夕庭

catch ball

( 2005.11.03 )




「マリオネット盲点を狙った消える魔球!」

「いや、ふつう狙えないから」

「新幹線なみのパワーとスピードが出せるハクション大魔球!」

「佐倉魔美でも無理じゃないかしら」

「殺人L字投法!」

「ジェノサイドスクリューとか、最近だとCOOLドライブとも言うわね。もはや伝統魔球だわ」

「じゃあ、メイドキャップのスイッチを切り替えて・・・パラメットボール!」

「あなた、いつの生まれなの?」

「えー、先輩だって、ブンの青シュンとか好きじゃないですかー」


 笑いながら犬を狙った魔送球が、きれいに先輩メイドのグローブに入った。




夜想曲で、2005年初冬の一時期だけトップを飾った絵です。不思議と好評でした。

あらためて見ると、なんかものすごくシュールですが「お屋敷の裏庭でキャッチボールするメイドさん」というのがテーマ。
そもそもは「眼鏡っ娘マリーンズ」とか「ツンデレバファローズ」とかの、バンプレストでもやらないような「史上最強打線をエロゲーにしたら萌えるよな!」スレみててどうしても描きたくなったというのが動機です。一度こっちでも「メイド球団」という設定でいろいろ書いたこともあり、一度は絵にしてみたく思ってました。

日常のありふれた情景を構成するのがメイドさんである、というだけで妙にナマヌルげな萌えがあります。ちなみに、このジャンルの最高峰は、個人的に「まほろさんとスポーツバイク」ですが。日常のありふれた風景ネタ+メイドさんとなるといろいろ浮かんできます。「食料の買い出しに来たメイド軍団が三心のレジで行列つくってる絵」とか。いや、岐阜と愛知北部に住んでる人間にしかわからんネタですが、今後も思いつくままにそういうのを描いていこうと思います。

ところで上の魔球ネタが全部わかって、なおかつここに来てメイド絵を愛でてる人というのは、なんというか、こう「青春をしくじった方々」とゆー感じがあって親近感わきますね。仲良くしましょう。



ま、それはともかく、以下に製作途中での保存画像と、その解説を。
製作環境:PowerMac G4 450・WACOM FAVO・Painter7



どこか別棟の三階くらいの部屋から見下ろしているような構図にて描き始める。
画面の端と端にメイドを配置したのは、キャッチボールの距離感を出したかったため。ホントならもうちょっと離れているべきだが、そうするとただでさえ表情も描けないくらいのメイドさんがさらにちっこくなるので、この配置に。

お屋敷の裏庭で、というつもりだったが二人の距離感をとるためのパース線が、なんとなく実線として生き残ってしまい、後に石畳の舗装路になってしまった。

手前の先輩メイドさんは一発で描けたが、投球してる後輩メイドのフォームは、結局最後までいまいち掴めなかった。




★メイド野球★

そういえば先日(2005.10.30)の関西コミティアでは、メイドさんたちがお屋敷対抗の野球試合をするという同人誌が売られていたと聞く。「メイド野球」とか「幼女チアガール」とか野球モノがもしかして同人界では流行っているのだろうか。いや、周囲を見渡してもとてもそうは思えないし、あってもごく一部の流れだろう。だが、それを企画遊びで考えてみるのも面白いと思う。設定だけ、ちょっとやってみよう。
 

左下の空間が寂しかったので、何か生き物をおいてみようと考える。いままでのパターンだと猫なのだろうが、ここでは犬。猫だと植え込みに隠れていて姿が見えないような印象があったため。
ともあれ全体像はここで掴めた。




★メイド野球★

不良メイドの溜まり場になっていた野球部部室に・・・いや、なんか違うな。

昔、野球選手を目差していたこともあるが、故障で夢を断念した御主人のために、メイドたちが立ち上がるというのはどうか。コーチ兼カントクが御主人で。最初は、あくまで公務の合間に、キャッチボール程度から。だが、そのとき語った夢が、いつしか現実になっていく。
 

ただ草土が見えているだけの地面ではパースがうまく描けないと思えたこともあり、ごくうっすらとしたテクスチャのつもりで石畳を描いてみる。

レンガ積みのようなパターンを別ファイルで作成。直線ツールとコピペで、普通に手で描いた。
それをソフトフォーカスでボカした後に「歪み」と「回転」で御覧のような傾斜をつける。




★メイド野球★

建物と建物の間から犬のエサをもってきた別のメイドが「さあ、ザッシュ2号、ごはんですよー」と無警戒にてこてこと歩き出してきたところ、あわや時速140キロの硬球が命中しそうになったが、持ち前の反射神経で回避。先輩メイドは彼女の素質をその瞬間に見抜き、スカウトする・・・とか、「そもそも野球なんかしたことがない」というのがほとんどのメイドたちのなかで、徐々にメンバーを集めていく、メイド球団創設時の苦労話とかも必須であろう。
 

メイドさんをきっちり描いておく。投球する後輩メイドの方は、やっぱり決まらない。「ロングスカートで野球」というのが滅多にないシチュエーションだからだろうか。




★メイド野球★

メイド野球のみどころは、チームプレーでも、御主人との信頼関係でも、息詰まる投手戦でも、逆境に立ち向かう不屈の闘志でもなく、たとえば


メイド野球の場合、走者はちゃんとスカートを両手で軽くつまんで走る。


とか、だいたいそのへんである。
 

石畳の線を、消しゴムツールで処理しながらデコボコを描く。たのしい。




★メイド野球★

メイド野球の場合、審判は執事の方がやるとして、キャッチャーのメイドさんがメイド服の上からあのプロテクターを着用するというのはいただけない。ここはやはり、チョパムアーマーみたいな感じか、あるいはショックアブソーバを縫いつけた感じの専用メイド服をデザインするべきだと思う。これがカッコイイ(であろう)のも見所だが、まあ、打順がまわってくるとメイド服ごと着替えなので、毎回ダッグアウトでそーゆーシーンが見られるのも、やはり見所のひとつだ。
 

下地として簡単なグラデーション処理をし、この地面を基調とする。建物、草地の色は上乗せ。




★メイド野球★

メイド野球のヘルメットには、メイドキャップ(頭飾り?)がつけられている。メーカーによっては一体成形されているものや、ネコミミ型のものもある。
そして、出塁した場合はメットをとって、塁上で自前のメイドキャップをつけ直すというのも、やはり見所である。
 

もう一枚、グラデーションのフィルターをかける。だいたいの色味はこれで決まり。

一層目の影をいれる。ちなみに二層目は建物の隙間の奥。




★メイド野球★

メイド野球のピッチャーは、お風呂の時間も人差し指と中指の間にボールをはさむ練習をしている。関節がやわらかくなる入浴時にフォークボールの指をつくる、というのは水原勇気と同じだが、しかし「野球狂の詩」には水原の入浴・着替えシーンがこれでもかと毎回かかれていたが、あれくらいそそらないのも珍しかったと思う。
メイド野球では、試合や練習の合間のこういうシーンも大事であろう。
 

建物、草地、犬をちゃんと描く。




★メイド野球★

英国人の血をひく米国人メイドがお屋敷にやってくる。「HAHAHA! ジャポーンノメイドニホンバエゲレースノジツリョクをミセツケテヤルデース!」思い切りアメリカンテイストな英国メイドの登場。やはり四六時中ガムをかんでいるのだろうか。
 

手前の先輩メイドさんを着色。

どうでもいいが、後輩メイドのボールは、逆光のためもあってほとんど見えないであろう。雰囲気はあるかもしれないが、この人にとっては過酷なキャッチボールである。




★メイド野球★

いまふと思ったのだが、ひょっとすると「メイド野球」というのは「スク水カラテ」とあまり遠くない位置にあるスポーツなのかもしれない。そういうカテゴリは永遠に色物あつかいなわけだが、できれば「キャプテン」みたいな正統派で感動的なストーリーだとうれしい。
 

そんなことはお構いなしに、ボールを放る後輩メイド。基本的に両者の色は同じだ。先輩のほうは着色レイヤーにオレンジのフィルターがかかっているので、背景との馴染みがよい。




★メイド野球★

なぜかついにはじまった全国大会。さまざまなコスチュームのメイド球団が一同に会する。ここでの見所は、ミニスカメイドでもなく、エプロンとメイド服の色が反対(白服黒エプ)のパンダメイドでもなく、走塁の不利をすべて打撃力で補ってきた「和メイド軍団」(和服に割烹着)であろう。
 

後輩メイドはフィルターではなく、主線を飛ばすことでなじませる。
着色につれて夕景ということが感じられてきたので、影をクッキリいれる。
それと石畳がいくらなんでもデコボコすぎたので、細くした消しゴムツールでさらに処理を。

画竜点睛のつもりでボールに白を入れる。




★メイド野球★

強力な対戦相手に、どうにか善戦していると思われた試合中、相手チームのメイドが「そろそろ本気をだす」と、袖のカフスボタンを外すと、それが「ゴトンッ」と地面に落ちる 「片方、5キロってとこかしら」 当然、メイドキャップも10キロはある。そしてスイングが目視できないくらい高速に。
 

最終調整。ほとんど何をやったか覚えていないが、フィルターや透明度をいじって、メイドさんと背景を馴染ませようとしたのだと思う。




★メイド野球★

そして圧倒的なパワーで、九回裏につけられた100点差。だがこの逆境で、ついに魔球「メイド球」が誕生する!

「メイドの魂、充填120%!」

「た、球に・・・メイドキャップが・・・!」
 

完成した絵にタイトルを入れる。





★メイド野球★

そして最終回。
メイドたちは、今日もお屋敷で忙しく立ち働いている。
そして、御主人の書斎には、真紅の優勝旗が飾られていた。

次回、新シリーズ!
メイド野球もの第2期。
13才までの少女メイドだけで構成された

「リトル・メイド・リーグ☆」

ご期待ください。














[タイトル] [もどる]