「こんにちは!」 オカリナが元気に挨拶をする。人の良さそうな八百屋のオヤジが、相好をくずして振り向いた 「オカリナちゃん、元気いいねー。今日はママとお出かけかい?」 「うん!」 「この玉ねぎとジャガイモください」 「サイザーさん、今夜の晩ご飯はなんだい」 「はあ、とりあえず肉じゃがでも作ってみようかと」 「肉はいいのかい? そこの肉屋、きょう安いよ」 「ええ、もう狩ってきましたから」 「そうかい」 微妙に意味が違うが会話は成立していた。 「サイザーさんも、肉じゃがなんて、まともな料理を作るようになったんだねえ」 オヤジが、わざとらしく涙をふくマネなどしながら語る。この美しい母親が、この町に越してきた頃のことを思い出したのだ。 「いやー、最初の買い物のとき、血まみれで馬の首かかえたあんたが、ニコニコしながら「猿の脳味噌ありますか?」って聞いてきたときには、通報しようかと思ったよー」 「ええと、あの、このグリンピースの缶詰ください」 「おっと、こりゃどうも。オマケだ、このバナナもっていきな」 「わあ! ありがとう」 オカリナが、こぼれるような笑顔でビニール袋をうけとる。 「いつもすみません」「いや、なに」 八百屋は照れながら、何度も会釈して去っていく母娘を見送った。 「しかし、オカリナちゃんは素直ないい子だね」 腕組みしながら呟く。 60000ヒットより早い70000ヒットのリクエスト絵です。 ケストラーが封印され、ライエルや母と共に新生活を始めたサイザーが、日々の暮らしの中で見せる心の底からの「笑顔」が見て見たいです。きっとサイザーは、毎晩のように自分の犯してきた罪の重さに苛まされて眠れぬ時もあると思います。でも明るい陽射しの下では、フルートや若い頃のパンドラ様に負けないくらいとびっきりの笑顔で暮らしていると思うんです。 とゆーことで、笑顔のサイザーですが、すでに私の中では「サイザー=おかあさん」とゆー構図が完全に成立しておりまして、オカリナつきになりました。 誇らしげな母と、自慢げな娘。ちょっと理想的すぎるかもしれません。 タイトルは「しあわせはここに」 今回の絵は、また暑苦しげな蜂蜜色なんですが、それが涼しくイイ感じに出たので色的にはちょっと気に入っている一枚です。
それにしても、今回は色の勝利。蜂蜜色と藤色が意外に合って良い具合です。
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