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ごはん

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(980928mon)




「ご飯の仕度ができたから、ちゃぶ台を出して」

台所からパンドラの声がかかる。ハーメルが飯台をはこび、茶の間で折り畳んだ足をひろげた。茶碗と汁椀、箸を三人分一度につかんだサイザーが、順にちゃぶ台にならべる。茶碗が左、汁椀が右、手前に箸をそろえ、茶箪笥から醤油さしと味塩の瓶を出しておく。
ハーメルが座布団をはこんできて、ちゃぶ台のまわりにならべた。

「鍋しきとってちょうだい」

パンドラがけんちん汁の入った熱い鍋を、割烹着の前を鍋つかみがわりにして、両手で持って入ってくる。サイザーがすかさず新聞紙の束をとって、ちゃぶ台のわきに置いた。
お釜からうつしたばかりの、ほかほかご飯が入ったおひつ、漬け物のうつわ、焼き魚とお皿、ほうれん草のおひたしの小鉢を、三人が代わる代わる運ぶ。

「おさかなって、どっちむきだっけ?」

「頭を左に尾を右によ。お腹を手前にね。いいかげん憶えなさい、サイザー」

里芋の煮物をどんぶりにつけたパンドラが、台所から入ってくる。これで準備は完了だ。
三人でちゃぶ台を囲むと、パンドラが順にご飯をよそい、汁を注ぐ。

「はい、手を合わせて」にっこりとパンドラが手を合わせてみせる。
「いただきまーす!」サイザーの声が一番元気がいい。

食事がはじまった。がつがつと、よく食べる。

里芋の煮物は、サイザーの永遠の敵だ。
不器用でいつまでも里芋がつかめない。つるっと取り逃がしたサイザーがパンドラに「おかあさん、この里芋まだ生きてるよ」とよくわからない抗議をする。
見ていないふりをしていたハーメルが、さっさと、ふたつみっつとってやる。

「ありがとう」とサイザーのいい笑顔。

「ふん」つまらなそうにハーメルがうそぶいた。

Macintosh Performa 5440(88MB)・Painter4.0・Photodeluxe1.0・WacomArtPad2

逃避、と呼ぶべきシリーズである。先の紅葉でふっきれたので描いてみました。
こういう昭和40年代の生活をモデルにした絵って、一度かいてみたかったのですが、リアルに描くと(いや、描けなかったんですが)ノーマンロックウェルみたいになりそうな気がしたので、マンガ調に。ふふ。でも私はこういう生活してました。


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