iPODシャッフルを購入したはいいが、自前の環境ではどうやっても使えなかったという「独り言以外の何か(仮)」の管理人:Su氏が、面白いネタを送ってくれた人にコレをプレゼント! としてはじめた企画に、サイトでも度々紹介されていた「夜想曲」の天野が「トップページ用の絵を作成することに関しての最優先リクエスト権」を出品。最終的にはアミダになったものの見事それも突破して、このようなメイドさんが誕生した。
後にSu氏は就職活動において内定を得る。同じ頃、なぜかまこみし文庫などでも縁のあったせいる氏と天野が飯を喰っている最中に、くつしたとこっとんぱんつと腹マイト装着のネコミミ眼鏡の神が降臨。やおら爆発。この衝撃による種割れの威力で、以下のささやかな企画が誕生。
「サイトのイメージキャラをデザイン」が突然に「アニメっぽい企画化」へと変貌を遂げたのである。
せっかく乗りかかった泥船なので12話分のストーリーダイジェスト(というか、最初は「予告編」だけのつもりだったが変形)に形式を整えてSu氏にみせたところ大喜びで認可(一部内容については、ややすてばちに黙認)。彼と天野がチャットで交わした会話ログ(一部に真実が含まれている場合があります)などを織り交ぜての公開となった。
オープニングテーマもエンディングテーマも作詞に至れず、また随所に不十分な表現や設定の不備が散見される出来ではあるが、Su氏の前途を祝しつつ、この企画・設定を贈りたい。
天野拓美
原案:天野拓美+巫部せいる ストーリーダイジェスト:天野拓美 イメージSS:巫部せいる
推奨環境:下記の「メイドのみみはネコのみみ」ストーリーダイジェストをもとに、脳内アフレコ・脳内作画・脳内BGM・脳内編集・脳内マスタリング・脳内初回特典限定フィギュア造形・同脳内魔改造の可能な環境を推奨。最終的にはフィギュアだけ抜かれたDVDボックスが2万円(税込)でワゴンセールされているとこまで脳裏に浮かべば問題ありません。
☆ 1 ☆
雨滴をうける手のひらに穴が開きそうな、そんな土砂降りの中。
アニメとかで見るようなものとは違う、古風なフレンチメイド服の少女が、駅舎の屋根の上に立ちつくしている。
あたたかい色の金髪は雨に濡れそぼり、リムレスの眼鏡は散らされた雫で翠色の瞳を隠していた。首から下がるiPODシャッフルが、濡れて重くなったエプロンに張りついている。
少女はうつむき、身じろぎもしない。
ややあって到着した鈍行列車。雨の中、線路を鳴らしながら発車する列車の屋根に、いつのまにか後ろ向きで膝を抱えて座っているメイド少女。
せめて雨を避けるように、ユニットクーラー部に身体を押しつけている。
表情のよめない眼鏡の上で、背後から吹きつける雨に押されるように、ふわりと耳が出た。あたまと同じ色の、ネコの耳。
尻尾が水をきらうように、身体にくっついていた。
(暗転)
「わたしは、猫である。名前は、まだない」
オープニングテーマ(坂本真綾推奨)
Su氏の大学生生活は、ごくありふれた日常に彩られていた。
近所の集会場に粗大ゴミがあつめられているのもいつものことだ。たいてい横目で見過ごすが、今日は蓄音機が捨てられているのが妙に目に入った。百合の花みたいなスピーカーがついた、本格的なものにみえる。一瞬、足がとまったが、そのまま気に留めずに彼は帰宅した。
このアパートは、春になると猫がやたら啼く。
だが、もう秋も深いというのに、さっきからずっと一匹の猫が屋上で啼いている。
月に吼える猫の切なげな声。誰かに懸命に呼びかけている声。それは哀調を帯びて細く、不意に激しく。総じてかの声は寂しそうだった。
どうにも気になるので、ベランダから支柱をよじ登って屋根を覗く。どんな猫かみるだけのつもりだったが、そこには予想だにしなかった眺めが展開していた。
月光を浴びて、古そうな蓄音機を抱えた少女が月に吼えている。我が目を疑いつつも、しかしSu氏も目を離せない。
裾や肩袖がふくらんだそれは、よく見ればメイド服。さらに、ネコミミと尻尾がはえている。そして、少女の涙が月光に光っていた。
呆然と見つめるSu氏。
どれくらい経ったろうか、庇(ひさし)の軋む音で目があう二人。とっさに逃げようとするメイド少女。だが、足がしびれていたのか膝下不如意で転倒。打ち所が悪かったのか完全に気絶してベランダに落ちる。「うわあっ」とっさに手を伸ばし、どうにか受けとめるSu氏。
両腕に抱きかかえたその少女は、ちゃんとした体格ながら成猫くらいの体重にしか感じられなかった。
むしろいっしょに確保した蓄音機の方が重いことに、Su氏は驚いていた。
気絶した少女が見る、古い英国屋敷での夢。19世紀そのものの暮らしと、彼女が仕える貴族然とした老人の正体は?
そして目を醒ました彼女にきいてみれば、行くあてどころか、最近の話題が「世界大戦が終結したそうです(1918年)」というあたりから更新されてないのでおそらくここ100年の記憶らしい記憶がないこのメイド少女の正体とは?
「では、あの、今日からこちらにお仕えさせていただくと言うことで、さっそく御近所のみなさまに挨拶してきます」
「わああ、ネコミミ尻尾のままメイド服で行かないで、この御時世に!!」
第一話「月に吠える」
「すみません、なぜかこの格好にしか化けられないみたいで・・・。あとは本来の猫の姿くらいしか」
「ああ、やっぱりホントはネコなんだね・・・。いや、それにしてもなんだろうなあ、この作為的な設定は・・・」
これは、なぜかヴィクトリア朝時代の常識しかもたずいきなり現代に現れた感じの、そしてたまに野生にもどって月に吠える(猫が月に吠える習性があるかはさておき)(あといきなり日本語しゃべってるあたりの設定もさておきの)ネコミミメイド少女・サラ(CV:田中理恵推奨)と、いいかげん就職をキメないとほぼ確実にニート化→パラサイトシングル→中年まで親もとでぬくぬくと育つファンタジーな息子にコンボがつながりそうな、どこにでもいるニュースサイト管理人・Su氏(高橋広樹推奨)との、微妙に痛ましく全体的にゆるゆるな感じの物語である。
第一話の副音声
「えー、そんなわけでアニメ第一話ですが」
「この話をメールでみせてもらったときには驚きました」
「そもそも、せいるさんが就職の内定祝いに、このメイドさんでSSを書いて贈る、っていう話から発展したんだけど」
「それが、ちょうど天野さんと食事してるとき話題に出たんですよね。そしてその場で、あれよあれよと言う間に」
「いや、一瞬あの話をしてたバーミヤンの時空ゆがみましたぜ?」
「『あつくほとばしる』天野と、『くろくそそりたつ』せいるの、夢のコラボ!!」「悪夢の一種だなあ」
「そう、1+1は三にも四にも10にもなるのですね!」「むしろ虚数って感じですが」
「ばかものォ!!」
「ひいっ」
「1+1はなあ!」
「35だッ!!!」
「し、師匠!」
「よく憶えておけ!!」
「ハイッ!脳に刻んでおきます! 彫刻刀で!」
「いや、それ死ぬから」
☆ 2 ☆
最初は湯沸器もつかえなかったが、徐々に現代になれていくサラ。
だが、いまいち言ってることと現実の把握にズレがあるように思えたSuは試しに聞いてみた。
「サラ、これ何本にみえる?」片手の親指以外を開いてみせる。
「うーん・・・」目をぎゅーっと絞ってピントを合わせようとしてからサラは応えた。
「・・・六本ですか?」
「俺はケンシロウか」
第二話「爆誕! ネコミミメイド眼鏡っ娘!」
「あの、わたし眼鏡の『つる』をかける位置に耳がないんですけど、どうしたら」
「だいじょうぶ、この眼鏡は魔法の力で浮くんだよ。こうフワフワ〜って」(つや消しフラットな目で)
副音声
「サラが眼鏡かけてるのって、最初から目が悪かったからだったんですね。てっきり夜中にパソコンばかりやらせたからだと思ってました」「イラストいただいたときは、このメイドさんが更新作業するって設定だったし」
「ここでは、Suさんが他に教えられることもなくてサラはまずパソコンを憶えた、って設定なんだけど。あ、でもSuさんが最初に言ったのもロマンかもなあ」
「ロマン?」
「夜中に暗がりでライトノベルを読ませたり、夜中に暗がりで萌えイラスト描かせたり、夜中に暗がりでギャルゲー(エロゲでないあたりがなけなしの良心)やらせたりして視力を落とし、好きな女の子を眼鏡っ娘に改造するというロマンじゃよー」
「し、師匠・・・」
☆ 3 ☆
サラが大事そうにもっていた蓄音機。これは彼女の「よりしろ」である。
年代物であり、いまは壊れてしまい使用には耐えない。
蓄音機に代わるものなら、現代ではこれかな、とiPODシャッフルを見せるSu氏。栄のアップルストアで苦労して手に入れた一品だ。
試しに、サラのねこみみにイヤホンをはめてみる。そして、再生ボタンをクリック。
と、同時に消えてしまうサラ。
あわてるSu氏が気づいたのは、イヤホンから漏れ聞こえる「ごしゅじんさまー」という声だった。
「うわー、PCにつないでiTUNESを起動させるとサラが認識されてるー」
「せまいですー。このエロゲのファイルちゃんとアンインストールしてくださいー」
「いや、どうでもいいけど、蓄音機と同義のものならよりしろにできるんだな」
「みたいですねえ」
「あと、ほんとにどうでもいいけど、おまえ、容量1MBないのな」
「でも、あの、ドラクエの1はあの内容で60KBくらいしかなかったって話ですよ? それにフロッピーディスクに封印できてしまう猫にくらべたら格段に容量豊富です」
第三話「林檎の杜」
「さらにどうでもいいけど、おまえ無駄な知識ふえたなあ」
「ニュースサイトのお手伝いで鍛えられてますから・・・」
副音声
「最初にいっておくけどSuさん」
「はい」
「サラをデュプリケートしてハーレム作ろうっていうのは無理だからね」
「・・・・」
「・・・・」
「エスパー?」
☆ 4 ☆
外に出るときはiPODシャッフルに入って移動することもできることを発見したが、いくらヒトの形をしていても「メイドさん」というのは現実的にあまりに目立つ。なので、サラ単独の外出は基本的に猫の姿になってだった。
だが、うっかりメイド姿で部屋から出たその瞬間を、アパートの隣人に目撃される。
永露(ながつゆ)センセイ(高山みなみ推奨)。
そう呼ばれる彼女との、それが出会いだった。
第四話「センセイの鞄」
「社会にも出てないくせにメイドを飼おうとは、いい御身分だな。えー? Suよ」
副音声
「なんだか癖のありそうな女性。永露センセイ。こういうキャラ出したかった! 天野さんフォルテさんとかハガレンの先生とかスーパーロサギガンティアとか大好きだし!」
「はぁ。あとこのセンセイって教師なんですか」
「学校の先生だったのは昔の話ってことで。かつての教え子がたまに遊びに来てセンセイって呼ぶのを聞いてたから、永露センセイ呼ばわり」「メイドとご主人だけじゃ間が持たないし、なによりメイドさんリラックスできないし、第三者は絶対に必要だと思って」
「うーん、ご近所さんで両親と仲が良かった若作りなおばさん(お姉さんと呼べ)みたいな?」
「ま、そんなところで。あと、旦那さんと死に別れてる。乱暴だけど優しい、お姉さんとおばさんの中間くらいの美女。最初にサラを見たときはいきなり拉致監禁と勘違いして『この腐れ外道ー!!』とSu氏に、あきらかに素人ではないハイキックを喰らわしてた」
「なんか謎っぽくて素敵なひとだなあ。・・・ぼくの扱い非道いけど」
☆ 5 ☆
永露センセイに面倒を見てもらえるようになってから、掃除機の使い方など、生活能力が徐々に身についてきたサラ。現代の常識はいまだ知識レベルのものしかないが、紅茶などは完璧に淹れられるので、彼女がきてからその辺が充実している。
「いってらっしゃいませ」
Su氏を大学に送り出したあと、掃除洗濯などひととおり終わらせて、ホッと一息つくサラ。
余裕ができてきたからだろうか。
しばらく意図的に無視していたが、最近の彼女には、どうしても部屋のすみが気になる。
横目で見つめながら、なにかと葛藤してる表情。
ついに誘惑に負けて、フラフラと四つん這いですり寄り、部屋の要所に顎の下から首筋をこすりつけだすサラ。
きれいに掃除したあとで、つい、自分の匂いをつけたくなってしまうのは彼女の本能だろうか。
しつこくしつこく身体をこすりつけた後、やっと安心できたのか、眠くなって座布団の上で丸くなるサラ。だんだん陽がたかくなって暖かくなると、自然に身体がのびた。
今日みた夢は、泳ぐ猫缶。
そんなことを考えながら、サラはぼんやり目を醒ます。
大きく猫のびをして、料理を作ろうかと考えているとき、不意に棚から食玩(村田蓮嗣コレクションのシクレ)が落ちて転がった。
反射的に飛びかかってゴロゴロ転げまわるサラ。ぱんつがみえる。(※ここ、せいるさんの案ですから念のため) ややあって正気にもどり、あわててスカートをもどすが、我に返った拍子に顔は真っ赤になっていた。
パンパンとスカートをはたき、幾分ひきしめた表情で、あらためて台所に立つ。
いけないいけない。お料理をつくらなきゃ。
「おかえりなさいませ」
どうにか完成した料理をよそって、主人をねぎらうサラ。
彼女は、ご主人の前では、けっしてネコ本来の仕草をみせない。
それは、メイドとしての自制であり、彼女の誇りでもある。
第五話「猫の日」
「・・・(御主人様は、あの猫缶をどこで捕まえてくるのだろう)」
「サ、サラがぼくのことを冷めた仕草で熱く見ている・・・。フ、フラグ?」
副音声
「いや、いいですねえ! 萌えます」
「うむ、よし」
「そういえば気になっていたのですが・・・、あのメイドさんの絵、下着はいてない様に見えるんですけど・・・気のせいですか?」
「断じて気のせいです」
「ええー」
「あらかじめ言っておきますが」
「はい」
「うちの娘に不埒な妄想したらな、Suさん」
(ため)(極超低音で)
「次の日から、歳はとれねえぜ」
「ひいっ」
「冗談ですよ冗談。・・・はんぶんくらい」
☆ 6 ☆
「木を隠すなら森の中」という言葉がある。ならばメイドを隠すその場所は、やはりメイド喫茶であろう。(この考えはたぶん間違ってます)
一般人区画では奇異に映るメイド服姿だが、通称「ダメビル」と呼ばれるグッドウィルアミューズメント館近辺では「巫女茶屋(現在は閉店)」に出勤する巫女さんがアーケードをゾロゾロ歩いてたりするので、さして珍しい光景でもない。
そういう前提のもとで、ここまではiPODに入って運んでもらい、はじめて人混みをあるくサラ。Su氏は「メイド喫茶をまわるついでに就職活動をした」というくらい手遅れなので、この界隈については詳しい。
だが、入店しようとしたメイド喫茶のメイドさんと、サラは衝突した。
「メイド喫茶にメイド服で来るというのは、いわば道場に道着を来て来るようなもの。これは道場やぶりと同義、すなわち、我々への挑戦と認めます!」
なぜかはじまる給仕を含めた料理対決。
最初は、どうなることかと思ったが、センセイのおかげで最新調理機器での料理のレパートリーがふえていたサラは、なんとか勝ち抜いていく。
そもそもが丁寧なので、どれも味が深い。そして徐々に客が気づきはじめる。
彼女がいるだけで、やすっぽい造りの内装であっても、そこが19世紀の英国のお屋敷であるかのような錯覚を憶えることに。
「洋服を着ていても、着物をきた演技をすることで、和服姿を錯覚させる役者がいるというが・・・ぬう、これはすごい」
なぜか見に来ていたセンセイがジャンプ漫画の解説役のように呟く。
そして、つぎつぎと破れていく下級メイドの向こうに、サラに対してあからさまな対抗心を燃やすメイドがいた。
「あ、あれはッ!」宮下あきら調の顔をしたギャラリーが叫ぶ。
「なにーっ 知っておるのか雷電!」
「メイド球団『平針ツンデレバッファローズ』のピッチャーにして4番。コスプレネーム・紅紫五月雨ちゃん(とりあえず苺衣(めいらじ)のなかのひと推奨)!」
「『わたおに』みたいな名前だな。するとアレか。あのメイド服の下には隠し腕があったりするわけか」
「ただでさえ扱いの難しい自尊心のかたまりのごときツンデレのみで構成された球団で、それでもトップに君臨する恐るべき実力派だ!」
「その実力は料理勝負となにか関係あるのかな・・・」
だが、直接技を交えてみて、五月雨はサラの完璧さに驚く。これは商業であることをベースとしたメイド喫茶にはなかったセオリーだった。
一流は一流を知る。だが、それだけに巻きおこる嫉妬。
だが、サラの主人のために磨いてきた技のひとつひとつが、五月雨に悟らせる。
メイドは、1人のご主人に仕えるのが基本。ふたり以上の主人に仕え続けることはできないのだ、と。
ここでサラはひとりひとりの客に、唯一の主人に接するのと同じように相対しているのだ。感動しないわけがない。
「わたしの完敗だわ」
勝負は決まった。
だが、店が混んでくるのを察知した瞬間に、失意から立ち直って店を切り回しはじめる五月雨。
邪魔にならないよう、離れたところから見つめるサラ。
「わたしは、時間ばかりかかってしまって、あんな風にたくさんのひとを一度に満足させるようなことはできません」
最期にした一瞬の握手。
「たくさんのヒトの役に立てる。五月雨さんの仕事ぶりは、素晴らしいと思います」
第五話「友達」
「ところでセンセイ、なんであんな街にいたんですか・・・」
「大須って言ったら、服屋の街だろう」
副音声(今回はSuさんからのメールより抜粋)
ヲタとメイド喫茶と本物のメイドという構図はシュールといいますか。エムメロでこんなことやったら有名人になっちゃう」
「そういえばご主人様」「なにー?」
「わたしというメイドがありながら、なんでわざわざメイド喫茶に行くんですか?」
「あー・・・うん、あれだ。そう、哲学的な問題だな」
「確かにおまえは良く出来たメイドなんだが、なんかこう・・・心がくすぐったくなる感覚が無いんだよ」
「そう、(仕事が)完璧すぎて(動きに)萌えがない!」
「よし、今日おまえはメイド喫茶で萌えを学んでくるんだ!僕の為に!」
「・・・」
「人間って、難しいなぁ・・・」
実はSu氏はドジっ娘属性だったという罠。(あくまでSu氏のイメージ)
メイド喫茶の萌えはある種のイメージプレイと媚びの産物なので、本物のメイドの素晴らしさとはちょっと違うところにあると思うのですよ。メイドとは日常的に世話をする存在の筈なのに、サービスを受ける非日常を楽しむというは矛盾してるなぁ、と。いや僕は有能なメイドさんが<b>大好き</b>ですがね。
☆ 6 ☆
「センセイ、先日はありがとうございました。サラへの料理指導のおかげで、勝負に勝てました」
「うむ」
「それにしても、センセイは料理うまかったんですねえ」
「亭主は料理っていうと『生卵』しか作れなかったからな」
「それ、料理じゃないとおもいますが」
「まあ、礼の気持ちがあるならつきあえ」
先生の部屋で催される酒宴。
「こ、このBGMは・・・」
「なんです?」
「そうか、サラ君は19世紀までの記憶しかないんだったな。説明しよう。これは、20世紀を代表するエンターテイナー『チャー・カトー』がストリップのコントのときに使用していた曲だ」「別名を『タブー』という」
「センセイ、それ正式な題です」
「19世紀にはたぶんなかった曲だろう」
「スルーですか・・・。あと、センセイ。さっきの大運動会の盗作ですカラ」
目つきが怪しくなってきたセンセイに、本能的に身の危険を察知したサラが腰をうかす。
「え、ええと、あ、あのわたし紅茶のおかわり淹れてきますね。ぬるくなっちゃってますから・・・」
「かまわん、脱ぎたまえ」
「えっ ええー!?」
第六話「宴会」
鼻血が止まらない上に酔いつぶれたSu氏を膝枕するサラに、センセイが問う。
「うちの子に・・・はならないか」
「はい、わたしの御主人様は、この方ですから」
「ふふ」
「あの、じゃあ、あの、お姉さんということで。そうです、わたしお姉さん欲しかったんです」
両手をあわせてサラは微笑んだ。
副音声
「1クール目の折り返しにきました」
「ええと、じゃあこの企画自体は4クール52話くらいまで考えてアニメ化するから」
「うわ、ホントですか」
「もちろんだ。だからSuさん、とりあえず6000万くらい用意して。それだけあれば私財でアニメつくれるから」
「・・・・」
「心配するな、私とせいるさんで・・・」
「おお、原画と脚本っすか!?」
「そのアニメの同人誌つくってあげるから」
「・・・・」
「小説本だけど」
「いや、お金はともかく、つーか自分が主人公のアニメを作るなんて、ヲタの夢ですよね!」
「ものすげえマスターベーションでもあるが!」
「壮大な、世界最大のオナニーアニメ・ここに完成!」
「でも、6000円くらいにまかりませんか」
「うーん、それじゃあ1クール分のストーリーダイジェストがいいとこだなあ」
☆ 7 ☆
猫は、たまに人語を解してるように思えるときがある。
サラが仲良くなった猫も、そんな雰囲気をもっていた。彼はサラよりもずっと老成して見える猫だった。
天気のいい日には、いっしょに屋根の上でくつろいだ。雨の日には、相談事をした。
今日おぼえた道具の使い方のことや、二丁目の猫は縄張りの張り方が厚顔無恥だとか、ご主人がなかなか起きないことや、自分以外でひとに化ける猫をみたことがないか、などなど。それはほとんどサラからの一方的な語りかけだったが、それでもサラは同朋を得たようでこころづよかった。
だが、あるときを境に、彼は突然すがたを消してしまう。
何週間かして、他の猫からきいたのは、彼が交通事故で死んだということだった。
遺骸はすでに保健所に始末されたという。それは、なにも残らない、寂しい寂しい死に方だったという話だった。
よく耳をすますと、センセイの部屋にも控えめにぐしゅぐしゅと鼻をすする音が聞こえる。
ベランダから屋根にあがってみた。案の定、サラがいる。
「今日は啼かないの?」
「あ、近所迷惑らしいので・・・。えへへ」
「よこ、いい?」
「はい」
「・・・・」
「・・・・」
「あ、あの・・・」
「ん・・・」
「すごく立派な猫(ひと)だったんです。わたしなんかよりずっとしっかりしてて・・・つよくて・・・頼りになって・・・」
またこみ上げてきたサラを、センセイは抱きしめた。さみしかったのね、とは口にせず。
「・・・うわあうわあぁああんっ」
胸のなかにぶつけられる声は、悲しみ、というより怒りが響いているようだった。
第7話「道」
「わたし、立派なメイドに、そして立派な猫になります。どっちも、とても難しいことですけれど」
副音声
「天野さん、天野さん」
「なんだ」
「ちょっと聞いてもいいですか」
「うむ、聞くがいい」
「この話って、ぼくが主人公です・・・よ・・・ね? でもなんか途中からぜんぜんストーリーに関わってないような気がするんですが・・・。この7話とか特に」
「ああ、それはだって、ほら、天野さん的にはサラが主役だから」
「ええっ じゃあぼくは、準主役だったんですか!?」
「ははは。そんなわけないだろう。ははは」
「じゃあ、主役が二人いるわけですね!」
「いや、君は背景だから」
「うわあ」
「ああ、でも大丈夫。8話は君の話」
「そうなんですか。よかった」
「まあ、出てくるのはサラとセンセイだけだけどな」
「そんなあ」
「でも、エロゲマニアを主人公にして、メイドさんなんか出したら自動的に18禁コースだろう。そうならないためには!」
「そうならないためには・・・?」
「Suさんは、書き割りみたいな存在として描くしかないと」
「ひでえや天野さん」
☆ 8 ☆
Su氏の就職試験が迫っていた。
妙に不安がっている彼のことを、サラはセンセイに相談する。
「あいつはいままで学生で、これから未知の社会に出ていくんだ。不安はあって当たり前だろうよ」
「・・・そうですが」
「ただ、それだけじゃない。社会で生きていくってことは、生活のためだけじゃなく、いま学生やってるガキどもにみせていく使命が生まれるのさ」
「みせていく?」
「そう、大人の仕事を」
「お仕事って、なんなのでしょう」「以前にお仕えしていたお屋敷での生活とは、だいぶ時代が違うようです・・・」
「そうでもないさ」
第八話「面接前夜」
「大人の仕事は、楽しそうに生きること。それだけだよ」
副音声
「ところで、天野さん。・・・やっぱり、ほとんどぼくのいいとこはありませんでした」
「もう、その代わりに永露センセイの男前なこと! 主に天野さんの脳内で!」
☆ 9 ☆
Su氏の内定が決まった。
ささやかながら祝宴を設けるサラ。だが、ご主人の生活はあいかわらず夜更かしと寝坊ばかりで、彼女は不安だった。
「永露センセイ、ご主人さまがこのところずっと朝になっても起きてくれないんです。夜中ずっと更新作業してたみたいで・・・」
「あぁ」
「社会にでてからこんな風では大変です。いまから早く起きる習慣を身につけていただきたいのですが・・・」
「しょうがない、じゃあわたしがむかし旦那にやってた起こし方を教えてやるから、それを真似てみな」
「はい、ありがとうございます」
「オラァ、飯だぞ飯ィーー!!!」ガンガンガンガンと、すりこぎで中華鍋を打ち叩き続ける永露センセイは、人間の一番神経にさわるビートを、見事にリズムキープしていた。
「ひいっ」たまらず頭を抱えて飛び起きるSu氏。なりやまない打撃音。哀れなほどにのたうちまわるご主人に、サラが駆け寄った。
第九話「夜の住人」
「め、めめ、飯です飯ーーっっ」ごわんごわんごわんごわん。(妙に遠慮がち)
副音声
「・・・いや」
「・・・うん」
「「むしろ、こんな風に起こされたいですな」」
☆ 10 ☆
今日も月に啼くサラ。仲間を捜しているその声に、しかし誰も応えてくれない。
猫でもなく、人でもない彼女。自分は何者なのか、啼いても啼いても思い出せない。寂しい。でもメイドとして働いていると、なぜか充実する。蓄音機とiPODシャッフルがいまはよりどころ。たまにデータになって。そしてたまに蓄音機の引き出しに猫姿で入って寝ると妙に落ち着くことも不思議だった。そして夢に見る英国の風景とお屋敷にいる自分。あれはなんなのだろう。
ニュースサイト更新の手伝いでネットを巡回している最中に、サラは偶然に人猫の集会の情報を見つける。
だが、少し読み進めたところでページの自動更新設定が働き、目の前でかのサイトは突然に404となった。何度もF5を押すが、返事はNot Foundのままだった。呆然とするサラ。
でも、だいたいの日時場所は憶えている。サラには、そこに自分の正体を教えてくれる何かがあると確信していた。
だが、それを相談するや激しく反対するSu氏。
「だめだだめだ! お前がいなくなったら、その間は誰がニュースサイトを更新するんだ! 正確には、ぼくがエロゲやる時間がなくなるじゃないか!」
「鬼かお前は」
傍観してるセンセイの前で、はじめて衝突する二人。
あきらかに異常な状態を土台に、それが仮定であるからこそいっしょにいられるという現実。
もしサラの「本来の居場所」が確定したら、彼女はここから去らざるを得ない。
それは、ともすればサラを奪っていく「本当の御主人様」が現れることにつながる。
それを無意識に認めたくないSu氏。
サラの胸を熱くするいくつかの記憶の断片。
Su氏に仕えながらも、どこか別の主が自分には居るかのような違和感。
サラはそれをどうしても見極めたかった。
メイドの精神は、本来、二人の主人に同時に仕えるようにはできていないのだ。
「勝手にしろ!」
「勝手にします!」
部屋を飛び出してそのまま隣のドアに飛び込むサラ。ショックを受けているサラを「よしよし」と慰めるセンセイ。
そして翌日。いまにも泣き出しそうな空を見上げながら、サラはアパートを出る。
様子を見に来て、突然の出立にでくわして驚き、「もう、帰ってこないかも知れない」という言葉に動揺し、つい憎まれ口を叩いてしまうメイド喫茶編以来の登場になる五月雨。そしてそれでも、サラに感謝されてしまう。「いままでありがとう。ご主人さまをよろしく」と。五月雨はやや呆然と、サラを見送った。
第十話「旅立ちの朝に」
生ネコミミメイド少女という、比較的ありえない存在の彼女が、自分の正体を知る旅にでる。
それは、目を醒ましてからいままでの全てを、ともすれば全て失うことになるかもしれない旅だった。
そして物語は、第一話オープニングにつながる。
☆ 11 ☆
ついた街には、異様に猫が多かった。
猫に変な目でみられるサラ。猫化して歩いているのだが、iPODを首に巻きつけているからだろうか。それでも人間よりも、猫のほうが彼女に注目しているようだった。
突然、サラは黒服の青年に声をかけられる。面食らって適当に話をきいてるふりをするうちに、猫の集会についての情報が得られた。やはり一瞬だけみたあのサイトの情報は正しかったのだ。
迷いつつも、ついにたどりついた「人猫」の集会。
いろんな人猫が、思い思いの位置に座っている。よくみればさっきの黒服青年もいた。
見上げると満月。でも月が緑色に輝いている。人の気配がない路地は、なんらかの結界に思えた。風さえ止まって感じる限定空間。
それぞれに、誇らしげに名を名乗る人猫たち。
だが、彼女が名乗った瞬間に場が凍った。ついで猛烈な罵声が飛ぶ。
彼女の「サラ」という名は、仮の名だった。彼女はそれが自分の名前だと、当たり前のように信じていたが、まわりの人猫はこぞって「この名無しめ!」と侮蔑する。
仮にも人猫であろうに、猫神の集会において偽りの名を口にするとはなにごとかッ! という強烈な叱責。
無理矢理に人の姿を解かれて追い出される。iPODシャッフルを身体にからませたまま、路地から転がりでてきて、あやうく車にひかれそうになるサラ。
そのころ、あのアパートでは、なにも手に着かないSu氏が投げやりな更新作業を行っていた。サラにとっては二日ほどしか経っていなかったが、結界外では一ヶ月ちかくが過ぎようとしている。掃除も洗濯もゴミ捨てもされていない。ここ何週間かは外出もしていない。彼の部屋は、一言で言うなら「カメラがとらえた衝撃映像」と言った有様だった。そこへ、いきなりドアを開けて押し入る永露センセイ。
「ノックもなしにはいってくるなんて、南極条約違反ですよセンセイ」
第十一話「猫の泉」
呆然としたサラの瞳に映る、一瞬前まで人猫がたくさんたむろしていた路地。
そこにはもう誰もいなかった。
「わたしは・・・誰なの・・・」
副音声
「あー、しまった!」
「どうしたんですか天野さん」
「Suさんを『おにいちゃん!』と慕うツインテールでニーソックスで『ツンデレ』でしかも『やきいも』とみせかけてその実はサラの秘密を探ろうとしている新聞記者志望で部活は忍者同好会とチアリーディングのかけもちという妹キャラ出すの忘れてた!」
「あー、あの、もういまので胸焼けしそうなくらいに充分ですから。次回でもう最終回ですし」
☆ 12 ☆
なにがなんだかわからない。路地のまわりをウロウロしてみたが、どうしても集会に戻ることができなかった。
しばらくして現れた黒服の青年になんとか人の姿に戻してもらったが、それでも先刻までいた緑色の月下のような空間は、見ることもできなかった。
青年が謎の言葉で話し続ける。そのなかで理解できた内容。
半人半猫の彼女は、自分の真の名を見つけなければならない、ということ。
真名をみつければ、自分は「人猫」になれるのだろうか。
だが、真名にまったく心当たりがないサラ。そもそも、どうして私は人になろうと思ったのだろう。
青年は、本来の手順を踏まずに人猫になっている彼女に注目していた。
自分のアイデンティティを否定されて見失い、落ち込むサラ。
降り出した雨に打たれ、呆然としつつも、iPODシャッフルを濡らしちゃいけないと両手で握りしめたとき、偶然再生された曲。
それは、ランダム再生で流れたクラシックのMP3だった。
その曲が、蓄音機のノイズにまみれた旋律に重なる。そこを糸口に、封じられていたサラの記憶がほどけていった。
20世紀初頭。
多くの使用人をかかえていた貴族が、社会制度の整備によってメイドを雇えなくなっていった時代がやってきた。
より条件のよいところへメイドが流れていくなか、とうとう1人もやとえなくなってしまった没落した貴族がいた。その主人を思うあまりに人化けした猫が彼女だった。可愛がってくれた主人を助けたい。その一心での変身である。屋敷に以前いて、猫をかわいがってくれたメイドの姿そのものに化けた猫。(なので彼女はメイド服にしかなれない) 彼女の仮名「サラ」も、もとはそのメイドの名前だ。そのときの主人が、サラを見てそう呼んでくれたから。だから、サラはサラだ。
蓄音機の本体下部にあるひきだし。よくそこに潜り込んでは叱られたり、可愛がられたりした思い出がある。それは、そこが彼女の「よりしろ」になった起源でもあった。
最初はドジばかりだったが、やがて仕事もきっちり憶え、年老いた主人との静かな、しかし充実した日々をすごす。
だが、おとずれた主人の死。
整理され、売り払われる家財道具。
いたみの激しかった蓄音機は、ごく安値で、ほとんど投げ売りのようにされた。
主人の死を看取ったショックか、サラはずっとよりしろである蓄音機のひきだしにとじこもってしまう。
そして100年。
アンティークブームで、日本に輸入された蓄音機だが、そもそも壊れていることと、鑑定ミスのため廃棄される。粗大ゴミの集積から転がったそのショックで解放され、彼女は目覚めた。だが、お屋敷を離れたことで、彼女の記憶は消えていたのだ。
そして目覚めた夜。まわり中が全部しらないものばかりの中で、本能的に仲間をもとめたサラ。
自分はなぜ目覚めたの。
もうお仕えする人もいないのに。
悲嘆にくれたあの夜の思い出とともに、サラは老貴族と交わした最後の言葉を思い出す。
「わたしが紹介状を書いてあげよう。大丈夫、おまえならどこに出しても恥ずかしくない」
「欲しいものがあったら好きに持っていったらいい。そうだ、この蓄音機はサラのものだね」
「お前を大切にあつかってくれるひとのところへ、奉仕しにいきなさい。いいね。そして一度きめたら、その主人に仕え続けるんだ。いいね」
「お前が『さすがはかの家のメイド。忠実で立派な働きぶりだ』と褒められることが、前の主人たる私への何よりの賞讃なんだ」
「大丈夫、泣くんじゃない。心配いらないさ。おまえは英国で一番のメイドだよ」
仕え尽くした老貴族の死。「幸せだった」という感謝の言葉とともに閉じる記憶。そして遠く離れた日本での突然な再出発。Su氏との出会いは、そのときだった。
ああこの人だ、と思った。かつての御主人様に約束したのだ。私は英国で一番のメイドだから、次の御主人様のことも、きっとお幸せにすることができると思います、と。だから、この人のためにがんばろうと、わたしは思ったのだ。
あの夜に。
「サラ!」
幻聴だろうか。ほんの三日も離れてないのにすごく懐かしい、御主人様の声が、聞こえる・・・。
振り返るサラ。
幻のように現れたSu氏。
その胸の中に、おもわずサラは飛び込んだ。
落ち着いたサラが、電車に揺られている。今度は屋根ではなく、席に座っていた。
路線のどこかでゴスロリ系コスプレイベントがあったらしく、半コス状態の乗客ばかりの中で、メイド服がさほど浮かずにカモフラージュされている。
となりの席にはSu氏が。
「どうして、この街にいるってわかったんですか」
「ま、ニュースサイト管理人の実力かな」
センセイに、あきらかに素人ではない「鬼瓦(ガード不能)」でSu氏が気合いを入れられてから数分後。
自サイトで「うちのメイドを探しています」と、かなりなりふりかまわず情報を求めたところ、付いたのはほとんどが「妄想乙」「それなんてエロゲ?」「エイプリルフールには遅すぎm9(^Д^)プギャー」等のある意味妥当なレスばかりだったが、たった一通だけヒントが書かれたメールが届いていた。差出人は「クロネコ」 出発前に御礼のメールを送ったが、いまチェックするとリターンされていた。
場所を特定できたのは彼のおかげだったが、帰りの電車をコスプレイベントの終了時刻に狙い打ちできたのは、Su氏の情報力だろう。
「おまえこそ、大丈夫だったのか、あれ」
「はい。もう、大丈夫です」
サラの真の名。
彼女が猫だった頃の名前は、もう覚えていない。
また、そもそも真の名は猫だったときつけられた名でもないという。
彼女の名前は、彼女の存在意義。
彼女がこの世界にその姿でいることを認められたとき、彼女の真名が生まれるのだろう。
黒服の青年にエスコートされて、もう一度だけ猫の集会に参席したサラ。
そこで彼女は宣言する。
かならず、自分の真の名を獲得する、と。
それを探す旅は、はじまったばかりなのだ。
次の集会は一年後。
それまでに、名前をさがしておいで。
青年はサラを、いまの主人のもとへ送り出した。
第一話冒頭と同じ構図で
「わたしは猫である。名前は、まだない」
「それを探す旅が、これからはじまるのだ」
隣の席のSuさんにもたれかかる。
「このひとといっしょに」
第一部・完!
「さあ、帰ろう。あの部屋へ」
「はい! 御主人様!」
「具体的には、おまえ以外だれも掃除するやつがいないせいで、そろそろ生命誕生の気配に満ち満ちあふれたあの部屋へ!」
「はい・・・」
エンディングテーマ(アツミサオリ推奨)
副音声
「いまの主人につくすのが、彼女の存在意義のひとつであることを第一部の結論という形にすえて終了。その上で、真名を探すことが、全編を貫くテーマですな」
「あと、この黒服の青年猫は、通信回線にとかに侵入できる化け猫ね。サイトを作ってて、集会の告知とかしている」
「あぁ、やっぱりジ○ブリー○ーズ・・・」
「モデルはSuさんとこの黒猫」
「おおっと」
「それと『ねりこちゃん』のときも思ったけど、企画ごっこって面白い! ゆうきまさみや出渕裕あたりは、この遊びを作品として実現したわけだ。『パトレイバー』や『ガルディーン』もこういう遊びから生まれてるんだなあ。まあ、だいぶスケール違うけど」
「いや、あのぼくの性格とかぜんぜん描かれてないんですが。そのへん、ちゃんと設定して・・・」
「ほら、そこはそれ。アニメだから!」
「理由になってません」
「あと、ダイジェストはここまでだけどこのあとも『第二部:Suさんとの暮らしと、人猫になろうとする仔猫の話』とかあるからな」
「おおー」
「そして『第三部:煉獄編』」
「なんですって?」
「あと『第四部:宇宙編』」
「は?」