「あなた、ほら、あそこ。」

「あの娘（こ）は．．．そうか今日だったか。」

最初に彼女を見たのは何年前だったか。


連れの緑の髪の女性（ひと）にすがって わんわん 泣いていた。

見かねて店先のテラスを勧めたのがきっかけで毎年 帰りしなに寄ってくれる。

　
「大切な人が眠ってるって言ってたわね。」

「うん。」

いつも目を伏せがちだった彼女も少しずつ話してくれるようになった。


「ふうん。」

妻が窓の向こうの彼女を見ながら一人納得している。

「なんだい？」

「ん？　今年はなんだか穏やかな顔してるなって。」
　
「そうだな。」
　
今日はきっと楽しかった想い出を笑って教えてくれるだろう。

道楽の店だが それまでに とびきり美味いのを用意しておくとしよう。



　　　
≪masterpieceさんからいただいたあとがき≫

えー、私が天野さんのページで 60,000ヒットした記念にいただいたものです。
途中紆余曲折がありましたがたぶんそうです。（笑
　
ココネの大切な人って誰なんでしょうね？
いろんな「今」が降り積もっていって、その人が想い出になるのにどれくらいかかるんだろう。

それを見てきた壮年夫婦が営むお店もあるかもってことで。

すでにどのような紆余曲折があったかすら忘却の彼方ですが「墓参りの絵」という、masterpieceさんからのリクエストにお応えし、退職騒ぎの後に、ようやく描いた絵です。
彼には、一説のショートストーリーも書いていただきました。

masterpieceさんらしさを感じますね。masterpiece節といいますか、独特の回し方です。
あとがきのあとで、もう一度ストーリーの方を読み直しましょう。描かれていない情景が、きちんと浮かびます。

製作環境：PowerMac G4 450・WACOM FAVO・Painter4.0

季節はずれで桜の花が咲いているのは、ココネさんの髪を、茶色とか紫とかでごまかさず、思いっきりピンクでズバッと描きたかったからです。
しかし、桜の散るなかにたたずむ少女という絵は、なんかギャルゲーのイベントＣＧみたいですな。