2008年07月22日

東方永夜城日記・8



大詰めである。
もうおおよその仕様は決定している。
あとは、ただ進めるだけだ。


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twoさんへ

天野です。
エンディング絵のカラーイメージを「朝焼け」にしてみました。
リアルな朝焼けだと空以外真っ黒になってしまいますので、こんな感じにちょっとファンタジーっぽく仕上げました。(成功しているかどうかはともかく)新海誠風の処理です。



御検討ください。

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ほどなくしてお返事。


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> http://air.niu.ne.jp/touhou/ending_colored_verSHINKAI
>
空の色が気に入りました。

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さらに、とくそんさんからも報告が。


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進捗は、永夜返し3つ目が終了ということで、残るはスクリプト3つ(道中、永夜返し4, 5)、Midiが2つのようです。いよいよ終盤、週末は少し追い込んでみようかと思います。

では、また

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OKの出た色彩で、霊夢と魔理沙のエンディング絵をすすめる。





こんな感じだ。
これも、ごく短い文章でOKが出た。
追い込みをかけているのが分かる。

そして、とくそんさんからも連絡。


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週末仕事でちゃんと見れなかったのですが、スクリプト本体とmidi自体は昨日ようやく完成したようです。
今日、天野さんの絵を組み込みとβの仕上げを指示しました。今日ないし明日にはお送りできると思います

お手数をおかけしていますが、どうぞよろしくお願いします

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そして、

夏休みは終わっていたが、まだ夏だった時期だったと思う。
依頼画のすべてが一応の完成をみて、

そしてベータ版が完成した。






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天野さんへ

こんばんは。
永夜城β版が完成しました。
(ファイルのURLアリ)
テストプレイをしていただけませんか。
それでは、おやすみします。

Twoより

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とくそんさんによると「まだまだ調整余地はあるのですが、全てのスクリプトと会話がありMidiと絵がさし変わったことで、曲がりなりにも評価ができるようになりました。ようやく土俵に上がった感じ」とのこと。

このときの「β版」は、正直なところ修正すべき点が多く、決して驚くべき出来映えではなかった。(ただ「小学生が」と考えると、これは恐るべきことではある)

ちょっとだけ残念だったことを憶えている。

だが、これには続きがあった。
β版の完成をもって、この「宿題」も一区切りとなったが、夏が終わり、今年の春、中学へ進学してからも彼はこの作業を続けていたのだ。
先日も、自機キャラのドット絵を、実の母に描いてもらったそうである。(お母さんの日記を見る限り大変そうだった)

そして最近、最新版が限定的に公開された。

これが、驚くほどちゃんとゲームになっていた。
スクリプト自体は、それほど変わってないように思える。

だが、背景、自機、演出など「プレイする側の満足」を考えた仕様にブラッシュアップされているのだ。

驚いた。
スクリプトというか構文を作成できる、というのも凄いが、その成果は個人の計算能力によるものが大きいと思う。
だが、後半の進歩は違う。これは明らかに「使用者の立場に立った視点を持った」上での改善だ。

この結果が出ていることと、そしてとくそんさんが「そこまで導いた」という事実に驚いた。



コンピュータ関係の仕事は、結局、そのシステムを使用する人間が意図していることを、コンピュータに実現してもらうために翻訳するような仕事だと思う。

そのとき必要なのは、要点を過不足無く正確につたえること。(しかも形になっていないものを)
そして、使用者にとって使いやすいインターフェースであることだと思う。


もちろん始まったばかりだが、この両方を、彼は身につけつつある。

そのお手伝いができたことが嬉しい。
いまだ「β版」という表記を外さないままの「東方永夜城」をプレイして、あらためてそう思った。




こうしていまも完成に向けて磨かれている「東方永夜城」だが、これを果たして何らかの形で世に出すかどうか。それはまだ判らない。
最近またバージョンアップが進んでいるらしく、先日も新しいバージョンを見せてもらった。
ゲームの背景など、格段に良くなっている。この宿題は、ちゃんと、完成に向けて進行しているようだ。




面白かった。

すごく面白い「夏休みの宿題」だった。

もし、Rに焼いて配るーなんてことになったら、そのときにはお祝いにジャケ絵を描いてあげようと思っている。


もちろん、一度や二度は没にしてもらうことは、覚悟ずみだ。









2008年07月20日

東方永夜城日記・7


仮にこのゲームができたとして、配布することはアリだろうか?
ということを考えだしたころだったと思う。

twoさんが熱をだした。

医者の見立てでは夏風邪とのこと。手紙の返事を書くのは、そうとうに大変だったのだろう。

案じてとくそんさんに聞くと、こんな返事が。


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よしんばそれが負荷になってるとしても、いつかは彼が正面から向かいあわねばならない壁です。
むしろ、甘えさせて頂いてる間に、そういうストレスを知って欲しいというのが本音です。
親からでは伝えにくいことでもあり、大変ありがたく思っています。

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本当に立派だと思う。
立ち位置を確認した上で、配布についても話してみた。
お返事は「どう展開するか自体も彼に決めさせる」という方向性。

「自分以外の人にも手伝ってもらったものを下手なやり方で公開すると、描いた天野さんの迷惑になるので安易な行動はしない」みたいなことを話していただけたようだ。

「これはとても高度な問題ですが、それだけに通過しておくとよいことですね」とはじめて、返事を書いた。


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以前に、わたしの日記のある内容についての感想メールが来て、それに返事を出したら、その内容が感想メールの差し出し主の常駐している掲示板で公開されたことがありました。内容にうそも偽りもなく、公開されても問題はないのですが、彼個人に宛てて書いた内容だったので、驚いたのを覚えています。

「あの人から返事が来たぞ!」という感じで、本人は嬉々として投稿した様子なのですが、ここに欠けているのは、個人と公の線引きでした。誰でも閲覧できる環境に出した瞬間に、全体に公開されるということ。私自身もたまにやってしまって謝罪するのですが、この線引きは意外に難しく、理屈によってというより痛い思いをして感覚的に判断できるようになる、という種類のものに思えます。

これを学べる機会は貴重です。
今回のゲーム製作は、一見すると内側にこもる性質のものと目されている作業なのに、実際にはコミュニケーション能力が不可欠であることを学べる、よい機会だと思います。この能力は、経験一回ではなく、こういう対他人の状況を何度もくぐって身についていくものだと思いますが、そういう経験をほとんどなく社会に出る人を思えば、とても大切なことです。

御自分の趣味の範囲かもしれませんが、それでも「その分野を活かして御子息に社会勉強をさせる」というところに着地させるとくそんさんは、やっぱり立派な人だなあと思います。

こちらも、ちょっと体調を崩したり、仕事関係の急な葬式で時間がなくなったりしております。
絵はちょっとだけ遅れ気味になるかもしれませんが、最後まで描かせていただきますので、よろしくお願いします。

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あらためてモチベーションが上がる。
がんばろう。
そう思った矢先、さっそく回復したtwoさんからメールがきた。


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天野さんへ

こんにちは。

心配してくれてありがとうございます。
もう結構直りました。
熱は下がりましたけど
ぶつぶつができてしまいました。

β版のタイトル画像ありがとうございます。
タイトルの字の並び方を、少し変えていただけませんか。

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リテイクである。

それでこそ two さんだ。


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申し訳ありませんが、
よろしくお願いします。

こちらもがんばって玉の枝を完成させます。

よいお返事お待ちしております。

twoより

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ちゃんと励ましてくれるのもわすれていない。


ゴールの前には試練が来るものだ。
そして、そこを超えればゴールは近い。

輝夜さんと永琳も描けたので、あとはエンディング絵だけだ。




せっかくなので、そのお二人を。





※えーりんの絵ですが、服の柄に描かれているのは八卦と、東方・西方・北方・南方の七宿星座ではないかと推察して描いております。これで合っているだろうか・・・。公式の絵って、どこかにないものでしょうかね。








2008年07月19日

東方永夜城日記・6

ちょっと立ち止まって、キャラの表情について。


twoさんの指摘のなかで、ちょっとだけ抵抗のあった部分もある。
かなり初期の方、霊夢のカットインの表情だ。



twoさんは「もうちょっと表情を無邪気に」と言っていた。(従ってなおしたのが右)
ここに違和感を覚える。

たとえば、目の前に居る人物が、あきらかに自分に眼を合わせてニッコリ微笑みながら、弓矢を向けてきたり、剣を振りかざしたり、攻撃魔法の指先を思い切り向けてきたりしたら、どうだろう。

怖いし、なにより「ニッコリ」というあたりが不気味だと思う。

テイルズオブなんとかのシリーズで、攻略本の表紙になってた絵が、そんな感じだった。書店時代に見て「ううむ」と唸った覚えがある。剣や弓矢を使うファンタジーな世界のコスプレをしたアイドルが、カメラ目線で・・・というならまだかろうじて納得はいくが、それでも向けられているのは、腕や足を切り落とす刃であり、心臓を貫く矢だったり、全身を黒こげにする火炎だったりするのだ。殺意ならともかく、キミタチなんでニッコリしてるの? と疑問に思う。

そういう、武器もしくは攻撃行動をとっているキャラクターの絵を描くとき、やはりそのキャラは真剣な表情か、攻撃的な表情をしているべきだと思うのだ。

そういうわけで、やはり私は霊夢や魔理沙を真剣な表情か、攻撃的な表情に描いたのだが、先述のようにクライアントから修正が入った。「もっと無邪気な表情で」「表情が激しすぎます」「しょうがないですね・・・という表情に」などなど。

わかる。言いたいことはよく分かる。
無邪気な顔で逃げようも無い弾幕はったり、穏やかな表情でえげつない弾幕はったり、困り顔でこっちの逃げ道ふさぐような弾幕をはったりするのが、そのゲームの世界なのだ。実際にキャラは死なないみたいだし。

いうままに直してみると、いちおうソレっぽい顔にはなった。
そしてオーケーも出た。ゲームとしては正しい文法なので、依頼者の言うとおりの絵を実現するアプリケーション魔法使いとしては満足だが、やっぱりちょっとひっかかるものを感じるのだ。

絵を描いてるうちに、この考えにとくそんさんからコメントをもらった。


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個人的には、天野さんの見解(真剣な表情か、攻撃的な表情をしているべきだと思う)に賛成ですし、そーゆー表情の方が好きなのですが、最近Extraがクリアできるようになってきてようやく理解したことがあります。

紅魔郷オフィシャルページのトップに「誰もが、見た目とは裏腹に異様に簡単でびっくりするかもしれません。」とあります。ずーと、"騙された"と思ってたわけですが、わしのようなダメ&ロートルゲーマがそこそこクリアできるようになることからすると、これZUN氏が本来ターゲットとしていたハードシュータにとっては本当に簡単なのかも。

彼女達(シュータ)からすれば、この程度の弾幕は「おあそび」に過ぎない。真剣な顔で臨む必要すらない
その攻撃(相手の弾幕)が自身にとって脅威であればともかく、目を瞑っても避けられる程度のモノなら、なにも怖い顔をする必要はないだろう……。

とか考えてみたのですが、いかがでしょうか。

Twoがその発想(ゲームの文脈)をベースにしてるってのは、「ゲームの文脈しか知らない」からで、わしの教育の偏りが。あーうー。

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東方的にも、そういう背景があるのだろう。
わたしも「あそび」という観点が得られて、絵が楽になったように思う。

とりあえず、このまま描いても気持ち的にも問題ないようだ。



ついでに、もうひとつ。
ゲームのキャラクターのデザインについて、あらためて思い知ったことがある。

衣裳や髪型、アクセの類は、ありえないほど強調しなければならないということだ。
魔理沙の絵など、見ようによっては「メイド服っぽい魔法使いの絵」なわけだが、これがリアルに描こうとすると、もうびっくりするほど絵的に映えない。逆に、袖を布地では絶対に縫製できないくらい大きくしてみたり、帽子を肩幅の倍くらいにしてみたり、手のひら×2枚くらいのリボンをあちこちにつけてみたり、そういったハッタリと強調を加えると、おどろくほどすんなりハマる。
スト2の春麗がつけてたトゲ付きリストバンドとかがいい例だと思う。ハッタリが必要なのだ。

霊夢はともかく、魔理沙は、そのへんのハッタリを活かして描けたと思う。





先の例とあわせて、ゲームの世界(特にデザイン)では、「リアル」という位置からギリギリ飛び出しきらないくらいの立ち位置で、いかに極端なデザインをするか、というのが魅力になるのかもしれない。


今回の依頼画は、枚数を重ねるにつけ、その世界を描くためのノウハウや文法というものがあることに気づかされる。無理やりに自分の画風にハメてしまうのもアリかと思うが「従った方がよくなる」なら、それも試してみようと思う。このままで行こう。








2008年07月17日

東方永夜城日記・4

今日も東方絵である。だいたいチャットしながら描くので、入る前のログなど見つつ入室。

「なんか異様に豪華な宿題が進行してます」
「ものづくりの楽しさを、子供の頃にちゃんと知っておくのはとてもよいと思いますよ。しかも協業ってとこがまたよい」
「うに、基本的にそーゆースキルを得にくいタイプ(アスペルガー)なんで、余計に一緒にやっていただけるのがありがたいですよ」


天野入室


「とくそんさん、ごくろうさまです」
「いえいえ、わし自身はほとんどなーもしてませんよ」
「わたし思ったんですがとくそんさん」
「はい」
「これだけダメ出ししてもらったクライアントは、はじめてかも」

実は、この間に描いては指導、描いては指導が何件もあったりしたのだ。

「いやー、ユーザーの声なんて全部きいてたらきりないですから」
「豊富な経験から来る御意見ありがとうございます」
「いや、天野さん自身、彼(twoさん)の方向性とか、東方をあまり知らないとかで、掴みにくいとは思います」
「東方は不思議な世界だからなあ」
「公式情報が、実はけっこう力ないし」
「そう!東方って公式情報が薄い!
「同人の中で決まってきている部分が大きいですよ。暗黙の了解というか」
「公式資料として出てるのは確かに少ない」
「物語はユーザー側に発生する」
「個々の関係性なんかは、ゲーム中からも十分よみとれますが」
「そのへんの隙間を、全部同人で埋めているのが東方というジャンルと認識してます」
「その設定の少ない上に、御子息の一枚目の指定が『後ろ姿』だってのが、もう最初から躓(つまづ)かされまして。これは手強い、と。結局、公式設定画がないので、コスプレ衣装の通販サイトにあったバックビュー画像を参考に描きましたよ」

そうこうするうちに、修正稿ができた。



たしか文字位置とかの修正指導がはいったものだったと思う。

「素直にtwoがうらやましい。これでゲーム作れるってのは良いなあ」
「この絵を描いてるとき、いちばん楽しかったのが月のクレーターを塗っているときだったという」
「そーなのかー」

「ときに、東方は公式設定が薄いから、なんでもアリ?」
「なんでも、では無いと思うけど緩く広いと思う」
「『ミスティアが焼鳥屋でヤツメウナギを売ってる』等、ネタの多さが素敵などと」
『彼女たちがやってるのは遊びです』という公式設定すら『あれは神主が逆説的に言ってる』と『本音』で、解釈がむちゃくちゃ変わるし」
「その緩く広い世界を、手探りで絵に描くというこの作業が、実にスリリングで」
「ふむ」
「なんかとんでもなく見当違いな所を掘ってないかとか、この道10年のベテランから言わせれば許せないような勘違い絵が出土しやしまいかと」
「あはは」
「でも、その反面とても楽しくもあります。公式、あるいはゲーム動画で見る台詞などから伺い知れる内容より、今回に限って言えば、小学生の語って聞かせてくれる『えーりん観』のほうが参考になるという点とか。彼の頭の中にうかぶ映像を具現化するという目的があるので、よけいに」
「お手数かけます」
「いや、実に的確なダメだしをしてくれますよ。たぶん、自分の画像を具現化するということに対して真摯なんですよ。あと、なにより素直です」
「それをちゃんと伸ばしてやらないといけないので。このあと『それだけで乗り切れないことがある』ってこととの整合性をどう伝えるか、とか難しいことが山ほど」
「苦労しつつも、文章で分かる指示を出してくれるところとか、有望かと」
「こんなチャンス滅多にないので、がんばれーとやってます」
「わたしも、すごく楽しんでまぜてもらってますよ」

チャットしつつ、絵はできあがっていった。








2008年07月16日

東方永夜城日記・3



返事が来た。


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あまのさんへ

おはようございます。
タイトル画面の魔理沙は僕のちょっと凶暴な魔理沙のイメージと一致出来て嬉しいです。

カットインの話に移ります。

http://air.niu.ne.jp/touhou/reimu_cutin_rough.jpg
もうちょっと表情を無邪気にしていただけませんか。

http://air.niu.ne.jp/touhou/eirin_cutin_rough.jpg
表情が激しすぎるので、もうちょっと落ち着いた表情にしていただけませんか。

http://air.niu.ne.jp/touhou/kaguya_cutin_rough
これではまるで、「この世界はもう私の手の内にあるのだ。はっはっはっはっは!」といっているみたいなので、「また連れ戻しに来たの?(実は勘違い)2度も来て……あなたはしつこいですね。」といっているみたいにしてくれますか。


たくさん注文してすみませんが
よろしくお願いします。

お返事お待ちしております。

twoより

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小学生からダメ出しを喰らう。








 ・・・おもしれえじゃねえか、小僧。


ちょっと読み違えていたことと、ハッキリとリテイクを噛ましてくる児童に、妙にヤる気がでる。

しかも、


http://air.niu.ne.jp/touhou/menu_colored_rough.jpg
月と魔理沙がはっきりしてるので、気に入りました。


と、ちょっと甘やかしてくれるのも忘れてない。


前後して、別メールが父親から届く。


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> twoさんの好みを聞きたい。
> ハルヒ vs みくる
> どっちの勝ち?

ですが、みゅんさん(母親)経由で

>どっちかといえばハルヒらしいよ。
>甲乙つけがたいらしい。

とのこと。



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質問した私もよっぽどだが、なんか、こう、家族全員オタっていいなあと思ったりした。

その夜のチャット。とくそんさん不在だったので、文月さんといろいろ話した。


「ごきげんよう。小学生から絵のリテイクをくらって逆に燃えてる天野さんです」
「ぉぉぉ」
「とくそんさんの御子息は立派! ちゃんとイメージと違うところを具体的に指してリテイクを要請してくるね」
「いまひとつ良くわからなかったんですが、東方つくっているのですか? ゲームそのものを?」
「とくそんさんのご長男の夏休みの宿題に『東方弾幕風』というフリーソフトで弾幕シューティングの1面を作るというのがあって」
「なるほど、コンパイラというかジェネレータの類ですな」
「天野はそれに混ぜてもらって、カットインやらメニュー画面やらエンディングをかかせてもらってるわけです」
「小学生の夏休みの宿題とは思えない豪華さですなあ」
「うむ」
「東方弾幕風のマニュアル読んでるけど、ツクールとかそういうレベルのものではないんですね…」
「小学生がスクリプト構文とか書いてるのがビックリ」
「でも実際苦労してるみたいで



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長男が、暑さでダレきって昼寝してる私のところに
「ママーああーん出来ない、出来ないんだよぉぉぉ」
言い乍ら乱入して来た。
光化学スモッグ注意報発令の頃だから16時半頃だと思う。

何事かと思い、「どうした」と答えると
「かぐやさんの弾幕が出来ないんだ!出来ないんだよおお」
と返ってきたので
「出来ないってのはいくつか種類があるが、
弾幕自体が思いつかないのか、
弾幕は頭のなかにあるがそれをスクリプトに出来ないのか…」と
寝ぼけ声で呟くと
「構文が!構文がああああん」と悶えて部屋のなかを歩き回り、
畳んだ蒲団の上にごろんと寝転がり、うだうだーとじたじたし、
「スクリプトがー何度やってもー(後略)」

エアーマン某のような呻きをくり返していた。

すまん長男、それは「ママー」っつってきてくれても
ママには直接解決できない…orz

でもまあ、花茣蓙の上で二人してぐでーと寝転がりつつ
うだうだーとしていたら
突如長男が「よしっ、作るぞぉーっ」と自発的気合入れて
酷暑のコンピュータ室へ戻っていった。



……。


旦那とそっくりだよ悩み方も。


結婚前、某社にお邪魔した時見た光景を思い出した。



ところでその彼だが、18時過ぎまで悩んだが
未だ解決を見ていないということで
気分転換の為に30分マリオ64をプレイ中。

ママはうなぎ温めつつ、
小松菜とひろうすのお汁作りつつ、
スクリプト組めるよう、祈っておくよ(のんのん)

************


って母君の日記に書かれてた」
「いろいろすげえ」

「正式には学校の宿題ではなく、とくそんさん(父親)が与えた課題なわけですが」
形に残せて、大変で、たのしい。すばらしい企画だわ」
「幾度ものデスマーチをくぐってきたとくそんさんだけに、進捗管理はおそらく厳しいだろう」
「ううむ、宿題を与える方も与える方だが、応える方も応える方だ(いい意味で)

「ところで、文月さんは東方やったことあるよね?」
「あるよー」
「じゃあ、教えて。私、キャラのことぜんぜんわからなくて、ざっと調べてみたんだけど、確信もてないところがおおくて…。ええとねー」
「ほい」
「えーりんって巨乳?」
「そこなのか」
「輝夜さんはニートなの?」
「それは周知」
「魔理沙は八重歯はえてる?」
「えーりん巨乳説は、定説としてそうなっただけであって、公式設定があるわけじゃない気がする」
「そーなのかー。いや『えーりん! えーりん!』ってゆー、あの歌で言われてたから」

申し遅れましたが、

天野さんの東方知識の98%はニコニコ動画から得ております。

とりあえず、不明な点を補完してもらいつつ、クリア動画などを見ながら、キャラの理解に勤めた夜だった。

このときの内容をうけて、絵も進行していく。

表情を無邪気に

落ち着いた表情に


「また連れ戻しに来たの?(実は勘違い)2度も来て……あなたはしつこいですね。」といっているみたいなかんじに。

とりあえず、こんな感じでクライアントにお伺いを立てているが、どうなるだろうか。またリテイクかなあ。ちょっとわくわく。








2008年07月15日

東方永夜城日記・2



とりあえず、ひととおりのラフを描いてみた。
あと、タイトル用に一枚あったほうがいいだろうと思って、魔理沙で一枚かいてみた。

こんな感じだ。
実はこれはすでにtwoさんに見てもらっている。気に入ってもらえたみたいで、こちらもペンが加速する。

「タイトルに続いて、霊夢カットインもかけた」
「はやっ」
「そして、いま魔理沙かいてる」

チャットしながら描いたので、微妙にリアルタイムである。
もしモニターの先にtwoさん本人がいればいいのだが、そうもいかないので父親にいろいろ聞いてみた。



「どない?」
「うわっ、わしの好みなんですが<魔理沙」
「おおっと」
「霊夢は、斬新」
「これ、斬新なのかー」


予想してなかったタイプの絵だったのだとは、思う。
東方公式のカットインは、どれもただ立ってる絵とか普通のポーズが多く、戦闘中のカットインなのに迫力に欠ける、といろいろ拝見して思った。そんなわけで、御覧のとおりに、ややポーズを付けてある。

黒い枠の中を、160×320に縮小して切り取るつもりだ。

ついでにエンディングのラフも見てもらう。

「あと、霊夢。リクエストの『やっちゃったーって感じの顔』これは以前にお見せしましたね」
「ほうほう。いいですね」
「霊夢は、ほんとにキャラが掴めなくて『やっちゃった感』むつかしゅうございました。真面目じゃない真行寺さくらみたいなイメージでとりあえず書いてみたんですが」
「この絵をもらったとき、かなりじーっとみてたんで、自分のイメージとのすり合わせ自体はやってる……と信じたいところ」


モニタの向こうにいるのは父親である。
肝心の本人さんにとって、この絵はどうなのだろう。

ラフの段階では、最終的なゴールへ着地する「感触」がはっきりしない。
父親ウケから判断する限り、とりあえず大ハズレなところに着地することは無いと思う。でも、できればピタリの位置に着けたい。
親子で好みが似通っていれば、それほどハズレな絵にはならないはず。

モニターの向こうにいるとくそんさんの、さらにその背後にいるtwoさん本人に向けて、さぐりをいれてみた。

「とくそんさん、twoさんの好みを聞きたい。


ハルヒ vs みくる どっちの勝ち?」


「む、どっちだろう」
「ハルヒだったら思った通り」
「ハルヒな気はするが」
「ん、了解。ではその線で」

深夜のチャットなので、本人はすでに就寝中。父親との会話からその向こうにいるクライアントの感触を読みとるのがちょっと楽しい。そうこうしながらペンは進む。

「ところで、魔理沙も描けました」
「ぉ」
「みくるよりは、ハルヒの方向性で描いてみた。ちょっと不安だけど」
「魔理沙は、タイトルを非常に気に入ってたので、かなりはっちゃけで大丈夫と思います」
「了解」
「エンディングの魔理沙/霊夢のせいせいした/やっちゃった感が判りやすくて良いと思うんですが、わしとしても、彼のイメージまでは判らんからなぁ…」
「こんな感じなんですが」

「どうすかね?」
「母親が羨ましがるほどイイ出来映えです」
「よしッ!」


ラフでざっと全体像が見えてきたので、ペンを置いて一休みする。

チャットの場で、先回の日記でも書いた「依頼文」について、あらためて「ちゃんとした、趣旨が明確な文章でした」と伝えた。twoさん本人にも伝えたが、やはり父兄にも言っておきたい。親というのは、我が子を過小か過大か、どちらかの評価しかしないことがあるからだ。第三者的にみて良いところは示しておくべきだろう。

その上で、以前にも日記で書いたことのある、リクエストのことを話す。
依頼した絵がイメージと違ったら遠慮なく言って欲しい、ただし、どこがどう違うのか、ちゃんと伝えて欲しいのだ。
これは、実際のところ大人でも難しいことだと思う。小学生に要求するのは酷だろうか?

「まあ、わしの血を引いてることから推測すると、難しいとは思うんですが、そこはちょっとでも出来ないと、色々困る(っか、困ってきた)んで、なんとか自分のイメージとの差異を出すように突付きます」

とくそんさんは、このことで子供にそういう能力を得させようとしている。
こういう能力を身につける機会は貴重だ。その種の能力は、よほど意識して過ごすか、訓練されなければ身につくものでもないからだ。

「ま、絵は文字と種類の違う情報なんで、絵に対する違和感を的確に言葉にするのは結構むつかしいことかと。でも、一言でも違和感を言葉にできたら素晴らしいですね。苦労すると思いますけど、その扉が開くと『言葉として表現する』面白さが分かるんじゃないでしょうか」
「そう言って頂けると助かります」
「ほいでは、そろそろ落ちます。・・・お父さんは大変だなあ」
「だが、それがいい」
「ふふふ。そうですね」



ところで、twoさん本人のこと。
あとでとくそんさんから聞いた話だが、

「今日は、1つ進んだらしいですが、作ろうとしている弾幕の数が思ったより多くて、スケジュールがタイトになってる様子。口出ししてぇが我慢

本人もがんばっているようだ。あと父親も。

このあと、永琳と輝夜さんもラフをかくことができた。

この二人はイメージつかめてないので、心配ではあるが・・・。

この日に描けたラフは、全てサーバーにアップして、URLをメールで送っておいた。
彼が、絵をみて返してくれるだろう、その返事を楽しみに待ちたい。








2008年07月14日

東方永夜城日記・1




すっかり一年遅れの日記になってしまった。
ふりかえって、2007年の夏の思い出といえば、あきちゃんの成長と、もうひとつ。

小学生の夏休みの宿題にまぜてもらったこと。しかも具体的には、

東方弾幕風で一面つくる

という宿題の。

※「東方弾幕風」というのは「簡易スクリプトで東方系ボスのような敵を動作させるソフト」のことで、かなり独自に作れるらしい。

いや、最近の小学生はすげえ。
そもそもは、ミクシイに書いた「絵、かきます」といった趣旨の日記がきっかけだったのだが、ゲームのエンディング用CGを正式にその児童から依頼されたのだ。


夏休みの宿題である。
大喜びで混ぜてもらった。


わたしはゲームに使う絵を作成、そして、同時進行でその小学生はスクリプトとBGMを打ち込みつづけるという、そんな2007年の夏だった。

件の小学生のHNは、two くん
その父親は、マイミクでもある、とくそんさん。今度の話は彼を通じて受けた依頼だ。
このお父さんの偉いところは「ちゃんとリクエストできれば、引き受けてもらえるかもしれないよ」と伝えてくれたところ。
おかげでtwoくんは苦労して依頼文を考えることになるが、この経験は、後にいろんなことに役立つだろう。


かなり四苦八苦して、少年は依頼文を書いたらしい。
two君は個人のメアドをもっていないので、父親経由で文書がおくられてきた。




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あまのさんへ

こんにちは。
twoです。
あまのさん、久しぶりに連絡が取れてうれしいです。
父から、あまのさんが絵を描いてくれると聞きました。
ありがとうございます。
よろしくお願いします。

さて本題に移りますが、エンディングの絵を描いてください。
幅640ピクセル×高さ320ピクセルでお願いします。

バックにある壊れた城を近くからみつめる自機キャラの後姿でお願いします。
自機キャラは2種類いて
博麗霊夢と
霧雨魔理沙です。

キャラの参考画像です。

博麗霊夢

霧雨魔理沙


お手数をお掛けしますが
両方描いてもらえないでしょうか。
魔理沙は城を壊してせいせいしたような感じで、
霊夢はつい調子に乗っちゃったなーみたいな感じで、
お願いします。

コンテニューは無いのでバッドエンディングはありません。

お返事お待ちしています。

twoより

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ちょっと驚いたのが、ちゃんとした文章になっている点。
多少のアドバイスを母親にもらったと聞くが、頑張って殆ど本人が書いたらしい。
言いたいことが、具体的で、ちゃんと伝わってくる、簡潔でよい文章だ。

ちゃんと画像のサイズとか指定してくれてるあたり、過去に依頼画かかせてもらってきた方々とくらべても、ぜんぜん遜色ない依頼内容である。
先日、仕事先で面倒をみた大学生よりも、下手をすると文章になっているかもしれない。

なにより、この子が、小学生でありながら本気でゲームを作っちゃおうとしてるところがおもしろい。

うれしくなったので、すぐに返事を書いた。


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twoさんへ

絵の依頼についての丁寧なメール、ありがとうございました。
正式な依頼として、引き受けさせていただきます。

さっそくですが、絵の内容について、確認したいことがあります。
たくさんありますが、以下の質問にお答えください。

Q1:
「エンディングの絵」は「両方描いてもらえないでしょうか」とありましたが、同じ背景の絵に、自機キャラそれぞれを一枚ずつ、という意味でしょうか? それとも二人が並んでいる絵を一枚という意味でしょうか?

Q2:
「バックにある壊れた城」という指定の「バック」とは、背景という意味でしょうか?
この「壊れた城」についての資料をください。具体的には、誰が住んでいる城かを教えてください。正式な設定があれば、そのとおりに描きますので、参考画像や参考になるサイトを教えてください。

・・・・・・・
・・・・・
・・・

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などなど。
このほかにも、解像度の指定や、おそらくはあるだろうテロップの表示位置、絵の締切とゲームの締切、完成したゲームの受け取り方、エンディングで流れる BGMはあるかなど、「好きなように描いてくださいという指示も可」という自由度も残しつつ、とにかく厳密にクライアントの求めている絵を絞っていくため の質問を連ねる。この初回の返信だけで10問を数えた。


答えにくい質問は飛ばしてください。
いま決まっていることだけお答えいただければ十分です。


と締めくくり、こちらも、できるだけ具体的に書いてみた。

返信後、とくそんさん(くどいようだが父親)からメールがあった。
彼は、直接手をださない監視役みたいなポジションで、たまに仲保に立ってくれる。



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天野さんへ、とくそんです。

丁寧なお返事ありがとうございます

リクエストへの質問ですが、みゅんさん(母親)経由で本人に伝わりました。


> あの手紙読むや否やなにやら部屋に引っ込んでいったTwoだが
> エンディングの音楽を作っていたようだ
>
> 短い音のループっぽい
>
> 「それをくり返して最後the endが出てくる時みたいな、
> コーダの部分があればエンディングの音楽らしくなるんちゃう?」と
> いってみた
>
>今また引っ込んでいった


と、親が思っている以上に良い契機になってるようです。

本人にもぼやっとしたイメージしかなかったものが、天野さんの質問で具体化してきてるのではないかと思います。
日程については日記でのみゅんさんのコメント通り、1~2週間の猶予ありと考えていますので、無理なさらないよう晶嬢のごきげんにあわせてください。

投げ出さずに最後まで作り上げられれば彼の大きな財産になるのだと思います。
お忙しい時期に申し訳ありませんが、どうぞよろしくお願いします。


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ほどなくして正式な解答書がとどく。


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あまのさんへ

こんばんは。
遅くなって済みません。
依頼を受けてくださってありがとうございます。

さっそくですが、下の質問に、お答えさせて頂きます。
・・・・・・・
・・・・
・・

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記載されていたのは、どれも簡潔で明確な指示。

自機キャラをそれぞれ1枚ずつ描いていただけませんか。はい。背景です。公式設定にはありません。かぐや姫が住んでいます。だけど洋風の城です。などなど。

参考画像のURLまで貼ってあったし、こちらからの提案にもハッキリした決定をしたうえで返答してくれている。「解像度の指定はありません」「キャラク ターを右に」「全体の締め切りは9月14日です。絵の締め切りは9月12日です」「喜んで送らせていただきます。方法についてはまた後日にお知らせしま す」

そして、
エンディング曲は自分で作って送ってきた。


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Q9:
エンディングで絵とともに流れるBGMが決まっていれば教えてください。
その曲に合うように描きますので。


この曲です。
東方っぽくないですが……

以上です。
今日は時間が無いので、ストーリーは明日書きます。

では、おやすみなさい。

twoより

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正直すごい。ちゃんと仕様を決定して返してくれる。
悩むのは当然としても、その結果をだしてくれるのがすごい。

それは、彼の能力という以前に、彼自身がこの「宿題」をすごく楽しんでいるところにあるのだと思う。







彼の母親からもメールをいただいた。


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件の少年の母です。ミクシーでははじめまして。
息子の宿題の手伝いをご快諾下さいましてありがとうございます。

宿題としては学校に提出するものではなく、
(学校に提出してもそれはそれで面白いのですが)
父親からのアレなので、
期日は恐らく帰省日数分伸びるのではと思います。

息子には、苦しみを越えたところにある達成感と
プラスの経験を感じてくれればと祈りながら、
天野さんの日記からもなんだかわくわく感を感じとって
しあわせ感じております。

ありがとうございます、宜しくお願い致します。

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父母公認なところが心強い。

彼はいろんな才能をもっているとおもう。
それを現実に適用できる形に導き実体化する、その訓練の手伝いができれば「まぜてもらった」者として、こんなに楽しいことはない。

ここから、いろんな質問や追加の絵を提案しつつ、この宿題は進行していく。
最終的には、

オープニング用画像
霊夢エンディング
魔理沙エンディング
霊夢カットイン
魔理沙カットイン
永琳カットイン
輝夜カットイン

を描くことになった。


とりあえずラフを描いてみる。
これを送って様子を見よう。