美坂香里が、そこに居た。

 彼女は、間違い無く美坂香里の筈だった。
 しかし、それは彼の知っていた美坂香里ではなかった。
 美しかった。
 本当に、美しいと思った。
 聖母。
 ありきたりだが、そんな形容が彼の頭に浮かんだ。
 微妙に差の付けられた濃淡が、その素顔を繊細に描き出していた。
 優しさに満ちた瞳が、何かを慈しみ、愛おしむかのように、こちらを見つめていた。
 その表情は、どこまでも穏やかで。
 口元には、僅かに微笑みが浮び。
 どこまでも控えめだが、それでいてどこまでも優しく。
  
 そして、言うまでも無く、その瞳は撮影者たる彼自身に向けられていたものだった。

“Photography”より

(2001.09.24 mon)








「眼裏の写真」

Kanonの物語から数年後、写真を趣味とする北川が、過去の作品を整理しているときに見つけた一枚のフィルム。そのときには何でもないと思っていたが、わずかに焼きを変えて現像された美坂香里の表情は、彼を驚かせた。

摂津(せっつ)氏(せっつWorld!)のSS“Photography”を元に、香里の絵を描いた。

このSSの、一番感心させられる所は、あの北川がここまでの存在感をもって描き出されている、という点に尽きる。
都合の良いキャラクターとして、解説や狂言回しに使われたり、ギャグパートの一部だったりというSSはよく見かけるが、この作品では、実に骨太に描かれている。

だからこそ、彼を通して我々の脳裏に焼かれる香里の写真が、実在感を持つのだ。


製作環境:PowerMac G4 450・WACOM FAVO・Painter4.0・PhotoDeluxe1.0

『味噌汁の日』に続き、せっつさんのSSを元にした絵です。

このSSのイラストは、私の周りの写真好きな友人が、こぞって「描いてくれ」というので受けてみました。
しかし、自分の中にも確かに結像している絵はあるのに、SS本文にあるが如き内容の絵にはいたりませんでした。

香里が北川にこういう表情をゆるす。
写真とはよく言ったもので香里の中のなにかの真実が、写っていたことに、この写真を見た北川が気がつく、という感じがいいのですが、その表情は、私が実現できる絵の、やや上を行っているようなのです。

香里の一番の課題は、ゆるくウェーブした、すごくゴージャスなこの髪型なのですが、わりとソレっぽく描けたので、いまのところ、この一点だけは満足な絵です。

顔や服の濃淡はエアブラシで、髪の陰影は水滴ブラシでこすって表現しました。
最初は髪の一本一本を描いていたのですが、一房終わったあたりで道のりの長さに気がつき、一気にズバーっと水滴ブラシを投入しました。ホントに楽で良いなあ、水滴ブラシ。

眼裏は「まなうら」と読みますが、辞書にはのっていないようです。どこで聞いたんだか、この言葉。
















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