2003.08.11 「利休さんお招き大須オフ会」


あたらしい仕事も一ヶ月が過ぎたある日、とつぜん
利休さんから連絡があった。
急に休みがとれてしまったようで、明日、名古屋に来られるというのだ。
小売業でありながら
連続勤務時間が50時間をしょっちゅう越えるという、わたしの関係者の中でもたぶん一・二を争う地獄の住人である彼は、今回の名古屋遠征の動機についてこう語っている。

「いや暇でしたから」

「重っ」「このひとの『暇』って重っ!」

天野が偶然にも休みだったため、急遽この日にオフ会の開催となった。(利休さんによるオフ会レポートはこちら


利休さん秋月さん入江さん、天野と、まずは四人で名古屋駅にあつまり、あちこち歩いたあと大須で電気街などを回る。サンハヤトのボイスチェンジャー
やや真剣に天野が見つめたり、入江さんは自作PCの静音化に御執心なようで8センチファンを買うのもすでに四個目だとかそんな話をしながら「巫女茶屋」の前を通りかかった。

ところで名古屋と言えば、かつては「巫女居酒屋・月天」が
そのスジでの定番だった。だが、はるか諸国からわざわざ参りにくるマニアも大勢いたというかの店もいまや閉店となり、現在はすっかり別のコンセプトの店になっている。
しかし名古屋に根付いた新文化を絶やしてなるかと、立ち上がったのが、
よりによってというかまあ当然の流というか、メイド喫茶「M's Melody」を率いるグッドウイルであった。ほとんど「月天」とは入れ替わるような間髪入れないタイミングで、大須観音正面に「巫女茶屋」が開店。そんなわけで現在も名古屋の巫女文化は守られている。

秋葉原にいったら、とりあえず「CURE MAID」か「じゃんがららあめん」というように(いや、地方の偏見かもしれませんが)(そういえば両方とも行ったことないなあ)(ところで、じゃんがらの方はだいぶ味が落ちたとか・・・まあいいかそんなことは)、名古屋にきたら
とりあえず「月天」で巫女さん、というようなコースがあったが、利休さんはどうもあまり感心がないようすだった。

「あらら、利休さんは巫女さん属性はないですか」

「いや、 僕の親父の実家、
神社なんですよ」

「なんとな!?」

「小学校の頃田舎へ遊びに行くと、
社務所に巫女さんがいたものです」

「しょ、
小学生のころからもう、巫女のお姉さんが・・・」

「もう神主さんをちゃんとやってないらしいので、最近はいませんが」

「(*´д`)ハァハァ」

「 (*´Д`)ハァハァ」

「ハアハアいうな」

「ですから、巫女さんに興味をあまり覚えないのですよ、実は」

「なんてもったいないっっ」

「利休さん、なんか、こう
甘酸っぱいエピソードとかないですか」

「んと、たとえば社務所へ遊びに行くと、
巫女さんが着替えていて袴を脱いだ状態だったとか?」

「ぎゃーーー!!!」

「あの、
個人的にはぬぎかけでないとだめだと思います」

「いや、そんなこと言われても・・・。他には、真夏に草むしりしていて、
襦袢が汗で透けているですとか」

「うおぉぉぉおおおおぉぉぉぉ・・・・」

「天野さん、血の涙、血の涙」「拭いて拭いて」

「あー、あと覚えてるシチュエーションっていうのがあって、社務所で巫女さんが
うとうとと居眠りをしている姿を見た覚えがあります。当時悪ガキだった僕は、髪の毛を引っ張って起こした覚えがあり、困っていたお姉さんを覚えてます」

「こっ」

「困っているお姉さん激萌え!!」

「なんでその表情を写真に撮っておかなかったんですか!」

「そういえば、昔本家の長男がものすごくグレてまして、勢い
僕が神社を継ぐような話が出まして、そのときに『ぼっちゃん』呼ばわりもされていたような」

巫女さん『ぼっちゃん』…」

微妙にメイド属性がまじっていて、こう、なんか、アレですな!」

「いろいろたまりませんな!」

「ここにあと
スク水が加わればもう、世界を手にしたも同然ですな!」

「ところで、田舎で虫捕りして戦果をお姉さんに見せたりとかしませんでしたか?」

「捕まえた虫が跳ねてお姉さんの巫女服の中に入ったり、とか」

アオダイショウ捕まえて、持って追いかけたとかいうのならありますが」

「あ、
アオダイショウプレイ!?

「おお、
巫女さんと青大将プレイ!!


だいたい読めばわかると思うが、話をきいた全員が
とりあえず恐慌状態になっていた。
なにか
貧富の差のよーなものを強烈に感じた天野が思わず叫ぶ。

「ぶるぢょわだー!!」「かっ かえせー! もどせー!」

「あ、そうだ。以前お話しした
セーラー服、買っちゃいましたよ」

「セーラー服!? 買った!?」「まあ、資料に」

「でも、上だけなんですよね。スカートは手に入らなかったのです」

「しかし利休さん、なんでそんな
古豪のアイテムを・・・」

「というか利休さんて、そもそも何やってる人なの?」

「う、うちにだって、
えらいひとから贈りつけられたおにゃにょこ用ぱんつが二枚もあるぞ!」(えらいひとのサイトはこちら

「いや、天野さん、たぶん負けてると思うなー」「なにが勝利かよくわからないけどさ・・・」


あらためて貴族と平民の差のよーなものを感じつつも、気を取り直して「とらのあな」に向かう。こういうメンツなので、だいたい
お決まりの順路というものであろう。
ところで、利休さんは新刊同人誌が居並ぶかの店内を見て感動していた。

「みんなすごい。真面目だ。真面目に本を作ってる。ふつう自分で本なんてつくれないもん。すごいよ」

利休さんは、同人誌販売というものをまともに見るのははじめてなようである。
この点からも分かるとおり、彼は
その筋金において決してオタクではない。普通の常識的な、しかし、ちょっと無自覚にも恵まれすぎな過去をもつ男である。
上記の反応も、同人誌というものに
消費生活や創作生活を征服されている人種には、およそ口にしえない純真な言葉であろう。


ひととおり見て回ったあと、感心しきりの利休さんを連れて最上階へ向かう。名古屋の「とらのあな」は、ここがラウンジになっているのだ。あまりに急だったため連絡が取れなかった御当地のmanieraさんともようやく電話が通じ、ここでちょっと休憩しつつ合流をまつことに。さらにBeeさんが会社から帰ってくるのを待った。

おもむろに、入江さんがタブレットをカバンから出す。
利休さんもペルソナ持参だったので、なにか文章を書き始めた。

それにしても、利休さんのキータッチは美しい。

「でも思考と発想にタイピングが追いつかないんですよ」

「それだけ速くても、ですか」

「こういうのは、ホントは筆記したほうがいいんですよ。タイプじゃなくて」

「そういう意味では、天野さんのメモは素晴らしい」

「まず電池切れがない」

「うらやましいなあ」

「嫌味ですか」

「モバイルって、けっこう高いし、それほど使えないですよ」

「その点、わたしのメモは150円で、コストパフォーマンスも最高だ」

「おー」

「変換も一発だし、レスポンスも神経速度の速さ!」

「おおー」

「・・・何か虚しくなってきました」

「いや、でも
一番現実的ですよ」

そんなことを話しているうちにmanieraさんが合流する。(manieraさんによるレポートはこちら

利休さんの秘密とか、いろいろここでは書けない打ち明け話があって盛り上がったあと、さらにBeeさんが合流。久屋大通の「インドや」へ晩飯を食べにいった。(Beeさんによるレポートはこちら

「みなさん、カレーでいいですか?」

「ま、カレー部だからな」

「ところで、実は
ガンダムのララァってものすごくカレーが似合うんじゃないかと思うんですがどうでしょうね」

「天野さん、はいメニュー」

「いや、もう決めてありますよ」「なんです?」

『四種類から選べるナン&カレーセット』!」

「・・・・」

「・・・・」

「・・・・」

「・・・・」

「・・・・」

「・・・・すみませんでした。『イリヤの空、UFOの夏』の感想はそのうち書きます」(でもいいかげん、時機を逸してしまったなあ)

「ところで、シェフは
日本びいきのカナダ人ですか?」「じゃあ、カレーパンを注文しないと」

「どうでもいいけど、難しいギャグが続くなあ」

「あ、ぼくはこれにしようかな、
『ヘルシー・ヨガ・セット』

「おお、なんか食べたら
手が伸びそう

「同じく、
火ふきそう

「テレポートができる
『ターボ』はメニューにありませんか」

「ところで皆さん、カレー作るときって、どのへんから作ります?」

「普通に野菜炒めて肉炒めて水入れて煮てカレールー入れて煮て寝かす・・・かな」

「Beeさんはスパイスから調合するんだよね」「すごいねえ。天野さんは?」

「まずジャガイモ用の畑を借ります」

「おお」

「天野さん最強」

「こ、このギャグいうためにクロカワで三ヶ月がんばりました」

「そんだけのためかい」


「インドや」の本格インドカレーは、普通に美味かった。

インドカレーは初めてという秋月さんが、衝撃の味覚体験に感極まって「すごい」「うまい」を繰り替えす。
インドのカレーは日本のといろいろ違って面白い。日本人は給食で食べたカレーのような味覚こそカレーだと思っているし、わたしも舌がそう感じてしまっている。インドのカレーはたしかに起源だが、舌の経験順でいうと新型の味なのだ。こっちのほうがバリエーションのように思えるし、まあ食べる分には、それで別にいいと思う。


おきまりのコースだが、歌の好きな人間が半数以上なので
自動的にカラオケへ流れる。
いきなり
「愛をとりもどせ」「ヒトリノ夜」「ゆずれない願い」という高音域ソングばかり選ぶ利休さん。でもちゃんと歌えているところがすごい。

「つぎは
『突撃ラブハート』?」

「おー、マクロス7か」

「主役の男が
『俺の歌を聴けー!』っていうアニメ」

「そこだけ聞くと
ジャイアンみたいだなあ、熱気バサラ・・・」

その後
「このまま君だけを奪い去りたい」は、「ONE」の茜シナリオにあった前カレの心情だと思いつつ歌う。「やがて朝の光おとずれるまえに」を「永遠の世界に呑み込まれる前に」と変えるとけっこうよかった。ほかmanieraさんBeeさんデュエットの「生ゴミOH2(電気グルーヴ)、そういえば名古屋も総本山っぽかった「残酷な尊師のテーゼ」「権力ハニー」「ジレンマ」「サンフランシスコ」「氷の世界」そして、それら曲に会わせて、利休さんがタンバリンを打つ。しかし見事なリズムキープである。ホントになんでもできるひとだ。そして「太陽戦隊サンバルカン」の替え歌で「滞納戦隊」をBeeさんが歌う。督促状が何通きても公共料金振込みをつい忘れてしまうという、以前に日記にも登場していただいた「らむださん」滞納生活ぶりを歌った歌詞で、割と近所にお住まいで実体を知っている利休さんがうんうんと頷いていた。そして、想像以上に辛さと量で破壊力のあった「ヘルシー・ヨガ・セット」との戦いですっかりぐたっりしている入江さんがすでに悟った目で狂宴をみている。

もともとがKEY作品のファンの集いみたいなものなので、歌も
「ZOO」のKanon替え歌(編詞:サンフェイスさん)から、どこかAIRな世界の「sweet days」、あゆの心情そのものっぽいのでぜひ堀江由衣にカバーして欲しい「奇跡〜大きな愛のように〜」などなど。そして、順番はどのあたりか忘れたが、山崎まさよしの「One more time , One more chance」の替え歌を、往人かな、ともおもったが晴子さん中心に天野が歌った。(AIRネタバレにつき反転)


これ以上何を失えば 心は許されるの
どれほどの痛みならば もういちど観鈴に会える
One more time 季節ようつろわないで
One more time ふざけあった時間よ

くいちがう時はいつも 観鈴が先に折れたね
健気なその性格が なおさら愛しくさせた
One more chance 記憶に足を取られて
One more chance 次の場所を選べない

いつでも捜しているよ どっかに観鈴の姿を
神社への坂、武田商店、こんなとこにいるはずもないのに
願いがもしも叶うなら 今すぐ観鈴のもとへ
できないことは もう何もない すべてかけて抱きしめてみせるよ

寂しさ紛らすだけなら 保育園でいいはずなのに
星が落ちそうな夜だから 自分をいつわれない
One more time 季節ようつろわないで
One more time ふざけあった時間よ

いつでも捜しているよ どっかに観鈴の姿を
バス停前でも夢の中でも こんなとこにいるはずもないのに
奇跡がもしも起こるなら 今すぐ観鈴に見せたい
新しい朝 これからのうち できなかった「親子」の暮らしも

夏の思い出がまわる
ふいに消えた鼓動

いつでも捜しているよ どっかに観鈴の姿を
無人の駅舎、堤防の上、こんなとこに来るはずもないのに
願いがもしも叶うなら 今すぐ観鈴のもとへ
できないことは もう何もない すべてかけて抱きしめてみせるよ

いつでも捜しているよ どっかに観鈴の破片(かけら)を
からっぽの部屋、制服の影、こんなとこにあるはずもないのに
奇跡がもしも起こるなら 今すぐ観鈴に見せたい
新しい朝 これからのうち できなかった「親子」の暮らしも

いつでも捜してしまう どっかに観鈴の笑顔を
夏影の中、ゴールへの道、こんなとこにいるはずもないのに
命が繰り返すならば 何度も観鈴のもとへ
欲しいものなど もう何もない 観鈴のほかに大切なものなど




歌というのは、自分と共感できたとき初めてココロに入ってくるのだな、と思う。
聞いたことのない歌というのは、正直さいしょだけではよくわからない。でも何度か聞いていると、
そのメロディの言いたいことが分かるようになってくる。最初から共感できる歌詞だと、そのへんも速い。だが、なかなかそこまで聴くに至らないものだ。カラオケで初めて聴く曲などなおさらである。

だが、ここにいる全員がAIRを経験している。こういう、同じものを愛する仲間うちでの、替え歌をまじえたカラオケというのは、いわば共通言語のバリエーションだ。
たとえばアニカラなどでも、頼んでもいないのに合唱してくれたり、必殺技の名前をハモってくれたり、素のままでは恥ずかしくて入れられない「間奏の語り」をきっちり独唱したりと、歌の世界を気取るのが許されるのは、参加者に共通する感動があるからである。
こうして歌うカラオケはいい。
歌っていることが伝わっている感触がある。なにより寂しくないのがいい。


そんなカラオケも途中だったが、天野が刻限なので寂しいながらも半ばで退席する。明日は朝から仕事なのだ。
JRで名古屋駅から大垣へ向かい、そこから車で部屋に向かう。途中でコンビニへ寄って、食べ物をいくつか買った。
エレベータで9階まで上り、カバンの中の部屋鍵を探る。

今日のオフ会もおもしろかった。今日も楽しかった。

ドアを開けるまではそう思っていたが、玄関で後ろ手に扉をしめたとき、不意に
つよい寂漠感に襲われた。
最近だんだんと、
オフ会のあとの寂しさが妙に身に染みるようになってきている。

一人暮らしも半年目。
無理もないかも知れない。

でも、日々の生活のなかにそれを感じないのは、仕事が面白いからだと思う。
ただ、その隙間に友人のありがたみや楽しさが滑り込むから、切なく感じるのだ。
仕事にもオフ会にも救われている。そんな中だからこそ、寂しいのも、決して悪いことではない。
いま感じている大切な大切な寂しさこそが、楽しさの証なのだから。

今日も楽しかった。
そう反対側から実感している。








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