新しく越してきた下宿は、前の部屋よりボロだった。
さすがに、家賃が極端に安いだけはある。南側に窓はあるが、そちら側は大きなマンションが並んでしまい、正午の前後2時間ほどしか日が射さない。
変わりに西側に大きな窓と、移設されたベランダがある。冬場はまだ良いが、夏になるとここから射し込む強烈な西日が、熱線となって部屋を過熱するだろう。引越の翌日、佐祐理と舞は、とりあえずダンボールから座布団と茶器だけ出して、南向きという割りに小さな採光窓から、貴重な暖をとっていた。わずかな日照面積にぴっちりと座布団をならべ、変温動物のように日光を浴びている。
部屋が変わって緊張したのか、きのう寝付けなかった舞は、まだ半分ねぼけていた。
「佐祐理・・・」
「なあに」
「・・・くまんばち」
寝言だった。
「くまんばちがくるよー・・・」
クスリの禁断症状のようなつぶやきだったが、それも佐祐理には愛おしかった。
なにか平和な絵が描きたくなって、一枚あげました。
舞、名雪化してます。
佐祐理さんは、ほとんど動物でも飼っているような表情です。
最初は、前に「めがね」で描いた部屋にしようと思っていたのですが、より古びた空気感が欲しかったので、さらにボロい下宿になりました。佐祐理さんの家はお金持ちなのに、なんでこんな下宿なんでしょうね。家出でしょうか。家具を描かなかったので、まるで引越直後のようです。そんなわけで新居の一日目として描写、そして祐一との三人暮らしという、ほぼ確実に破綻するであろう異常なシチュエーション(女の子には耐えられないって)では出せない、女性の親友二人の暮らしという雰囲気で描いてみました。てことは、祐一と何かあったんでしょうかね。うーん。