なのだ。
霊夢はともかく、魔理沙は、そのへんのハッタリを活かして描けたと思う。
先の例とあわせて、ゲームの世界(特にデザイン)では、「リアル」という位置からギリギリ飛び出しきらないくらいの立ち位置で、いかに極端なデザインをするか、というのが魅力になるのかもしれない。
今回の依頼画は、枚数を重ねるにつけ、その世界を描くためのノウハウや文法というものがあることに気づかされる。無理やりに自分の画風にハメてしまうのもアリかと思うが「従った方がよくなる」なら、それも試してみようと思う。このままで行こう。
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- at 23:42
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