スバルとギンガ

SUBARU and GINGA

(finished:2007.08.23)
(upload:2008.01.17)


パワーアップしたマッハキャリバーを駆るスバルと、戦闘機人としてフルチューンされたであろうギンガ。

以前の模擬戦では、わずかにギンガが勝っていた。
そもそも一日の長があって地力で勝っているギンガが、立ちふさがるスバルを完全に本気で撃破にかかる。

スバル側には姉である彼女を救いたい気持ちがあり、「怪我させちゃうから、振動破砕は使えない・・・」などと、このファイトスタイルが噛み合いすぎる最強の戦闘機人を相手に、まだ甘いことを考えている。

スバルは苦戦するだろう。ボロボロにされるかもしれない。

だが、彼女は勝たねばならない。スバルが倒れれば、ギンガは永遠に破壊者の手先となって生きるしかなくなる。
そして他の誰も助けてはくれない。いまここで姉を救うことができるのは、スバルしかいないのだ。

スバルは、本気で戦うしかない。戦闘中に覚悟を決めるしかない。
自分より格上の相手にパワーセーブして勝つつもりでいるなんて大甘だ。

自分が一発のカートリッジになったくらいの、爆発的な闘志が必要なのだ。



たとえ、その戦いの果てに、どちらかの命が失われるとしても。





「魔法少女リリカルなのはStrikerS」のスバルとギンガ。
放映時で20話を超え、内容もいよいよ決戦に突入したわけだが、これがどうしても盛り上がりに欠ける。
「スバルの姉であるギンガが敵に捕らわれ、おそらくは洗脳・改造されて妹の前に現れる」という状況は悪くない。これだけでも、盛り上がるといえば盛り上がる。

だが、この状況でスバルの勝利があるとして、それはスバル自身がどんな課題を乗り越えての勝利なのか。その課題やテーマが見えてこない。
彼女だけではない。「StrikerS」に出てくるキャラたちで、この物語を通して質量の重い譲れない何か、何を失っても捨てられない願いがない。例えば、なのははいまヴィヴィオのために戦っているが、断ち切れない絆ができるようなエピソードがいままでになかった。19才の少女がもつ不完全な母性本能を持ち前の情け深さと正義感で補強して戦っているように見えて、どうしても薄い。

すくなくとも、私が惚れ込んだ「A's」では、戦いの込められた強固な願いがあった。騎士の誇りや主のいいつけを破ってでも成し遂げなければならない使命と、それに付随する情熱があった。組織の仲間のため、を遙かに越えた絆があった。

スバルとギンガ。ついこの間の戦闘まで仲のよい姉妹だった二人が戦う理由とは何か。物語本編は示してくれない。

マスターアジアを倒した瞬間、ドモンの脳裏に去来したかつての師匠との思い出。あれがあってこそ彼の絶叫が生きた。ならば、スバルとギンガを描くとき、自分のなかで彼女らの物語を勝手に作り上げてから筆をつけようと思った。以下、そのために勝手に設定を考えてみる。



物語のプレリュードとなるコミック版でも仲のよい姉妹として描かれ、本編が始まってからも同様で変化がなかったスバルとギンガ。
本編では、20話まできてやっと二人の関係が動く。17話で戦闘中に拉致されたギンガが敵の先兵となってスバルの前に現れた。

これだったら、最初の空港火災のエピソードあたりに、母親の死と姉の拉致を配して、長い間これをスバルが一人で追い続けてきた、という構図の方が燃えると思うがどうだろう。

幼かったスバルは追う力を持ち得ず、そのときに母の遺品となったリボルバーナックルを頼りに、彼女は魔導士への道を歩みだす。空港火災にはスカリエッティが絡んでいたが、証拠は残らず、ただ目の前で姉を奪われたスバルだけが確信をもって追いかけている。はじめてその話を信じてくれたのがなのはだった・・・とかだと絆として強固なものになると思う。

そして訓練に明け暮れていたスバルは、本編17話の戦闘機人戦と同じ軸線上で、長年追い続けてきた姉の姿をついに垣間見る。この背景があれば、立ちふさがる機人を例の気迫で突破しようとするスバルの姿に、もう一枚の分厚い迫力が付くはずだ。

最終的には、ナンバーズの一員となっているギンガとの対決となる。現在の20話以降の展開だ。空港火災のとき、母親が自分を護って戦い、死んだように、スバルもこのときには護るべき仲間がいた。かつての母の姿に重なって戦うスバル。思いのたけを叫びながら戦うスバル。そしてなのはとの訓練で得た技(できれば、スバル本人も半信半疑だった訓練とかだとなおいい)で、ついにギンガを突破。これが全体の作戦を勝利に導く一打となり、歓喜するロングアーチ。だがその一方で、スバルの腕の中で機能を失っていくギンガ。最後の最後でギンガとしての意識が表面にでることができて、やっと素の声でつぶやくギンガ。いままで全部みえていた、きこえていた、知っていた。スバルの涙も叫びも、ぜんぶきこえていた。ごめんね。ありがとう。スバル、強くなったね。お母さんみたいになったね。

このあと、復活するかどうかは、都築さんならやっちゃうと思う。わたしならやらない。


とまあ、そんな妄想を下敷きにスバルとギンガの絵を描いてみた。
スバルは17話のときみたいに、絶叫するとムチャクチャなツリ目になるし感情が表に出やすいキャラとして設定されているから、こういうシチュエーションだと、たいてい放心しているか、絶叫しているかだろう。

だが、この戦いで、スバルにはギンガを乗り越えてもらわなくてはいけないのだと、ごく個人的に勝手に思う。なのでこういう表情で描いてみた。



26話という長さに対して、間延びした印象を受ける「StrikerS」。これだけキャラが多くても、そう捉えられるのは、キャラがこのストーリーの中で密度の濃い人生を生きている姿がないからだと思う。
逆に考えれば、これだけの数のキャラを全部生かして52話くらいの長編にしてしまうのもアリだと思う。それができなくて26話になったのなら、キャラクターは半分以下にするべきだったろう。戦闘機人なんかは、Vガンのシュラク隊みたいに、一話一殺で「あ、この子、そんなに悪い子じゃないんだな。いや、むしろ好きだ」と思わせるようなエピソードを一個はさんでからきっちり死なすとか、そういう演出があっても良かったと思う。


おまけ:画像処理前の素材

















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