彼 岸

from a distance

(2005.)




もどってくるという根拠が、あるわけではない。
なにか事情があるのではとは思っても、なんの手がかりもない。
ただ、あの人が消えてしまったことだけが、わかる。
そして、
ただ、あの人がかならず帰ってくるという確信だけが、ここにある。
これだけしかない。
だが、これだけで充分。
わたしの中にある絆と、おなじだけのものを、彼ももっているはずだから。






おね、ことONEのSSコンクールのサイトに絵を贈った。

4〜5年前だろうか、ONEの夢を見たことがある。
この絵よりも、もうちょっと情熱的な夕景の中に茜が立っていて、海をみている。
海へ向かう急な斜面に生えている草は金色に染まっていて、斜面を見下ろす狭い丘にはススキがなびいていて、ときおり種を飛ばしている。ふいに足元から白い鳥の群が上昇してくる。触れるほどの距離を鳥たちは飛び抜けて行くが、茜はずっと海を見つめていて身じろぎもしない。

誰かを待っている風でもなく、熱を帯びた目で彼方をみつめているのでもない。ただ、なにもみていないような目で、永遠の世界を見ている。

そこには強すぎるほどの郷愁があった。
わたしは彼女をみていた。何もできなかった。彼女はそのとき死のうとしていたのかもしれない。


この夢をややモチーフにして、永遠の世界から浩平が帰るのを待つヒロインたちを描いてみた。茜だけでなく、浩平をまつ全員(清水なつき除く)のバージョンを描いた。

実のところ、最初は「みさき先輩を描こう」と思っていたので彼女ひとりだけだったが、ONEのコンクールだけにひとりに絞るのはなにか嫌な影響を与えそうだったので、全員(しつこいようだが清水なつき除く)描いてみた。

アクセスするごとにランダムにキャラが変わるはずである。


ところで、これは「SSコンクール」である。
言葉でONEの世界を語る勝負の場だ。そこに絵をもちこむ以上、言葉を感じさせる絵ではかすんでしまう。
無言。そして言葉で表現しようのないものを描いて見ようと思った。
いくらなんでもキャラが小さすぎた気がするが、この絵による刺激が、よいSSを集める一助となれば幸いである。


企画は無事終了している。その結果はSSの形を取って発表され、その際の舞台イメージとして、この絵も使っていただけたようだ。




ところで、絵を描いたという関係者でもあるので、自分でもひとつ投稿しようと思い、ONEのSSを考えた。
だが結局、話は浮かんだが文章化には至らなかった。理由は、書く時間がなかったこと、30KBという容量に収まりきるような話ではなかったこと、そしてONEの設定としてかなり無茶苦茶なところを貫かなければならないことがクリアできなかったからだ。
いまもって小説の体裁で書く気はないので、大筋だけここに書いておこう。

浩平が消えて十余年がすぎた春。
なんらかの理由でヒロインたちが集まる。十年あまりの年月で、彼女らは仕事をもち、あるいは結婚し、恋に生き、子供を育てていた。
個人の記憶のなかからは消えていた浩平という存在。だが、昔の話をするうち「彼の形をした空白」が、全員の話の食い違いから浮かび上がる。瞬間、彼のことを思い出す彼女たち。
自分たちのことを心配していた彼の姿。少女の存在を、すべて1人で負い切ろうとしていた浩平の姿。彼女たちは、ひととき高校時代に思いを馳せる。たが、彼のことを鮮明に想像しつづけることは、もう不可能だった。
誰かが、悲しげに微笑みながらつぶやく「そんなに心配しなくても、女はどうにだって生きていけるのにね・・・」


そんな話。

ONEは、永遠の世界にいってしまった浩平が、かつての日々を回想する物語だ。
そのなかでヒロインとの絆が強かった場合、彼はそれを思い出してこちらの世界に帰ってくる。
で、これは帰ってくるほどには至らなかったものの、かすかにヒロインに記憶が残っているというような、ONEの設定からは、たぶん邪道な話。

いま思えばヒロインを1人にしぼり、氷上シュンあたりをうまくつかえば、この物語を30KBで描けたかも知れない。
だが、それはできなかった。
ONEは、浩平がハンディキャップを負った少女を愛する話というか、彼のおかげでヒロインたちが救われる(半分くらいそうでもない)ような印象があった。

だが、ここで描きたかったテーマは、それはたしかに得難い出会いであり絆だったかもしれないが、たとえ浩平がいなくても、彼女たちは自立できただろう、ということだ。もう、その時点でONEではないような気もするが、それを描くための十余年後話であり、おそらくは30代前後のヒロインであり、そのために全員がなんらかの道を、自力で歩んでいる姿を描く必要があったのだ。
やはりひとりに絞ることはダメだろうし、となれば30KBで収まるようにもなるまい。なによりあのヒロインたちが30才になってどんな風になっているか想像するのが難しかった。

それと、ここまで読んでなんとなくわかる方もいると思うが、技量うんぬん以前に、おぼろげな記憶の上でも「なんか構想の時点で設定の大事な部分からかなり逸脱してるような」という迷子感がクッキリと覚えられていて、とてもそのまま書く気になれなかったのだ。

ではONEをリプレイしてそのへんを確かめようとしたかというと、そうもしない。
結局、リプレイする気力がないあたりで、自分は「この話」が書きたいのであって、別にONEが好きで好きで書きたくてたまらない、というわけではないのだなと自覚した。ONEで不満な点(ヒロインと浩平の絆という、ONEのテーマそのものの裏返し)と、変な切り口を思いついた、という点しか動機がない。
これでは書く気になれなかった、というのが確かなところだ。あと、やっぱり書こうと思っても、この切り口とわたしの技量ではどのみち難しかったと思う。

ONEはすごく好きなゲームだ。だが、自分で描きたいと思うのは、やはり絵と、せいぜい考察止まりだと思う。小説は難しい。

















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