wind

(2006.11.20 )




強い風に、翼が折れそうなくらいにたわむ。
私には、この翼は、もう重すぎた。

姉妹の全てを打ち倒し、彼女らが時を渡る拠点である鞄をすべて破壊し、すべてのミーディアムから指輪をもぎとった。だが、そうしてアリスゲームに勝利してローゼンメイデンの頂点に立ってみても、その体はいまも焼成された人形のままであり、待ちわびたおとうさまの迎えもなく、そして、何が変わったわけでもなかった。

ただ、姉妹を失っただけ。
永劫のときを、ともに生きる同族を失っただけ。

なにも、残らなかった。
なにも、起きなかった。

ただ、風が吹いているだけだった。





雑誌を追いかけていないので、いまのローゼンメイデンがどんな状態なのかサッパリわかりません。
とんでもない勘違い絵になっていなければいいのですが、とりあえず蔵出し第二弾(第一弾はハーメルンのこちら)の水銀燈です。

なぜ蔵に入っていたかは、このドールらしからぬプロポーションのため。少女の体格という解釈で「アリスに成れた水銀燈」として描き直してもよかったのかもしれませんが、わざわざブーツを脱がして球体関節も露わに描いたこの脚が惜しかったので、そのまま仕上げました。

この中途半端さも蔵入りの理由ですが、体格から表情から原作の水銀燈とは完全に逸脱しているというのが最大の問題点でした。


ところで「ドールたちがアリスという少女に生まれ変わる」という現象が起こるとして、それが「アリスゲーム」の闘争的勝利の末に発動されるとは、わたしには思えません。生命が誕生するには、かならず愛情が必要です。誕生するそれが純粋なものであるなら、なおのこと。
その解釈が許されるなら、下肢をドールのまま晒しているこの水銀燈は、不完全な、あるいは歪んだ、もしくは本来の経路を通過しない愛情でアリスになってしまった姿と考えられるかも知れません。















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