パン食グランギニョルの同人誌第三弾「合わせ鏡のアリス」に寄稿した、水銀燈の絵と詩文である。
テキストの方は、サンフェイス氏に依頼した。初出であるイベント「まきますか? まきませんか? 2」の締切ぎりぎりまで改稿があったため、印刷された原稿に間に合わなかった「完全版」が存在する。
ここにアップしてあるのがそれだ。
この同人誌がでる少し前。「ローゼンメイデン」のコミック5巻が発売され、その巻末で水銀燈の衝撃的な姿が描かれた。
どうしようもないところまで追いつめられて、泣きながら救いを乞う水銀燈。
ジュンのみた世界の中で、あのひねくれ者で高慢だった水銀燈が、子供のように泣いている。
ここまで打ちのめされている水銀燈の姿に、なにか胸のあたりを強烈にえぐられた。
この水銀燈を、自分でも描いてみたいと思った。
絵が描けたあと、知人のサンフェイス氏に詩を依頼した。合作となったこの作品は、水銀燈という物語の、ひとつの終局を描いたものとしてここにある。
現実に対して、すこしだけ後ずさりして立ち止まることが許される世界を「9秒前の白」と言うなら、彼女がいる「9秒後の黒」は、取り返しのつかない過ちが、その結果として確定してしまった世界だろうか。救いのあった現実が、過去となった世界。決定的な選択肢を誤った、手遅れな世界。
原作の水銀燈は、まだ救いの余地を残しているのかも知れない。ジュンを導いた蒼星石がいうように「帰るべき場所」「手を離してはいけない誰か」を、彼女はもう一度みつめることができるだろうか。子供のような素直なこころで。