その背後にべったりと覆いかかる死の影。

それをおくびにも出さない、栞。

どれほどの無理をしているのか分からないが、明るく生活している彼女を見るにつけ、

不治の病という事実が、まるで悪い冗談のように思える。

(2000.10.09 mon)





栞の意味
 

栞。

彼女の名前である。
栞、と言う言葉は、枝を折って道しるべとする意味の「しをる」という言葉の名詞形だ。

栞とは、そこを通った、という確かな証である。

「自分が生きてきたことを、生きて感じた想いを、自分が大事に思った人へ刻んで行きたかったんだ。」
「やはり、自分の身を折ってでも刻んでおきたいという、切なる願いは忘れられませんから。」
そうCOBRAさんは語る。

だから彼女は、最後まで笑っていたのだ。
ただ、読み返す、あるいは思い出すことはできても、その時は戻らない。
でも、そんな時の積み重ねだったからこそ、彼女には多くの人が引かれたのだ。

「そして・・・これからも・・・。すこしずつゆっくりと刻み続ける・・・。」
と、KAZZさんが語る。

これは、奇跡的に病を克服した栞に捧げよう。
 

最後の、あゆによる奇跡は、単純にそれだけで助かったように思われるかもしれない。
だが、実際には、それだけではないと思う。

香里との姉妹としての関係が元通りにならなかったとき、栞は死んでしまった。あゆが「思い出さなかった」からかもしれないが、あゆだけの力では、栞の回復は無かったと言える。
姉との関係を復帰し、祐一と愛し合い、栞自身が、強く生きることを願ったから、それが条件となって、奇跡が発生できたのかもしれない。
 
 
 
 

栞シナリオも、実はそれほど泣けなかった。
シナリオへの不満は、祐一の心理描写が少なく、病気からの回復を強く望むという演出が足りなかったことだ。
なにもしてあげられない、という苛立ちが欲しかった。祐一への感情移入がしにくかった、というのが正直なところである。

栞の事情は、認識するだにゾッとするような事態である。
目の前にいる、自分に好意をもっている可愛い少女が、あと数日でこの世からいなくなるのだ。狂うくらいになっても良いのではないかと思う。

それだけに、自分は香里の号泣にとても引かれた。


 
 
 
 

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