何もかも納得している。
これしか方法がないことも。だから、
だからボクは、翼を切ったんだ・・・。
これでもう、ずっとひとりぼっちになってしまうけど。
せっつさんの「『会話』〜Kaiwa〜」より、想起して描きました。
せっつさんのその小説を読んだとき、映像として浮かんだのは、テキストの背景色のせいか、やはり闇でした。 闇の中にあゆがいて、ストーカー(案内人)の声だけが聞こえる感じです。あゆの発言はテキストになく、ただストーカーの言葉だけが露出しているにもかかわらず、読者は、むきになって語り、あるいは泣くあゆをみることができます。あの真っ黒な空白こそが、雄弁にあゆの心情を語っている・・・。不思議な、文芸のトリックです。
このままで表現としては完璧であり、これに絵など挿(はさ)む必要はないのですが「なぜ、光(奇跡の権能)を手放したのか」と詰問する様子から、なぜか先に絵のタイトルだけがぽこんと出てきました。それが「だから翼を切った」です。マイケルナイマンの曲のタイトルです。
SSでは、奇跡の権能を「光」と呼称していますが「翼」とするのも、違和感はないと思い、通しました。で、絵の方ですが、いくらなんでも闇の中、足下にケミカルスモークが立ちこめている不思議時空でってわけにもいかなかったので、こんな感じに。現実世界ではなく、彼女の学校の場所を基台とした心象風景です。
SSと直接リンクするシーンではないのですが、秋子さんを救い、栞を助けたあゆの犠牲を、本人が納得ずくでありながら、悲しむ、そんな顔を描いてみました。SSに準じるならば、あの長い空白、あゆが泣いているであろう長い時間の表情を描きたかったところですが、女の子が本域で泣いてる顔というのは、私には難しく、こういう半端な泣き顔になりました。
KanonもAIRもそうですが、辛い心情を通過しているキャラクターに涙を流させてあげたい、という気持ちがいつもあります。あゆなどは特にそうで、秋子さんのときも、栞のときも、どれほどの心情で祐一をあきらめたのか、それを思います。(この心情を、まったくの偶然ですが歌っている歌があって驚きました。坂本真綾の「光の中へ」です)
最初にあゆの絵を描いたときも、そんな絵でした。
製作環境:PowerMac G4 450・WACOM FAVO・Painter4.0さて、二枚目になるあゆですが、一枚目のとき「おとなっぽすぎる」という指摘があったので、意図的に子供っぽくしました。いや、単に丸顔なだけですが。しかし、表情がどうやってもあゆにならず、かなり苦戦しました。私には、特徴がつかみづらい絵です。
一方で、いたる絵は、解像度を上げる(省略されている細部を現実的に再現する)のが描き甲斐なので(非道いことを言うようですが)、ダッフルコートなど、現物資料を参考にして、それに準じました。
背景の木漏れ日は、樹のふちを濃いオレンジで強めに塗り、ブリーチで明るくとばします。丸い光点の集合になるようにブリーチするのがコツかも。
せっつさんのHP(せっつWorld!)40000ヒットのお祝いに送りました。
ってわりには泣き絵ですが。