正義と愛
sakura deadend
(2004.12.17)
聖杯戦争の最中にあって、最悪のサーヴァントを降ろした妹を、凛はその手で討った。
桜は血を分けた姉妹であり、ともに暮らした仲であり、自分を慕ってくれた妹である。しかし魔術師としての遠坂凛は憂悶する士郎を尻目に、ごくあっさりと処断を下した。街を滅ぼす勢いの呪いに侵された妹を、自ら手に掛けたのである。
多くの魔術師が、あるいはサーヴァントが倒れ、生き残りと聖杯をかけた戦争が激化していく。そのなかで、凛と対峙した衛宮士郎は、うなる剣風と発力される魔術と、そして燃えたぎる眼光を交えながら、目の前の冷徹な魔術師を問いつめた。
桜の姉としての遠坂凛は、それでよかったのか、と。
このエンドを巡った遠坂凛は、自らの魔術師として見事すぎる行動力に苦しめられていたに違いない。
桜の恋人である士郎に、その始末をつけることはまず無理であり、さりとてこのまま放置しておけば、街が滅ぶ以上のどんな災厄が訪れるか知れない。
彼女は頭がいい。だから、自分が何をすべきか、そして、どうすればそれが葛藤なく実行できるかも、わかっていたのだろう。
情を差し挟まず、ただ知略と行動力のみで実行する。そして結果が出たら、それを二度と振り返らない。それだけだ。
だが、それをしつこく振り返らせようとする男がいた。
衛宮士郎は、遠坂凛が自分以上に辛い想いをしたことに、気がついていたのだ。
Fateといえば、わたしはセイバーと藤ねえなのですが、なぜか一枚目も二枚目も絵に描いたのは凛です。すみません、そのうち藤ねえはともかく、セイバーだけはどうにか描こうと思います。
そしてこれは、「櫻吹雪が風に舞う」でSSのイラストを描く前に、遠坂凛というキャラクターのことを何度か絵にしようと思って描いた、いわば習作というやつの一枚でした。一番まともに、そして表情も実に彼女らしく描けたので、挿絵とは別にカラーで仕上げることに。しかし、泣きながら顔を歪めて、こっちを睨みつけてくる女の子というのは、普通に描くと酷いありさまになってしまいます。ぎりぎり破綻しない線で、どうにか仕上げられました。
怒っており、悲しんでおり、恨んでおり、自分の心の中にズカズカと入ってくる士郎を責める表情。
でも、その感情は実はすべて、桜の姉としての、遠坂凛自身への自責なのです。
線画段階のとき、この絵に台詞をつけてそれを表そうと考えていましたが、仕上げてみると、絵が雄弁に語ってくれてます。彼女が追求する士郎になんと応えたか。その言葉は、この絵があれば別に考えなくてもよさそうです。