ともだち

girls

(2000.07.18 tue)



サイザーにとってフルートは、オカリナやワルキューレ以外ではじめてできた女友達だ。

サイザーの知らないこと、考えたこともないことを、フルートはたくさん教えてくれる。
身だしなみのことや、料理のこと、そして考え方や価値観など。
「これが普通の女の子というものなのか・・・」
ちょっと戸惑いながらも、新鮮な世界に興味のあるサイザーである。
常に相手を追い落とし、喰らい合う犬の世界に生きてきたサイザーには、フルートのすることの一つ一つが、自分を正常な人間の世界に戻してくれる道標のように思える。新しい人生を勉強するような気持ちで、サイザーはフルートを観察していた。

サイザーにとって、フルートの言葉やしぐさの一つ一つは、まるで宝石のようだった。


「温泉に行こう」
といきなりフルートに誘われたときも、サイザーは驚いた。
こんな敵地に近い場所で風呂にはいるというのは、一体なんなのだ。
フルートに、戦闘能力に裏付けされた自信があるようにも思えない。
そのわりに、彼女は自分の手を引いて、どんどん進んでいく。

「女の子だもんね。お風呂にはちゃんと入らないと」
手を引くフルートが嬉しそうに言う。
そうか、そういうものなのか
サイザーは、心の中でメモを取った。
どんなときでも風呂にだけは入るんだな。
ほこりっぽい時期に二週間も頭を洗わないでいるとシャンプーが泡立たないとか、その上で頭から湯をかぶると泥水になって落ちてくるとか、同じ下着を二ヶ月以上はいていると、洗ったときにゴムひもを残して一部が溶解してしまうとかそういうことは無いのだろうな、普通の女の子というのは。

風呂には毎日はいろう。
サイザーは密かに決意した。

でも、いま我々が敵地にいることには変わりない。
それでも風呂にはいるなら、フルートのことは自分が守らねば。

お風呂セットを抱く腕に、自然と力がこもった。

フルートは安心しきった顔で、サイザーの手を引っ張っていく。
誰かと手をつないで歩くと言うことになれていないサイザーは、少し手を汗ばませている。それでも責任感から真剣に周りを警戒して歩いた。

戦闘能力には絶大な自信がある。
だが、そんなサイザーにとって、フルートが握ってくれる手の感触は、不思議と頼もしかった。




うりうさんの 25052ヒットのリクエスト絵です。

> サイザー&フルートで『ともだち』な絵を希望します。
> フルートってサイザーの始めての『ともだち』じゃないですか。
> だから、サイザーがオカリナやワルキユーレ達とフルートに対する態度や表情の違い・・・天野さんの『ごはんシリーズ』のサイザーのような、そんなサイザー&フルートを描いて欲しいのです。
> これを思い付いたのは、30巻で温泉に行く時、オーボウが「魔族に気をつけるんじゃぞ!!」と言った答えにフルートが「大丈夫サイザーがいるもん」って答えた、その時なんです。
> 今までのフルートだったらきっとサイザーに対してこんなこと気軽に言わなかっただろうに、それをいとも簡単にさらりと言ってのけた、その事で、サイザーとフルートが、仲間とか救ってくれたとかそういう事を抜きにした、すごく良い女友達同志になったんだなと思いました。
> だから、シチュエーションは二人の温泉シーンでも良いかなと思ってたりもします。
> 本物の二人の入浴シーンって本編ではなかったりもしますし(^^;)
> あくまで露出度控えめでお願いしたいですけど。


リクエストに、こんなメールをいただきました。
これをもとに色々かんがえてはみたのですが、結局、例の温泉シーンの手前を描いた絵になっています。
あいかわらず、ストーリーの隙間でした。

サイザーが責任を感じて、真剣に警戒している様子と、サイザーと出かけられることが、ただ楽しいフルートとの対比が、絵のポイントでした。
ただ、このクソ暑い時期に、セーター着せてるのは、やはり温泉という季節感です。
リクエストをいただいたのが1月だったことを考えると「おお、ぴったり♪」とも思えますが、半年経っても描けなかったため、極めて露出の少ない絵になってしまいました。

温泉のシーンでは、美女二人の華やかさを出した後で、ライエルへの気持ちをフルートに相談するサイザーとかのエピソードが欲しいとおもいましたってまだ考察引きずってますな。>自分
のぞいてたハーメルが、妹の考えてることを知って、ちょっと複雑な心境に、とか、あああああもういいって。



制作環境:Macintosh Performa 5440(88MB)・Painter4.0・Photodeluxe・WacomArtPad2

原作風、現実風、どちらにもとれるかも知れませんが、木立の中という背景で、両方とれるようにしました。
寒い時期の季節感を出そうとして、色彩を薄めにしましたが、なんか朝早くに温泉へ、というシチュエーションみたいな空気色になっています。

男物みたいなセーターとズボンのサイザーが、それでも持ってるのはラヴリーなピンクの洗面器なのが、個人的にヒット。
洗面器に「ケロヨン」とか「ネルフ」とか描こうかと思いましたが、これ以上濃くしてどうなる、と思いやめました。
アップの方(作画サイズ)で見ないと分かりませんが、サイザーの方、ちょっと照れがはいってます。
それにしても、このセーター、背中はどうなってるんでしょうね。




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