酒乱の気

super love love transport

(990819thu)











「たくはいびんれーす」

母屋の玄関から、聞き覚えのある声が、ひらがなで聞こえた。

ココネだ。

違和感を感じながらも、嬉しくて、ドアまで、アルファは飛んでいった。

「ココネ! ひさしぶ・り・・・」

「あははははははははははははははは」

ココネは、アルファの顔を見るなり、大声で笑い出した。
顔が赤い。ムサシノ運送の制服だから仕事なのかと思ったが、左手には、酒瓶を持っていた。

「ど、どうしたの?」

もしかして、酔っぱらっているのかしら、と思っている間に、ココネはフラフラと玄関に入り、アルファに向き直った。

じっと見つめる。目が据わっていた。
やがて、にま〜・・・っと、ココネは顔中で笑った。

「え、ええと・・・。あの? ココネ?」

アルファは、腹をすかせたライオンをなだめるような声で、ココネに手を伸ばした。
むんず、とその手をココネがつかむ。

「あははははははは、アルファさん、あはははははは、あの、あのですね、あははははは」

笑いながら、ココネはアルファの手を、がっくんがっくん上下に振り回した。
そのまま玄関に上がり込んでくる。
後退しようとして、アルファは上がりがまちに足をひっかけ、後ろ向きに転倒した。
どさっと、ココネが覆い被さってくる。

「いたた・・・ちょっと、ココネ大丈夫?」

顔が間近に迫った。
酒臭い。

アルファの頭のすぐ横に、ココネの持っていた酒瓶が、ドンとばかりに置かれた。
ラベルに「吟醸 美少女」とある。

「ココネ、酔っぱらって・・・」

言う間もなく、ココネの手がアルファの、腿のウラあたりを撫でさすった。

「アルファさんって、本当に素敵・・・」

緑色の瞳が潤んでいる。

「ちょ・・・やめて」

愛しげに撫で上げる手を、必死におさえていたアルファは、ふとココネの顔を見て、思いっきり悲鳴を上げた。


少年画報社「スタンダード・ブルー」(宇河弘樹)より
























送信完了




























「オーナー・・・?」

しばらくして、やっと落ち着いてきたアルファは、ココネから送信されたメッセージが、オーナーのものであることを理解した。
ココネは、静かな寝息をたてて、気持ちよさそうに眠っていた。




後日談。
恥ずかしかったのだ、とココネは語った。
普通の人とのメッセージの仕事も、妙に意識してしまい、あがってしまう。そこへ、アルファさんへのメッセージの仕事である。絶対にできないと思った。
しかし、世田谷支店に、A7シリーズは、自分しかいないのだ。それで、緊張を解くためには、お酒が良いと以前丸子から聞いたことがあったため、少しだけ飲んでみたが効果が分からず、どんどん飲んでいるうちに、ぼーっとしてしまった、とココネは話してくれた。

自分が何をやったか、全然憶えていないようだったが、話を聞いた後は、アルファが恐縮するほど、謝るココネであった。



さらに後日。
こういうことは、意外に連続でやってくるものだ。

アルファを押し倒した日から、さほど経たないうちに、またメッセージの仕事が依頼された。
丸子あてのメッセージである。

なにか重いものを引きずるような気分で、ココネは「アトリエ丸子」に着いた。一度きたことがあるので、簡単にたどりつく。

「ご、ごめんください。むむ、ムサシノ運送です」

意を決して、ややうわずった声で、ココネが呼びかけた。

「ココネ? ココネれしょ?」

少々ろれつが回っていない声で、丸子が返事をした。
ココネの全身を、猛然とヤな予感が襲う。
ばたばたと音がして、ドアが急に開く。そのままの勢いで、昼間から酔っぱらっていた、カップ酒片手の丸子は、銃を突きつけられたことなど、すっかり忘れて、ココネに襲いかかった。

ココネは思いっきり悲鳴を上げた。
 
 
 
 
 










受信完了
 
 
 
 
 
 
 












角川書店「モンスター・コレクション」(伊藤勢)より









ココネはいろんな意味で、この仕事の難しさを思い知った。
アルファが、かなり控えめに話してくれた、彼女の泥酔行動の真の状態をも、ココネはこのとき、同時に理解していた。

だが、がんばれココネ!
まけるなココネ!
ムサシノ運送は、君だけが頼りなのだ!







えー。
何と申しますか。
「いま、ココネは、アルファ宛に、ちゃんとメッセージの仕事が出来るのか」ということを考えまして、こうなりました。丸子さんの方は、まあ、そこはそれ、お約束ということで。

「いっただあきまーす」のコマは、スタンダード・ブルー、煙草をふかしているコマは、モンスターコレクションからパロディとさせていただいています。

現在、様々な妄想が、あちこちからメールで寄せられています。

「や、やめてください!
 ちょ、丸子さ、
 やめ、
 ん、ん゛ーーー!!!」

とか

「ココネぇ〜(原作通りならココネ・・・さん)、また上手になったねぇ〜。良かっ
たよ〜」

とか

「最近は、コミックでも、CDでも、ビデオでも、「じか」のシーンを見ると、これが重なってしまい、困っています」という、ありがたい声もいただいています。


ところで余談ですが、最近、あまり女性からメールが来ません。
野郎どもばかりです。
野郎どもばかりから、頻繁に、メールが来ます。
ハーメルンをメインにやってたころは、そりゃあもう、女性ばかりだったんですが。
夜想曲も、男の人向けになってきているのかなあ、と感慨にふけったりしてます。
これをアップしたら、多分、いろんな意味で、さらに客層が変わるでしょう。


制作環境:Macintosh Performa 5440(88MB)・Painter4.0・WacomArtPad2

冒頭のアルファさんだけ、多少ていねいに描きました。おかげで出だしだけは、締まっています。
あとは、もう、ペンに水彩で、思うように、じゃんじゃん描いていきます。こういうのって、楽でいいなあ。


[もどる]