2001.07.31 tue「純正・ヨコハマ買い出し紀行オフ会」

7月29日。
ロメオさんとmasterpieceさんと私という、私を除いてKanon被曝率が異常に低いメンバーによる、ヨコハマ買い出し紀行オフ会があった。

一年ぶりくらいに、ヨコハマの話題が出るヨコハマオフ会である。


いまだけ毎日日曜日(でもそれ以前が、月月火水木金金(土日無しの意))の天野は余裕の参加。

最寄りなのでちょくちょく会えるため、最近「ハーメルンのバイオリン弾き」を貸したmasterpieceさん。いま12巻まで読んだという。「おもしろい。でもフルート死ぬんじゃないかって不安」とのこと。順調に位置エネルギーを稼いでいるようだ。
KanonはDC版で舞のみクリア。

ライフワークのように、ヨコハマ劇中にでてくる「ターポン」という航空機の模型を何基も製作しているモデラー、ロメオさん。彼は現在DC本体を所有するも、Kanonはまだだ。


各務原航空宇宙博物館で再会を喜び、デニーズを急襲する。話題は、全長1メートルのターポンを作るというロメオさんの計画についてだった。
ヨコハマのオフ会は、やはりこうあるべきである。

未確認だが、ターポンの全長は4000メートルと言われている。従って1/4000の模型でも1メートルだ。
ここまで大きい模型の場合、原作中では、窓以外ほとんど描かれていない細部(ディティール)も、キチンと作り込まなければならない。そこが「ターポン解釈」の見せ所となる。
全面リベット打ちのターポンというのも考えたが、それでは宮崎駿だ。

そしてターポンは、垂直カナード翼があるわりに尾翼がないことなどを見ても、まともな航空力学で飛行しているようにも見えない。尾部にある三基のエンジンらしきものも、どういう種類のものか不明だ。
飛行原理不明の航空機である。この解明がポイントとなるだろう。

「まず自力で離陸するのは難しそうなので、衛星軌道で建造された機体だとおもいます」

「もしかして、いまでもそこから吊っているんじゃないか」「そんな飛行原理か」

「ターポンの飛行位置は、実は宇宙空間にあってバーニア噴射によるベクトルだけで推進しているのではないかと思うのですが」(成層圏だったから、これは違うと思う)

「翼の中には数万のサイキッカー(佐倉魔美級)が祈りをあげていて、その念動力で飛行しているとか、そーゆー問答無用のテクノロジーで飛んでいるような気がしません?」

「しないしない」

久しぶりの、ヨコハマの話だった。

ファンタシースターオンラインというゲームがある。やったことがないので人から聞いた話だが、ゲーム中の謎や、レアアイテムは、ゲームをやりこんでいるうちに、誰もが解明し、所有してしまうという。Ver.2が出るまでのあいだ、そこまで行ったひとには、ちょっとした寂しさがあっただろう。満たされなかった時期の方が夢があって、ワクワクしたからだ。

ヨコハマには、まだ謎が多い。
その世界は、アルファさんやココネなど、徹底して人物の視点からしか物語が解説されないからだ。
その裏にある、語られない常識を推察するのが楽しい。

たとえば、食事のできるロボットというのは、自給自足、つまり燃料や消耗部品の精製工場が必要なく、メンテナンスフリーだということ。そして、街灯のような植物の存在からも、これらの設計思想には、資源の枯渇対策を感じる、などなど。


謎はたぶん、ほとんど語られないまま、この作品は終わるだろう。

だが、この物語に、意図的に設けられた「謎」という大胆な空洞で、我々は遊ぶ。

ヨコハマ買い出し紀行とは、そういう「遊べる夢」なのだ。







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2001.07.30 mon「『A.I.』と真琴シナリオ(ネタバレギリギリ文書)

「A.I.」を観た。

場所は「メトロポリス」と同じカラフルタウン。やはりmasterpieceさんと見に行った。

ストーリーは、人工知能(A.I.)をもったアンドロイドの子供(デビッド)が、母の愛を求めて旅をする話である。物語は「スピルバーグ版ピノキオ」の形で進むが、ストーリーの本質は、厳密には違うが「母を訪ねて三千里」だ。

ロボットの悲劇など、SF感動ものの描写はいくつもあるが、斬新な切り口ではない。人工知能に関する考察は、シナリオのはじめにちょっとだけヌルい講義シーンがあるだけで、SF考証のネタにはならない。SFとしては大したことはないと思う。

というか、それ以外のドラマの骨のところで、私がボロボロと泣けてしまったので、そう感じているのだ。


「A.I.」では泣いた。

不思議な泣き方だった。

最後の最後まで何とも思わなかったが、終わってから泣けてきた。エンディングロールでやっと押し寄せる波が立ちのぼった感じで、いまさら涙が止まらない。

クレジットが始まった途端に、あーおわったおわったとばかりに席を立つ馬鹿野郎共を尻目に泣く泣く。この連中がいなかったら、声も出ていたろう。

映画館の中には20人もいなかったが、鼻をすする音が聞こえたのは、私と、誰か知らないもう一人だけ。
そんなに泣けない映画だろうか。


館内照明がつきはじめてもグスグスいってる私と対照的に、じっと待っていてくれたmasterpieceさんは「救われない映画だった」と感想をもらす。

まったく逆に、わたしは、「こんなに救いのあるラストはない」と思った。

それは甘い甘い悲しみを前提とした救いでしかないのかも知れないが。


この差が、この映画に対する評価の分かれ目だろう。
主人公が享受すべき幸福の内容を、観賞者がどう求めているかがポイントだった。




この物語のラスト、何もかも失ったデビッドの、その想いが最後にようやく届く。

その結末は「願いを叶えた側」から見れば、不幸に思えるかもしれない。もっと幸福な生き方、結末があるように思えるかもしれない。
こんなに苦労してきたんだから、もっと幸せな結末があってもいいではないか。
映画を見てきた人間には、そう思う人もいるだろう。彼らにとっては、だから「A.I.」は救われない結末の映画だ。


でも、私はラストシーンを再生して思う。想いが届いただけのラスト。でも、こんなに幸せなことはない、と。

ただひとつの願いだけを、愚直なほど一心に求め続けている人にとって、世間一般の幸福などは、眼中になくなる。

何を失っても捨てられない願いがあったのだ。
何もかも失ってやっと得たもの、そしてその後、永遠にそれを失うとしても、その想いが届いただけで、彼がどれほど幸福だったか。


デビッドは、幸せだ。

わたしにとって、だからこの映画は、これ以上望めないくらいのハッピーエンドだった。




余談だが、これはKanonの真琴シナリオにも、同様のことが言える。

真琴の最後は、祐一側からでは、可哀想におもえるだろう。
だが真琴は、想っていた人に、心から受け止めてもらえた。あの娘はそれで、十分に幸せだったと思う。
それこそ、彼女が望んでいた幸福だったからだ。

端から見ると不幸に見えるかも知れない。切ないかも知れない。

だが、私は思う。

このラストは、真琴の想いが届いただけだ。

でも「想いが届く」くらい幸せなことはない、と。


どこかのサイトで、「真琴の最後は、女冥利に尽きる」といっていた女性がいた。
まったく同意見だが、こういう感想を漏らす人は少ない。プレイヤーの多くが男性で、祐一に感情移入するからだろうか。

真琴の最後は、幸せだった。

こじつけでも理屈で納得しているのでもなく、ただ私はそう感じる。




こういう考え方は、私の中にある女性的な感性によるものだと思う。

同じ感性で感動したのだとすると、「A.I.」は女性向きの映画かも知れない。





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2001.07.29 holy「関西オフ会後記」

「シャンプーは、どうなさいますか」

「とんでもありません」

頭を坊主にしたときの、理容師との会話である。


これをはじめ、妙に好評な先日までの「関西オフ会日記」には、実はネタにしにくくてカットした部分が、あれでもかなりある。

ラーメン屋の前で見た隊長機アンテナ(ザク用)つけたヘルメットのバイカーや、空飛ぶ地下鉄の話、HAY!さんの盗撮講座、日本橋からシャオリン天国へ入獄する際に、風さんに描いてもらった観鈴ちんマップなみの解像度(いや、充分わかりやすかったのですが)の地図、ザナさんちで遊んだCAPCON vs SNK で「オッシャー!」「どしたどしたー!」「楽勝!」「いくぞオラァ!」「ヒャッホー!」「もぅ一丁!」「なめんじゃねえぞーっ!」「よゆーッス!」「決まったぜ!」と、お互いにダンの挑発だけでフルラウンド戦い抜いて両者敗北だけど友情だけ芽生えたエピソード、過去のオフ会の日程のほとんどが実はKEYキャラの誕生日だったという話、ちなみに関西オフ会の日は観鈴のバースデーなので、昼食はラーメンセットにすべきところをお好み焼きにしたので給仕が遅れたのは翼人の呪い説、マンデリンさんが栞としのぶに萌えるのは範囲内だがぷちこは条例という心配の声、そして甘く危険な「安眠効果抜群・親に泣かれる抱き枕自慢オフ会」の予感などなど、それはもう書けないネタが、たくさんあった。

これらをカットしてアップした内容の中でも、特にレスポンスが多いのが、アップ前段階初期テキストの1/3を削除してなお高濃度が危険域な「ザナドゥ王国探訪記」で、

「他人とは思えない」

「上には上がいると思った」

「天野さん、私の部屋には来ないでください」

など、メールで不思議な好評を博している。



メールといえば「眼鏡の委員長」の歌詞が気になるという声もあった。

原曲は「宇宙戦艦ヤマト」のエンディング「真っ赤なスカーフ」で「妄想戦士ヤマモト」の裏表紙にあった歌詞を、歌いやすいように、ほんの一部かえたものだ。替え歌の替え歌である。

カラオケオフも当分ないと思うので、最後に歌詞を出しておこう。




「眼鏡の委員長」 歌:いさきささお  コーラス:岐阜県眼鏡っ娘教団聖歌隊

委員長がかけていた 眼鏡のフレーム
俺のためだと 思ってみるのさ
ゲームのキャラでも いいじゃないか
フィギュアとトレカを 買えばいい

引きこもる オタクの 胸には
萌え萌えの 属性が 欲しいのさ

ラララ・・・
ラララ・・・

ラララ 眼鏡の 委員長





他、「しおりーが喰っていた〜アイス〜クリーム♪」ではじまって「チェックの〜、ストーォール〜♪」で終わるKanonバージョンも考案中。






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2001.07.28 sat「関西オフ会日記・後編:Kanon station」

この時期、普通の連れに「大阪へ行く」と言うと、たいてい「ユニバーサルジャパン?」ときかれるだろう。
だが、我々は違った。

企画:岐阜県の3人にききました。

「大阪と言えば?」

1.Kanonの駅

2.日本橋電気街

3.アニメイト

「よし、ルート決定!」「おい、他は無いんか、こう大阪城とかUSJとか、せめてお好み焼きとかさあ」

そんなツッコミもあったが、かまわず守口市へ向かう。
我々は、奇跡の思い出をたどりに来たのだ。



京阪守口市駅の駅ビル。

この京阪百貨店前の風景は、実はKanonの駅前背景画像のモデルとなった場所だ。

  = 

いざその場所に立つと、歓声があがる。

「ここがKanonの舞台になった駅か!」「うわーモロにこの角度」「ディティールは違うけど」「あ、でもゴミ箱の向きなんか同じですよ」「む、ここであゆとのキスシーンか」「かなり恥ずかしいな」

現場検証と実況検分である。

「主人公が座っていたのは、たぶんあのベンチだな」

「雪つもってるよ」「気温34度だよ」

「おーい、誰かメッコール」

あまりにもKanonのまんまなので、呆然と眺めていた天野が暴走した。

「だ、だましたな!」

HAYさんにつかみかかる

「ええっ!?」

「あゆも名雪もいないじゃないか!!」

「・・・・」

「・・・・」

「・・・・」

「まあ、ほら天野さん写真撮ってあげるから落ち着いて落ち着いて」

 
  不審だ。


「日曜だったら、何人かソレっぽい仲間が来たかも知れないですね」

「駅の守衛さんに「ここで不審な撮影会をしている個人の集団は週に何人くらい目撃されていますか」って聞いてこようかな」

「ここで立ち絵画像と合成してくれるプリクラとかあったら、絶対はやると思うけど、どうだろう」


あの学校や商店街などは別の街がモデルになっているようだが、ここがKanonの駅だというのは間違いなかった。

全員が感慨に耽る。心の中には、雪に埋もれた切ない奇跡の思い出が蘇っていた。我々はいまKanonの世界にいた。

そんな中、shal氏から携帯に電話があった。タカヒロ・Iさんが取る。

「え? うん、これから京橋のアニメイトへ行って探してくるよ。うん。あ、じゃあそこで あゆあゆが待ってるから、もう切るよ。なに? 電波? そりゃ受信し易いという意味ではこれほどの立地は無いけど、大丈夫だいじょうぶ。あ、雪が降ってる」

「・・・・。」

ちょっと沈黙があって電話は切れた。





shal氏の買い物でアニメイトへ行くついでに、天野はついに目当てのアイテムを発見した。

「井上喜久子・海外CD Anime Toonz」である。

海外で販売された日本の有名アニソンのCDだ。なぜか全曲を井上喜久子さんが歌っている。これはアニメイトでだけ販売されている逆輸入品だ。
先日のメイトでは売り切れだっただけに、この入手は嬉しい。

天野は、表面上は、平静を装ってレジに並んだ。

だが心の中は、警察に捕まりそうなはしゃぎようだった。



こうして大阪での予定はすべて終了した。

願わくばカラオケで「眼鏡の委員長」を歌いたかったが仕方がない。
Kanon駅の案内など、いろいろ面倒を見てくださったHAY!さんに別れを告げて、我々は岐阜へ帰る高速に乗った。



この関西オフのなかで、コミック専門の書店などに何度か入った。
書店の仕事をやめたとはいえ、本屋にはいると、つい歩きながら整頓したり、返品期限間近の雑誌を探したりと、身体に染みついている書店のクセはなかなか抜けないようだった。

退職してから、いろんなメールをいただいた。

ご苦労様でした
お疲れさまでした

ホントに案じてくださっていたことがわかる、ありがたいメールの数々である。

でも、一番うれしかったのは、

「天野さんの店は遠いけれど、それでもたびたび行ったのは、天野さんが知り合いと言うだけではなかった」

という、この言葉だった。自分は、誇りを持って書店をやっていたこと、その仕事内容が認められていたことを、このとき実感した。
自分はいい仕事に関われたと思う。

でも、もう自分は書店員ではない。
それが実感できるのは、もう何週間か経って、新刊台や平台が、見たこともない本ばかりになったときだろう。







天野に嬉しい言葉をかけてくれた本人は、しかし、このオフ会で、かなりダメ度が進行していた。

マンデリンさんである。

彼は我々のように、中学生の頃からベーマガ片手にパソコンにベーシックでプログラムを打ち込んでゲームをしたり、カリオストロの城の台詞をすべて暗唱したり、ビューティフルドリーマーをテープがすり切れるまで繰り返し見たり、ZZでプルが死んだ回を見て仲間内で泣いたりするよーな長い時間をかけて耐性を身につけた昔からのアニメ・ゲームファンではなく、ごく最近、そう

ここ2年ほどで一気に転落してきた急性の中毒患者

だった。

いまや、彼はそっち方面に向かって驀進中である。彼がそれまで、比較的まともで普通な生活をしていただけに、我々はそれがちょっと心配だ。

もちろん、杞憂だという声もあるかも知れない。


だが、この渋くてちょっと恐いBMWの内装が、

帰途につく頃には

 ( ↓拡大図 )


 


こうなっていたのは、ちょっとまずいと思うがどうだろう。






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2001.07.27 fri「関西オフ会・中編:ザナドゥ王国探訪記」

私は、ザナドゥ氏の部屋の、あまりの判りやすさに、ちょっとの間、呆然としていた。

前回、写真で見た限りの感想では「シャオリンしか写っていない」と思ったが、来てみて分かった。
テレビやゲーム機、衣服と書籍の類を除くと、この部屋には、真剣に守護月天グッズしか置いていないのだ。
これでは、どこをどう撮影してもシャオリンしか写らないはずである。

部屋をぐるりと見渡す。天井を除くほとんどの壁面には、シャオリンのポスターやタペストリーが貼られ、本棚の中には、おそらく一枚の守護月天ポスターのためだけに購入したと思われる、MEGAMI−MAGAZINEが何冊も収まっており、CDラックは、ザッと見たところ守護月天関係ばかりのようだった。本棚には何巻かだぶっているコミックスと、守護月天系デスクトップアクセサリー全種類が箱のまま山積されている。全部買ったとすると、いったい、いくらかかったのだろうか。。

本棚の上には、一体10000円ほどのフィギュアが箱のままドカドカ積まれている。これだけでも一財産だ。

はっ、この大きいのは海洋堂の1/8シャオリン(28000円)!? あの、普通の人間には、ほとんど製作不可能といわれたアレですか!?

(残念ながら箱のままでした)







ところで、今回は全貌を公開すると、なんというか大変なことになるので、画像はこの一枚だけにしたい。

そして、こまごまとした守護月天グッズで飾り立てられたパソコンまわりで、最も目を引くのがドール(1/8〜1/10)だった。モニター周辺には、その髪の手入れは実の母がやっていらっしゃるとゆーシャオリンのドールが何人も立っている。

いったい、いくつの守護月天グッズがあるのかと、指さして数えていると、「これは数えましたか?」ザナさんが色々持ち出してきた。

ラミネート加工する機械まで個人で購入している彼のカード・コレクションは、ガンガンバーサスのカード中シャオリンだけで50枚強、それ以外のトレカやシール、とにかくシャオリンの描かれたグッズを合わせると、その数、およそ1000点超という話で、収納ケースを開けてみると、心配したとおり、中にはビッシリとカードが詰まっていた。

その集中ぶりは部屋の調度品を代表とする日常生活を、かなり浸食しているようだった。

来客用とも思えないミニクッションが、まず守護月天。ふと時間を見ると、時計も守護月天。アニメと原作との二つの時計が運用されていた。なぜか置いてあるビーチボールも離珠。部屋の入り口にかけられたウインドベルは、よく見ると支天輪。写真立てには当然のようにシャオリンが微笑み、カラーボックスに飾られたこれは・・・・こ、これはもしや着せ替えですか!?

もはや、すでに「なにか物があると、それは守護月天グッズ」という状態である。


ザナさんが、嬉しそうにこれらグッズの解説をしている、その最中にも、私の目にはハッキリと見えていた。

先ほどからドンドン数を増し、いまや一個中隊ほどになったダメ妖精が、部屋を覆い尽くさんばかりの勢いで轟々と渦を巻き、巣に群がるミツバチのごとく彼の頭を、首がへし折れそうな勢いで撫でくり回しているのが。






夜も更け、運転でお疲れ気味のマンデリンさんが休む。
その横で、ザナさんは、毛布を丸めて枕にしてまで、抱き枕はちゃんと「抱いて」寝ていた。

それにしても彼は、なんという幸せそうな顔で眠るのだろう。



ふとパソコンの画面を見る。
デスクトップピクチャーで当然のように微笑むシャオリン、そしてモニター横にたたずむシャオリン(ドール)を見ているうちに、自分のなかに「シャオリンって、かわいいなあ」という思いが湧いていることに突然、気がついた。ザナさんの寝顔を、ちらりと見る。

いま、私が感じているシャオリンへの愛情は、おそらく、彼から横溢して、この場に残留している思念なのだろう。
それが自然に結界(たぶん八角形)となり、いま私の精神を浸食しているのだ。



改めて、畏怖の念をこめて彼を見る。

彼の投入っぷりは、その余波だけで、ほんの1時間ばかり同席に座っただけの、さしてファンでもなかった人間を、同じ病気に感染させてしまう。

猛毒のような萌えだった。





さすがに遅くなったので、私も休むことにした。
横になり、天井を見上げる。部屋中のシャオリンから見下ろされているような危険な悦びがあった。



ここは王国だ。


私はふと思った。


ここは、ザナさんの王国。

王様はザナさん。

国民兼お妃さまはシャオリン。その総数1000人くらいの小さな国。

でも人口は増加の一途。

彼は国王の使命として、国民をまもり、人口を増やしていくことに私財をなげうっているのだ。




納得して寝返りをうつ。

天野の身体が大きいせいで、部屋が狭い。申し訳ないな、と思いつつウトウトしていると、ザナさんが廊下で寝ているのに気がついた。
いつの間にか移動して、我々の寝場所を広くしてくれたのだ。

ああ、ザナさんはいい人だな。

そう思った。

いつも静かな笑顔をたたえている、シャオリンのドールがちょっと嬉しそうだった。








明けて翌朝。
起きてきたマンデリンさんが、昨晩に見逃した守護月天グッズを興味深げに見ている。
とくにドールに感心があるようで、さわっているうちに、その靴が脱げてしまった。
慌てて戻そうとするマンデリンさんである。

だがそのときである。
起床したザナさんが目撃したのは、まるでマンデリンさんが、シャオリンを逆さに吊してスカートの中を覗いているかのよーな光景だった。

「はっ!? これは殺意の波動!?

背後のザナ氏から物騒な殺気を感じる。

振り向くと、国家防衛に萌えたザナさんが、ゴウキ張りの闘気をゆらめかせて立っていた。

「ザ、ザナさんのゲージが上がってる!? そのポーズは、まさか瞬獄殺ですか!? ザナさん、これ誤解だ! たぶん、って聞いてねーし・・・」

その朝、彼の部屋から小さな悲鳴が聞こえた。






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2001.07.26 thu「関西オフ会・前編:大阪日本橋ドマニアアイテム・ローラーゲット作戦」

夏休み突入と三連休の日曜のためか、新幹線乗車率200%という7月22日。
大阪・神戸に住むザナさん、かぜさん、HAY(へい)!さんに招かれてのオフ会があった。

つながりこそヨコハマだが、もはやその面影は形も残っていない。これは、KEYを中心とした人間関係のオフ会だ。

岐阜からの参加者は、ここ半年ほど「ONE」(KanonやAirのスタッフが以前に別会社で作ったゲーム)のヒロイン「里村茜」との恋の奴隷となり、最近では、自機の性能限界いっぱいの精度で茜の抱き枕を真剣に制作中なタカヒロ・Iさんと、先日、車を購入したマンデリンさん、そして私である。

我々は、マンデリンさんの運転で、高速を一路、大阪へ走る。
彼の車は、BMW 318 is、モントリオールブルーの1800である。すごい車だ。

 + 

BMWのせいなのか、それとも助手席に乗っている男がこんなだからか、なんとなく他の車が避けていく。

非常に走りやすい。





こんな車に、こんな男が助手席で、道すがらの話題はギャルゲーである。

「マンデリンさん、七瀬! 七瀬いいですよ!」

世の中というのは、パッと見ではわからないものだ。



大阪・吹田のインターで、かぜさんと合流した。

彼のバイクに誘導されて、すぐ後ろをしばらく走る。
真後ろから見ていると良くわかるのだが、彼の運転はうまい。そのバイクは、すでに手足の延長のようだ。

「戦艦」と呼ばれる、750ccの大型オフロードバイクである。
これ以外にも、滝の上から突き落としたり崖落ちしたり滑走したり対向車の下にもぐりこんだり炎上しかけたりと、想像を絶する酷使をされているDT200WRも所持。これで近所のダートコースを走ることもあるそうだ。

よく見ると、このバイクには、あちこちにがある。大切に乗っている一方で、限界まで走りを追求している証だ。

さらに、よく見ると、ハンドル脇のカウルに、名雪と神奈のステッカーが貼ってあった。彼女らヒロインに撃墜された証だった。




たどりついた先で、HAY!(へい)さんと会う。

詳しくは聞かなかったが、彼はコンピュータ関係の仕事についている人物で、会社には、A1サイズの巨大なプリンターがあることを話してくれた。

A1サイズのプリンターである。

ということは、抱き枕用の画像も、イラストレーターのような拡大しても線の精度が落ちない形式の画像なら、いくらでも印刷できる、というたいへんに美味しい職場環境である。

だが、当然、業務用プロッターなので私的に利用することは禁じられている。
しかも、プリンターサーバーに記録が残るので、黙っていても誰が何を印刷したか分かってしまう。

彼のいずれ得る称号が、賢者のそれか、あるいは勇者のものか。

それは、そのプリンターが握っているような気がした。




かぜさんのすすめで、最近ちょっと味は落ちたが、吹田の辺りでは一番美味いというラーメン屋で昼食をすます。チャーシューが厚くて美味だった。


その後、ここのオフ会日記ではかなり有名になりつつあるザナさんが合流し、一路、大阪日本橋へ向かう。

大阪の電気街である。中古ショップやジャンク屋、ソフマップなどのパソコンショップを見て回った。

「うーん、ウインドウズのことはよくわからん」

「うーん、マックのことは、さっぱりわからん」

ウインドウズのアイテム売場にいるときは私が、マック専門の売場にいるときはマンデリンさんがそう漏らした。


ウインドウズもマックも根本的なところは同じなのだと思うが、OSの構造などが違うため、やりたいことがあっても操作がわからない。ということが、それぞれのユーザーには多々ある。

以前、書店のレジ(ウインドウズ)に、本部から新しい設定を施すよう指示がきた際、その場にいた全社員がマックユーザーだったため、ファイルのコピーという、ごく簡単な操作ができないことがあった。

みんな大慌てである。マック歴数年の社員が雁首揃えて何もできない。
ちょうどコンピュータ書担当のS社員がいたので呼びつけて操作させてみると、両手を上向きに上げて

「ぼく、パソコンのこと、よくわかりませんから」

と涼しい顔をして降参する。

「貴様、コンピュータ書の担当だろうが!!」

全員で彼の襟首をつかみ上げ、自分のことは棚上げしてみんなで叫んだ。

やむなく天野が自分の携帯電話を取り出す。

「ああ、もしもし○○さん? ちょっとすみません、あのウインドウズのファイルのコピーのことなんですが・・・(中略)ええ、あ、できました! ああ、どうもすみません。このお礼に眼鏡かけた美汐の絵、そのうち描きますから。はい、どうも」

携帯の通話を切る。
部外者(眼鏡っ娘教団茨城県支部長)に助けてもらって、事態は収まった。とりあえずもう一度、S社員の首をみんなで絞めておいた。




そんなことを思い出しているうちに、一行は、パーツ屋へ入る。

パソコン自作用の、ではない。コンデンサーの一ヶやスイッチ部品単体など、電子回路の最小単位を、皿に集めて買う、本当のパーツ屋だ。
天野にはサッパリ分からないが、マンデリンさんが何か作るつもりらしく、度々寄った。

理解できるものを探して歩いていると、タカヒロ・Iさんが何かブツブツいっているのに気がつく。

「声優さんの「うぐぅ」とか「あうーっ」とか「いや〜ん!」とか「ほえ〜」とか「ああ〜ん、メロメロよお〜ん♪」とか「・・・嫌です」とかいった音声データをFMトランスミッターで流し放しにして、ラジコンの各所に設置したこのリレーとプッシュスイッチが、衝突で押される度に数秒だけ小型のFMラジオ回路に受信して、ルーフ裏に取り付けたスピーカーから音声が流れる、と。よし、この店でパーツはそろうな。ふ、ふふふふ。うふふふふふ。」

どうも去年の夏のあれらしい。




ところで今回は、タカヒロ・Iさんの友人、shal氏からのお使いも頼まれている。

「大運動会」のドラマCDやレツゴーなど、妙に古いオタクなアイテムばかりなので、日本橋のソレっぽい店を、皆でコツコツと回った。ローラーゲット作戦である。

これには時間がかかった。たいてい誰かが、なんらかのアイテムに引っかかって店を出られなくなるからだ。

マンデリンさんが、さりげなくデジキャラットのガシャポンにはまったり、天野が井上喜久子さんのCDをチェックしてたり、タカヒロ・IさんがOAV版ONEの、店頭プロモーションビデオの前で、個人的に時間を止めていたり、ザナさんが 守護月天グッズで、もっていないものがないことを確認していたりするうちに、夕方になってしまった。

最終的には阿倍野のアニメイトまで行ったが、shal氏のリクエストはコンプリートならず、3点ほど、とりあえず入手できただけだった。
後から聞いた話だが、彼の要望する商品は、秋葉原で二日粘って見つからなかったアイテム群だという。見つからないわけだ。


これだけ長く電気街を歩くのは久しぶりだった。

通販でしか手に入らないかも、と思っていた、マックのデュアルディスプレイ用のカードが手に入るなど、天野にとってはとても有意義な一日だった。

何件もの店を歩いてみて、日本橋(大阪)と大須(名古屋)との違いが、なんとなく分かる。
これはマンデリンさんの談だが、電気街ゆえにパソコンショップや電設材店、オーディオ用品などの店があるのは同じとして、アニメ・コミックファンのためのショップが少ないのだ。
ゲームソフトや、アニメ・特撮のDVDを扱う店などが、名古屋には、少ないように思える。

あくまで比べての話だが。




日が沈みはじめた。

自分ちの庭のように日本橋を案内してくれた、かぜさん、HAY!さんと名残を惜しみ、岐阜の3人と、ザナさんとで食事に行った。

「さて、食事と言えば、肉まんか、アイスクリームか、タイヤキか、イチゴサンデーか、牛丼か、ハンバーグか、そうめんか、ラーメンセットか、カツカレーか、ワッフルか、テリヤキバーガーか、だな・・・」

「天野さんがONEやったから、少し選択肢が増えたな」

「でも、あんまり変わらん。KEYの新作はまだか」

とりあえずロイヤルホストへはいる。

妙齢の男四人が、食事をしながら語る話題は「シスプリ」( = シスター・プリンセス)である。

いまさら説明もいらないと思うが、深夜に放送している、妹が12人いるという「苺妹妹(これ知ってる人いますか)みたいな妹属性に萌える人を対象にした専門アニメだ。

天野は主人公の設定がよくわからないが、一夫多妻制の国の男と母親が再婚したため膨大な数の妹が発生したとか、そういう状況ではないかと密かに踏んでいる。


カレーやハンバーグを食べながら、誰がツボかを熱く語るザナさんとタカヒロ・Iさんである。

「誰もヒットしない」という割には「第二話だけ見逃した」と、熱く語るマンデリンさんである。

どれも実際にいたら腹立つと思うけど、強いて好みを言えば咲耶かな、と見てないようでしっかりチェキしてる天野である。

ああ、俺ってちょっとダメかも、と誰もが自覚しながらも、皆の顔はゆるみ、うれしそうだった。



天野は、ある妖精の話を思い出した。

自分が、いかにダメかを話す「ダメ自慢」の際(今だよ今)、なぜ人間はこうも嬉しさを感じるのだろう。

それは、ダメ話の最中には、実は「ダメ妖精」が頭を撫でてくれるからだ。
だから、こういう会話中というのは、我知らず、嬉しいのである。

「濃爆・おたく先生」参照

ふと横を見る。
そのとき、私の目にはハッキリと見えた。

隣席に座るザナさんの頭を撫でている、一匹のダメ妖精の姿が。







今夜の宿泊先はザナさんの部屋である。
そう、今年のはじめ、冬の飛騨であったオフ会の際、一枚だけ部屋の写真が公開された件のあの部屋である。

母君に挨拶して部屋に入った。



ふすまを開き、部屋に入った瞬間、誰もが息をのんだ。

ザナさんがニコニコして部屋に招き入れてくれる。





そこで、我々は見た。

部屋を埋め尽くす、おびただしい数の「まもって! 守護月天」グッズと、

ザナさんの直上で、頭髪がすり切れんばかりにあたまを撫でている、シャオリンによく似た、1ダースほどのダメ妖精を。







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2001.07.25 wed「オフ会前夜」

会社を辞めて、是非一度やってみたかったヘアスタイルを試してみた。

丸坊主である。

そしてヒゲである。

接客業では決して許可され得ない顔面構成だった。
ちなみに、接客業の頭というのは、こういう感じである。

99年の11月に新聞に載ったなつかしい絵だ。
まあ、それはさておいて。

「何ミリくらいにしますか?」

丸坊主にしてください、という注文を聞いた茶髪の床屋が、ちょっと狼狽してから、そう聞いてきた。

「じゃあ3ミリくらいに」

適当に答える。

「分かりました」

おもむろに家庭用のような電動バリカンを持ち出すと、彼は神経質に、かちかちかち と三つ目盛りを上げた。
3ミリということなのだろう。

バリカンのモーター音が耳元を撫でる。いきなり髪の毛の束がボトボトと落ちていくのが視界に入った。

うわああああああああああああ

私は、心の中で悲鳴のようなものを上げていた。

「1ミリだと真っ白になっちゃいますからね〜」

茶髪が甲高い声で話しかけてくる。私は心の中で念仏のように「大丈夫大丈夫」と唱えていた。


大丈夫だ。

精神の高い人間は丸坊主が似合うはずだ。

まるであらゆる煩悩から解放された僧侶のような高尚な顔になることだろう。

うむ、私のほどの男なら間違いない。うむうむよしよし大丈夫大丈夫大丈夫(以下無限自己暗示)





数分後。

一番最後に入った客ながら、誰よりも早く散髪は終わった。
代金は子供料金より安かった。

私は、何かが間違っているような髪型になっていた。
私の持つ条件か、説自体かは、さておいて。




家に帰って、しみじみと鏡を見てみる。

あるはずのものがない違和感だろうか。とても不思議な感じだ。
ちょっと時間がかかったが、結局この坊主頭にも一日で慣れた。


気に入ったのは、頭を洗うのがものすごく楽だということ。

顔を洗う。そのまま後頭部までずるりと石鹸の泡で洗えるのだ。




そういえばバイクに乗る人間としては、違反で危険と分かっていても、ノーヘルメットで乗ってみたいという願望がある。あれはきっと気持ちが良いだろう。

そこで色々考えた。せっかくこの頭なのだから、ガンメタリックのペンキを頭皮に塗りつけ(危険)、警察署の目前を、捕まるまでどれくらい走れるかという記録を無駄に作ってみるというのはどうだろうか。もし捕まったら、今度は薄いヘルメット(バイザー無し)を肌色に塗り、袈裟を借りてきてスクーターで同じ警察署前を走ってみよう。これでも捕まったら多分、警察もそうとう気まずいと思う。そしてヘルメットを取ると、下から坊主頭が出てきて、みんなで笑う・・・とゆー、ほのぼの路線のオチを狙っているのだがどうだろうか。




それはともかく、明日より関西地方でのオフ会だ。

客観的に見て、この頭は目立つ。いっしょに歩く人は気まずいかもしれない。

そう思って、床屋の帰りにバンダナを買った。巻いてみる。む、意外に似合うな。

ついでに数珠も買った。手指にからめてジャラジャラ言わしてみる。これも意外に似合う。



コンセプトが「不審人物」なので、あとは丸いサングラスと、ヒゲが必要なところだが、前者は眼鏡の上にかけられないし、後者は時間がない。

鏡の前でポーズを取ってみる。



Wao ! It's COOOOOOL !
ていうか寒っ




充分に不審人物だったので安心し、その日は休んだ。





参考資料:髪型の変遷

 →  →  (予想される最終形態)






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