elder brother

七輪で秋刀魚

elder brother

(981022thu)




炭がいい具合に熾ってきた。

ハーメルが 七輪を庭に持ち出して、焼き網をのせ、しばらく待ってから秋刀魚(さんま)をのせる。

下からうちわで扇ぎ、火を強くしていると、サイザーが縁側から降りてきた。
脂のたっぷりのった秋刀魚から、やがてじゅうじゅうと脂の滴が落ちはじめる。

「ううっ たまらん」

にこにこしながらサイザーが冗談ぽく言った。よだれがこぼれそうな笑顔である。


サイザーはサンマが好きだ。だが、けっして食べるのは上手では無い。
パンドラとハーメルは、背骨と尾頭を残してわずかも残さず綺麗にたいらげる。芸術的であると言って良い。それにくらべるとサイザーの皿に残るのは、いつも惨殺死体である。
牛乳パックの口も上手く開けることができないが、最近、コンビニのおにぎりは、なんとかまともに剥けるようになった。

それはともかく。

秋刀魚の脂が火の上に落ちだすと、煙りがたちのぼり、うっかりすると秋刀魚にも火がついてしまう。ハーメルが、今度は上からうちわを使い、炎をおさえる。
このあたりの火力調節が上手く、ハーメルがやく秋刀魚は、いつも適度に脂が抜けていて、大変に美味である。サイザーは、兄が焼く秋刀魚が大好きだった。

ちらりとサイザーを見てから、ハーメルがつぶやくように言った。

「サイザー、おまえさあ....」

「なあに?」

秋刀魚から目を離さないで、サイザーが応える。
ハーメルは何も見ていないような目付きで秋刀魚をみながら、言った。

「.....ライエルのこと、好きなのか?」

「え......」

サイザーは、一瞬、茫然としたような表情になった。

               つづく





つづきません。
つづきませんったら。
どうしても気になる方は、自分の妄想の中でアレしてください。

最近では、贅沢の部類に入ってしまっていますが、その昔は、七輪で秋刀魚を焼くなど、わりと当たり前の事でした。「牛乳パック」「コンビニ」などの矛盾するところもありますが、時代を明確に決めないで描いたので、まあ、お許しください。
土曜の昼、パンドラがパート(汗)に出ているので、兄妹で昼御飯を作って食べる、というシチュエーションです。縁側、庭先、秋の昼下がり、七輪で秋刀魚、なかの良い兄妹、うーん、いいですなあ。(じじいか)

うれしそうなサイザー。
もはや、原作から完全に離れています。でもいいや、どうせ夜想曲は一部の、ごくディープでマニイなお客さんのものなのさ。現代で幸せそうなサイザーも、また、善しっ!

シリーズ二作目というのは、前より面白くなくてはいけないという。
「ごはん」に続くこれは、自分の中では、いいと思うのですが、皆さんにはどう映っているでしょう。



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