まこみし文庫・夏

(2003.06.02 mon)

「まこみし文庫」という、真琴・美汐のオンリー小説同人誌に挿絵を描いた。
文庫自体はアンソロジー形式で、多くのSS(サイドストーリー)作家の作品で構成され、それに絵師が扉絵をつけている。SS作家に比べて絵師が少なかったため、わたしは七瀬友紀さんと、もりたとおるさんの二人の作品に対して絵を描かせていただいた。

本もできたことなので、描いた挿絵をアップしておこうと思う。

(以下、すべての製作環境:PowerMac G4 450・WACOM FAVO・Painter7)












雲の隙間からの光は白く霞み、その場所で両手を広げている真琴と重なって、それはまるで・・・。


七瀬友紀「両手いっぱいのたからもの」より・扉絵








「いやはや。真琴の散らかし癖にも困ったもんだな」
「はい。そうですね、相沢さん・・・相沢さん!?」
「はろー」
「な、何やってるんですかこんなところでっ」

七瀬友紀「両手いっぱいのたからもの」より・挿絵




春が来た。
周囲に、世の中に。
でも、私にはまだ、来ない。きっと、ずっとやって来ない。

冬の、まま。

どこまでも深く、濃い闇の中。
そう、冬というより、これは闇の世界。
一時、本当に一時の、束の間。
私にもほんの少しだけ、薄日を感じた時間があった。
冬から春に変わる、ほんのちょっと前に。それは、一瞬の陽だまり。束の間の、幻。
手のひらから零れ落ちる砂のように、さらさらと……消えていった。
そして私は、闇の世界で生活をしている。
充実感も何もない、世界の中で。

もりたとおる「永遠の奇跡」より・扉絵





それにしても、できあがった文庫本を読んでいて思ったのだが、小説本というのは、あらためて売るのが難しいと実感する。
漫画同人誌なら、内容をパラパラみるだけでもアタリ・ハズレが分かりそうなものだが、小説となるとそうも行かないから、買う価値があるかどうか、お客さんとしては迷ってしまうだろう。
となるとアイキャッチャーとしての役割を担っているのが、イラストだ。
何気なくパラパラと見たとき、目についたそのイラスト一枚だけでも「買う」方向に判断をかたむけさせる魅力を持った絵であること。
あるいは、その絵の状況がいったいどういう物語の1シーンなのか、興味をそそるような絵であること。
そうした使命を帯びているのが、扉絵と挿絵だと思う。
実際に、ライトノベルの多くは、カバーや挿絵で新規の読者を獲得しているのだ。

これは校了してから気がついたことなので、今回の絵にはそういう気合いが入っていないが、次回はパラパラとみたとき、購買意欲や想像力を刺激するような絵を、たくさん描きたい。

今回の夏号は、そのへんの事情がよくわかってなかったので「あんまりたくさん絵を描いては、バランスが悪くなるのでは」と要らぬことを考え、三枚に抑えたが、秋号では扉絵に加えて、できるだけたくさん挿絵を描こうと思う。





[タイトル] [もどる]