紫の髪
またはその受難
ponytail ?
(2002.01.22 tue)
私の髪は 昔はもう少し長かった。
あの時、今の長さに切りさえしなければ、
あんな目に遭(あ)うこともなかったのに。
「まーまーまー、座って座って。」
「あ、あの、アルファさん?」
「んー?」
パジャマ姿で丸椅子に座るココネと、その髪を梳(と)かし始めるアルファである。「私の髪そんなに長くありませんから、ポニーテールはちょっと、」
「いいから、いいから。」
「でも、」
「やってみなくちゃわかんないでしょ?」
二人でお風呂に入っているときココネが、ある絵描きさんがポニーテールのモデルを探しているからアルファさんどう?と話題にしたらアルファが、ココネもやってみようよ、と言いだしたのだ。
その時ココネは冗談だろうと思ったのだが、アルファはもちろん本気だった。ココネの髪を後ろにまとめると、魔法のような手つきで自分がいつも使っている幅広のリボンを結わえ付ける。
しかし、うまくいかないので位置や他のリボンをいろいろ試してみるのだった。
んで。
「ぷっ」
「? アルファさん?」
「くくく...」
「え?え?」
笑いをこらえるアルファの声に自分の後ろ頭を触ってみるココネだが、鏡の無い
この部屋ではどうなっているか確かめようがない。
「ご、ごめ、」
腹を抱えてうずくまったまま詫(わ)びの言葉をもらすアルファを置いて洗面所に走る。
んで。
暫くして戻ってきたココネは目に涙を溜めて抗議の意思を表していた。
次の日。
「先生、お久しぶりです。」
「まぁ、ココネさん。 本当 久しぶり。」
「今日は折り入ってご相談が。」
「あら、何かしら?」んで。
「う〜ん、怪我もしてないのに植え替えるのはあんまり良くないのよ。」
「...そうなんですか...」
長髪への変身が叶わぬと知らされて落胆するココネだった。「代わりにヅラならいくつかあるわよ。」
「ヅラぁ?」
「そう、頭にかぶるもののことをそう呼ぶの。」
「はぁ、」
「ちょっとこっち来てくれる?」
パタパタとスリッパの音をさせながら何かの部屋に着くと、ココネを鏡台の前に座らせた先生がいくつもある葛籠(つづら)を 開けていった。そして六つ目の葛籠の中に目当てのものを見つける。「これなんかどうかしら?」
そう嬉しそうに言いながらココネの頭に ぽん とのせるのだった。
んで。
なんと言って借りずに帰ればいいのか、と同時に
なんで先生がこんなのを持っているのか真剣に悩むココネであった。
次の日。
「はぁ。」
馴染のオープンカフェで溜息をつくココネである。
「あ、あの、きょ、今日はなにか沈んでみえますけど...」
「は? あ。 はあ。」
「?」
勇気を振り絞って声をかけたマスターに、少し躊躇(ためら)ったあとココネが言う。
「あの、私の髪型.....
あ、いえ、何でもないんです。
ごちそうまでした。」テーブルを立って駆け出す。
そんな彼女の背中をマスターの声が追った。
「あ、その、ににに、似合ってますよ!」
いつになく大きな声が出たせいか、
それはココネに追いつくことができていた。スクーターの手前で振り返った彼女は
驚いた顔のまま頬をしだいに染めていく。そして ペコリとおじぎをすると、
逃げるようにスクーターを発進させるのだった。
こちらのテキストもmasterpiece先生の掲示板に、思いついたようにアップされたものを再構成していただいたものです。なんかあちらの方ではまだまだココネさんいじめて大喜びのようですが、とりあえずここまで。
ところで、ココネさんがポニーテイルするとしたら
現実的にはこんな感じかとおもわれます。だいぶ無理矢理ですね。ていうかコレはポニテではないです。
ついでに
こんなものも送ってみましたが、反応なし。先生はメイドさんに興味はないようです。・・・たぶん。
製作環境:PowerMac G4 450・WACOM FAVO・Painter7
ちょんまげになってしまったココネさんの絵が、まざまざと浮かんだので描こうと思ったのがきっかけでした。
極端な心理描写にはモノクロの方が効果的なのか、それとも、そういうイメージを漫画からしか受けてこなかったせいなのでしょうか。こんな感じに手を抜きました。