メッセージの拝受式

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(2001.08.27 mon)



「手をつないで」

「はい」

「目を閉じて」

「はい」

「このメッセージは、遠いところに旅にでている方が、ふるさとに残してきたロボットに宛てたものです。」

「はい・・・」

「送り主は、ロボットのことをとても愛しています。そして心配しています。」

「はい」

「その気持ちのままを伝えられるように、メッセージを大切に大切に思いなさい」

「・・・はい」

「こちらの手を」

「はい」

唇がふれる。

うつくしく光る水が、するすると流れ込むような感覚。
水の波動が、少しだけ音になって、遠くに聞こえる。

長いような短いような、でも一瞬の恍惚。

「おちつきましたか?」

「ありがとうございます。静かになってきました」

「では、メッセージを、よろしくお願いしますね」

「はい、行ってきます」






メッセージの宅配という仕事がある。
ではそのメッセージはどうやって送られてくるのだろう。
最初の出力者は、出力用の機器を使用し、メッセージを作成するのだと思う。
これは、ロボットに直接伝わらない形式のファイルであると仮定する。それを、何らかのネットワークで宛先に最寄りの運送会社へ送る。そこでサーバー役(こう書くとなにか悲しいが)のロボットが一度、ロボット用のファイルに形式を変換して管理し、スケジュールに合わせて、まるで子だくさんのお母さんがお弁当を分けるようにロボットの社員に授け、宛先に配信するのではないだろうか。

二巻冒頭、初瀬野先生は人間なので、なんらかの機器を用いてメッセージを送ったのだと思う。
これはもちろん文章でも良いのだろうけれど、おそらくはロボットの開発に関わった人物としての遊び心か、あるいは紙面よりも、より想いが伝わることを期して選択したメディアだったのかもしれない。

またナイが丸子に送った画像は、カメラの中のキャラメルのようなピース(スマートメディアみたいなものか)を送れば良いと思うし、枚数が少ないなら、もっと簡易なメディアに焼き直して送れば手間も料金もかからないと思う。
それをせずココネを仲介に使ったのは、丸子がメディアを再生できる機器、たとえばカメラを持っていなかったからだろう。もちろん、丸子がココネの味(苦笑)を知っていたから、あえてこのスタイルを指名したからかもしれないが。

製作環境:PowerMac G4 450・WACOM FAVO・Painter4.0・PhotoDeluxe1.0

今回の絵は、最初は「カフェアルファ」での、メッセージ授受のシーンをキレイに描くつもりで出発したのですが、ラフを描いているうちに、masterpieceさんが「ナイのメッセージって、どうやってココネの口にはいったんだろう!? まさかナイと・・・? それだけはイヤだあああーっっ!!」と気の毒なくらいうろたえた話をはじめたので「じゃあ、こういう「おかあさんシステム」があれば大丈夫ってことで」となだめているうちに、右の人がオリジナルのロボットになってしまいました。

髪の色が緑なのは、アルファさんの名残です。
でもこれだと「おかあさん」じゃなくて「おねえさん」ですね。そういうわけで心のアフレコは井上喜久子さん。

ココネにとっては、敬愛するロボットとの「じか」は、儀式を通過するような幸福感があると思います。
ですから、楽しそうな表情に描きました。

背景は、左半分を一度、直線設定でビシっと描き、コピーの上で左右反転し、対象の背景を作ります。
その上で、フリーハンドで壁などの線に手を入れていきます。ヨコハマの世界なので、壁は適度にガタガタな方がいいというのは、私の思いこみですが、古い洋館のような雰囲気が出て、これはこれで成功のような失敗のような。
上の方が寂しかったのでヒビを入れ、窓枠は光線透過のためにブリーチ(大)で、大雑把にぼかしました。人物も、輪郭をやや残して、あとは飛ばしています。

いまにして思うと、左右両者ともムサシノ運送の制服で、髪の色も似ていた方がバランスが取れていたかな、とも。



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