ちいさな花

warmth forever

(2001.01.31 wed)





いままで気がつかずに、あるいは気がついていても踏みつけてきた小さな花がある。

オカリナと名付けられたこの娘は、サイザーとライエルの子供だ。
その純粋さに、サイザーは幼い頃のライエルを知り、その気高さに、ライエルは小さかったころのサイザーを見る。
二人は、互いに知らなかった幼少の頃を、オカリナに見るのだ。
孤独だった妻の、あるいは苦しんできた夫の幼い日を慰めるように、二人はオカリナを愛する。

愛したくとも、愛することができなかった娘の、そのしあわせな姿に、パンドラが微笑む。
子をもってはじめて知る、母の喜び。ただ母であるというだけの、それでも何ものにも代え難いしあわせ。

パンドラが目を細めて思う。
この娘の母親であることが嬉しい。

ちいさな花が、咲いている。

ささやかなしあわせが、咲いている。




10年という年月を経て、大戦の後が語られるハーメルン。

サイザーは娘を授かり、母の心情を経験していく。
だが、それにつれて、かつて妖鳳王だった頃に、何百人もの親子を斬り殺してきた罪科の重さが、実感としてのしかかってくる。
娘が愛しく、手放しがたいほど、自分がしてきた殺人の意味が分かってしまうのだ。
娘を返せ、母を返せという死者の声が、オル・ゴールはいなくとも、今度はサイザー自身の声で聞こえてくる。私は娘を、こんなにも愛している、と。

サイザーは苦悩するだろう。
たとえ、このオカリナが殺されても、自分は文句を言う筋合いがないのだ。

都合のいい話だが、この10年でサイザー自身の贖罪が完了していることを切に望む。
でなければ、この絵の幸福は、あまりにも不確かだ。

製作環境:PowerMac G4 450・WACOM FAVO・Painter4.0

母娘三代の絵です。
髪の色は統一感をだすために同じに。
立場を象徴する位置関係で三人を配置。
衣の色は、パンドラさまから、サイザー、オカリナの順で、明るくしました。

ハーメルンのバイオリン弾き最終回をうけての絵です。
現段階での、ハーメルンイラストの自己最高峰です。
技術やサイズ、描き込みなどではなく、描きたかったイメージ以上に良く描けているという点において。


[もどる]