2002.05.03
fri「ぼくたち漢の子」:新水谷邸での一年ぶりオフ会日記
起こるはずのないことが起きたということは、そもそも前提が間違っていたということである。
夜想曲の更新は、すべて無期的に停止したかに見えた。
それゆえに、しばらくの間は絵も日記も更新されないと、誰もが思ったことだろう。
しかし「更新停止」は、夜想曲の死ではなく「=休眠状態」だったのである。
休眠状態にある生き物は、寝返りをうち、ボリボリと腹を掻き、そしてぐちゃぐちゃと寝言を言う。
夜想曲も例外ではない。
したがって、ここに書かれる日記のよーなものは、いわば夜想曲における真性の寝言である。
今回も、その真偽のほどは定かでない。
去年のGWに、名古屋の水谷さん宅でおこなわれた、空前の大規模ヨコハマオフ会から一年。
17人が参加したという昨年の記録的な人数には届かなかったが、水谷さんの呼びかけで、今年も得難いフタケタオフ会となった。
今回の参加者は以下の通り。
水谷さん (GARAGE355 Ver.3)
ユカさん
霧島夕さん(Spiral-illusion)
かぜさん (北摂商会有○会社)
HAY!さん(成層圏)
えるらさん (星層圏)
マンデリンさん(Private Garage!!)
タカヒロ・Iさん(喫茶α)
COBRAさん
KAZZさん
あまの (夜想曲)
の11人である。
そして今年の会場は、最近水谷さんが購入し、リフォームも終了しつつある新居だ。
当日は、天候にも恵まれ、サワヤカに晴れ渡った絶好のバーベキュー(実際は屋外での焼き肉)日和である。しかし、到着した参加者はそのまま直射日光を避けるようにリビングにこもり、持ち込んだノートパソコンで怪しげなデータ交換をはじめている。
そうこうするうち、水谷さんとユカさんにより、バーベキューの準備が完了した。今回も、お庭での健康的な食事会である。
「はい、準備ができました」
「って、あれみんな何で部屋から出てこないの?」
「あー、やっぱりみんな日光に弱いんじゃないかな」
「日光・・・」
「私らは吸血鬼か」そういいながらゾロゾロと眩しそうに参加者が出てくる。
「こういうオフ会に集まる人は「テレホタイムからが活動時間」なのは確かだけどな」
「それはいいから、肉やこう肉」
「そーれ、たんしおタンシオ!」
「ウインナーういんなー!」
「肉肉食食肉吐肉!」
「あー、野菜が欲しいな。モヤシ入れて」
「モヤシ・・・」
「萌やし?」
「『萌やし』というとすなわち『萌え』燃料? とりあえず牛丼いれとくか」「タコさんウインナーはKAZZさん専用」「じゃあ、ワッフル」「バニラのアイスクリーム」「肉まん」「眼鏡」「ニーソックス」
「うわーっ」
鉄板では、実にいろんなものが焼かれては皆の胃に収まっていく。
庭に設営されたテーブルセットを囲んで、さわがしく食事がすすんだ。
天野も記憶が確かでないが、ざっと見渡してみよう。
マンデリンさんは世話焼きの性格からか、あるいは日記のネタになることを執拗に避けようとしてか、鉄板の前で焼き師に撤している。
KLEで埼玉から駆けつけた えるらさん(AIRの観鈴萌え)と、例年のようにマックスコーヒーをカートンで持参したKAZZさん(Kanonの舞萌え)は、挨拶も
「がおがお?」
「うさうさ!」
という特殊言語でこなしている(相互に通じているらしい)ので何を話しているのかよくわからない。
COBRAさんは「ビールと檸檬酒を合わせるとすごく美味だね!」と感嘆しながら、新型カクテルの開発にいそしみ、HAY!さんは、ホットプレート番人の職権で、イイ感じに火の入った肉をさりげなく横領している。
そして、私のすぐ隣という考えようによっては最悪な位置に立ってしまったタカヒロ・Iさんは、最近ある事情で立場が微妙になってきたため「これ以上変なこと書かれてたまるか」とばかりに引きつった頬で沈黙を固持している。「大丈夫! もう日記は書かないから!」と言っておいたのに、それでもガードを崩さなかった彼の姿勢は、こうしてしっかりテキスト化されることを見抜いていた洞察力によるのかも知れない。
そして、お向かいは初めて会った霧島さんだ。
去年のオフ会の様子を御存知ない方なので、バーベキュー前に、天野の日記を読んでもらった。正確さはともかくだいたいの感じはつかんでもらえたようである。好評なようだったので、ついでにタカヒロ・Iさんの弾劾裁判も読んでもらった。
「もしも、もしもですよ? これが現実になったら、せめてちゃんとした裁判にしなきゃいけませんね」
「被告と原告、記録者(演出家ともゆー)は問題ないとして、弁護人は?」
「なし」「なし」「なし」「当然、なし」
「おいおい」
「軍事法廷かい」
「いや、だって判決はすでに決まっているしなあ」「どっちに転んでも四次元ツルハシの刑」
「このへん日記にして書いたら面白いのに」
「・・・・」
その一言を待っていなかったと言えば、これほどのウソはあるまい。
「ぱかぱかあん! 日記めも〜!」というSE(サウンドエフェクト)とともに、書きたくてウズウズしていたメモがこらえきれず起動する。「なーんだ、もってるじゃないか」と、誰もが爆笑したと思われたその瞬間、私のとなりには、笑っていない人物も約一名いた。
ところで、ヨコハマオフ会に集まるメンツには、現職・経験者を含め、コンピュータ関係者がけっこう多い。インターネット自体がコンピュータ関係なので、集まりに共通するのは当たり前と思うかも知れないが、これだけ一般化したなかでは、やはり特徴と言えるだろう。
masterpieceさんや文月さんも広義ではそうだろうし、今回の参加者でも、 コンピュータ関係の仕事に就いている人は多い。
そして、もうひとつの共通点は、死ぬほど忙しい人が妙に多いということだろうか。
今日のオフ会も、忙しさに追われるあまり参加できなかった人が、たくさんいた。
ちなみに、その最先端を疾走していたネモ船長は、どこかで先端を突き抜けたらしく、今回はなんと入院中とのことである。ばくさんのかばんさんも、体調不良で参加できなくて残念だった。お大事にして欲しい。
バーベキューはつづく。
「卵を割り入れます」
「じゃあ、コショウをぱっぱ、と」
「・・・・」
「・・・・」
「・・・・」
「あれ? 」
「今年は『へーちょ』ってクシャミをする人がいないぞ」
「おお、ザナさんな」
「ちょっと携帯で呼んでみよう。(発信)・ぷち(ワンギリ)・・・(着信) お、隊長? シャオリン元気?」
「いまワンギリでかけてきたの、かぜさんやったんかー」
「うん、そう。あ、ちょっと天野さんと代わるわ」
「ザナさん、おひさしぶり天野です」
「ひさしぶり・・・」
「どうしたん、声が眠そう」
「いやオレ、新聞配達おわったとこで、これから寝ようと思っとってん」
「あー、そりゃまた。ちょっと電話かわるわ」
「おー妖精王。なんで今日こられへんかったん」
「いや、オレこれから寝ようと思とってな・・・」
「あ、電話かわりました。何の用?」
「何の用って、あの、オレそろそろ寝ようかと」
「こんばんわ、ウサダは元気です」
「まだ昼やがなって、いやオレもう・・・」
「ひさしぶり〜。コショウふってるときに「へーちょ」ってクシャミする人がいないと寂しいんですが〜」
「あれはオレやないって。あの、せやから」
「やはりオフ会には君が必要なんだ。ピンチメーカーとして」
「なんやねん、ピンチメーカーって」
「おー、ザナ氏。大阪におるの? 新聞配達の後? ヘトヘト? これから寝る? へー。 そんなことより、いまからこっちゃこいや」
「鬼かおめーら」
(一行目に戻ってしばらくループ)
やがて「シャオリンにしっかり看病してもらってください」というような趣旨の励ましをして、ザナさんにかけさせたせいで長距離通話料金まで負担させたという悪魔のような長電話が終わった。
楽しそうに電話を切るかぜさん。そういえば、かぜさんとはじめて会ったのは、思えば去年のこのオフ会だったのを思い出した。
かぜさんもそれ以降、天野の日記にちょくちょく出ている。彼の話芸は面白く、できれば文章で書きたいところだが、その話術はテキストにするより直(じか)に聴いた方が何倍も面白く、日記にするのが惜しいのだ。
たとえば、彼が自転車部だった頃、長い下りのスロープを、知らない方がしあわせな速度(記録によると時速103キロ)で、神の領域を侵犯しているときに「左に寄せて止まりなさい」と偶然居合わせた白いバイクのオニーサンに自転車の停車を命じられ、免許も持っていない時分から前借り減点されそうになった話(死ぬほど怒られたそうです)などなど、特殊な経験が妙に豊富な片鱗を、今回のオフでもいろいろみせてもらった。しかし、やはり直の方が何倍も面白い。
大型バイクを軽々と取り回し、カメラやコンピュータを愛し、立派な体躯をもつ。かぜさんは、とても男っぽい人に見えるが、粗でも野でも卑でもなく、とてもこまやかな世界をもっているのだと感じる。そして、面白い話をして笑わせてくれるが、彼自身はとても落ち着いた男だという印象があった。
だが、焼き肉も終わり、リビングへ移って皆でくつろいでいるとき、その落ち着いた男・かぜさんは、「YAT安心宇宙旅行」のLDを観て「あぁ〜ん、桂(かつら)さァ〜ん」とばかりにゴロゴロ転がっていた。
書き忘れていたが、かぜさんは「だめです。そのボタンを押したら私は萌えます(もしくは壊れます)」とゆーボタンの無闇に多い人だった。
(宇宙一の怪力を持つ添乗員・天上院桂さん ↑ /西川伸司のHOMEPAGEより)
このとき観ていた「YAT安心宇宙旅行」とは、NHK製作のTVアニメで、宇宙旅行時代の零細旅行会社のドタバタを描いたものだが、そんなことはどうでもよく、添乗員の「天上院桂さん」こそが最大にして唯一の見所で(私だけか?)、かぜさんも例外なく、彼女に撃沈されて大喜びである。リビングで車座になった野郎共も、単行本未収録(テレビ放映のみだった)の「タイガーレディ」に見入った。この頃の椎名へきるはよかったなあ、としみじみ思う。ちなみに、かぜさんは声優萌えではなく、純粋にキャラ萌えとのことで、やっぱり重傷だ。彼はすっかり御満悦モードで、ニコニコしながらテレビを見ていた。(↓まさにこんなかんじ)
ところで、今回鑑賞した「YAT安心宇宙旅行」は初回版LDボックスの中の一枚である。
その一見正常に見える人柄ゆえに分かりにくいが、そもそも「YAT」のLDをボックスで所有している水谷さんも、相当な凄魂マニアだと思うがどうだろうか。
見せてもらった彼の部屋の専用キャビネットを開くと、そこには当然のように揃えられた「うる星やつら全話ボックス」を筆頭に、それこそ横に並べたら名古屋くらい一周しそうな量(主観)のLDが、ビッシリと貯蔵されていた。
この人だけは、まともな人だと思っていたのに、と思いながら、ものすげえ自慢げな水谷さんを尻目に私はキャビネットを閉めた。
そういえば水谷さんは、さっきも霧島夕さんと、名作劇場について目を輝かせながら、熱く語っている。いちおう名作劇場ファンだった自分すら、突っ込むのがやっとのような会話がつづいていた。
「あ! 「七つの海のティコ」のLD!」
「初回版です」
「こ、これは、「ロミオの青い空」! うお萌えー!!」
「萌えって・・・」
「小公女セーラは?」
「あー、あれはね」
水谷さんが残念そうに頭を掻いた。
「VHSでしかもってない」
「あるんかい」
「名作劇場は、BSで放送していたのもぜーんぶ録画しました。総ナメです」
「全部って・・・」
「いやー、そのせいで同時稼動するビデオデッキが四台もあるんですよ、うち」
「うわー、くそ、LD買おうかなあ、オレ」
「いまからLDですか・・・」
観たことのある番組をLDで集める。人はそれを無駄というかもしれない。だがコレクターは、たとえ後にDVDが出るかも知れないと思ってはいても、いま手に入る全てを集めるのだ。
そんなことを考えながら、
「ぼくは、LDボックスもってますけど、DVDボックスも買いなおします」
そう堂々と語る水谷さんをまじまじと見つめる。彼はいろんなディスクを示しながら語りつづけた。そして
「そうそう、あと、この番組のLD版はなかなか手に入らなくて、一年まったんだけど、けっきょく・・・」
「あきらめたんですか?」
「VCD買っちゃった」
日本のアニメ産業は、こーゆー人が支えているのだとしみじみ思った。
去年は、みんなが持っていた携帯を並べて記念撮影をして遊んだことがあったが、今年は参加者の2/3がノートパソコンを持参していた。リビングで、それぞれに起動したまま置いてある。
「悪の戦艦! 地獄のけだもの! 宇宙戦艦ヤーマート〜♪」
霧島さんがもってきたマッドテープのCD盤(↑)がBGMとしてかかったのがきっかけだろうか、だれかが、自分のノートパソコンの中にある怪しいファイルの話をはじめ、「それ欲しい」と言った霧島さんがなぜか8ポートのスイッチングハブを、わざわざ自宅から持ち込み、「それじゃあ」と水谷さんがパワー確保のために電源ドラム(リール型延長コード)を引きずり出した。いろいろ面白そうなファイルは確かにあったが、最終的に全員を桃源郷の出し物よろしく連結せしめたのは、そのドス黒げな物欲を動機として構築された見事なほど完璧なスター型LANによるものだった。
「男同士で合体ですが、つながるのはパソコンだけですよ」
などと侍魂ギャグをいいながら、それぞれのノートから、面白そうなデータの交換が始まった。
数ギガもあるような超重量級ファイルが右に左にコピーされていく。ハブの前面にある全てのアクセスランプが、煙でも出そうなイキオイで明滅しているとはいえど、6台ものマシンが連なっているのだから、コピーにも時間がかかるようだ。よそにコピーを放出しつつ、自分も別の所から取り込もうとするとゆー人間ウロボロスのようなマネをしているせいで、処理速度が極端に落ちるのも無理はない。
「ダイアログ:コピーしています・・・残り183分」
「重てぇー!!」
「うまくコピーできんぞ」
この嵐のようなファイル交換会に参加できなかった天野は、そもそもマックユーザーであり、第一ノートパソコンを持っていないので、ウインドウズのことはいまひとつ何が行われているのかよくわからない。たぶん
だいたいこんな感じなのだろうな、と思いつつ、モバイルアイテムを何も持っていないことを、心から悔やんだ。
帰ったらヤフオクですぐ手に入れようと決意する。(買ったヨ!)
HAY!さんは、「あまのさんも立派な『ノート』持参していたじゃないですか」とかおっしゃるが、こんな爆発力だけはハイエンドのノート(メモ帳)ではなく、データの交換や再生ができるノートが欲しいのダ。
今回は、ノートパソコンに限らず、カメラや、バイク(かぜさん、えるらさん、天野は、バイクで参加したのだ)など、自慢のアイテムを披露するオフ会だったようで、オーナーは、それぞれにとっておきの自慢のオモチャを見せびらかす子供のような、誇らしげな笑顔をしていた。隠しようもなく滲み出していたのは漢の子の笑顔。それが印象的なオフ会だった。
もともと必要性を感じていなかったノートパソコンの購入を決意したのは「カーナビがわり、MP3プレイヤー、そしてファイル持ち歩き用としてのノートパソコン」というHAY!さんのノートへの認識を聞いたからである。「ああ、こういう考えでいいんだ」と、ちょっと考えが軽くなったのが最後の一押しだった。
もっとも、陥落寸前まで私をよろめかせたのは、単純に男の子としてうらやましかったからなのだが。
ノートパソコンを手に入れたら、今度みなに会えるのは夏だろうか。
そのときは、私もまぜてもらおう。
あの笑顔に。
「こんなに楽なオフ会は出たことがない」と掲示板にコメントするだけのつもりで出かけたオフだったが、メモ帳を持っていったのは悪癖なのか賢明なのか、結局ズラズラとかいてしまった。正確に思い出すのが面倒なので、いつもどおり適当に創作したところも多く、天野にもよくわからないカメラ自慢の時間や、かぜさんのバイク教習など、実際には豊かな内容のある時間も、けっきょく記録に及んではいない。
またしても事実としての記録性が低い日記だが、このオフ会も、まったりとしてとても楽しかった。それは書けていると思う。
ただ残念だったのは、返す返すも、ファイル交換会に参加できなかったことだ。
今度は時間を取って、ファイル交換のみの高ダメ度オフ会でもいい。ノートパソコンからテレビにビデオアウトを繋いで、ネタフラッシュなど観ながら、みんなでゲラゲラわらいたいものである。
おまけ。
一年ぶりの場所ということだったが、その間にもちょくちょく会っていたせいで、このオフ会参加者に、それほど変化は無いように思える。しかしその中で、ひとりだけ、おおきな成長を遂げていた人物に、わたしは気がついた。
去年の5月には
←右端
で、同8月には
←左端
とゆーかんじで「私だけは正常な人間です」とばかりに、微妙な距離をとっていたユカさんが、みなに混じって会話をしていたのである。
希釈された毒物を徐々に摂取することで、人間は有害な毒素に対して抵抗力を得られるというスパイ映画か拳法漫画のような話があるが、それ同様、ユカさんも毒素に慣れていったようだ。
人間とは、どんなに非常識な環境でも、次第に適応していくものなのだということを、しみじみ感じた春の一日であった。
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