2007.01.01 -A part -「東京出張・1」D-DAYマイナス28 2006年09月16日ごろの話


2006年9月16日。仕事の関係で東京に出張した。
翌日は休みをもらっていたので、そのまま遊んでいくことに決定。
関東に住んでいる友人知人に連絡を取り、一泊二日の短い時間に都合のついた方としばし遊ばせてもらった。(何人かお応えいただいたのに、お会いできなくてすみませんでした)

現地での仕事が終わり、自由になった20時、新宿でひさびさの文月さんに会う。
座は、コミティア77で販売された「私立ヘッドホン学園」の御苦労様会の第二次である。私はコミティアに行けず、結局できた本も手に入らなかったので、原稿を寄せた者としてはとてもうれしい。原稿料としておごってもらえたのも、なにかと物要りな新婚家庭には助かった。

さて、この御苦労様会には、再会がうれしい文月さんのほか、はじめて会う方が二名いらした。

ひとりは遅参予定のすなふさん。「H.P.holic」や「私立ヘッドホン学園」の企画発起人だ。

もうひとりが、待ち合わせの場所にいた、
白を基調としたひらひら服(白ロリ?)の女性・ナミさんである。いろいろ台無し気味なそのフルネーム「牛丼ナミ」

名前はともかく、すごく絵の上手い人だ。イラストしか描けない絵描きとしては、とにかく漫画が描けるという能力に尊敬の念を憶える。

たとえ、そのナミさんが、居酒屋のボックス席に入って落ち着いた途端に


ムーンプリズムパワーメーイクアーップ!


と、おそらくは心の中で叫びながら、やはり心の中でくるくる回り、例によって心の中で透過光演出しながら、
いそいそとゴスロリオプションを装着しはじめるような人物であっても。


「あ、あの、なにやってらっしゃるので・・・?」

と声もかけられないでいると、目の前で、
不完全ゴスロリのナミさんが完全ゴスロリへと変身を遂げていた。
正確には
「飯が喰いにくい」というロマンも何もない理由で、ヘッドドレスのみ未装着だが、白のひらひら服に黒のトリミングベストとかのパーツがついて急にシックな感じになっている。


「これで、
すなふさんにいやがらせします」

「いや、あの、
それの何がいやがらせになるのかサッパリわかりませんのですが・・・」

「すなふさんは、わたしが普段こんな格好をぜったいにしないと思っているんですよ。その意表をつくのです。意表をついて困らせるのです。困っている顔をみて笑うのです。ふふふ」

「はあ」


大学生とかが大きな声で品なく笑い転げている居酒屋の席で、そこだけ別レイヤーで合成されたような
見事なゴスロリ人物が、もりもりとイカ焼きを食べるとゆー、シュールな光景は40分ほど続いた。

「さっきの上から黒いのを着てるとこ、こころのなかでロボットの合体音(ガキーン! とか)をアテレコしてた」と文月さん。

「えー、本人としてはセラムンだったのにー」

「いや、普通に『なにがはじまったのか』と思ってました」

などと会話するうち、すなふさん登場。吹き出したいのを我慢しておすまししているナミさんを一目見た反応は

「・・・・ああ」

だった。

「反応うすいッ!!!!!」 ものすごく怒るナミさん。

「ぁあ? あぁ、徹夜明けなんで、あぁ」

むしろその姿で待っている間のダメージの方が大きかったのではないかと思えるナミさんががっくりしていた。お疲れのため半死人状態のすなふさんを迎え、わりとグダグダとお話しする。たのしい。


「セーラームーンといえば、いまだに実写版の衝撃がのこってます」

「あの、
ルナがぬいぐるみだったやつね」

「モグタン以下だな」

「やっぱりCGでやるべきだったのでしょうか」

「いや、そんなありきたりの手段では意味がない。ここはひとつ・・・」

「ひとつ?」

クレイアニメで!」

「あの粘土をコマ撮りしてアニメにするやつか」

「・・・人は?」

「この際だから、人も!」

「死ぬわ」「人間クレイアニメ」「なんて非人道的な・・・」

「昔、とりみきが『キネコミカ』でやってた」

「クレイアニメって1秒つくるのに何時間もかかるんでしょう?」

「出演者が数秒ごとにやつれては回復して・・・の繰り返し」

「1話が終わる頃に、出演者の役者人生も完結していそうだな」


「ところで、天野さんの最近の日記すごいね」

「あれ読んでる人、
けっこう大変な思いしてるとおもうよ」

「うん、わかって書いてる」

「うわあ、
確信犯だったのか」

『のろけ』って、あれ攻撃の一種だよね」

「そこまでわかってて・・・」

「みんなが
物凄い量の砂を吐いてるのはわかってる! でも書かないでいると、いろいろ溜まってたまらないんだもん!」

「いや、だもんじゃねえって」




すなふさんの次の企画の相談などききながら、いろいろおごっていただいた。
10時頃にいったんお開きとなる。お別れに名残を惜しんで、私は次に池袋に向かった。

「リリカルなのは」関係で最近しりあったますべさんと会うためである。
こちらとのメインは、
カラオケだ。




そう、最近ずっとカラオケに行っていない。歌っても、すぐにのどがダメになってしまうのと、一緒に行く友人がいないからなのだが、それだけに今日はうれしい。あとカラオケを通して、けっこう
その人の趣味とか通過した文化とかがわかるのも貴重だ。

「ええと、じゃあとりあえずガンダムなど・・・」

と、天野が曲を選び、歌う。

「では」

と、拍手のあとでますべさんが歌ったのは替え歌だった。





「ああメイドさん」
 
「ああ電子戦隊デンジマン(「電子戦隊デンジマン」) 」より


参考:http://www.youtube.com/watch?v=saMKDCHfgyo



誰かが助けを求めてる
どこかで誰かが叫んでる
急げ メイドさん きっと御主人だ
頭にきらめくヘッドドレス

*
ひるがえる黒のスカート萌えー 萌えー
フワフワの白のエプロン萌えー あー
主人の命令守るため
銀のトレイで紅茶を運ぶ
メイド メイド メイド オー メイドさん


誰かが救いを求めてる
どこかで誰かが泣いている
走れ メイドさん きっと坊っちゃんだ
当然ワンピは黒か紺

三つ編みのドジっ子メイド萌えー 萌えー
眼鏡ありキツキツメイド萌えー あー
主人の命令守るため
今日もホウキで庭掃除
メイド メイド メイド オー メイドさん

(*繰り返し)







「・・・・」

「・・・・」

「では、天野は、銀河鉄道999を・・・」

歌唱・拍手。

「では私は・・・」



「光学戦隊メガネンジャー」
 
「電磁戦隊メガレンジャー(「電磁戦隊メガレンジャー」) 」

参考:http://www.youtube.com/watch?v=OxPKGeK4vfw


ギャルゲーしようぜ
Kanon東鳩こみパにときメモ
時間なんて気にしない
気分は最高!
だけどびっくり
眼鏡っ娘がどんどん減っていく
何だかでっかい悪さの予感
飛び出そうぜ 駆け出そうぜ 今すぐ

行くぜメガネ! 変わるぜメガネ!
コンタクトはおさらばさ
見ろよメガネ! 決めるぜメガネ!
体が勝手にメガネをかける
100万倍の視力だぜ
俺達メガネ!メガネ!メガネ!
光学戦隊メガネンジャー


メガネの彼女が
まさかできちゃうなんてウソみたい
いかしてるそのメガネ
気分は最高!
だけどドッキリ
ホントの恋愛は命がけ
メガネと私のどっちが好きなの
答えてよ はっきりと 今すぐ

無理だメガネ! 言えないメガネ!
ホントのことはとても
見ろよメガネ! 決めるぜメガネ!
メガネをかけたおまえが好きさ
100万倍のハイテンション
俺達メガネ!メガネ!メガネ!
光学戦隊メガネンジャー






「サイボーグ009を・・・」

「では」




「コスプレりっしんべん」
 
 「青春りっしんべん(BAKUFU-SLUMP) 」


おいでよコス広場に
おいでよコス広場に
おいでよコス広場に
おいでよコス広場に

マイナーイベントだぜ レイヤー少ないんだ
緊張しなくていいぜ 撮るまで帰さないぜ
(これが青春 僕の青春)
ストロボつけるからさ ポーズでもつけてよ
そこに座るといいよ 女の子座りで
デジタルカメラだから ちょっと待っててね
その仕草色っぽいね ねぇ ねぇ

(今だ!)

後ろに回り込んで
めがねをかけちまえ
きっぱり拒絶されても
何度でも頼み込め
視線が冷たいのは
喜んでる証拠さ
突然泣きだしたら
ひたすら謝れ


ごめんね涙ふいて 化粧が台無しだよ
「訴える」なんて言わないで もう何もしないから
(これが青春 僕の青春)
新しいコス衣装が あるんだ君の好きな
正統派メイド服だぜ 試しに着てみないか
生地は別珍だから 手触りがいいでしょ
その衣装よく似合うね ねぇ ねぇ

(今だ!)

後ろに回り込んで
背面撮っちまえ
中身に失礼だけど
気にしたら負けだから
視線が冷たいのは
喜んでる証拠さ
いきなりたたかれたら
ひたすら謝れ


(されど!)
くるりと一回転
動画で撮っちまえ
バレたら退場だけど
撮ったモン勝ちだから
視線が冷たいのは
喜んでる証拠さ
本気で泣きだしたら
ひざまずけすがりつけ






「ガ、ガーネットなど・・・」

「では」



「秋葉原」
  
「秋桜(さだまさし)」

参考:http://www.youtube.com/watch?v=hslKwT7yzIo


肌色のポスターが秋葉原
何気ないビルの中貼られてる
この頃ショタに目覚めかけた友が
店先でデモを見つめてる
エロゲーの情報誌開いては
マブラヴの続編は出るのかと
何度も同じ話繰り返す
独り言だけれど大きな声で
こんな週の終わりの発売日には
貴方に似た人が溢れてる
もしも買ったゲームが地雷としても
笑い話に時が変えるよ心配いらないと笑った


発売の思い出をたどったら
いつの日も一本ではなかったと
特典求めショップめぐる友に
心底あきれています
部屋の中積み上げた箱崩し
しばらくは楽しげにいたけれど
突然涙こぼし地雷だと
何度も何度も繰り返す友
人柱の言葉をかみしめながら
回避してみます私だけは
こんな月の終わりのラッシュの日には
もう少しあなたと他人でいさせて下さい






「すみませんでしたあ! ほんとすみませんでした!!」

しみじみと歌うますべさんに、
こころから屈服した。その後、カラオケで5時くらいまで粘ったあげくに、彼のアパートにあがらせてもらって、休ませていただく。ホテル代とかも助かったので、本当にありがたい。
でも私は思う。強く思う。
「自分がいかにディープでダメか」を、深海魚のように深度で競うオタの末席にあって、失礼なことを、感動しながら思う。


下には下がいる、と。
こんな酸素極小地帯みたいな深度で、ものすげえ元気良く歌う人がいるのだと。


部屋に直立している、
どこかのゲームでみかけた憶えのある女子校の制服を着た等身大ドールに見下ろされながら、そう思った。



翌朝。
さすがに5時間以上をサシで歌い倒したあとに、30代も後半の体力では三時間で起床するのは不可能だった。大幅に遅れながら、あわてて出立の準備をする。


「すみません、天野さん」

「いえ、こちらこそ。キモチヨク寝てました!」

「送っていきますよ! 忘れ物ないですか!?」

「食パン! 
遅刻したからには食パンくわえて走らなきゃ!


そのままの勢いで、池袋駅で待ち合わせしてたサンフェイスさんに体当たりする予定である。











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でも、どうも上手く遅れないことがあるようなので、不安なかたは
air@niu.ne.jp こちらもどうぞ。



2007.01.01 -B part -「東京出張・2」D-DAYマイナス27 2006年09月17日ごろの話


サンフェイスさんと会うのも久しぶりだ。
お元気そうでなによりである。

とりあえず昼食をとって、近況の報告などする。

「先日、結婚式のうちあわせでカメラマンのマンデリンさんってひとに部屋に上がってもらったんですがその準備してて愕然としたんですよ
気がつくとうちの部屋の全てのものが二人用しかないんですカップも二人用座布団も二人分ソファも二人掛けで机も二人がやっとのミニテーブルってかんじでもうありとあらゆるものが二人分しかないんですよ一ヶ月以上ここに二人以外の人間が存在する可能性なんてまったく想定してなかったんですいやまいりましたようわはははは

人肌よりちょっとあたたかいくらいのお餅をべったんべったん投げつけられてるような、そんな感触だったのではないかと思うが、サンフェイスさんはニコニコしながら聞いてくれた。


「天野さん」

「はい?」

「眼差しが、やさしくなりましたね」

「・・・うん。ありがとう」


この人にいわれると、本当にうれしい。

食事が終わってからだったろうか。メールでお願いしていた写真をもらった。
サンフェイスさんが、御自身のサイトにアップしたり、個人的に撮影してきた写真のうち、何枚かを選ばせてもらって、焼いていただいたのだ。ご祝儀、ということで結構むりやりに。

新居の真っ白な壁に、いろんな写真を飾るのが夢だった。
ちいさな写真入れに家族の写真を入れたり、思い出の風景を撮って飾ったり、そして友人からもらった写真を飾ったり・・・。

それらをみて、いろんな心情を、思い出す。
感動や、切なさや、寂しさや、よろこびや、ちいさな頃を。

そんな装置としての写真を、ふたりの部屋に飾りたかった。



あちこち歩いて、スタバにはいる。話すことと言ったら、ここでもゆきこさんのことばかりになってしまう。


「そういえば、この間、ゆきこさんに『アニメ版シスタープリンセス考察大全』を読んでもらったんですが」

「もう、そんなところまで学習が・・・」

「いや、
とりあえず同人誌というものを理解してもらおうとおもって。これからも挿絵とか描かせてもらうかもしれないから」

「あまり一般的な同人誌ではありませんけどね」

「で、これを見てもらってる間が
すごく大変で」

「ほう」

「なんというか、無邪気に『へえー、これが』とかいうのを、
凄まじい苦しみとともに聞くんですよ。具体的には『ぬううぐおおぉぉぉおおう・・・』と胸をかきむしってうなるくらい。ゆきこさんが聞くんですよ『どうしたんですか』『いや、なんでもない読んでくれ』衛のスクール水着絵『ぬがあああぁぁぁあぁあぁ』『あの』『いいから読んで!』ウエストを測る花穂『ぐはッ、はおぉぉぉおおおおおおぅぅぅううう・・・』という感じで」

なにが起こっているのかよくわからないんですが・・・。奥さんに理解してもらえていいじゃないですか」

「いや、これが
逆に痛くて痛くて・・・。こう自分の全てをさらした上で、まぶしすぎるゆきこさんの霊波光線に照身されて自分の外道さ・醜さが浮き彫りになるような、こう。『この子(雛子)かわいー』とか無邪気に言われると、その邪気のない分がまるまる破壊力になってこちらを打ちのめすわけですよ」

俗に言う自業自得である。


時間が迫ってきた。席を立つ用意をしていると、最後に、おくりものをいただいた。
お二人の門出を祝して、と渡されたのは


しんまるこ駅のキーホルダーだった。


意味が分かっていたら、ちょっと持っていられない類のアイテムである。(幸いにして元ネタのコンテンツは再構築中・・・)(知ってる人のみの限定ネタってことで御了承ください)

それにしても、
これをみてアレを考えつくのは、どういう回路なのかと思ったが、本人は

「反射です」

と、理科の教科書でも読むように言った。

「そしてこれは、日頃の鍛錬がモノを言うのです」

と自信ありげに語る。彼は、駅へ向かう道すがら「寿司まみれ」という池袋の寿司屋の看板をみながら「あれだって、
もう SU-JI-MA-MI-RE にしか見えませんカラ」とにこやかにお話くださった。




そして、秋葉原で、vmaxさんと会う。
よく掲示板などに書き込んでくださったり、イラストや日記への感想をおくってくださった方で、ぜひお会いしてみたかったのだ。

彼との、いちばんの接点はAIRだった。
たくさんの人死にを見てきた彼には、AIRはつらかったという。

絵の感想もそうだが、ゆきこさんのことを書いた日記へも、返信やメールで感想をたくさんいただいている。あのコメントし辛いであろうのろけ日記に。vmaxさんには、こころから感謝したい。

駅出口ちかくのスターバックスで、別ビルのモニターにたまに流れる京アニKanonの予告CMを見ながら、病気の話や絵の話をする。私が書いてはいけないような話をいろいろと聞けた。自粛しておこう。そしてここでも、しつこくゆきこさんの話をした。


「今日は、いつくらいまで東京にいるんですか?」

「ゆきこさんが寂しがっているから、早めに帰りますよ」

「・・・出ましょうか」

「・・・すみません」


駅への帰り道、むかしは本当に電気部品の街だったころを知っている彼は、現在の
メイドもどきがウロウロしているこの街の変貌を不思議そうに見つめていた。

ここ何年かの変化はすごいのだろう。でも、私には、実はそれほどの感慨はなかった。
vmaxさんと別れた後、ちょっとだけ時間があったので、ためにしラジオ会館を一周してみる。


いまの自分は、アイテムやグッズを集める刺激を必要としなくなっている。
もともとなかったかもしれない。でも、心情的にグッズを求めるベクトルがないのだ。

綺麗なモノや、可愛いモノを手に入れたいと思うのは、そこに情を注ぎたいからだと思う。
物語を喜んだり、ドラマにひかれるとき、人間はまちがいなく
情的なエネルギーをそこに注いでいるのだと思う。こころを水に例えれば、水はやはり流れてこそである。動かずにいれば、その水は腐るのだ。だから、情を注げるものを人はもとめる。それは歌であったり、絵であったり、物語であったり、食であったり、「萌え」であったりするのだろう。

わたしは、
その情の注ぎ先が、いま、ゆきこさんしかないのだ。ゆきこさんに投入していたいのだ。
だから、何を見ても、ゆきこさんとともに考えてしまう。彼女に情が流れるので、しかもこれが
完全投入なので、これらグッズやフィギュアに愛情を流している水量的余裕がないのだ。

さしたる感慨もなく、駅前でメイドさんをパチパチ記念に撮影して、秋葉原を発った。




ところで、
かえりの新幹線は、ライナーガオーだった。
この500系新幹線は、居住スペースの問題などから、次期新幹線の稼動につれて徐々に幹線から消えていく。でもわたしは、この
宇宙機みたいなデザインがすごく好きだった。無くなるなんて、本当に残念だ。これほど走っている姿にロマンを感じる車両は無いと思う。

恵まれなくていままで乗る機会がなかった。しばらく新幹線を使うこともないだろう。
最後に乗れてよかった。


帰ってから、秋葉原の街でちょっとだけ撮影したメイドさんの写真をゆきこさんに見せる。

「ふーん」

なにか感心をもったかのような目だった。










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2007.01.02 -A part -「メイドさま」D-DAYマイナス25 2006年09月19日ごろの話


軽く一大事。




ゆきこさんに「ご主人様」と呼んでもらうことに成功。




でも、多分に
同情とかこもった微妙な温度だった。半笑いだし。
でも、あったかくはある。

明日はわたしが執事になろう。
王女に侍るように、彼女につくそう。

相手を敬って、お互いに奉仕しあう関係。とても素敵だ。



ところで、本来的な英国メイドの本分は、
そこにメイドがいることすら気に留めさせないほどのさりげなさで、主人に何不自由ない暮らしをしてもらうところにあるのだと思う。玄関から主人が帰ってきたときも、ただ廊下を歩いているだけで、そのまわりを世話するものがお召し替えをほどこし、外出時の正装から寝間着にまで着替えられてしまうような、そんな技術をもって奉仕する文化だと思う。(「カリオストロの城」で、そんなシーンがありましたね)

だが、人としてメイドを見た場合、それは違うと思う。
厳然とした「格位」というものはあるだろう。だが、存在感を消すほどにへりくだるのは、奉仕と言えるだろうか。
ぽつんと残った主人の孤独は誰が癒す。

主人のために心地よい環境を準備し、そして去ってしまうのではなく、そこで
ともに生きる。
格位のある家族のような、そんな関係が「メイドを人として見る」ありかたではないだろうか。
そして「奉仕」の基本は、そういうものではないだろうか。

ほんのひととき、メイドと執事の「ごっこ」をしたなかで、
なんとなく、そう思った。









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2007.01.02 -B part -「悔恨」D-DAYマイナス24 2006年09月20日ごろの話



こんなことなら、新居に入るときにこれやっとけばよかったと、けっこう真剣に悔しかった。





ゆきこさんは、お姫様だっこできる体重だった。





いつでもためらいなくできることは証明された。

往来で彼女が足をくじく・・・という事故の到来を、密かに望むわたしの黒い部分がある。いまのところその邪心を駆逐することに、どうにか成功している。












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2007.01.02 -C part -「よみもの」D-DAYマイナス23 2006年09月21日ごろの話


ゆきこさんが、最近よく本を読んでいる。
もともとあまり読書家ではないのかもしれないが、なにせ新居にはいろいろ本があるのだ。

最近よみすすめているらしきものは、山本周五郎の「小説日本婦道記」と「髪かざり」と、あと




「エマ」




先日「御主人様」と声優声で呼んでくれたのは、
けっこう本気だったのか。(たぶん痛い夢だと思います)

エマ四巻よみおわって「うわあー、どうなっちゃうんだろう・・・」と独り言。そして五巻以降は未整理段ボールの中。こんど探してあげよう。









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2007.01.02 -D part -「司会者との打ち合わせ」D-DAYマイナス22 2006年09月22日ごろの話


結婚式の司会というのは、大切である。
さらに、その司会と新郎新婦との相性というのも、大切だ。

今回お願いしたのは、母の知り合いの岩田さんというひとで、すごく親身になってくれた。明るい人で、お互いに笑わせあうことで波長が合った。

うちあわせを兼ねて、岩田さんを会場に案内する。そこで、プランナーの安企子さんと全体の流れのまとめをした。この時点で、ほぼ進行は決まっているので、立ち位置や、タイムテーブルなど、細かな確認をしたのだが、ほぼ「シミュレーション」と言っていい計画の精度が実現していた。

日時と会場が決まって、招待状を出して、だいたいの規模が掴めてきて、やりたいことは出そろっている。
これらを、
どういう構成にすればスムーズに進み、そしてメリハリのある結婚式になるかがプランナーの腕の見せ所でもある。新郎新婦が、自分の考えだけでやりとおすのは無理だ。百戦錬磨の会場専属プランナーと、結婚式の司会歴がフタケタ越えてからは数えてない岩田さんに挿まれて、あれよあれよという間に、結婚式のディティールが決まっていく。このレンダリングの早さは、スタッフの経験値によるものだ。やはりこういう人を呼ばなくてはダメだと思った。


帰り道に、プロフィール紹介やインタビューのときのネタとして、岩田さんによるヒヤリングがあった。
学歴や職歴、趣味などを話す。ゆきこさんはいたって無趣味であること、わたしは多趣味ながら、あまり堂々と語れる趣味が無い(
メイドさんの絵を偏執狂的に描くこと・・・などな)こともあって、あまり個性的なプロフィールにはなりそうもなかったが、岩田さんはなんでもいいから聞き出そうという感じだった。


「花嫁さんに質問ね。新郎さんの好きなところは、どんなとこですか?」

「ええっと、やさしいところ、です」

「んー、そうだね。優しいって大事ですよねー」

「はい」

「じゃあ新郎さんに質問です。花嫁さんのいいところはどこですか?」

「花嫁のいいところはもうなんといっても御覧の通り世界美女コンテストで100連覇できそうなくらいのこの美しさがまず挙げられますいやわかってますええわたしだって客観的な目で自分の妻を実はみてますよ冷静に考えて100連覇できるかっていったらそりゃ無理だろうなっていう現実的な観点ももってますよええ99連覇くらいでストップするのもやむを得ないと思いますよひかえめにいってそれとゆきこさんは料理が上手で彼女の料理を食べてると美味しい美味しいと満腹になるほど食べられるのに栄養とかカロリーのバランスがとれてるから逆に身体が絞れてくるんですよ素晴らしいですね昔手作りでチョコつくってくれたんですがもうその美味さたるやアフリカ象も一撃というくらいの衝撃でしたそれとゆきこさんの声がすごく特に高音域が綺麗で実にホーリーなかんじの」

「あ、あのはい、だいたい分かりましたから、ええとじゃあ新婦さん新郎さんの」

「まだゆきこさんの声の話でしょ!!」

「ひぃっ」

「そのホーリーボイスたるや気の早い老人が聞いたらそのまま天国に直行しそうなくらいなのでうかつに歌えないんですよお風呂とかでもねうひひあと指ゆきこさんの指萌えですね本人はおおきいおおきいって気にしてますけどその実すっごいかわいい手なんですよもうあの第二関節とか実に萌えますが関節と言えば手首手首もまた特筆すべき萌え部位ですね具体的には」


一時間の道中で、インタビューは予定の四半分も進まなかったという。




ちなみに、司会を一般に依頼すると、おそらく52500円くらいがこのへんの相場だ。
岩田さんへの謝礼は、30000円。これプラス心付け(10000円)である。内容(はたらき)も素晴らしかったし、金銭的にも助かった。









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2007.01.03 -A part -「アニメの話」D-DAYマイナス21 2006年09月23日ごろの話


深夜にアニメがやっているという話題だったと思う。
ゴールデンタイムとちがって、深夜は放送権が安い。それを利用して、放映にかかる費用を抑え、制作費を充実させるためなんだよ、というような話をしていた時だったと思う。

ゆきこさんの口から

「『マリアさまがみてる』みてた」

とゆー発言がとびだしたのは。


東京で看護婦やってたとき、夜勤などで深夜生活者だったころに、ケーブルテレビで見ていたとかいう話だった。


「あと、
セーラームーン。ケーブルで」

「セーラームーン!?」

「スーパーズでした」

「スーパーズっていうとあの」

はるかさんとみちるさんが素敵だったアレです」

ほたるちゃんが可愛かったアレか!」

「・・・・」

「あ、あの、ええと、でもスーパーズともなると、あれだったね、戦闘とかはじまっても、まこちゃんや亜美ちゃんがすぐフェードアウトしちゃってねえ。あと、だんだんピアスとか装飾品が増えていって、あ、
あの優等生でまじめな亜美ちゃんまでが最終的にはピアスいくつもつけてたなあ・・・」

「そうですよねー」

「・・・ゆきこさん、なんでこの話題についてこられる・・・」

「深夜アニメは一時期ぼーっとしながらずーっとみてました。あのピアノひく話とか」

『ピアノ』か。藤島康介デザインの」

「うん、たぶんそう。ふじしまけいすけって聞いたことある」

「ぬう、どこで? アニメみてても、そうは目立たない情報だと思うけど」

「たしか、中学のころ読んでた小説の挿絵を描いてるひとだと思ってましたけど」

「む、テイルズ・・・か? それともサクラ大戦・・・?」

「あ、サクラ大戦もみてましたよー」

「あなた、ひょっとして私よりアニメくわしくないか!?」

(「ふじしまけいすけ」は、後に「ふじかわけいすけ(藤川桂介)」のまちがいと判明。読んでた小説は「宇宙皇子」でした。で、その場合の挿絵はいのまたむつみですな)(つか、うつのみこ読んでたのか、ゆきこさん・・・)

「ゆきこさん、けっこうアニメみてるなあ」

「だって、おもしろかったもん」

「な、
なんて頼もしい発言だ・・・」

「ところでセラムンのスーパーズは(天野さんは)ちゃんと見てなかったんだけど、どういう話なの?」

「ええと、セーラーサターンは、星を破壊するくらいの力をもっていて・・・」


意外にしっかりした説明が延々と続いた。
「ゆきこさんはアニメとかはとっくに卒業した普通の人」という認識について、
お、俺たちはとんでもない勘違いをしていたのかもしれない!  と、なんとなくキバヤシ顔でボンヤリおもった。

ちなみに
好きなセーラー戦士はセーラープルートだそうだ。

また、微妙にタイムリーな・・・。そういや、双子の妹でセーラーエリスとかいたりするのだろうか、と考えながら、いや、シャイナさんがゴールドセイントになるくらい微妙にありえない話だな、と考えなおしつつ、とりあえず出勤した朝の一幕だった。













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2007.01.03 -B part -「ふくきたる」D-DAYマイナス20 2006年09月24日ごろの話


引き出物を決めた。

内容品自体はだいぶ前に決まっていたが、参加者も完全に確定して、先日かなり細かい打ち合わせまで完了した。決めることは決めた。あとは電話で確認する程度のことばかりで、各種準備を整えながら当日を待つ日々となる。

ところで、その引き出物は、カタログをメインとした。5500円ほどの商品を5点セレクトしておいて、そのなかから気に入った物を出席者に選んでもらう。
これに、会場のパティシエが有名な人らしいので、お手製のケーキ(アップルパイとガトーショコラの決戦投票中)を加え、あと名披露目として鰹節を入れる。

で、この引き出物5点セレクトの場合、5点それぞれに注文用の記号をふらないといけないらしい。 (これは「なり多」と契約している引き出物販売会社のプランなので、一般にはいろいろあると思う)

5点それぞれに写真と説明のついたカードがつくられる。その下半分には、花嫁花婿からのメッセージが書ける。(商品にカレー皿を選んだ人のサンプルは、ほとんど予想通り「カレーなる食生活」だった。あああ。)で、このカードにそれぞれ記号を指定するのだ。

つまり「い・ろ・は・に・ほ」だったら、ある商品は「い」、ある商品は「ろ」というように個別のコードが着く。ここは必須だが内容は自由にということになっていて、過去の利用者は
「あ・り・が・と・う」とか「あ・い・し・て・る」とか、これだけ毎日幸せな日記かいてる私でさえ反吐がでるような(なにかとても非道いことを言っているような気がするな)ありきたりな文句が多い。ここでゆきこさんと悩んだ。


「『ありがとう』でいいんじゃないですか?」

「いやだー。感謝の言葉だったら『ありがとうございます』だろう。というか、あまりにもありきたりで適当な感じがして、コレ使うのは、
生まれついてのマイノリティ属性としては耐えられない」

「うーん、五文字で、結婚式にふさわしい言葉・・・ですかあ・・・」

「じゃあ
『ふ・く・き・た・る』! おめでたいし、うち呉服屋だから洒落っぽくていいし! どうだ!」

「うわあ、すごいですね。よく思いつきますねえ」

「ふふふ」

「じゃあ、つぎはそれぞれの商品につける言葉を。これ、やっぱり『ふ・く・き・た・る』を頭につけて決めるんでしょうか?」

「そんな
『笑点』のあいうえお作文みたいなの無理なんじゃ・・・。『ふ』たりで、『く』ろうを乗り越え、『き』ぼうの未来を、『た』くましく、『る』・・・『る』・・・『るー』。あれ、ルーベンカイザーってなんだっけ」

「しりません」

「やっぱ無理だ。『る』がない」

「じゃあ、ふたりの好きな言葉を書きましょう」

「それだ。うん、注文したあとのカタログカードを、
そのまま便所とかに貼れるような言葉を選ぼう!」

「あまり長い言葉は印刷できないですね。なにがいいかな・・・。拓美さんからどうぞ」

「じゃあ、



『正義より愛』! 意味は読んで字の如し!」

「せ・・・。じゃあわたしは『世の光りとなり、塩となれ』で。なくてはならない人になれって意味です」



『損な方をえらべ!』

「そ・・・。ええと、じゃあわたしは『温故知新』、と。すみません、ありきたりで。でも『損な方を選べ』ってすごいですね。目先の損得に捕らわれているようなちいさな人間になるな、とか、利益ばかり追いかけている余裕のないひとは本当の幸せを逃すぞ、とかそういう意味ですか」

「うん、誰もが嫌がる損な道は、みんなのためになる道であり、誰かが行かなきゃ行けない道なら、それを選んで行くやつになれ、ということだな。損な道とは、愛の道なのだ。あと、得する方ばっか選んでると、結局だいじなところを奪われたりするぞ、という意味。類義語に
『死なんとする者は生き、生きんとする者は死す』というのがある。うん、さて最後の5個目、どうしようか。・・・そうそう、いまの『損な方』の話、ゆきこさんも、すげえわかってるなあ」

「あはは」

「ふふふ。さすがだ。さすがだよ、ゆきこさん」

「えへへ」

「あぁ、ホントにいいお嫁さんをいただいたなあ」

「あはは。そうだ、最後のは
『笑う門には、福来たる』にしましょう」

「・・・」

「あれ、だめですか」

「座布団1枚! ていうかむしろ1096枚!」

「それ、座れませんから」



 挙式まで、あと三週間。








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2007.01.04 -A part -「乾杯」D-DAYマイナス16 2006年09月28日ごろの話


乾杯の音頭を親戚のなかでももっとも紳士である人物に依頼する。
89才でパソコン使いの伯父である。
以前にも書いたが、
自分の葬式用の写真をフォトショップでレタッチしているというあの恐るべき三菱の元エンジニアだ。

電話ではなく、メールでお願いした。ちなみに、両家の全出席予定者のうち、メールで話ができるのは、最年長のこの人だけだった。実に飛び抜けた人物である。以後も、たびたびメールのやりとりをしているが、文章もかっちりした美しい日本語を使われるし、しかもテキストの皮膚感覚が若い。89才。つくづく、おそろしい人だと思う。

そして、この伯父は、89才まで奥様とともに、いつまでもなかよく暮らしている。
いろいろ問題をかかえている親戚たちの中で、これは大きい。たとえ名士であっても、重要な役職であっても、大金持ちであっても、いかに権力があっても、
男女の問題で汚点をもっている人に、結婚式の乾杯はさせられない。

この方に乾杯をしてもらえるというだけでも、実に勇気づけられる。
この方がいてくれて、ほんとうによかった。


ちなみに乾杯用のワイン、12500円。
それ以外は、フリードリンクにしてもらって、3000円×人数である。











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2007.01.04 -B part -「テレビがない」D-DAYマイナス15 2006年09月29日ごろの話


我が家には、いまのところテレビはある。
でも、わたしもゆきこさんもテレビを見る習慣がない。
部屋が無音で、ひとりのときはつけたりもするが、基本的につけないし、つけてもゆきこさんの選択肢はたいていNHKだったりする。

勤務先のパートさんにこの話をしたら、すごく驚いていた。この人は韓流ドラマとかとにかくテレビが好きなのだ。


「ええー!? テレビみないの!?」

「はい」

「考えられない!」

「はあ」

「じゃあ、ふだん二人は何をみてるわけ!?」




「・・・おもに、お互いを」




パートさんの時間が、1秒近くとまっていた。










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2007.01.04 -C part -「着物」D-DAYマイナス14 2006年09月30日ごろの話


結婚式の会場は築160年の文化財である。
床、壁、窓ガラスなど、おそろしく味のある会場だ。

この会場は、和洋どちらでもあるていど対応できる内装にしてあるわけだが、それでもやはり、
ここで映えるのは着物である。

幸いにして、実家が着物屋であることもあり、出席者の二割くらいだが(それでも多いほうかと思う)着物で来てくださるようだ。

着物というのは、習慣化された洋服の気安さから比べれば、日常で着ることが難しいかもしれない。
でもそれだけに、こういう
「着物を着ていってこそ様になる」会場でこそ出番となる。

だが、着物にとって、着ていけるイベントというのは貴重だ。
国民服でありながらマイノリティになってしまった着物は、しかし日本の文化である。

文化が滅びれば、国は滅ぶ。
和装建築、日本料理、日本語、そして着物。
着物は、厳密には呉の時代に渡来した服で、大和服とはまた違うのだが、すでにこの国の文化だ。


この国を建て直すために。
そういう意識で式に臨むとき、この会場で、着物を着たたくさんのひとと披露宴ができることを、とても誇らしく思う。










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2007.01.05 -A part -「おかね」D-DAYマイナス13 2006年10月01日ごろの話


六億円あったら。

この時期にたしか宝くじ系のニュースでそんな数字を聞いたので、ちょっと考えた。

六億円あったら、むかしは多分、道楽でできる書店を作ろうとか考えていただろう。
二億くらいあれば、そしてその資金が借金でなければ、かなり大型な書店ができる。

でもいまは、学校を作りたい。
私立の学校を、丁寧に教師を集めて、つくりたい。


軍備としてのミサイル一発に一億円もかけるくらいなら、
その金で優秀な外交官を育てたほうが国防にはいいという話があった。そういう方向の話だ。


学校を作りたい。
でも、それ以前に、自分の家庭の一部を、学校にしなければならないと思う。

六億でできるのと同じくらいの価値の教育を、まず自分の家庭で。
たとえお金があったとしても、学校を作るなら、第一歩はまずそこからだ。

家庭も成せないで、学校はつくれない。








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2007.01.05 -B part -「風水」D-DAYマイナス12 2006年10月02日ごろの話


突然に気がついたのだが、うちの部屋は
鬼門の方角に風呂と台所、つまり水回りがあって、しかもそれが寝室をとおって抜けている。
よくは分からないが、おそらく
かなり風水的には悪いに違いない。

せっかくなので、対処してみようと思う。
今度、風水の本でも読むか、くわしい知人に聞いてみよう。

とりあえず、鬼が来るといわれる方角「鬼門」には、
鬼より強いもの、恐ろしい物を置くか貼るかして侵入を阻んではどうかと考えた。


いま、
敵に回せば最大級の恐怖の対象であり、まちがいなく鬼以上の強さをもち、ときに悪魔とか呼ばれる最強の存在といえば、











このへんだろうか。

なぜかうちには、リバーシブルで等身大のポスターがある。
あと必要なのは、
ソレを貼る勇気と、ゆきこさんを説得する論旨の整理だけだ。










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2007.01.05 -C part -「装花」D-DAYマイナス11 2006年10月03日ごろの話


値段の相場というものを考えて、花を選ぶ。

金銭的にも自然の摂理を考えても、素直に季節の花を使おうと思った。変なこだわりは無いに限る。花の世界では、
冬場にヒマワリ用意するのに10万かかったとかそんな話もあったりするらしいが、日本人なら季節感を大切にしたい。そんな旨をつたえて「なり多」と契約している花屋さんと打ち合わせをする。

先述したが、このときに貸衣装できまった打掛やドレスなどの写真をもっていくこと。
服のイメージを真ん中において、花を決めてもらうからだ。
そうして選んでもらったウェディングフラワー(結婚装花)の内容はこんな感じ。


メインテーブルの装花:36750円

メインテーブルの後方装花:5250円

ゲストテーブルの装花:4200円×10で、42000円

ウェディングケーキの装花(ナイフ装花つき):5250円

御両親贈答用(ブートニア付き):5250円

受付用装花:3150円

マイク用装花:1575円×2で、3150円

吹き抜け用装花:10500円

階段上装花:7350円

お部屋装花(道路側)(壁に枝ものをあしらってもらった):10500円

お部屋装花(中庭側)(同上。こちらは部屋が狭い):5250円

ヘアーオーナメント:3150円


しめて、花代128500円。

和装用の、ボール型のブーケがラインナップにあったが、常にワインか、裾をもってるためほとんど持っていられないのと、それ単体で31500円もしたので、これはカットした。
ブーケを持たない花嫁である。でもゆきこさんにはまるでこだわりがない。洋装の方のブーケは、ドレスに合わせたブルーの造花で貸衣装についてくるのでこれで十分とのことだった。

ところで結婚式において、もはや「花束贈呈」は鉄板で必要なイベントである。
内容はさておき、これがあるだけで、ガヤガヤしているだけの式が、ひきしまる。
とくにうちの酔っぱらい連中は、わかりやすいイベントでないと酒ばかりなのだ。









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2007.01.06 -A part -「髪」D-DAYマイナス11 2006年10月03日ごろの話


ゆきこさんの髪は、黒い。

本人としては、プリン頭になるのがいやだし、面倒だから染めないそうだ。
結婚式もごく和風なのでこれでよく、普通にこのまま行こうと考えていた。むしろカラーの入った髪を染め直さなくていいので、気楽だと思っていた。

ちなみに彼女自身は色素の薄い人間で、目とかも光りの加減によっては鳶色にみえる。髪のほうもやや色素が薄いのだが、それでも脱色の類はしていないので、基本的に黒である。


ところが、美容院がもってきたかつらを見て驚く。
角隠しの下にセットする日本髪のかつらにしてからが、
茶色いのだ。

抗菌スタンドにのせられたかつらを見て、ゆきこさんと二人、しばし言葉をなくす。


美容院が言うには、結婚期の女性の実に多くが髪を軽い色に変えており、
本来のナチュラルな黒髪でのぞむ人というのはごく少数らしく、いま真っ黒のかつらや着け毛というのはほとんど利用されないとのこと。

黒髪自体が重くみえるため、どんなにハサミを入れても、やはり軽くはならず、ナチュラルメイクにやや色の軽い日本髪のかつらをあわせる・・・というのが、いまの一般的な和装結婚式らしい。

というわけで、ゆきこさんは結婚式の直前に、髪を染めに行くことになった。白粉(おしろい)と口に紅と艶やかな黒髪というコントラストの強い組み合わせは、ゆきこさんにはなるほど似合わないかもしれない。

実際にちょっと「茶色いかつら」を合わせてもらったところ、いい感じだった。「日本的に」という志からはちょいと残念だが、これでよいと思う。

ただ、「こういうものだ」と思っていたものが、実際には社会的経済的に存在しなくなっていく・・・という流れを感じた。

外見は変わっていくだろう。でも、芯だけは、つよく、変わらず、持っていきたい。












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2007.01.06 -B part -「ケーキ」D-DAYマイナス9 2006年10月05日ごろの話


引き出物のひとつとして「ケーキ」を選んであるのだが、どのケーキにするかが、なかなか決まらなかった。言ってしまえばどれも美味そうなのだ。

「なり多」の複数の従業員から意見をきき、アップルパイとガトーショコラの決戦となった。なにせ山形まで帰るひとがいるし、皆お年寄りなので家庭内での完食は不可能だろう。あちこちに配ったり、客を呼んで振る舞うことになる。となれば
日持ちのするのが条件で、火の通った菓子で、生の材料がつかわれているものは不可となる。
なかなか「なり多」に試食に行けないで居ると、あるとき突然




「なり多」の支配人が直接持ってきた。

 うちのアパートに。




おそるべきフットワークの軽さである。車で一時間弱かかる道のりを、これだけのために。
しかも、たしかに時間が惜しかったが、それでもこちらから行くことはできたのに。

だが、正直いって、この時期にこの案件がクリアできたことは、すごく有り難かった。
そして、支配人みずからが運んできてくれたことが、感動だった。

その上、すげえ美味かった。
あまりに美味くて、16等分したケーキすら、途中で「こ、これ以上の美味はもったいなさすぎて一日で食べられない・・・」とさらに半分(32分の1)を残したくらいだった。

支配人は、名古屋にある、かの「よしかわ」に居た人らしい。「歩く100億円」のあの社長さんのところにだ。(宝石よりも話術と人生観の方が注目すべきだと思うが)


こんな大したことない二人に、ここまで尽くしてくれる凄さ。ここにも、奉仕の精神が形となって現れている。










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2007.01.06 -C part -「突然に」D-DAYマイナス8 2006年10月06日ごろの話


2006年10月06日11時22分の超リアルタイム実況生(当時)更新

いま
































産婦人科



友人A「ちょ・・・もしかして?(@@ 」

友人B「ΩΩΩ<ry 」

友人C「ちょ…!? 」

友人D「結果報告はしっかり頼みますことよ」

友人E「ま、マヂ? 」



13:00 来院してから一時間ほど経過。
11時30分を予約して来たのだがずいぶん待つ。

マタニティ関係の雑誌を読んで時間をすごす。
みんな赤ちゃんにすごい名前付けてるなあ。どういう子に成ってほしいかぜんぜんわからない名前が多い。


帰ってからの話だが、先の友人に教えてもらったサイトを見てみた。

子供の名付け(命名)DQN度ランキング

子供の名前は、その子が持っている運勢や宿命の潮流から自然につけられることがあるというが・・・。
いや、なんかもう
気の毒でいたたまれなくなるサイトなので、想像力のある人は行かないことお薦め。



さて、待ち時間が長く退屈である。
ゆきこさんのファッションは白いシャツに黒のカーディガン、白黒スカイグレーの、え? なに? 診察?

友人F「ゆっこさんのファッションチェックじゃなくて!w 」

友人G「おめでたかな? かなかな? 」











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2007.01.08 -A part -「変化」D-DAYマイナス8 2006年10月06日ごろの話


兆候はあったのだ。

身体つきの変化や、よく聞く妊娠の兆候があちこちに現れていたり、ひたすらだるくて、眠かったり。

無類のコーヒー好きだったゆきこさんが、そのコーヒーを
まったく受け付けなくなったとき、妊娠検査薬の使用を推してみた。最後の最後まで自分に満足な生殖能力があることに確信をもててない様子で、非常に懐疑的だったが、


検査薬には、見事なアタリのラインが出ていた。



「ま、ま、ままままだわからないから」というゆきこさんの往生際の悪いラップを無視して、部屋の大窓を思い切り開けて吠えたかった。雄叫びというのは、こういうときにもしたくなるらしい。
妊娠しているかどうかハッキリしないという状況は、楽に軌道速度が出せそうなロケットを水平にして点火し、その弾頭を素手で押さえこみ続けるような、そんな爆発的なエネルギーとのせめぎ合いであった。

本人は「ぬか喜びではないか」と怖れている。
でも、そこに赤ちゃんがいるなら、すぐに見つけてあげたいし、うんと優しくしてあげたい。
妊娠最初期の赤ちゃんにはまだ聴覚器官などできていないから声はきこえないとかいう話があるが、
あれはきっと嘘だ。そこにいるのなら、いまも赤ちゃんは母親の耳を通じて、私の声を聞いている。「そこにいる」という確信を持って、いろんなことを語ってあげたいのだ。

妊娠を、はやく確認したい。

そうして、産婦人科に予約を入れたのが、先の日記の、その前日の話だ。



ところで、病院へ行く前に、ゆきこさんの体調のことを母に相談したことがあるのだが、

「くちあたりのいい食べ物ってなにがあるかな」
「つわり?」

ただ一言のこの質問で分かるうちの母はエスパーだろうか。
あるいは世間一般的に「くちあたりのいいものを食べたくなったら、つわり」という、そういうものなのだろうか。










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2007.01.08 -B part -「ここにいるよ」D-DAYマイナス8 2006年10月06日ごろの話


診察室にはいって、20分後

モニターに映るそれは、力強い心臓の拍動だった。







「ああ、よかった。私の子宮は正常だった・・・」





七週目のあかちゃんが、少しだけうつむいて幸せを噛みしめるような表情でいる妻の、その宇宙のなかに宿っている。


まぶしい。
ゆきこさんの笑顔がまぶしい。

いままで苦労して、ずっと心配してきたというゆきこさんのつらい日々が、ぜんぶ報われた。

私の実感では、この子も神様だということにつきる。
大切に、大切に、お育てしよう。



産婦人科の帰り道、運転していて時速40キロ以上がどうしても出せない自分がいた。
徒歩でも、ゆきこさんの歩く道の先を安全確認しながら先行する自分がいた。
通行人のなかに妊婦さんがたくさんいることに、やたらと気づいた。
子供服売場に吸い寄せられて
「はやい、はやいよ拓美さん」とゆきこさんにそでを引っ張られる自分がいた。


「い、いや黄色の子供服なら男の子でも女の子でも着れるし・・・」と弁解する自分がいた。





妊娠しているかどうか、意外に本人は気づかないことがあるようだ。
だが、よく見ていれば、本人以上に旦那がわかる。

本人は、自分を信じていなかったのだろう、あるいは恐かったのかも知れない。









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2007.01.08 -C part -「生命の根源」D-DAYマイナス8 2006年10月06日ごろの話


愛の行為(性交渉)は、子供をつくる「ため」にある行為だろうか。
子供という生命をつくるために、人間は性交渉をするのだろうか。

一面においては是。しかしそれだけではないし、本質ではない、と私は思う。
生命と愛のどちらが尊いかといえば、それは愛だ。
愛はつねに生命を超越し、凌駕する。喜びも、苦痛も、生命に付随するそれより、愛に根差したもののほうが、遙かに底深い。
愛こそが、生命の根源なのだ。

愛の行為は、お互いをより愛しく思うためのものであり、性欲は、お互いを恋しく愛しいと思う気持ちを、より切実にし、愛を愛らしくするための装置だ。


子供をつくるためだけに、性欲があるのではない。
人間は子孫を増やすための機械で、そのために性欲の奴隷にされているわけではない。

愛をひとつにして、その結晶としての子供を授かる。そのためにもっとも適した手段が、愛の行為だ。
人は、それを自然に選択する。

ただ、人は愛を求めんとするとき、そこで傷ついた経験があると、愛そのものを回避し、「愛に似た刺激」に手を出すことがある。
それは暴力であったり、薬物であったり、そして性であったりする。それを、本来的ではない間違った使い方で使用してしまうことがある。間違って使った結果は、そのように残る。


こころからの愛する気持ちがあって、その結果として子供が授かる。
生命の拠点に愛がある。
愛からはじまった生命だからこそ、人間は人間を思いやれるのだ。

人間の生きる目標は、生涯で、どれくらい深い愛の世界を知り得たか、成しえたかだと思う。
なにもかもが、そのために存在している。


子供ができたら、愛の行為をやめていいか。そうではない。
子供が出来てから、私たちはよりいっそう深い心情でお互いを愛したいと切実に願っている。
だから、妊娠中の女性が不安な気持ちに駆られるのは、それを果たすために必要なはたらきなのかもしれない。

もし、愛の行為が生殖のためだけのものだとするなら、妊娠がわかってから(出産後の妊娠可能時期まで)の愛の行為はまったくの無意味だ。
だが、そこでは、以前よりはるかに深い喜びと感動を得られる。


この確信だけでも十分だ。
愛こそが、生命の根源だ。












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2007.01.09 -A part -「神の愛」D-DAYマイナス8 2006年10月06日ごろの話


ゆきこさんの妊娠がわかったその晩。
一個の人間にはどうやってもかかえきれない、ものすごい水量の幸福を、とつぜん背後に感じた。
まるで山間に建造されたダムだった。放出口からわずかに溢れることをゆるされた幸福が、愛情となってゆきこさんを物凄い勢いで賛美している。

自分の背後のその水量、ゆきこさんを愛するためのその膨大な水量は、一個の人間が個人的にだせるようなスケールのものではない。だが、気がつくと、それが自分の背後に連結されているのだ。

いままでゆきこさんを愛してきた神様がいたのだと思う。
神様は手も足もないから、ゆきこさんが悪いことをしそうになったら運を悪くして反省を促そうとしたり、いいことができるように導いたりしながらここまできたのだろう。
遠くから風を吹かすような、そんなもどかしい、間接的なことしかできなかったのだろう。
そして、やっと
ゆきこさんを愛するという仕事を任せられる男性として、私を認めてくれたのだと思う。

そのサインが、妊娠なのだ。

「突然に親としての本能にスイッチがはいった」いまの心境を、そう表現したこともある。だがもうひとつ、言い方を変えるなら、
神様がもっていた膨大な水量の愛情が私に連結されたということだ。この心境の変化は、きっとそれだと思う。


一個の人間が、単独では決して持ち得ない水量の幸福と愛情が、いまわたしの背後にある。
わたしの力ではない。わたしが所持している愛の力は、もっとちっぽけだ。

わたしは、いま、神の存在を実感している。
わたしは、この繋がりを、決して断つまい。ゆきこさんのためにも。
自分でできることには限界がある。しかもすぐにそれは来る。だが、私を通じてゆきこさんが幸せになるのなら、借りられるものは何でも借りる。

個人の中に埋没したり、ないがしろにしたりせず、いつもゆきこさんに向けて開いていたい。
私の背後には、そしてこの世界には、こんなにもゆきこさんへの愛がある。
そしてそれを専門的に届けられるのは、ただ、わたしだけなのだ。










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2007.01.09 -B part -「祈り」D-DAYマイナス8 2006年10月06日ごろの話


ゆきこさんは、家庭を出発する以前に神様にお祈りしたことがあるそうだ。
話から推測するに、おそらく6月ごとだと思う。



 神様、どうか子供を授かりますように。
 二人で家庭を作っていくのだから、子供は三人、授かりますように。



神様の仕事は速かった。

でもここまで神様にはからってもらっていると
「ひょっとして・・・」という気持ちになる。

超音波で画像をみるまで
「三つ子では・・・?」と、内心で心配していたのだ。










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2007.01.09 -C part -「準備」D-DAYマイナス7 2006年10月07日ごろの話


ゆきこさんは、食の好みがガラッと変わった。
甘いものがダメになり、酸っぱいものがとにかくいい。

仕事の空き時間にスーパーに飛んでいって、
すっぱいと思われる食料品を買えるだけ買った。順に飲み食いしてもらって一番にいいものをゆきこさん専用にし、あとは自分で食べた。

家から胎教によく無さそうなものは一掃するか、隠すかした。
具体的には
「シグルイ」などである。

世界中のありとあらゆるものが「ゆきこさんと子供」「それ以外」の二者に、完全に分立された。後者のなにもかもが、無意味に思えた。


不思議と、私が妊婦とシンクロしはじめていた。
なぜかわたしまでもが酸っぱいものが食べたくなり、胃がむかむかした。



早い早いと思いつつも、やはり男の子か女の子か、どっちが生まれるだろうかと考えてみる。
女の子だったら、まず名前は
すごく強い名前にしようと思う。生半可な男では太刀打ちできないくらい強力な運勢をもった名前。個人的な幸せだけで終わる人生にならないように。いま思いつく範囲では「龍」という名前が考えられる。龍子とか。えーと、原滝龍子っていたなあ。(「県立地球防衛軍」ですな)

妊娠がわかった後で会ったタカヒロ・Iさんが
「いまどきどんな名前をつけても、たいていすでにどこかのギャルゲかエロゲで使われているから、どうやっても邪推されますよねー」とかぬかしやがるので「茜とかな」と突っ込んでおいた。
そのへんを回避しようとしてDQNな名前になるのもバカバカしいので、まあ普通の名前をめざそう。

小さいときは、もう溺れ死にするくらい愛する。
ただし、外では地味な服を着せて、地味に過ごさせよう。(この計画の最大の敵は、まちがいなく、
その逆をやろうとする自分だ)目立ったことをさせない。でも家の中では、(女の子だったら)お姫様みたいな服を着せようと思う。

私の知っているゆきこさんは、26才からこっちの姿でしかない。もし女の子が産まれたら、それ以前の彼女が見られるということなのだと思う。それがとっても楽しみだ。
私が愛せなかった26年間の時間を、娘を通して愛してあげることが出来る。

いや、男の子かもしれないが、そうだったら、この子はとにかく母親を護る子供に。そして男の道を教えよう。










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2007.01.10 -A part -「家庭教育・1」D-DAYマイナス7 2006年10月07日ごろの話


子供が産まれたとして、自分が思うままにその子を育てたら、きっと大切にされすぎたその子は偏った人間になってしまうだろうと思う。ゆきこさんからも、生まれる以前からのはしゃぎぶりに
「この人、子供ができたらどうなっちゃうんだろう」とか言われた。自分でも、軽く発狂しそうな気がするし、それを乗り越えても、ものすげえ子煩悩な親になりそうなのがかなり切実に予想される。

だから、子育ての方針とか、原則を言葉にしておこうと思った。
いま考えているキーワードは
「格」


目上の人に対して、敬語が使えない子供。
自分から挨拶できない子供。
ありがとうございます、が言えない子供が多いと思う。

それぞれの「格位」を教える家庭教育が必要だ。

かつては、祖父母、父母、そして子供という
家庭内の序列があった。
この中でこそ、
目上の言うことを重く捉えるという秩序が生まれる。
だが、いまやこの秩序は崩壊して、あげく
子供が王様になっている。

父親を何とも思っていない子供、母親を命令口調で呼びつける子供。祖父母を自分よりも子供のように扱う子供に対して、料理もその子供の好みで作られ、テレビのチャンネルも子供の見たい番組が選ばれる。
母親は、まず子供に「何が食べたい?」と聞き、何よりも子供に投入する。
友達のような母娘が最高の関係と言われ、先生までもが子供と同列になろうとしている。

その家庭には、格位というものがない。

人間の心は水のようなもので、高いところから低いところへと流れる。
そうして流れ続ける水は腐ることがない。

だが、平らなところに溜まった水はどうなってしまうか。
やがては腐り、あるいは枯れ、そして死んでしまうのだ。

いまの「俺様」化している子供は、そういう状態なのではないか。
注がれることなく、ただ腐っていくだけの水のような。

家庭に上下がなく、社会に上下がなくなったとき、人の心は腐るのだと思う。
「差別を無くそう」というコンセプトの行きすぎた結果が、この病んだ社会なのではないか。



だから、目上を敬う家庭を実現したい。

二人でいるとき、片方がなにか話しているときは全身でそれを聞こう。
「手が放せない仕事」などない。家族で居るときは仕事など放り出して、話しを聞こう。
誰よりも尊ぶべきお互いの連れ合いが、そこにいるからだ。

働いて帰ってきたら、玄関まで迎えに来てくれる家庭を。
「ただいまー」と言って帰っても、テレビから顔も上げずに「あー」というだけの、そんな家庭が、実際おおいのではないか。

そして子供が出来たら、祖父母、父母、子供の順に、
上から順に大事にされる秩序を。
子供は親の、親はその親の、それぞれより格上の言うことを聞く家庭。
そういう中で暮らしてこそ、礼節の分かる子供が育つのだと思う。

躾(しつけ)もそうだ。「○○をしてはいけない」と、それを理屈で言って分かるような子はいない。
「だって、やりたいんだから」というのがいちばん強力だ。こういう子に言うことを聞かせるには、理屈ではない。ガツンと頭ごなしに教えなくてはいけないときがある。そのとき、
叱るべき年長者が、誰からも敬われていなかったら、子供は言うことを聞くだろうか。
序列があって、それが自然に守られていてこそ、これだけ敬われている父が言うことなのだから、わけが分からなくても聞くしかないと思うのだ。

これがあってこそ、目上を敬う心が身に付くのだと思う。


敬われている父が言うことだから。
敬われている母が言うことだから。
だから子供は聞いてくれる。
子供の身勝手な常識など、一片たりとも通さない。
ダメなものはダメ、と上からものを言う親になりたい。


厳しいと思う人もいるかも知れない。
「子供の人権を認めない」とまで言い切ってるようなものだ。どうかと言う人もいるだろう。
だが、わかってほしい。

わたしはこういう人間なのだ。 
(いま読み返してもたいがい痛ましい他二日のありさま

これくらい厳しく考えておかないと、どんな子育てをするか分かったものではないのである。










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2007.01.10 -B part -「家庭教育・2」D-DAYマイナス7 2006年10月07日ごろの話


子供は、絶対に悪いことをする。
それを父親が叱るとき、子供がきくかどうか。
それは、父親が家庭内でどれくらい敬われているかによる。

これの要は妻だ。
妻がどれくらい夫を敬っているか。どれくらい慕っているか。それが子供にモロに影響する。
「お父さんみたいになっちゃいけませんよ」と言って育てている子供が、父親の言うことなど聞きはしないのだ。

妻が夫を立ててくれるからこそ、子供は父を尊敬する。
たとえ社会的にはどんなに立派な男性でも、妻が子供の前で彼のことを馬鹿にしていては、子供が尊敬することはない。
逆に、極端な話、年に数日しか家にいない忙しい父親でも、母親が子供に父親を敬う教育をしていれば、子供はその父を尊敬するのだ。

家庭の秩序がきちんと立つかどうかは、妻が決める。
だが妻とて、尊敬できない、何もしてくれない夫を、いつまでも讃えることは難しいだろう。

だから、私は妻を愛する。
それは、ここまで書いた全ての内容を実現するために、最も必要な行動だ。
もし子供に問題があったら、まずすべきことは、妻を愛することだと思う。

そう考えると、家庭を出発するとき、やはり一番大切なのは、伴侶を尊敬し愛すること。
いままでの日記でも
たいがい胸焼けしそうな内容ばかりだと思うが、むしろ家庭が構築されるこれからが本番だ。いままで以上に、愛で漬物になるくらいに妻を愛していこうと思う。








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2007.01.10 -C part -「家庭教育・3」D-DAYマイナス7 2006年10月07日ごろの話


自分の親と自分の子が溺れていて、どちらかしか救えないとき。
多くは子供を救おうとするだろう。だが、親をこそ救うという生き方がある。
「どうせ親は老い先短いし」という考えがよぎるのもある。
だが、子供はたくさんいる。でも
親はひとりしかいない。そういう考え方がある。

子供の方を愛し大事に扱う方の話はよく聞く。わたしもそっちの方が
感動しやすい。

だが、親を尊く思うということはすごく大切だ。
なぜなら、その土台があってこそ、
そこから生まれた自分が尊いという自覚が、人間には生まれるからだ。


自殺をはじめとして、自分を大切にしない人が多いという話を最近よく聞くが、先の話で考えると、その原因もここにないだろうか。
自分の親を、くだらない、どうしようもない人間だと思っているなら、どうしてそこから生まれた自分が素晴らしいとか価値があると思えるだろう。

親を尊く思う。それがあってこそ、子供は自分を尊く思えるのだ。
では、親は子供の尊敬を得るほど立派でなければならないか。これは一面においてはそうだが、しかし身体の弱い親や、勉強のできなかった親など、その場で子供と比べて子供の方が勝ってしまうことはいくらでもある。その中で、親が子供に敬われるには、それは家庭内の秩序しかない。

祖父母がもっとも重んじられ、その次に父母、そして子供。この順番が日常的であってこそ、親を尊敬する姿勢は生まれる。その中でこそ、子供は価値のある自分を見いだせるのではないか。


いまの教育も放送も、これを壊そうとしているように見える。
差別を無くそう。そういいつつ、
家庭内の差別をなくすために全員平等になってしまった。結果、子供が王様になっている。王様として育てられた子供が、いつ我慢することを憶えるのだろうか。

テレビも非道い。お父さんの立場を完全にないがしろにしている。カッコイイ大人が出てこない。大人はいつも悪くずるく、子供が正しく、子供が大人を懲らしめる。そんな話ばかりだ。これで格位などうまれるはずがない。

ただ、いまの世の中で、親に恨みをもっていないひとなどいないだろう。親を尊敬せよ、というのは手放しでは無理な話かもしれない。

だから、家庭からやりなおすしかない。家庭内に秩序を持つこと。友達のように何でも話せる関係ではない。厳然たる格位を定めること。たとえ親に、子供に劣る部分があったとしても、尊敬される立場に立つことだ。そうなれば、そうあろうとするのが親だ。いい方向へのスパイラルができる。妻が夫を尊敬できる家庭。夫が妻を尊敬できる家庭。夫婦は自分のルーツを尊敬しながら暮らす。そのなかで育つ子供に、自分の親を誇る気持ちを持たせてあげたい。

言ってもきかない子、何度言っても叱っても悪いところが治らない子がいるとしたら、その子には、親の言うことを素直に聞けないなにかがあるのだと思う。そんなとき、妻は、夫は、たがいの伴侶のことを「言うことをきく必要はない」といった態度で接していないだろうか。伴侶が振ってくる話題を生返事で受けてないか、無視していないか。子供がそれを見習っていないか。

それが分かっているから、ゆきこさんは、わたしが帰ってくると
玄関まで飛んでくる。
わたしが話を振ると、ふんふんと聞いてくれる。
そしてわたしも、ゆきこさんの事情を最優先に考える。

そう考えてみても分かるが、親子の愛と、夫婦の愛は、本質としてどちらがより強く大事なものかと言われれば、かろうじて、という程度の差だが、それでも
夫婦愛が最上であると思う。子供よりも、妻を夫を愛する。でも、それさえ尊敬を持って成されていれば、子供はうれしいはずなのだ。


夫を、妻を、愛し、尊敬すること。
難しいことかも知れないけれど、これがわたしの理想とする家庭を作る、最重要の、そして第一層目の土台だ。











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2007.01.11 -A part -「助言」D-DAYマイナス6 2006年10月08日ごろの話


妊娠を報告する。
両家の母からそれぞれに、妊娠生活のアドバイスをいただいたが、
ほとんど同じ内容だったので、いい感じに復習になるのがありがたい。

「三人うむ? その年齢で? でも、年子はつらいよ? ほんと大変。満二才になるまでは作らないで、三歳になったころ生まれるようにしないと。二人目はお腹が痛くなるよ。産後の肥立ちが悪いと一生ついてまわる。三週間は立ち上がらないように」「ええっ」とゆきこさん。「大丈夫、わたしが全部やるから」と、いい顔で語るわたしの側頭部に
天使のハリセン連打。「あんまり動くと子宮の収縮がうまくいかなくて、生理の血が止まらなくなるよ。あと、妊娠初期は胃がムカムカするから、四六時中なにかつまむこと。意地汚いと思われてもいいから。お腹が空き切っちゃうと気持ち悪くてどうにもならなくなるから、枕もとにちょっと摘むものを常備しておくのもいい。あとカルシウム。わたしのときは煮干しやタツクリをずっと食べてた。おかげで歯の丈夫な子が産まれた。身体が欲しいというものを食べること」

まったく同じ話を20分前に実家のお母さんから聞いたゆきこさんが、それでも真剣に聞いていた。









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2007.01.11 -B part -「ぜいたく」D-DAYマイナス6 2006年10月08日ごろの話



「美しいものを見ながら、美味しいものを食べる・・・
 
 ああ、最高の贅沢だねえ」



目の前にすわっていた、手料理をつくってくれたゆきこさんが、目をパチパチしてから、一秒ほどの沈黙後、
とつぜん飯を噴いた。


1ダースくらいの天使にハリセンでたこ殴りにされてるらしいが、まったく感じない私がいた。








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2007.01.11 -C part -「足熱」D-DAYマイナス6 2006年10月08日ごろの話


外から帰ってきたゆきこさんと、ごろんと横になる。
手を取ってみると、冷たい。

いかんいかん、妊婦さんがこんなつめたい手ではいかん、とこちらの両手で包む。きもちいい・・・とゆきこさん。

手が暖まったところでふと足元に探りを入れると、爪先もとてもつめたかった。

いかんいかん以下略で足元に潜り込む。いや、そんな、と照れるが布団を被せて、これも両手でじっくり時間をかけてあたためる。きもちいい・・・とゆきこさん。

今度は熱いお湯を桶に入れて寝室に持ち込み、ゆっくりぬぐってあげようと思う。




愛する女性の、冷えた足をじっくりとあたためてあげられる。

なんて幸せだろう。










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2007.01.12 -A part -「動物的本能」D-DAYマイナス6 2006年10月08日ごろの話


マンデリンさんとタカヒロさんが遊びに来てくれることになった。
マンデリンさんには、実は一度新居にあがってもらったことがある。

だが、今度はことわって、外で会うことにしていただいた。

理由はいろいろ後づけできるが、もっとも根元的なところは




巣で卵をまもっている親鳥が、害意の有無を問わず、あらゆるものの近接を断固として拒むような




そんな心情だとおもう。だが同時に礼儀を失した行動だとも思う。申し訳ない。

でも自分のなかに、こんな動物的な本能があることに驚いた。
そして、ちょっとだけうれしかった。









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2007.01.12 -B part -「笑顔」D-DAYマイナス5 2006年10月09日ごろの話



前の日に、どんなにつらいことがあっても、次の朝おきるときには笑顔で起きよう。

食事をするとき、美味を感謝し、笑顔で御飯を食べよう。

就寝するとき、これも笑顔で、いい夢が見られますようにと祈ってから眠ろう。



幸せな家庭をつくるための、努力のひとつがこれだ。
これが習慣になってしまうまでやり続ける。

これから、つらく苦しい時代がくるだろう。でもそんなとき、子供を本当に励ますのは、財力でも、他人より優位な学力でもなく、ただ親の笑顔であろうと思うからだ。









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2007.01.12 -C part -「指輪」D-DAYマイナス5 2006年10月09日ごろの話


結婚式の前に、父の遺品の指輪を相続した。プラチナの、ゴン太い指輪である。


指輪の話を遡(さかのぼ)る。
エンゲージリングは、結納のときにわたしてある。ダイヤで作った、大きな指輪だった。
つぎに結婚指輪を作ろうという段になったとき、ゆきこさんが少しゴネた。

いわく
「だんな様より立派な指輪なんて付けられない」

指輪は、わたしがまったく気にしない人だったので、雑貨屋で1050円くらいのを買ってこようかと思ってたからだ。「じゃあ、わたしも」と言えないでいるゆきこさんの乙女心みたいなものがなんとなく分かったので、結局は同じレベルの指輪をペアで購入するか、という話になる。

結婚指輪というとだいたい60万円くらいが相場ですよー、という話を聞いたことがある。給料三ヶ月分というやつだろう。
「240万円の指輪を贈って、新婚旅行から帰ったその日に離婚調停をはじめたカップルを知ってます」と切り返して、78000円程度の指輪を購入する。プラチナの、シンプルに見えて意外に凝った曲線のリングだった。ペアリングで、わたしの手に合う指輪がなかったので、わたしは先述のように、父の指輪を相続した。父のプラチナリングには、サイズ直しと、磨きをかけてもらったので3万円ほどかかったが、その甲斐あっていい感じだ。一応、ゆきこさんのと同程度の指輪だろう。




もう、あと少しで結婚式である。

姉は、結婚式の前は
死に物狂いでブライダルエステに通っていたが、ゆきこさんはそんなことを考える人ではなかった。薦めてみたが「あはは、ブライダルエステ、あはは」と笑うだけである。夏の日焼けあとが消えて、肌が白くなってきたので大丈夫だというゆきこさんは、美容師さんとも相談しているようなので、これ以上男性からは言うまい。

式の何日か前に、花嫁は
「顔剃り」をしなくてはいけない。
顔の産毛を剃るのだが、この免許は美容院ではなく床屋にしか所持を許されていないので、床屋をさがす。
近所の床屋だと素性がばれたとたんに質問責めに合うと脅して、遠くの店に行かせた。ちなみに、前の日に顔剃りするとカミソリ負けで肌が痛む(腫れるのかな?)恐れがあるので、三日くらい前に行くのだそうだ。

ブライダル用の小物のなかでは、席札だけは手作りでつくることになっている。「なり多」に依頼すると、ひとつ105円と安価でつくってくれるので、これこそお願いしてもよかったが、これを自分で作り上げたゆきこさんの意外な才能が見られたのでよかった。だいぶ前に芳名録といっしょに材料を買ってきて、コツコツと作ってきたのだ。三日前にできあがった。これで準備も完了である。











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2007.01.12 -D part -「安心しない」D-DAYマイナス4 2006年10月10日ごろの話


世の中には「妻だから」「夫だから」だから浮気をしない、とたかをくくって、愛すべき伴侶を失った人がいる。
破綻を目にして、信じていたのにという言い訳をする夫婦関係がある。
浮気をした方が悪いという決めつけがある。
愛すべき伴侶をないがしろにした生活をしていても、昔の約束を思い出して「大丈夫だ」と思う浅慮がある。
仕事で疲れ果てて帰宅しても「おかえりなさい」も言わず、会社でこんなことがあったという話を適当にしか聞かず、さっさと寝てしまう妻がいて、そして、その夫がフラリと飲み屋に行ってみたとき
「おかえりなさい」と笑顔で出迎えてくれて、会社でこんなことがあったという話をうんうんと親身になってきいてくれる女がいたならば、そっちに情が流れてもしかるべきだという破綻のはじまりがある。


あなたは私を愛している。そのことに、私は決して安心しないでいよう。
あなたの前でこそ、もっとも立派な人間であることを、怠りはしないようにしよう。

愛した実績いうものがある。あのときこんなことをしてあげた、あんなに喜んでくれた、あのことを寛大な心で許したという過去の栄光がある。
いま自分の事情だけを考えていることの言い訳に、それを持ち出ししそうになるときがある。「あなたは私を愛しているから大丈夫」と言うために。
だが、その確信は、一体いつごろ得られた確信なのか。

それら稼いできた過去の実績に溺れることなく、常にあなたを愛そう。

変に気張らず、鼻歌でも歌うように、肩の力をぬいて、それができるようになろう。
死ぬ間際に振り返ってみれば、そこには愛情に満ちた道が残るはず。

連綿とつづいてこそ愛。
愛は、動詞であってこそ愛だ。



寝る前にそんなことを考えながら、妻の顔をみつめる。
気配を察したのか、ふわりと目蓋が開く。


「なあに?」

「いや、なんでもないよ。綺麗な睫毛だなあって思ってた」

「ふふ・・・、おやすみ」

「おやすみ、大好きなゆきこさん」










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2007.01.13 -A part -「嫁ぎきる」D-DAYマイナス4 2006年10月10日ごろの話


出産にあたって、ゆきこさんは実家に頼らず生むつもりだ。
「嫁ぎきる」ことが目標であるから、という。あいかわらず凄い嫁だと思う。
そして、わたしもうれしい。

実際には観ていなくて、ひとから聞いた話だが、前に細木数子の番組でこんな話があったそうだ。
2人の子供を連れて三人目を出産しに実家に帰った嫁が、出産の報告を夫にしたら、
愛人が居るからお前はもう帰ってこなくて良いといわれたという。

とても傷ついたという話だった。その夫にしてみれば、
三人の子供と妻を足した分よりも、その愛人の方が大切なのだという。

これを「とんでもない男」だと思う人がほとんどであると思う。
だが、残された男の、その寂しさをまったく省みなかった妻の方が悪いと、細木数子は切って捨てていたそうだ。

わたしも同感だ。この妻は夫のことを本気で愛していない。









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2007.01.13 -B part -「髪型」D-DAYマイナス3 2006年10月11日ごろの話


今年の6月頃まで、ゆきこさんは長い前髪をヘアピンでサイドにとめていた。おでこが見えていた。
一緒に暮らしはじめた頃、前髪をちょっと切って、自然に分けて額を隠し、後ろ髪は低い位置で縛るようになった。


最初にみたとき、呆然とした。
アルファさんと、まったく同じ髪型だった。


結婚式の準備をしていて、かつらの色合いからちょっとカラーを入れることになった。後ろ髪にゆるいパーマをかけて、色も抜く。ゆきこさんの後ろ髪は、放っておくと前に出てくるそうだ。実際、ふわふわになった髪が襟足のところで別れて、耳のしたから頬のあたりでくるくると巻いている。


よくみると、
美汐さんとまったく同じ髪型だった。
とりあえず、呆然としてみた。


本人は無意識にしている髪型で、こうなったのも確実に偶然なのだが、なんか面白い。









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2007.01.13 -C part -「BGM」D-DAYマイナス2 2006年10月12日ごろの話


BGMの準備をした。

歓談中のBGMなどは「なり多」で用意されていて、それを使用するが、要所の音楽は自分で用意できる。

打ち合わせのとき、以下のBGMを用意してきてくださいと言われた。
たのめば、あたりさわりない曲を用意してくれると思うが、ここはぜひやりたい。

色打掛での新郎新婦入場用。
乾杯用。
色打掛から友禅へ中座用。
友禅での新郎新婦入場用。
ケーキカットケーキ入刀用。
友禅からドレスへの中座用。
ドレスでの新郎新婦入場用。
花嫁の手紙代読用。
門出用。

持っている限りのCDのうち、サントラとクラシックのCDを全部出してきて「使えそうな曲」を選んで聴いた。
「自分の好きな音楽」と基準では、けっこうダメだった。その基準で選ばれた曲は、悲壮な旋律が多かったり、とにかく哀しいものが多いことにあらためて気づかされる。ほとんど使えない。もしくは、戦闘シーンのBGMである。田中公平のサントラはかなり持っているが、一曲も使えなかった。
ケーキカットのBGMに「ディバイディング・ドライバーのテーマ」とか流したら会場が湾曲空間に呑まれたくらいには引かれると思う。

なんとか苦心して曲を選ぶ。
それぞれのシーンごとに必要な要素があったが、それは披露宴本番のダイジェストで書こう。
曲の途中から流したいものなどは前半を切ってフェードインさせるなど、ファイルを加工してCD−Rに焼く。
シーンとトラックナンバーを対応させた曲目リストを作成して「なり多」のスタッフに渡した。


CDの趣味がサントラ集めだった時期があった。
結婚披露宴は、それが集約される、いい機会だった。

当日が楽しみだ。








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2007.01.13 -D part -「花嫁の手紙」D-DAYマイナス2 2006年10月12日ごろの話


披露宴では、花束贈呈があって、花嫁の手紙を朗読する・・・と言うと、ごく一部からは「ベタな結婚式だな」というコメントがあったりする。

たしかに、よく聞くイベントだと思う。定番過ぎてありきたりな、よくきくイベントなのかもしれない。






だがわたしは、その「花嫁からの手紙」の下書きをしながら、ぐしゅぐしゅと泣いていたゆきこさんを知っている。

いままでのことを思い出していた、あの涙を知っている。






ありきたりではない。
よくきくようなものでもない。
ゆきこさんが涙で綴った、この花嫁の手紙の朗読は、どこを探しても二つとない唯一無二のイベントだ。











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2007.01.14 -A part -「前夜1」D-DAYマイナス1 2006年10月13日ごろの話


前日、最終的な、さまざまな準備をする。
当日もっていく貸衣装以外の衣類(靴下など)や指輪を除いて、
ほぼ持ち込むものはすべて前々日に持ち込んだ。貸衣装の搬入が前々日なので、それに便乗させてもらったのだ。

必要なものも、すでに準備してカバンに入れてある。
24時間後にこれをつかんで出発すればいいという状態にしてある。

ところで、前日には床屋に行っておいた。
私の場合、半日くらいですぐヒゲが伸びてくるので、かなり深剃りしてもらわないといけない。できれば遅い時間に行きたかったが、いろいろ都合があって無理だった。


あとは、当日スタッフにわたす
心付けの用意だった。

美容師さんへの心付けは、両家で10000円づつ。
近所の人だったり、これから御世話になる人だったらもうちょっと包むこともあるだろう。美容師さんの仕事は花嫁さんの着付けをするのがほとんどだが、新郎の分も払っておこう。

シェフに、両家で5000円づつ。支配人に両家で5000円づつ。
会場には、最初から計算されているプロデュース料20000円のほかに、この20000円も払うことになる。

新郎の親戚が乗っていくジャンボタクシーの運転手にも5000円もたせた。
行きと帰りで話が通じやすいように同じ人を指定した。

山形側からの親戚を、ホテルから会場へ運ぶバスにも、3000円くらい持たせていると思う。

司会の岩田さんは、母の知人でボランティア精神あふれる人だったが、やはり30000円もらってもらった。
あと心付けで10000円。

カメラマン諸氏には30000円である。
これだけで交通費とかフォルム代とかでも脚がでるように思える上に、御祝儀までいただいてしまった。本当にありがたい話だ。

スタッフには、披露宴のあとで、食事と引出物フルセットを渡した。あとから聞いた話では、引き出物はケーキだけで十分ということだったが、なにせよく撮ってくれたので、これくらいはしたい。


そして、普通の結婚式場は、原則として前払いであるが、なり多は
後払いでも大丈夫というありがたいシステムだ。式の最終調整が完了した段階で一度、見積書を作ってくれる。
たとえば出席者の誰かがガラスを割ったとか、急遽1人追加など、不測の事態で発生した分は、あとでちゃんと請求が来るようになっているわけだ。


御祝儀は、当日やりとりするカメラマンさんの分以外は、すでに集まっている。
ご祝儀袋も保管してあるし、記録もとった。
今度、その家の結婚式があって呼ばれていくときには、同じ以上の額を入れなければ不義理だから、きちんと憶えておこう。

20万円だしてくれた親戚もいた。以前にその家の子供の結婚式の時、実家がそれくらい出してくれたからだ。ありがたいはなしである。




前日に、これまでを振り返ってみて思う。
私たちの場合、
同居していて、いつでも綿密な打ち合わせが可能という好条件であってなお、結婚式の準備はそれなりにしんどかった。これがもし、新郎の休みが水木で、新婦の休みが土日などといった都合があわない休日体制だったりしたら、二ヶ月間での準備は絶対に無理だったと思う。

しかも、我々は変則だったが、世間一般の順番に従っていたらなお大変だった。
この結婚式の準備期間中に、新居をさがし、新居に入れる家具を探し、ハネムーンの予約をし、二次会の予約をし、そうして結婚式を迎え、二次会を行い、親戚を送り出し、初夜を過ごして、新婚旅行に出発し、しかるのちに引越。もちろんすぐ仕事。

死ねる。

これは死ねる。

二ヶ月では無理だ。
これを完遂するためには、どれくらい準備に時間がかかるだろう。
そう考えると、30代中盤カップルの結婚式の場合、わたしたちのようなやり方もアリだと思う。










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2007.01.14 -B part -「前夜2」D-DAYマイナス1 2006年10月13日ごろの話


基本的に、式・披露宴の打ち合わせは、二週間くらい前には完了させておきたい。
その時点で全て決めておかないと、突然の出席キャンセルなどに対応できないからだ。

事実、かなり早めに進めてきたのだが、
それでも出席者の人数は最後にバタバタかわった。


甥のシンちゃんの弟で、リョウちゃんってやつがいるんだが、これが一度は「行く」と言い、予約や準備もすっかりできたあとで「塾の勉強が遅れるから行かない」と言いだしたのが挙式の一週間ほど前。そのあと「やっぱり行く」と言い出したのが三日前で、一週間前に削ってもらった席を再度追加してもらったところ、二日前にどうも「やっぱ行かない」という趣旨の電話がかかってきたらしい。兄が長い時間かけて諭していたようで、結局リョウちゃんは式に来て、あいかわらず生意気なことばかり言っていた。

もし、自分の子供だったら、と考える。
最初の段階で、
塾と叔父の結婚式を天秤にかけて塾をとったのだから、その撤回には頭を丸めるなりの詫びが必要ではないか。また、男が一度決めたことをなんどもコロコロ変えてはいけないということを教えるいい機会なのだと思った。でもこれは、出席してもらう方としては言えない。兄に任そう。

それはともかく、「なり多」はこの変更に逐一応じてくれた。ありがたい話である。

と感動していると、
前日の夜に別の親戚から「ひとり追加してほしい」「だめ? だめならいいけど・・・」という話が来る。
前の日に急に追加。この事実は、書店時代に店頭でよく拝見した、明日の授業に必要なスケッチブックをひいこら言いながら夜の11時に買いに来てひっぱってきた子供に
「なんでもっと早く言わないの!!」とキレてる小学生の親の心情をなんとなく通過させられるが、親戚のためにという動機でやっているこちらが断れるわけがない。先方は軽い気持ちなのかも知れないが、それでもこちらとしては対応したいのだ。

「なり多」はこの件もこころよく応じてくれた。
本当に申し訳ない。仮にも客商売を通過していて、
お客様の都合で店が振り回されるのを経験している身としては、こういうのが、本当に申し訳ない。

親戚の方が結婚式を祝ってくださる気持ちを大切にしたいから、無茶な話も甘んじて受ける。会場の事情が推察できるだけに、これが本当に申し訳ない。
でも「なり多」さんは吸収してくれた。おそらくは、
そういう親戚に困らされて、会場に頭を下げている新郎新婦のために、であろう。本当にありがたい。いちばん困るのは、会場なのに。


「なり多」さんには、いろいろな途中変更にこころよく対応してくれた。本当に有り難かった。









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2007.01.14 -C part -「ルーツ愛」D-DAYマイナス1 2006年10月13日ごろの話






形ばかりのアナウンス:昆虫系グロ画像注意






結婚式の前夜。
母・兄とともに、ゆきこさんと食事をする。場所は、わたしの実家である。
母謹製の五目御飯が、ゆきこさんにも好評だった。

そして「結婚式の前の夜だし、赤ちゃんもいることだし・・・」ということなのだろう。母が特別なごちそうを出してくれた。
うわあ、なんだろうという感じで待っていると、でてきたお鉢に盛られていたのは


蜂の子だった。


うちの母がゲテモノ喰いだということを天野さん忘れてました!



「ゲテモノじゃないよ、蜂の子だよ」

という母にとって
昆虫というジャンル普通に食料品らしい。
たぶん、
他の哺乳類が食べてるものはなんでもイケると思ってるんじゃないだろうかと考えていると、

「これ、たべたことある?」と母。

「・・・ありません」とゆきこさん。

「まあ、ロイヤルゼリーみたいなもので栄養あるから、食べてみ?」

母なりの嫁(妊婦さん)への気遣いだろうか。

「はあ」と、かすかに震える箸で、鉢から一つを摘まむゆきこさん。勇気を振り絞っているのか、しばし溜めている彼女に、母が明るい声で一言。

「ウジ虫みたいでしょ♪」

「そういうキーワードを言うなああ!!」たまらず突っ込む天野。

「じゃあ、・・・
幼虫?

「同じ!」

「でもロイヤルゼリーは身体にいいよ」

「身体によくても具合が悪くなるわ! あとヘボ(蜂)の子はロイヤルゼリーではありません!」

「あ、おいしい」

振り向くと、ゆきこさんがひょいパクひょいパクと蜂の子を食べてた。




子供の頃から慣れていればともかく、大人になってからこのへんを乗り越えるゆきこさんは、すごい。

食べたことがない食品で、しかも
生きた虫そのままの姿をしていて、音声データで「ウジ虫」とまで定義づけられたモノを口にするとき、さすがに彼女に迷いはあったろう。生理的な嫌悪感がないわけではない。
だが、これを薦めたのが、わたしの母だから、彼女は食べたのだと思う。

相手を愛しているとそのルーツも愛しくなる。
わたしがゆきこさんのお父さんラブだからよくわかる。

そして愛するとは関心を持つことだ。
私の母が好きだと言うものがどんなものか、知りたい。それが、彼女を乗り越えさせた動機なのだと思う。


と同時にわかる。・・・わたしはゆきこさんに愛されている。

日々の何気ないところで、彼女のわたしへの距離感でもそれは「どことなく」わかる。
でも、こうしたところで、それが明示されることがある。

「ゆきこさんは度胸があるなあ」などと感心はすまい。
彼女は愛で乗り越えたのだ。ほんとうにすごい人だと思う。









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2007.01.14 -C part -「前夜」D-DAYマイナス1 2006年10月13日ごろの話


挙式の前夜、山形から新婦側の親族が到着する。
日本海側を走って12時間かかったそうだ。でも借りた観光バスが高級な車種だったのと、運転手がいい人だったので意外に疲れなかった、とのこと。
電話が入って、すぐ観光ホテルに迎えに行く。すでに歓迎の宴会中だというので、ゆきこさんと二人で乗り込んだ。


「このたびは、遠路はるばる御苦労様でした」

そう言って入場した初登場の新郎が、なんか、こう、客観的に見て
すげえ浮いてた
「だれコノヒト」とゆー気持ちを千枚くらいのオブラートで包んだ視線漠然と痛い
見慣れない人物にどう対応したらよいか分からないのは人間の常だが、一方で隣に座っているひとは
大好評である。

「ゆきこちゃん大きくなったねえ」
「ひさしぶり」

など、まるで
差が付いてるコンビ漫才の片方みたいだった。


だが、明日の式の後では、これが全部ひっくり返るのダ。そんな式をやらなけれバ。
そう新たに決意してお義父さんとお義母さんを連れ出す。
結納返し(袴辞(はかまじ)料10万円と家内来多留(やなぎだる)料10万円。やなぎだるは昔は酒だったが、いまうちでは現金にしている)のためだ。


結婚式前夜。
静かな夜。
あらためて両家のしめやかな挨拶があった。

そのあとで、新居のお披露目もした。結納金でつくった喪服を見せた。
以前に、お義父さんとお義母さんに送った、結婚への決意の手紙の感想を聞いた。(これは、式のスピーチでも、手紙と同じ内容をわたしが話した)
とりあえず、二人の結婚について、あらためて納得していただけたようだった。

その後、お二人を観光ホテルにお送りしたのが夜10時30分ごろ。
これから取って返して、風呂に入ってすぐ休む。



ふりかえってみると、式の前日には(休日にしてもらったが)やることが多すぎて、何もできなかった。
一日やすみをとってもコレだ。いつでもできる準備があるなら、それを「前日でいいや」と考えるのは極力避けるべきだった。

なので勝負を着けるのは、結婚式の一週間前ごろの休みの日だ。
ここでほとんどの準備を完了させなくてはならない。
これが、うちの場合、かなりうまくできた。

前の日までにほとんどのものを搬入してしまえたし、当日もっていくものも用意できていた。
当日は交換用の指輪と下着類と携帯と財布くらいしか持たないようにしたし、可能な限りの荷物は、貸衣装の搬入が前日だったので、そこにまぜてもらった。
ただ、BGMを前々日の夜に半徹夜で選んで、前日に大急ぎで編集して焼いた。
これだけが前日に食い込んだ予定である。しかし、これだけでも、かなりつらかった。

うち以外でも、前日は親戚が現地入りすることが多いだろう。なので、そちらの御世話で大変なのだ。「独身時代最後の夜」などと感慨に浸る時間はない。

そして、
当日の朝は5時30分起床である。
はやいと思うかも知れないが、当日は多くのひとが動くので、なにがあるかわからない。
とにかく時間に余裕をもっていくことだと考えてこの時間なのだ。

そして、
かならず忘れ物をする。どれほど気をつけても、なぜか忘れてしまうのだ。
前日より前にかならず荷物をまとめておくこと。これは絶対である。


そして、新郎がスピーチをする場合、その内容も、できれば暗記したほうがいい。
カンニングペーパーをつくったが、使う余裕はまったくなかった。
新郎のスピーチは、とにかく注目されるのだ。
そのカンニングペーパーを作ったときに、極限まで趣旨をまとめたので、言いたいことがハッキリしたのがよかったが、練習もなく、ほとんどぶっつけ本番だった。


聞いた話だが、午前〜昼に親族向けの結婚式をやり、夕方〜夜で友人向けの結婚式をしたカップルがいたが、
昼の部で花嫁が倒れ、夜の部で新郎が倒れたそうだ。

最低限度の用事だけ残しておいても、前日にわれわれがとれた睡眠時間は、
結局4時間ほどだった。
友人と会って最後の夜を語り明かす・・・というのは死ぬ気でないかぎり薦めない。昼夜で代わる代わるダウンした彼らの二の舞であろう。


ともあれ、ここまで辿りつけたことを心から感謝して、床についた。
深夜1時をまわっていた。





「○○にこだわった結婚式」というのがある。
自分たちだけの結婚式を・・・というアレだ。

この「こだわり」には二種類ある。
自分を中心にしたこだわりと、他者のために貫きたいこだわりだ。
これは端的に言ってしまえば「愛」と同じである。


それだけに、

「わたしがやりたいから」「わたしが着たいから」「わたしが我慢できないから」
そういった動機で企画立案され作られた結婚式と、

「親のために」「親戚のために」「(新婦として)新郎のために」「(新郎として)新婦のために」
という動機ですべてが構成された結婚式では、どちらが善い式になるだろうか。


結婚式、そして結婚披露宴は、親戚や友人に「みせびらかす」場でもあるが、同時に礼節を持って挨拶をする場でもある。
遠くから駆けつけてくれた親戚も多いだろう。結婚披露宴は、おもてなしをする場である。その宴がどう評価されるかは、招かれた客の感想がすべてであり、その本質だ。

自分のこだわりなど、捨ててしまえ。それは、
招待客のためにすべて捧げきったあとでのみ許されるものだ。

しかも、自分を中心としたこだわりの結婚式というのは、完璧には実現しない。
まあ、
こだわりのうち6割成就したら大成功だ。こだわりまくった準備をして100%実現できなかった場合、失敗分がたとえ1%でも悔いが残る。

だからこそ、いかに「我」が入らないか、が結婚式の成功の秘訣だと思う。
そんな式したくない、というのであれば、まあそれはそれで人を呼ばずにひっそりとすればいいのではないかと思う。人を呼んでまですることではない。


だが、
すべて捧げきった結婚式は、そのあとに全てが帰ってくる。

これは、間違いないことだ。









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絵描きと管理天野拓美air@niu.ne.jp