「シスター・プリンセス考察大全」表紙絵制作ドキュメント
for "Summa studii Sororis Principis animatae"
(2004.08.10)
1. はじまり (※「1.はじまり」は、別コンテンツの日記と内容が重複してます。既読の方は読み飛ばしを推奨)
2004年8月1日の日記のような動機で、くるぶしあんよ氏の「アニメ版シスター・プリンセス考察大全」表紙絵の作成依頼を受けた。
たしか6月15日頃だったと思う。
この当時、わたしはまだ考察の本文を読んだことがなかった。
ただ氏の日記で、装丁の絵について思案していたので、それに乗っただけだ。
状況としては、締切が7月2日で、期間は二週間強。
アニメのシスプリは、第二期といえる「シスタープリンセス・リピュア」のみ見たことがある。
ここでは便宜上、最初にアニメ化された「シスタープリンセス」を「アニプリ」と呼ぶ。こっちの方のテレビ放映は流して見た程度であり、ほとんど憶えていない。あとは電撃つながりで全妹ゲスト出演の「ドッコイダー」の8話くらいしか見たことがなかった。
そして、手持ちの公式設定資料は一冊もなし。
さらに、高速なネット環境も、引越時に手間取ったため用意できず、途中までダイヤルアップを使用していた。これでは資料あつめもままならない。
正直きつい気もした。
この時期にサイトの更新をしていなかったのは、仕事・プライベートともに大変な時期だったせいもある。
まして、アニメ版シスタープリンセスは、(設定の根幹は原作もゲームもそうだが)「十二人の妹と一人の兄との恋愛シミュレーション」という、わたしにとって某所でも言われているように「クレイジーな企画」として認識されており、どこまでも安易な「萌え」の記号とか、キャラクター商戦の道具でしかなかったのだ。
告白してしまうと、たいして乗り気ではなかった。あんよ氏との個人的な因縁しか、そこにはなかったのだ。
だが、まず手始めにと思って読んだ考察の本文に、わたしは感動させられた。
そして、いままで、どうということのない「萌えキャラ」としてしか認識できていなかった十二人(+1名)の妹たちが、そこに息づく感情をもった存在として認識されはじめたのだ。
考察で描かれる妹たちの、感動的な、そして一途な心情世界。
ビジュアルではなく、テキストで真摯に綴られたそれに触れてはじめて「この子たちって、こんなに愛すべき存在だったんだ」と気がついた。
私は、むさぼるように考察を読み進めた。
アニプリの方は、ほとんど意味を成さないごく断片的な記憶しか残ってなかったが、物語の進行を追う考察を読むだけで、それぞれのシーンが浮かんでくる。
余談だが、トップページにもかいたとおり、この考察は「アニメ版シスタープリンセスを見たことのないひとにこそお薦め」である。視聴済みの人はあらたな視点に感動するであろうし、そうでない人は、まずこの考察から読むべきかもしれない、と思う。
わたしは、読み終えて、すごい内容だと思った。
また、これは実際には絵が完成してからの感想だが、表紙絵を描く仕事を申し出てよかったと心から思った。あのまま名乗らずに放っておいたら、無味乾燥な字と枠線だけの表紙になったのかもしれないのだ。想像すると、まったくゾッとする。
読了時には、絵に投じることのできる制作期間も半ばを過ぎようとしていた。だが、それもむしろ燃えた。
2. 深度
考察読了の後、表紙絵のアイデアを考えた。
だが「話に聞いたが本物を見たことがない」という状態なため、絵については、考察執筆者であるあんよ氏にいろいろ聞きながら、また私の感想を伝えながらの制作となっていった。
とりあえず時間の関係もあって十二人もの妹を理解して描くことは難しい。
あんよさんの希望もあり「可憐をメインに」ということだけは決めて出発した。
以下は、そのときのチャットログである。今後はこの羅列が記録のメインとなるが、シスプリをある程度理解していないとサッパリな内容が延々と続くので、興味半分に読むひとはあまり無理をしないよう注意しておく。
天野(以下、「天」)「考察拝読しました。シスプリに関して特別な感情はなかったわたしですが、あんよさんの考察よんで、とりあえず花穂と千影に撃沈されました。とにかくはやく表紙を可憐で描いてしまわないと、無意識にこの二人にしてしまいそうで恐いっす。
あと「シスタープリンセス大全」って雰囲気にするのが難しいので苦労してます」
あんよ(以下、「あ」)「その可憐のそばに、ぜひ黄色い帽子の少女をお願いできませんでしょうか。アニメ版『シスター・プリンセス』大全、というのは、アニプリもリピュアも対等に扱おうという姿勢の表明なので、できれば表紙で、そのことを描いていただければありがたいのです(我が儘すぎ)
アニプリもリピュアも、みんな可愛いぼくの妹です。あげません(違)」
天「いやそれにしてももう、ちょっと花穂のことがかわいくて仕方がない昨今です」
あ「16話の花穂はさいこーですじょ」
天「16話って、運動会でしたっけ?」
あ「そです」
天「アニメ本編のほうは未視聴なんですが、あんよさんの文章をもとに脳内製作した結果、ものすごいマスタリングが実現してます。
リピュアのクオリティ準拠なので全編が神作画にして神演出、24分とは絶対に信じられない尺の中で、流れるBGMはすでに神となってしまった岡崎律子のみという、すさまじいばかりのゴッド・クオリティでした」
(このときは言わなかったが、もちろん8話でアニメでは誤魔化されていた鞠絵が着替えるシーンもそれはもうバッチリである)
あ「じっさいの作画は、別の意味でゴッドクオリティです」
「邪神な風味で」
天「みるのこわいよー」
あ「16話あたりはかなりまともですが」
天「あ、さっきの(表紙に描く予定の)可憐はアニプリのほうの可憐だったつもりですが」
あ「その可憐ですが、リピュア服の可憐になります?」
天「うーん。この短いスカートからのぞくほそい足でひと目を引こうと思ってたんですがー」
あ「可憐というだけで目を惹きますので(兄馬鹿」
「帽子の少女が、可憐のワンピースの裾を引っ張ってるとか」
天「帽子の少女とペアがいいですか。やっぱり。ぬう。」
あ「すみません、無理いって」
天「この際ですから、あんよさんの希望をひととおりきいておきたいです」
「じゃあ、テーマはリピュアとアニプリの調和というか、そのへんで」
あ「先ほどの絵で、椅子に座っている可憐のそばに帽子の少女を追加」
天「あるいは、同じ背景だけど、可憐じゃなくて帽子の少女だけとか」
「で、表表紙と裏表紙で対になってる」
あ「それいいかもしれません。(ますます身勝手で申し訳なく」
天「そも、らむださんが帽子の少女を出したいと思ったのは、特に思い入れがあるのですか?」
あ「あの子、妹のイデアなんです」
天「たしかに」
あ「で、可憐は妹の個別性や具体性。個と普遍の調和が一つの主題なもので」
天「その少女と可憐の関係は、直接的にはないのでしょうか」(くどいようだが、天野はアニプリをまともに見たことがないのだ)
あ「関係については、最終話考察でちょっと書きましたが、幼い頃の可憐の姿も、あの少女の姿に溶け込んでいるはずです」
天「指切りした指を見つめている妹はみんなそうですね」
あ「少なくとも、彼女達はそうです」
天「じゃあ本来的には、12人の妹と帽子の少女という構図が理想的ですね」
「しかし、それは(描くには)地獄の構図」
「わたしとしては、可憐ひとりにアニプリとリピュアを象徴させた方がしっくりくるのですが、どうでしょう」
あ「うん、それもそうなんです」
「ただ、その場合、服装が問題に」
天「リピュアでも制服はきてたような気がします。(完成絵に描かれているこの服を、天野は制服だと思ってた)」
あ「ええと、制服は同じだったっけ…」
(このあたりでだいたい目処がたってきた)
天「可憐を中心として、リピュア、アニプリでの小道具が画面に展開している、というのはどうでしょう」
あ「あ、それいいですね」
天「服は中間的なワンピースでもいいのですが、個人的には制服にしたいです」
あ「了解です」
天「地べたにおきたくないものは、背景(に本棚でも描いてそこ)の棚に」
「では、小道具を選びます」
「小道具はアニプリみて手当りしだいに描こうとおもってましたが(全話みてる時間がありません)」
あ「あと、背景の本棚にしまわれた物品の中に、老婦人の写真立て」
天「リピュアBパートからも、銀の丸形ロケットを」
「眼鏡とデジカメとかオルゴールとか」
あ「あ、兄のもですね」
天「小物は(画面でもちいさいので分かりづらく)むつかしいかなあ」
あ「でも、でかくて象徴的な物品の方が確かにいいですか」
「ガルバンとか(ぉ」
天「ガルバンは必須でしょう!」
「当然ガソバルも」
あ「プロトメカ2号(目覚まし時計)あたりも」
天「でも、アニプリは結局みれてないんで、小道具のディティールが判然としません」
あ「資料お貸ししましょうか」
天「書店で流通するものなら、コードを教えてもらえばこちらで調達します」
あ「ええと、資料本としては」
天「はい」
あ「『アニメシスター・プリンセス完全ビジュアルブック』」
メディアワークス ISBN: 4840220425
1500円+税、が唯一です
天「ああ、うち(書店)に在庫ありそう」(出勤してから確保しました)
あ「在庫っ」
天「ところであんよさん、今回の採算は出血上等?」
あ「もち>出血上等」
天「じゃあ、わたしも資金援助します」
あ「いやん、それは申し訳ない」
天「そんな水くさい」
あ「妹のために血を流すのは、すべからく兄のつとめであり喜び」
「もしあまのさんが誰かの兄であるなら話は別ですが」
天「むしろ花穂と千影の兄になりたい昨今」
「というわけで愛する妹のために血銭にて援助したい所存」
あ「ちなみに千影は本当に兄の血であれこれします」
天「 川澄綾子の声であれこれされたらいろいろたまりませんな」
あ「しかも素麺すくえない」
天「そこ!」
「そこをアニメでぜひみたい。<そうめんすくえないちかげ」(そういうワンシーンがアニメにはある)
文「また濃いところを」(文:文月さん。すでに入室してROMしてた)
天「そうめんすくえないちかげもあまのののうないではかみさくがでかみえんしゅつのごっどくおりてぃですから?」
文「壊れた」
あ「…夢は大切ですよねっ」
天「舞(Kanon)に惚れ込んでしまったときとやや近い」
「(でも濃いところまで理解する必要はある。)テキストと絵という差はあっても、あんよさんと同じ深度まで達せないと、本ができたとき絵が負けますから」
あ「業の深さなら負けないぞ(ぉ」
天「(でも)ウオータードラゴンと水中で戦うくらい大変」
あ「絵、とても楽しみですー」
天「ほいじゃ、今週末ころにラフかなにかおくれると思います。たぶん」
あ「はい、よろしくお願いします」
天「ではー」
3. ラフ
とりあえず考察の第一部「アニプリ」の分だけ読んだところで、ラフ案を考えた。
とにかく「考察大全」らしい表紙というので、ずいぶん悩んだことを憶えている。
結局「灰羽連盟」画集のテクスチャーによる古びた効果をみていて、「可憐中央椅子」「背景に雑多なアイテム」「全体に古びた感じ」と思いつく。
コトっとはまってしまえば、あとは早かった。
ラフができた後、一呼吸おいてもう一度じっくりと見つめる。
これ以外にない。そう思えた。
これに勝る案は、もう全員かくとかしかないが無理だし、そんな地獄を開幕させてる余裕も時間もない。
「灰羽」以外に助けになったといえば、大全的コンセプトとして「エマ・ヴィクトリアンガイド(エンターブレイン・ビームコミック)」が、そして手元に資料はなかったが、エヴァ初号機が各種オプション兵装を地面にならべ膝をついてる絵もモデルになっている。
それとたしか「岸和田博士の科学的愛情(講談社アフタヌーンコミック)」で大塚長官の隠れ家(段ボールハウス)の前に並べられた細かな生活用品の絵があったが、あんな感じを目差した。
4. アイテムの詳細確認
悩んだ割りに描き始めてみれば、2時間半ほどでラフ絵ができていた。
タイトルレイアウトも入れて、チャットの席で公開する。
天「で、ラフのほうですがあんよさん。いかがなものかと」
あ「あまのさん、表紙はもうあのように。ぜひ」
天「おっけーい」(実際にはガッツポーズをとっている)
あ「ただ、各人のアイテム全員分ありますかね」
天「咲耶のがですね『放送』っていう腕章しかないんですよ」
あ「ああー」
天「彼女自信が彼女のビジュアルの象徴なもんだから」
あ「モミの葉のイヤリング、かなあ」
天「化粧品とか、とにかく小物しかなくて」
あ「見づらいですねえ」
天「リピュアのときの宝箱とか」
あ「赤いマフラーはいかがでしょう」
天「識別点としては弱い気がします」
あ「うーん」
あ「咲耶といえば、赤いマフラーなのですが」
天「服の類いは単体では弱いですねえ。(畳んでしまうと判然としないため)」
「本来はアイスピックくらいしかアイテムのなかった可憐が本体を表紙に出してるので、咲耶が差をつけられてます」
「あと機関車とガソバルのジオラマも資料がない」
「アニプリ本編をろくにみてない状態で描くには辛い絵なので、力わざで押し切る所存」
「で、裏表紙はアイテムがまったくない状態の部屋に、でか帽子の少女が座ってるという絵の予定」
あ「ガソバル・ガルバン・機関車(不明瞭)」(のキャプチャー画像提示)
天「おお、保存保存」
あ「これも機関車」(キャプチャー画像提示)
天「おおお」
「しかし」
「なんか、こう」
「私のなかのシスプリとは、ずいぶん絵のクオリティが違うんですが・・・」
あ「気 の せ い」
S「あまのさん、さっきまでおしごとしてたから」(S:Shunさん ROMしてた)
「つかれてるんだお」
「動くと全然違うし」
あ「すぐに慣れます」
天「そ、そっか」
あ「そして、これに慣れておけば」
「他のどのシスプリ作品を観ても、その画質で幸せになれます」
天「どんなに疲れていても目利きだけは鋭い山岡士郎みたいにはいかないか」
あ「どんなに疲れていても、ぼくはお兄ちゃんですし」
天「すばらしい」
「わたしも花穂と千影がでてる絵は無条件でうれしいです」
あ「でしょ」
天「あ、鈴凛のアイテムはメカ鈴凛がいいかな。いや、無理か」
あ「メカ鈴凛は、アイテムではないので」
「で、咲耶のアイテムですが、咲耶は、腕章が一番まにあっくでいいかも。アニプリファンには受けそうな選択です」
天「やー、しかしアニプリのほうをなんとか見てみたい」
「ガイディングスターとかいろいろ描き足すものがあとからあとから見つかるし」(ガイディングスターはうまく組み込めませんでした)
(といいつつキャプチャー画像の載ってるサイトを探す)
天「ああっ」
「(あまりに高度なバトン操作のため)残像が!」
あ「そう、それ(笑」
天「すごいぞ、花穂!」
あ「そこ(16話)、実は感動と笑いの名場面です」
天「わたし、あんよさんの考察文書のそこ読んでて泣きました」
あ「春歌のアイテムって、何を使われました?」
天「アップしている絵にはありませんが、扇子(開いて飾る)と長刀(なぎなた)、もしくは弓を <春歌」
あ「あ、ばっちりです」
「松葉杖でもおけですが>春歌」
天「潜水艦と機関車は模型にしようかと」(機関車は結局断念)
「そういえば亞里亞のアイテムって日傘しかないなあ」
あ「てるてるさんは、雛子と亞里亞の共通アイテムなので」
天「てるてるも数個は描く予定」(スペースの都合で割愛)
あ「白雪がバスケットですね」
天「鈴凛が背負っていた(ダグラムのリニアカノンみたいな)水鉄砲の資料がほしいなあ」
あ「あれはなかなかないですねえ」
天「アイテムが充実してるのは意外に花穂」
「千影はカードと水晶玉と薔薇の十字架と、ってけっこうあるなあ」
あ「薔薇十字の資料はありました?」
天「十分すぎる程」(そのわりに形状をまちがえました)
「でも小さいので目立たないです」
あ「いえ、ファンは絶対に注目します」
天「こまったのが眞深」
あ「眞深は…。『三鷹』のペナントとか。本の1冊を『My Poem』にするとか」
天「盥(たらい)と洗濯板を資料集でみつけましたが」
あ「たらいはいいですね」
天「劇中ででてきます?」
あ「第7話の部屋でミシンを探す場面、その他で出ています」
「ファンなら『たらい』というだけで眞深と分かるはずです」
「ただ、小さいと『風呂桶』と間違えて、山田を連想する人がいるかも」
「右下にあるのがそうですよね。これならおけです」
天「アニメみてないと制約おおいっす」
「・・・できれば3日までに絵を完成させておかないと、アニメみたときになおしたくなりそうなのが恐い」
(しめきり7/2の翌日は、アニプリのDVD鑑賞会が予定されていたのだ)
あ「絵を下手にするとか…」
「でも、もし赤いマフラーも入れられれば、そうして下さい」
「これは、咲耶の象徴でもありますが、アニプリとリピュアAB両方をつなぐアイテムなので」
天「なるほど」
「ところで、アイテムがだいたい出そろったら、もういちど背景を書き直す予定です」
「裏表紙の少女の後ろに、マフラーやリボンが置いてある、というのも考えたのですが」
「これだとごちゃごちゃしちゃいそう」
あ「ですね」
「なにもない、ここからはじまった、という感じが出る絵になりそうなんで、それでいいとおもいます」
「写真立ては、ちゃんと可憐の側にありますね」
天「写真立ても位置はかわると思います」
「レトルトカレーの入った段ボールに、おおきく『眞深』ってかいてあるとか」
あ「段ボールに緑色の猫を描くと、山田の象徴になります」
「でも、眞深は『たらい』だけで完璧(あと洗濯板も)」
天「なんか不憫な・・・」
あ「いや、眞深はその慎み深さがいいのです」
天「リピュアのオープニングラストで可憐がそっとおくスノーマンの置き物(?)も描いておこう」
あ「ああー>置物」
天「オルゴールもかかなきゃなあ」
あ「それは必ず」
天「できれば、劇中にでてこなかったけど、まちがいなくありそう(という感じ)なものを描きたいなあ」
あ「ミカエル用のブラシなんかは、登場しなかったけどありそうなアイテム」
天「鞠絵のアイテムが『内服薬』ってかかれた薬袋ってのはなんか悲しい」
あ「鞠絵は、それじゃないのにしましょう」
S「うわお あんよさんがまだ起きてる(ぉ」(すでに二時ちかかった)
あ「お兄ちゃんだから(意味不明」
「鞠絵は、編み棒と毛玉…ちょっと小さいけど」(これら結局は描けず)
天「可憐の心配しなくていいのが楽でいいなあ」
「おかげさまで、だいたいアイテムはそろえることができたように思えます」
「ありがとう、あんよさん」
あ「こちらこそ、よろしくお願いいたしますー」
「あと、可憐の生足がえろいです」
天「靴下のつもりでしたが」
「なまのほうがいいですか?」
あ「ふとももが」
天「そこですね」
「じゃあ土曜くらいにちょっと進んだ絵を見せられると思います」
あ「ああ、この可憐に踏まれたい」
「楽しみに待ってます」
6.着色そして
着色をはじめた。
小物はできるだけレイヤーごとに分けている。
タイトルロゴまで入れると、最終的には150枚ほどのレイヤーを使用した。
頼りになるのはビジュアルブックだけなので、それ以外のものは実物の資料をもとに描いている。なので鞠絵の救急箱(運動会のとき)などは劇中のものとは違う。
ただ中には絶対に実物のないものもあった。
天「MG版ガルバンを描こうと思って資料集め中」
文「あまのさんのあのしすぷり絵をみていて、『夢使い』とか『ディスコミュニケーション』をちょっと思い出した」
S「かつてここまでガルバンに情熱を傾けたひとがいただろうか!(山田以外」
天「あー、そういってもらえるとうれしいですが」
「表紙の出発点は『エマ ヴィクトリアンガイド』だったとゆーのは秘密だ」
文「そのへんの完成図を頭に浮かべて、ディスコミュニケーションだなあと」
天「これからどんどん小物がかき込まれていくのですごく雑多な印象になるはず」
「しかしこのシスプリ絵は、すでに(作画のための)エネルギー(根性の別称)切れの兆しが」
「まにえらさん、3日はよろしくー」
(アニプリ全話マラソン上映会はまにえら氏の部屋で行われる段取りになっていた)
文「とりあえず、ウニメ(アニプリの別称)をみたあまのさんの感想がたのしみです」
「手前にちいさなテーブルかなんか置いて、白雪のつくったお菓子とかおいてほしいきもするの」(文月さんは白雪のファンだ)
天「それだと可憐のかがやくふとももが隠れてしまうのでだめ。<つくえ」
文「かがやくふともも……」
天「こーわさんの名作詩でそんな詩があった」
「シスプリ絵で苦しくなってくると志摩子さまの絵を描いて息継ぎしたくなります」
あ「絵、素晴らしいです。この勢いでおながいします」
天「これ(ガルバン)をカトキアレンジでマスターグレードにします」(一番最初の段階では、可憐の左にそれらしきラフがあった)
「あんよさん、可憐の制服の色がどうしても設定のだとくるしかったのでアレンジしちゃいましたけど、大丈夫ですかね」
あ「問題ないと思います>あれんじ」
天「元の色、かなりきつめなので」
「あと、可憐が『らしく』ないんですが・・・」
あ「うーん」
天「これだと、お兄ちゃんにべったり愛されてきた妹って感じの顔なんですよ」
あ「たぶん、目に悪意がないからでしょう」 // 天「もうちょっと黒くしたほうがいいでしょうか」
天「ああっ」
「同じこと考えてる」
「わたしもあんよさんの深度においついたのか」
あ「ですが、最終話ではその悪意もかなーり消滅してるので、時期でいえばこれで正しいとも言えます」
「そして、あえて言うならば、その残された悪意は、可憐の手がおかれたあたりに潜んでいるのでしょう」
天「・・・・」
あ「そう、絶対領域近辺に」
天「ああ、そっちですか」
文「どこを想像してたのかなー?」
天「渦の中心核とかそのへん」
あ「あと、この絵にタイトル文字を重ねた場合、タイトルを読む視線は自然にその悪意の付近にひきよせられるわけで」
天「可憐のふとももはよりいっそうかがやいてみえるものと」 // あ「ここに、絵師の悪意が潜んでいるともいえましょう」
天「ああっ」
「同じことを」
「でも悪意なんてないもん」
あ「そう、そう信じ込んでいることこそ、可憐の証なのです」
天「ぬう、深い」
「清らかな闇」
あ「そこにとけ込んでこそお兄ちゃん」
「そいえば、あまのさん解説も書いて下さるんですか?」
天「どうしよう」
「アニプリはテレビで2〜3話しかみたことなくて、考察本だけよんだら脳内でゴッドクオリティとかそのへん書こうと思ってたくらいですが」
あ「じゃ、あんよによる解説とは別に、絵師のコメントというかたちで」
天「あ、だったら一枚だけラフ絵を描きましょう」(結局かけませんでした)
あ「わーい」
天「可憐と帽子の少女が手を繋いでる絵」
あ「わーいわーい」
天「非AIR」(AIR編のタイトル画面が容易に連想されていた)
あ「ぉ」
天「表紙にかけられたパワーバランス的に、中身に絵がまったくないと読む人つらいでしょうし」
あ「確かに」(たしかに)
「ぼくだって読む気がしない(ぉ」
天「わたしらむださんの考察文章、すごく楽しくよませてもらってたんですが、本になったときのことを考えるとですね、息継ぎできるページが欲しくなると思うんですよ」
「第1部と第2部の間と、各話ごとに一枚づつトビラ絵があるのが理想です。でも無理」
「あと一ヶ月あればそろえることもできましょうが、いまは無理」
あ「それ可能だとしても、30ページ増えちゃう」
「一ヶ月…」
「冬に出すか(却下」
天「大丈夫」
「ラフだし」
「ページのまん中あたりに四角いわくを切って、その中に顔だけ」
あ「あー、いいですね」
天「『エマ・ビクトリアンガイド』みてると、随所に絵がはさんであって、あれいいなあって思ったんですよ」
「でもちょっと無理ですねえ」(時間的にもかなり)
あ「次の機会には、ぜひ(次?」
天「次・・・」
あ「マジカルヒナ本とか」
S「あんよ先生の次回作に是非ご期t(ry」
天「ところで、この絵ですが」
あ「あい」
天「場所は、どこかの倉庫なんですよ」
あ「あい」
天「床も粗末なつくりですし、棚もごく無造作な感じのもので」
「何もない裏表紙は、兄と妹のプロミストアイランドでの思い出がまだ始まってない状態で、帽子の少女だけがいる」
「まあ、(ゆびきりのこととか)ほんとは昔の思いではあったんですけど」
あ「コテージか、3丁目のじいやの家のものでしょうかね」
天「さて」
「どうでしょう。表紙のほうは、妹やサブキャラたちの思い出のアイテムがいっぱいあるわけですが」
あ「『海神』タイトルの本が2冊はあるところが、あまのさんの独自性ですが」
天「これ片方けしときます。<海神の本」
あ「いえ、おっけーです」
天「そうですか?」
あ「あのじいやの持っている本と、これらとが違うものかもしれないし、兄妹が、海神の家をちゃんと引き継いだ記録かもしれないし」
天「実は第2第3の航が・・・」
あ「ぉ」
天「コンバトラーVのガルーダみたく」
あ「それを始末したアイスピックが…」
天「ああ、だったら複数冊あってもいいかも」(いいのか)
「で、この倉庫にある品々から妹たちのことを思い出すわけです」
「観測者は、成長した兄」
「なので、この椅子に座っている可憐は幻影なのです」
あ「ああー」
天「ほんとうは誰もすわっていない椅子があって」
あ「じゃ、何をしてもいいんですね」
天「いや」
「ええと」
「あの」
「ほんとうは誰もすわっていない椅子があってですね」
あ「踏んでもらおっと」
天「品々に思いを馳せながら」
あ「ぐりぐりと」
天「過去のことをおもいだし・・・」
「て」
あ「ああ、そこ…」
「(逝ってよし>自分」
天「リアル可憐はこの絵の時間では24才くらいになってますが」
あ「補論3で予測した年齢ですね」
天「それです」
「思い出の品々をみながら考察で語られた日々をおもいだすってかんじで」
あ「いいですねー」
天「何部するんでしたっけ?」
あ「50部か、100部」
天「ひえー」
「もっといけませんか? (200部とか)」
あ「えー」
「売れないよー」
天「マーケティングリサーチしましょう」
「あ、値段いくらでしたっけ?」
あ「××××円程度を考えてます」(当日まで秘密・・・というか検討中)
天「初回で50部ははけますよ、きっと」
あ「100部印刷だと、これでやや赤字です」
天「赤字こそ愛ですね」
あ「そです」
天「(シスプリが)時期を逸しているとはいえ、あんよさんの考察へのリンクを考えるとけっこういけるとおもいますけどね」
あ「いや、この手の考察・評論本は無理でしょう。重いし」
「もし可能なら、同人誌専門店に委託するかも。自分がイベントにそうそう行けるとは思えないので、今回の夏コミと通販で何とかしたいところです」
あ「あと、200も刷ったら、置き場がない罠」
天「おおきい本でしょうしね」
あ「厚さ2cmありますので」(実際には背表紙厚17.2ミリ)
「積み上げたら4めーとる」
天「100部でも2メートルかあ」
「なんとかはけそうな気もしますけどね」
「わたし、花穂と千影の分は資金援助しますから(13分の2か?)、何部かください」
「原稿料もらうとアルバイトになっちゃうので」
あ「あ、絵師さんには贈呈します」
天「わはーい」
天「さて、そろそろ(チャットを)落ちますが」
「たぶん3日までに完成するかどうか微妙です」
「では絵の方に集中します」
「ではー」
実際のところ、当初50部印刷と考えていたあんよ氏。考察の素晴らしさに対して少なすぎると、無理矢理100にレイズさせた感じがある。そういうわけで、表紙担当としては絵だけで50冊うれないと申し訳が立たない。仕事も大事だし時間もないがせめて気張ろうと思った。
でも、シスプリを知らなかった私のような人間でも感動させられたのである。やはり素晴らしい考察だと思うので、できるだけ世に出したいと思うのだ。がんばろう。
7. 表紙絵の完成
この考察に絵をつけるとき、大全となれば、やはり全キャラ描くべきだと思った。だが時間的にも描くことを断念。そもそもキャラへの理解も充分にないのだ。無理な話である。とはいえ妹のビジュアルは欲しい。
そこで、作者の希望をとり、可憐のみ描いた。ここが出発である。
あとは全キャラを象徴するアイテムを描いた。できるだけ、アニプリとリピュアの両方の要素がでるようにしている。「探すのが楽しいパズルのような絵」にしたかった。
シスプリをまともにみたことがないのにこういう絵を描く、というのは大変だったが、ひとつの挑戦とも言えた。もっともこれは、どこまで誤魔化せるか、という挑戦である。
助けになるのはビジュアルブックだが、これに掲載されている劇中の絵がほとんど画像キャプチャーによるため、本来の色味などがわからず苦労した。また、このときは引越のせいでネット環境がなかったため、調べものにもえらく窮した。ナギナタの刃の部分とか結局は描かずに柄だけでごまかしている。
だが、それでもこれら悪条件でここまで描けたのは、あんよ氏の情景を想像させるテキストのおかげだ。
ところで私は「物語中で描かれていないけれど、こういうのあっただろうな」というのを描くのが好きだ。だが、資料もろくに無いので暴走はできない。大暴投しても大丈夫そうなところとして、とりあえずガルバンをマスターグレードにしてパッケージを描いておいた。
せっかくMGなので可能な限りそれっぽく描いてみたが、ディティールが細かすぎて絵から浮いてしまうため、結局は泣く泣くカット。クソ忙しいなか60分をドブに捨てた。
そうでなくてもアイテムは細かい。全部描けたところで改めて見ると、人物に対してやかましい絵になってしまうので、最後に色味をおとして(背景のみ彩度を下げる)オレンジ色のフィルターを若干かけた。
これで、素材は完成である。
締切の翌日。そしてアニプリ全話マラソン鑑賞オフ会の当日のことであった。
天「あ、シスプリ考察本の表紙できました」(JPEG形式で画像掲示板にアップ)
S「うわ。すげえ」
文「うわぁ」
「考察本でこの装丁はありえないよ」
「売れる売れる」
「すごい差別化になるはず」
天「最後の方、もう絵をみる目がダメになっていて不安だったけど」
「朝もういちど見てみておっけー」
「可憐以外は、妹やサブキャラを思わせるアイテムならべたわけですが、白雪のが最後までハッキリさせられなかったのが残念」
「ランチバスケットだけだったなあ」
「売れるといいなあ」
「食事と睡眠と入浴以外ずっと絵を描いてた。ネット環境もなかったし」
「シスプリのこの絵を描いている間に『カウボーイビバップ』をバックグラウンドムービーとして全話見返しましたよ」
文「天野さん、忙しくないんですか?」
天「忙しいですよ!!」
どうにかデータだけを持ち出して、オフ会に出発する。
わたしが考察読了後にはじめて見るアニプリだ。むかしテレビで流し見していたときとは、まったく違って見えるだろう。
楽しみだった。
8.シスプリアニメマラソン上映会 (※「8.シスプリアニメマラソン上映会」は、別コンテンツの日記と内容が重複してます。既読の方は読み飛ばしを推奨)
アニメ版シスタープリンセス全話マラソン鑑賞会というほとんど責任ある社会人にはありえない類の身内イベントがあった。
全26話からオープニングとエンディングなどをどう抜いても10時間ちかくかかる。さらにリピュアも見たなら半日以上まるまる鑑賞したということになるだろう。もちろん主催はくるぶしあんよ氏だ。
ちなみに鑑賞会当日は絵稿の締切であり、天野は前日の夜ぎりぎりで完成させられた。それだけの甲斐のあるものはできたと思う。
さて、今回の参加者は以下の通り。
早瀬さん・manieraさん・Beeさん・美森さん(仕事)・利休さん・あんよさん・入江さん・うぇいんさん・秋月さん・そして天野
である。
名古屋が世界に誇る超絶喫茶「マウンテン」で昼食をとったあと、車でmanieraさんの家に移動した。(「マウンテン」での様子はこちらの日記にて)
今回は関西や中国地方から来ている人もいるので、お疲れではないかとちょっと心配である。だが
「このあいだ地下鉄にのってたら、おなか出す服の小学生くらいの女の子がいたんですが、日焼け跡がスク水でしたよ。こう肩も出てて、ああ実在するんだなーと感動しました」
「むむむ。すると、お腹は真っ白でしたかどうでしたか」
無限の体力をもつ利休さんと、幼女愛で生きてるあんよ氏は快調なようである。
だが、これから待っているのは「マラソン」なのだ。利休さんはともかく、あんよさんは体力的にどうだろう。
「今日はどういうスケジュールなんですか?」
「シスプリDVD鑑賞会」
あんよさんが宣言する。そして時刻は11:50。
「いまからだったら二回みられますね」
あんよ氏にもまったく問題はないようである。
「い、いえ、その前に、せっかく名古屋まで来たんですから、どこかに行きますか?」
「小学校でいいですよ?」
しれっとハードルの高いことを言うあんよ氏。
そして、自動車組と電車組が合流。manieraさんの部屋にいやがらせのように10人集合である。
「これ、あんよさんにおみやげです」
「幼女服・・・」
「幼女靴下・・・」
「ここにせいるさんがいたら、幼女ぱんつも差し入れられたであろうことはさておき」
「この服、身長130センチくらいですか?」
「シスプリだと雛子くらいのサイズですね」
「じゃあちょっと高さを調節して、こうハンガーで吊してみると」
「おお」
「おおお」
「わたしヒロシマで開発した能力つかうと雛子の姿が幻視できますよ」
「ぼくも今回の鑑賞会にそなえ、車窓から雛子くらいのちいさな女の子に手をふって感覚を取り戻してきました」
「・・・・」
「そしたら、手を振りかえしてくれたんですよ!」
「なんて嬉しそうな顔するんだろうねこのひとは」
「いや、あれほんとに嬉しかったので。その子の母親怪訝顔でしたけど」
「しかしちっこい服だね」
「うぇいんさん、着れそう。いや、きついか?」
「もうちょっと、ちいさくなってください」
「服にあわせてかい」
「旧軍の兵士か君らは」
「なにか音楽かけますか」
「メイドさんロックンロール」
「おい」
「じゃ、ブルースの方」
「どっちにしますか?」
「二択なのか」
入室5分ですごい環境になっているmanieraさん宅。
さらに壁面いっぱいを塞ぐ巨大なスクリーンを引っぱり出して、数人がビートマニアを始める。あるものは幼女服を愛で、あるものはコントローラーをたたき、あるものは某ゲームの某裏データに歓声をあげ、あるものは部屋主の回線を間借りしてここぞとばかりにサイトを巡回する。そうして2時頃。過回転で逆に発熱していそうなクーラーの頑張りもむなしく部屋の気温はあがりつづけ、たまらず我々は気温が下がるまで外で過ごすことにした。
ここでチーム分けが行われた。土曜の昼に10人で行動するのは難しい。同時に入れるような店はそうないのだ。
まずカラオケチーム。
そしてアニプリ鑑賞チーム。
最後は制服鑑賞隊。
ここで記録者が全話鑑賞につきあえる時間を持たないので、アニプリ鑑賞に入る。そんなわけで他の隊のことは不明だ。おそらく制服鑑賞隊はメイド喫茶をはじめ各所を見学して回ったのだと思われる。
アニプリ鑑賞チームは、あんよさん・天野・Beeさんである。
manieraさん御自慢のプロジェクターにDVDプレイヤーをどうにかつなぎ、スクリーンをおろし、ハンガーに身長130センチ程度の小学生女子(低学年)が着る幼女服をつるし、準備完了だ。
その前に、データで持ってきておいた表紙の画像をあんよさんにみせる。
「ちゃんとした本になった」と氏はものすごく喜んでくださった。
繰り返し繰り返し、何度も何度も感謝された。絵描き冥利に尽きると思った。
そうこうあって、鑑賞が開始された。居住まいを正しながらも、最初から歓声をあげっぱなしのあんよ氏である。
「いい。可憐はいい」「くはーっ」「はじめてみたしゅんかんによくじょうしました」「可憐の髪がにおってきそうです」「画面にルパンダイブしたいですね、こう」「くっ黒いっ 可憐くろいっ」大画面の迫力に悶絶しつづけるあんよさん「達しました」
「た・・・って・・・あの、あんよさん、これ日記(ドキュメント)に書いていいですか?」
「いいですよ?」了承には0.1秒もかかってなかった。
「そういう天野さんも花穂の声に悶絶してますね」
「えへへ」
「あ、花穂ころびましたよ」
「あのタイミングで転んで、なんでぱんつがみえないんですか」
「はいてないからに決まってます」
「なるほど」
「いや、第1話はじめてみましたけど、いいですねー」
「・・・」すでについていけない様子のBeeさん。
「でも、次からは絵がちょっとね・・・」
「作画陣、もう息切れなんですか!?」
アニプリの作画は決して安定して高品質なものではなかった。これはDVD版だが、テレビ放映時にはさらに寿命が縮みそうなくらい非道かったという。
「悪いときはこんなもんじゃないですよ・・・」やや自嘲ぎみなあんよさん。
「あの、みなさん何か飲み物かってきましょうか」いたたまれなくなってきたBeeさん。
「さっきからヨダレでてますからいいです」
「お、咲耶と可憐が並んで台所ですよ」居場所が無くて同じように台所に立つBeeさん。
「ミニスカにエプロンっていいですなあ」
「いやー、可憐はなに着ても似合いますよ」一心不乱に食事を作るBeeさん。
「あ、咲耶が右から左にペンを走らせてメモしてますよ」
「アラビア語ですか」
「ダヴィンチの鏡文字じゃないかなあ」
「雛子のこの絵、いいですね」
「幼稚園児の匂いがただよって来るかのようです」
あんよ氏のコメントも楽しかったが、それ以上に、ごく素直にシスプリの内容に感動した。
シスプリには彼が示唆するように物語の裏を流れるひとつの筋があるのだとおもう。
だが、それをアニメでは、決してうまく描き出せているとは言えなかった。
実際、漫然とアニメを見ただけでは、アニプリを「ちょっと変な物語」としか捉えられないのも当然の事だろうと思う。演出・作画などのクオリティにおいて、決して満足いく仕上がりとはいえない。
だからこそスクリーンにうつる妹たちの姿を透かして、彼の考察が生きてくる。
この絵、この演出の背後にどういう物語内での事情があったのかが、おそるべき整合性をもって彼の考察では論じられているのだ。アニメで描き切れてなかった部分を補完する文書として、この考察をもってアニメ版のシスプリは物語としての完成を得ると、個人的には主張したい。
あんよ氏の本を読んでからアニメをみた私としては、「原作を読んで、そのアニメ化をみた」ような感覚だった。もはやそうとしか思えないくらい、彼の考察は「アニプリ」を整えてくれているのだ。
それにしても、実際の成立は逆なのだ。
あのアニプリをもとにここまで奥深い洞察ができるのが、まったく驚異である。
アニプリを未鑑賞のひとでもかまわない。
まず、考察本を読んでみて欲しい。
「シスター・プリンセス」の印象は一変するはずだ。
その後で、機会があったらアニメを見ればよいと、わたしは思う。
上映はつづいた。
鞠絵のせつない、そしてささやかな望みを描いたアニプリ第8話を、わたし自身が泣きながら見終えるなど、完璧にはまっている状態だったが、ある程度上映したところで、カラオケ組・制服鑑賞隊と合流する時間になった。
食事の後、またmanieraさん宅に押し掛け、ここからが本物のシスプリマラソン上映会である。
だが、残念ながらわたしは翌日が仕事ということもあり、早々に退散した。
聞いたところでは、本隊は翌朝まで鑑賞を続けたが、完遂できたものは3名のみであったそうだ。
あんよさんは最後の上映を見おわったあと、満足げな笑みとともに、静かに倒れて落ちたという。疲れて眠るように。
アニプリは後に、知人からDVDを借りて全話鑑賞した。
考察の土台があるためだろう、とても面白かった。
そして同時に、あらためて「クオリティを見るアニメではない」と思い知った。
アニプリで描かれているのは、本来兄ではない我々が、十二人の妹たちに対して兄の心情を獲得するためのプロセスなのだ。
ゲームやリピュアでは、すでに「妹に対する兄」という立場に主人公は立っている。だが、我々は自分を慕う十二人の妹を得る、という状況にやすやすと感情移入できない。これができるのは、日々それを夢想してきた上級者とか本物野郎に限られる。
だからこそ、テレビアニメとしてシスプリの世界を広めるには、まず「兄になる過程の物語」が必要だったのだ。
アニプリに対して、とくにその序盤では、とつぜん十二人(+1名)の妹ができることに誰もが違和感を覚えるだろう。
それは兄である主人公・海神航(みなかみわたる)が「そんな馬鹿な!」と叫びつつ感じている違和感にほかならない。
だが、物語のなかで妹たちのことを理解するにつれ、航にも兄らしい心情が芽生えてくる。
アニメをみる我々は、航が兄になっていく話につき合いながら「妹を愛する」というシスタープリンセスの本質を段階的に理解していくのだ。(このへん、考察に書いてあったことの受け売りですが)
まさしく「妹たちの兄になるための過程」である。
この後で、兄として成長した航と十二人の妹たちとの、本当の、終わらないシスタープリンセスの世界が始まるのだろう。
つながっているとすれば、ここから先はゲームとリピュアの時間世界だ。だが、物語のセオリーとして、ここから先は読者の想像にお任せするべき部分ではないだろうか。アニプリで描かれたここまでこそが「シスタープリンセス」において描くべき世界なのかもしれないと、わたしは思う。
だが、それも考察という土台がなければ出会うことのなかった世界だった。
この物語に出会わせてくれた、そしてその表現上の欠落を補完してくれたくるぶしあんよ氏に、深く感謝したい。
9.せいるさん感想
考察本の表紙ができたとき、せいるさんにもこの絵をみせたことがある。
せ「アイテムが細かい。12姉妹関連物が全部揃っている?」
天「12どころじゃないです」
「真深と、じいやの分、あと航も」
せ「下の箱は(ウェディン)グドレス?」
天「そうです×13着」
せ「あー!」
「彼女も入ってるのか」
天「それで13」
せ「なるほど」
「ガルバンはわかりやすいですね。あとぬいぐるみと長靴。これは雛子か」
「アイスピックは?(笑」
天「アイスピックは可憐の主兵装ですからちゃんと棚に」
せ「怪我しないようにビニールつけてあるあたり、こわっ」
天「白雪のアイテムが、けっきょく下の方のランチ用バスケットケースしかなかったので文月さんが怒ってた」
せ「怒ったのーぅ!?」
天「泣いた・・・のかな」
「いちおう、アニプリとリピュアと両方の考察がのっているので、妹の両方を象徴するアイテムをあつめてみました」
せ「ところで『リピュア』って、あとのやつのほうですね。神アニメが続出した」
「あ、それで鞄があるのか」
天「そー。赤い靴」
天「(リピュアと言えば)春歌の回は、泣けました」
「絵と演出の美しさだけで泣かされたなんて、ほとんどはじめてですよ」
せ「うなじの描写が好き。@はるか」
「虫眼鏡はチェキですね」
天「リボンが着いてるので、これは(たぶん、やったことないけど)ゲーム版ですか。<虫眼鏡」
せ「ロザリオは誰だっけ」
天「千影です。タロットカードは箱に入ってるってことで描いてません」
せ「千影か。上の水晶球も千影ですね」
天「(衛のことを考えると)ビーチボールじゃなくてサッカーボールにすればよかったかな。描くの死ぬほど大変だけど」
せ「白黒がめんどくさいですねぇサッカーボール」
「個人的にはサッカーボールがあると泣いちゃったかも。ポケットシスプリとリピュアのあのエピソードが好きだったので。@衛」
「あそこの岡崎さんの歌もあいまって本気で泣いたんですよ。リピュアのとき」
天「あれね」
「なんというか、完璧でしたね。<衛の回」
せ「個人的に好きなのが衛だったのをわりびいても」
「お話的に好きなのは鈴凛ですが」
天「先日、このシスプリ絵の締切翌日に『アニプリ全話マラソン鑑賞オフ会』があって、プロジェクターによる大画面で衛の回みましたが、すばらしすぎて終わったときに「完璧・・・」という以外言葉がでませんでした」
せ「ぜんわ?それは大変」
「あー。いいなぁ。ぷろじぇくたー上演」
「リピュアは衛、咲耶、鈴凛がベストスリーかも」
「えっちな花穂とかうなじの春歌もよかったですが」
天「でもシスプリはゲームもアニプリもリピュアもやってこそ、キャラが深く理解できるような気がしますな」
せ「あんよ氏はほんとうにシスプリを愛されてますから。氏の理解には遠い理解のよぅな。>自分の理解」
天「あのひと、ちょっと尋常じゃないすばらしさなので」
せ「だからこそ考察がまとまるのでしょうけれど」
天「わたしも先生と呼んで敬愛しております」
せ「愛って素敵」
天「学術的思考ができる頭をもってるんですよ」
「あの文章は考察能力と愛の見事な融合です」
せ「無敵素敵です」
天「ただ、本が売れるかどうかは、正直びみょう」
「冗談じゃないくらいの文章量と厚さです」
「まさしく、びっくり鈍器。藤林杏の投擲アイテムとしても推奨」
せ「本がでるの、たのしみです」
10. MGガルバンと白雪
絵が完成してからも、いろいろあった。
前にも書いたが、MG版ガルバンを描いてみたものの、他のとあまりに線が違うため合成できず断念したのだ。
天「供養がてら、マスタアグレエドガルバンの絵を(画像板に)アップ」
(ちなみに作画原寸大)(ぜんぜんカトキではないですね・・・)
文「ていうか」
「小物みんなこのクオリティで描いてるのか……」
S「うおおお」
「すげい」
天「このガルバンは変形して戦車とひこおきになるヨ!」
「わたしのなかでわ」
S「これは山田ならずともちょと欲しい…」
「誰か作れ(えー」
文「ガンタンクとコアブースターになりますか」
く「ゲッターメカ?」(く:くわねさん)
S「ド・リ・ル!ド・リ・ル!」
「 (・∀・)イイ!」
文「電車はついてませんか」
天「細かく見たい方に」
(チャットではカットではなく、作画原寸大画像(jpeg形式)を公開)
文「うわっ」
天「かなり誤魔化してることがわかります。<カバー絵」
文「ポスターサイズ!」
S「うおおお」
く「あまのさん、あまのさん」
「もしかして頭悪いでしょう?(超褒め言葉」
天「ばかでーす♪」
S「太モモが眩C━━━━━━(*´Д`)━━━━━━!!」
文「なるほど」
「これが絵師の悪意か」
天「潜水艦の塗りがぞんざいなのは途中で意識を失ったためです」(休み前の日は遅くまでこの絵を描いてた)
文「白雪……」
天「白雪を象徴するアイテムが思いつかなかったです」
S「白雪にまつわるものが少ないとなったときに、あまのさんの脳裏に『あ、これでまたふづきさんが哀しむなあ♪』というのがうかんでいなかったことをいのるお(えー)」
天「・・・・」
「エスパー?」
文「やっぱりそうか……」
く「(白雪は、卵白とかかき混ぜるやつ(名前失念)ではだめなのかなぁ)」
B「泡だて器ですかね?>卵白」(B:Beeさん)
く「それだ」
天「汽車とキッチントレーラーの模型でも描こうかと思ったんですが、というか途中まで描いてはいたんですが」
「あと白雪っていったら、もう」
「尻」
「しか」
文「ま た そ れ か」
天「象徴するアイテムとしても、服が描けないからなあ。この縛りだと」
「ちなみに左すみにある鍋は眞深のサバイバルカレー鍋です」
文「白雪の頭のアレは?」
「あれこそ象徴としてはもってこいのような」
天「頭のアレ?」
S「頭がアレ?」
文「あの黒い耳みたいなの」
S「|彡サッ」
文「しゅんたん」
「言っていいことと悪いことがあります」
「いまのはかなりいけません」
S「|ω・`) ゴメンナサイ」
文「よろしい」
S「|ω;`)」
天「あー、シスプリの資料全部かたづけてしまってるから、ビジュアルが・・・。<白雪のアレ」(このころすでにまこみしの絵を描いてた)
文「で、どうですか>カチューシャ」
天「うーん」
「たぶんこれだけあっても白雪のアレとはわからないっすよ」
文「いや」
「これはわかるですよ」
「これ白雪四六時中つけてるんで」
「シスプリみてればだれだってわかると思う」
天「そりゃ文月さんは一発でわかるでありましょうが」
文「外してるシーンのほうが少ない」
「ていうかめったにない」
以後とうとうと白雪について語る文月さん。
だがすでに絵は完成しているので、実際どうしようもなかった。
つくづく白雪は割りを喰ってるような気がする。
白雪ラブの文月さんには悪いことをした。
11.背表紙
表も裏も絵が描けて、アニプリ上映会にも参加し、ここちよい解放感に浸っていたところ、あんよ氏から連絡が。
突然だが、背表紙をお願いしたいとのこと。
背表紙が必要な同人誌ということにちょっと感動しつつ引き受ける。
天「えー、背表紙の話ですが、せっかくですから、それなりに(ちゃんと)描きます」
あ「あい、すみません」
天「制限時間はいつまででしょうか」
あ「7日の午前中ということで」
「午後には、文章とあわせて入稿する予定です」
天「あ、だといろいろできますね」
あ「いろいろ?」
天「背表紙は白で黒文字だけ、ってんじゃ寂しいでしょう」
あ「MGガルバンが立ってるとか?」
天「あー、なるほどー」
あ「例えば、革表紙っぽくできます?」
天「ぬう」
「革表紙に金文字・・・かな」
「でも印刷で金色っぽい色を出すのはけっこう難しいような」
あ「厚手の本の革表紙だと、上下に革帯みたいなのが2、3本横断してるじゃないですか」
「あんなのとか」
天「うーん」
あ「地味か」
天「そうなんですよ」
(背表紙かんがえながらサクラ大戦のビデオなどみてる)
天「さて、感動終了」
「(サクラ大戦のファンモードから精神状態を切り替えて)いまからわたしは花穂と千影の兄です」
あ「ぉ」
「欲張りさんだっ」
天「ええと」
「じゃあ、花穂とは非血縁で、千影とは血縁の兄ってことで」
あ「ぉ」
天「もともと望月久代すきだったからなあ。あと川澄綾子も」
あ「いい声優さんたちです」
天「でも、声で愛してるわけじゃないですよ」
「もし風邪でふたりがしゃべれなくてもぜんぜんオッケーですっていうかむしろ萌え」
あ「でも、可憐が風邪ひいてるのはかわいそうなので、早く治ってほしい」
天「千影って、霊的外敵に対しても気を張ってるのか、弱みを見せるようなことは滅多にないと思うので、なんか萌え」
天「うー、背表紙って難しいなあ」
あ「がばれー(無責任」
天「フォーマットが決まっていれば楽なんですが。シリーズものみたいに」
あ「うーん」
「考察、シリーズで…」
「『ケイブンシャ大百科』みたいな」
天「うわー」
「じゃ『コロタン文庫』で」
あ「うは」
天「まあ、なんとかします」
あ「羅文はいれますか?」(表紙のアルファベットはラテン語である)
天「もし、入る余地がありましたら。あと、デザイン的に問題なければ」
あ「逆に、羅文タイトルだけというのもありですが」
天「羅文だけ、だと完全に『もってる人だけわかればいい』ですよね。(同人ショップとかで目を引くため、ではなく)」
あ「はい」
天「絵が描けるくらいのスペースを背表紙に持ってる同人誌なんて、滅多にないですからいろいろやってみたいです」
あ「では、目を引く方向ですか」
天「キャラクターの顔をどアップでななめに描いて、タイトルはむしろ小さめとか」
あ「シスプリのハートロゴを入れるとか」
「アイスピックをどかんと突っ立てるとか」
天「最初、第一話で落ちてくる・・・なんでしたっけ」
「本の鍵」
あ「ハーモニーボールですね」
天「あれを書いて、リボンのところを背表紙にし、そこにタイトルいれようかなと」
あ「あ、ああーっ」
「素晴らしい!」
「いや、素晴らしすぎる!」
「お兄ちゃま、ふぁいとっ」
天「うん、ふぁいとっ」(すでに完全に染まっている)
あ「まじめに最高です、それ。びば」
「もうじいやとして墓場まで持っていきます」
「ハーモニーボールの資料ありますか?」
天「ありますよー」
「これって、羽根も王冠もついてないのね」
あ「そです」
「兄と会う前の妹の象徴ですから」
天「おおー」
あ「第18話分に書いたかな、そのへんは」
天「ところで、本は右とじでいいですよね?」
「こう、表紙をみて持ったとき」
「右手でつかんでる側がとじてあって、左手側がパラパラめくれる」
あ「ええと」
「逆です」
天「ええっ!?」
「じゃあ本文横書きでしたか!」
あ「あい」
天「しまったー」
「あぶねえー!!」
「入稿前に確認してよかった・・・」
「表紙を逆に並べてしまわれるところだたー」
あ「ごめんなさい」
天「珍しい同人誌だなあ」
あ「はっきりいって、読みづらそうです」
天「ビジネス書みたいですよね。<横書き」
あ「一段組なので、論文集でもなさげです」
天「うーん。背表紙アイデアは、もう一手ほしい」
あ「もう一手…」
「ハーモニーボールが水面にたてた波紋がタイトル文字」
「文字が三つ編み」
「『燦緒へ。』と前置きがある」
「タイトルよりも「お兄ちゃん大好き」の文字が大きい」
天「いや、あの」
あ「『プロミストアイランド』のペナントつき」
天「そこまで二センチ弱には描けないような」
あ「じゃあ」
「兄にまつわる何かがあればいいかしら」
天「水面におちていくハーモニーボールってことにして」
あ「はい」
天「一番下に波紋とか」(見た感じの都合で波紋は削除しました)
あ「それです」
天「水面とハーモニーボールの間に『くるぶしあんよ』」
「でも、これは意味的にあってるのかな」
「『くるぶしあんよ』の背景は黒で」
あ「ぼくは、作品の想いを、兄たちに伝えて、そこに波紋を招きたかったのだから」
「あってると思います」
天「色合いはかわいい系よりシックな感じでいいですか?」
あ「はい、そのほうがいいですね」
天「背表紙が黒になっちゃいますけど、いいかなあ」
あ「おっけーでしょう」
天「りょうかいー」
あ「可憐、黒いし」
天「うわあ」
「その黒背景に、うっすらと○○の○○が。
あ「おわ」
天「透明度設定して合成しときましょうか」
あ「はずれ本には、山田の○○が」
天「ほとんど印刷に出ないと思いますけど」
「ハズレ本の中身はいったい」
あ「全編山田」
「山田視点によるシスプリ」
「あるいはガルバンムック」
天「うむ、だいたいできました。頭のなかでですけど」
脱線してる間に描けという声が聞こえてきそうだが、それはともかく、こちらも程なくして期日までには完成した。
12. 本誌完成
オフ会の直前にオファーを出したという利休さんからも解説文がとどいたらしい。
これに背表紙を入稿して、あとは印刷を待つだけだ。
天「背表紙とかこんなかんじ」
あ「ありがとですー」
天「黒い闇に○○が潜む」
利「黒ッ」
「めっちゃ黒ッ」
「うし、解説送信終了」
あ「なんとかおわったよー。よかったよかった」
利「 ……つか、背表紙の方、ナニゲに出来がえらくいいですね」
天「利休さんもごくろうさまでやんした」
利「いや、僕はあまり手伝ってないので」
天「この○○だけ表情を変えてもよかったかな」
利「教訓としては『明後日が締め切りの仕事はなるべく受けないようにしよう』ということで」
あ「お疲れ様です>お二方」
天「ちなみに背表紙とかのナカグロ(・のこと)は加工してあります」
「そのままだと『アニメ版シスター・プリンセス』」
「これだと・で内容が別れて見えるので」
あ「あーなるほど」
天「ホントは文字の間にあく空白面積もだいたい統一するものだそうです」
天「今のうちに宣言しておこう」
「完売して重版かかったら、今度は挿絵も描くぜーーーーーっっ!!!」
「おもに花穂と千影っ!!」
「というかあれですよ」
「このテキスト量で挿絵ないと息継ぎ的に読むのがつらいはず」
利「1時間半かかりました。解説書くので読み返したら」
天「はやいっ はやいよスレッガーさん」
利「あれなんですよね。結構まじめなんですよ。文章が」
「だから、ストレスはあまり感じないです」
「ラノベしか読まない、という人には辛いかも知れないが」
あ「あー」
この後の7/23に印刷所からあんよ氏のもとに完成本がとどいた。
B5版・360ページ1巻本・厚さ1.8cm
内容は、アニプリ考察とリピュア考察を加筆修正のうえ一挙収録。
部数は、100部予定。かなり出血上等価格。
心配された印刷の出具合も悪くないらしく、あとは
初見参となるコミケ66
(15日東館T01-b:猿元さんのブース)
(15日東館R53-b:『四薔薇会』様)
を待つのみである。
それまではせめて宣伝しよう。
あんよ氏の「ページの終わりまで」において考察本紹介のコンテンツと、天野の「夜想曲」のトップには表紙絵が載せられた。
これが思いのほか大反響で、考察に限らず、絵のほうまで数多くの紹介をいただいている。
(考察そのものへのリンクはあんよさんのところで紹介)
好き好き大好きっさん(7/25)
赤の7号さん(7/23)
BRAINSTORMさん(7/27)
エロチック街道さん(7/27)
Sister Freedomさん(7/21-23)
Silver Zeppelinさん
Happy Birthdayさん(7/21)
Mug-G'sさん(7/20)
仮藻録さん(7/25)
CG定点観測さん(7/21)
FiRSTRoN/FiNALIoNさん
そして考察の御本家とサンフェイスさん(7/24)
かなりの大御所による紹介があるせいか、この時期は連日1000ヒットとか2000ヒットを越えていた。(通常は150〜300)
正直なところブームも下火かと思っていたが、シスプリおそるべしである。
13. 約束の島へ
一応の完成を見た後、おちついて自分の絵をみてみる。
先述したが、やはり可憐に違和感を覚えた。
他、おもうところもあったので、あんよさんにメールを出してみる。
こんばんは、あんよさん。天野です。
ふと思ったのですが、アニプリにおける可憐たちは、誰もが一心に兄だけをしたっていますが、兄はそれに対してひとりしかおらず、(彼は一生懸命ですがそれでも)全力を13分割せざるをえないと思います。
いや、もちろん彼は全員を愛せるようになっており、妹たちもそれはわかっているのでしょうけれど、もし、兄一人妹一人だったら、と彼女たちは考えたことがないでしょうか。
すくなくとも妄想のなかの可憐はそのへんかなりたくましそうです。
もし二人きりだったら、兄の愛情を独り占めできる。
そんな風に考えたことがあるとして、しかし実際にはそれぞれの位置関係があり、兄の愛情を独占することはできない。それどころか13分割されてしまう。
このとき、可憐たちの中には、けっして満たされない愛情の欠乏感があったと思います。
兄が自分を愛していることも、自分が兄を愛していることも、それ自体は変わらないのに、他とくらべてみたときに、まるで本来自分に注がれるべき愛情が分散しているような、そんな、やや理不尽な欠乏感。
考察本の表紙に描いた可憐が、妙に甘えっ子にみえたのですが、これは兄と妹のふたりだけしかいない世界での、満たされた可憐のような気がしました。
これに比べてアニプリの妹たちは、なんとなく先述のような欠乏感をいだいているような、そんな気がします。
ですが、その欠乏感をうめるのは、やはり兄の愛です。
それは妹たちが、他の妹たちを思いやり愛することで、彼女が兄から愛された事実を共有できるということなのでしょう。
妹たちがひとつになって兄を愛するとき、そしてそのためにお互いをおもいやるとき、具体的に兄に接して愛された妹から、その気遣いを感謝されるとき、身をひいた妹は、感謝する彼女を通じて流れる兄の愛を感じられるのではないでしょうか。これでこそ、彼女たちは満たされるのだとふと思いました。
そして、お返事をいただいた。
ども、お世話になってますあんよです。
「兄一人妹一人だったら」という想像は、可憐の第3話での
「可憐、きょうだいもできちゃった、って」
という台詞から、うかがい知ることができます。
そして、共同生活の原則を再構成した後にも、
「けっして満たされない愛情の欠乏感」はおそらくあったはずです。
それは、第10話での衛の
「この夏が、いつまでも続けばいいのにな…」
という台詞に端的に示されています。
で、ですね。
「その欠乏感をうめるのは、やはり兄の愛」であり、
「そのためにお互いをおもいやるとき」や
「具体的に兄に接して愛された妹から、その気遣いを感謝されるとき」に、妹たちは満たされる。そのことに間違いはありません。
ただし、アニプリの場合、それにくわえて、兄不在のときにもお互いを支え合えるという、第25話でのその経験がきわめて重要な意義をもっています。
(例えば亞里亞の「亞里亞も、兄や好きー」という言葉と春歌への振る舞い。)
これこそ、共同生活というアニプリ独自の設定から帰結した、兄愛を分かち合う者同士の、美しい関係です。
つまり、欠乏感さえも分かち合うことができるという絆のあり方こそが、アニプリでのみ描かれ得た妹同士の関係なのではないか、
そしてその苦しみを共に越えたという意識が、兄妹の絆をいっそう強く結ばせたのではないか、
というのが、ぼくの解釈です。
この最終話までの展開は非常に美しいので、ご覧いただければと思います。
こないだは、千影の素麺すくえない場面もお見せできなかったので(不覚っ)、またの機会があれば、ぜひぜひ。
そうなのだと思う。
この絵を描くことで、アニプリを知ることができた。
そこで気がついたのは、兄の心情を得たことだけではない。
誰もが感じうる愛情の欠乏感を越えていった姿が、アニプリでは描かれていた。そしてそれを教えられたのである。
この絵に描かれているものは、その日々が残してきた思い出なのだ。
かつてともに暮らしていた愛すべき妹たちの思い出。
兄ならざるものには奇異にしか映らなかったその記憶を、もう一度、この本で解き明かそう。
本書を読み、もう一度アニプリを鑑賞したあと、あなたはその地平に立つことができるはずだ。
深い愛情と感謝に満ちた、真に美しい、シスタープリンセスの世界に。
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