ひざまくらみみかき
hizamakura mimikaki
(2001.02.14 wed)
お弁当を食べた後、舞が指で耳の穴を掻いていた。
「舞、舞。」 お重を片づけた佐祐理が、どこからか耳掻きを取り出して、正座している自分の膝を、ぽんぽんと叩いた。 「ん……」 とだけ言って、舞が頭を預ける。佐祐理は無造作に垂らされそうな舞の長髪をすくってから、そっと、耳掻きをはじめた。 のぞきこむようにして、佐祐理が耳掻きを動かす。
「…………」 しばらく佐祐理は言葉を失った。
いったい、いつから掃除していなかったのだろうか、と耳掻きの先端に引っかかったパイ皮のような耳垢を眺めながら、佐祐理は思った。
「ほら、舞。すごく大きいのがとれたよ。記念に残しておこうね。
至福の時間の中、舞は薄れゆく意識の中で、しりとりをしていた。 「みみかき…。き、きんたろうあめ…。め…。め……。」 思いつかなかったので、ことわざに変更だ。 「め…。目クソ、鼻クソを笑う」 でもそれだと・・・。 「耳クソは立場がない……」 そんなことを考えながら、舞は眠っていた。
意味のないしあわせ。
自分にとって、舞シナリオは、苦悩に満ちていたから(いや、他のシナリオもそうなのですが)こういうシーンをとにかく描きたかったのです。 この絵はm&nさんの同人誌に寄稿するために描いたのですが、「Kanonヒロインのイラストと思い入れ」とのことで、やはり舞にしました。
製作環境:PowerMac G4 450・WACOM FAVO・Painter4.0・PhotoDeluxe1.0 主線はスクラッチボード、あとは普通の着色のようにフローター化して、何段階か明度を変えたグレーのみで着色しました。アニメっぽく塗ってみましたが、実際に印刷すると、トーンほど美しくありません。
※ 上の絵は元稿をセピアトーンにしたものです。実際には白黒で入稿しました。
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