■ 2004.07.20 「『まこみし文庫・春』について・その1」 更新サボってずいぶん経つので一応説明しておくと「まこみし文庫」というのはゲーム「Kanon」のキャラクターである沢渡真琴と天野美汐のファンがあつまって、彼女らにまつわるSS(ショートストーリー)や、それに合わせたイラストなどを描き、二次創作文芸系同人誌として出版しているシリーズのことだ。わたしも絵描きとして参加している。ちなみに主催者のせいる氏は、そのスジでは有名な「ぱんつ」好きであり、彼の欲望がしみ出ているのか「まこみし文庫はぱんつ文庫」などとも称され、この企画はいろいろ愛されている。 2003年4月の「夏号」発行から一年かけて作られ、秋号、冬号、そして春号が先日刊行された。 確認してみると5月の15日というかなり前の話だが、この日に天野は「まこみし文庫・春」の完成おつかれさまでしたオフ会に参加してきた。 黒天野「つかれたー」 白天野「おかえり。まこみし文庫のオフ会だったな。参加ご苦労」 「いやー、せいるさんの人望というものを再認識したよー。まこみし文庫のスタッフは、潜在的にかもしれないけど『ぱんつ萌え』を実体化させるために集められた特殊部隊だったー」 「そりゃたしかに特殊だな・・・」 「それに、今回は総勢9人中絵師さんが7人という初めて且つ凄いオフ会だったし、もう情報量が半端じゃなくてメモするので精一杯だったよ」 「ふむ、いまなにか憶えてるのはあるか」 「あー」 「あーじゃなくて」 「名駅の『銀座ラ○オン』にココネさんみたいな髪型したウェイトレスさんがいたんだけど、エプロンのひもが縦結びだったのが萌えた」 「ほかには」 「『ラケル』のパンがおいしかった」「あとは憶えてねー」 「あれだけの大規模オフ会で貴様が憶えてるのはひもとパンのことだけか、このひもパン野郎」 「あーすがわらくにゆきだー」 「だーじゃなくって」 「あとはメモに書いてあるから今日は寝るー」 というわけで、乞うご期待である。
■ 2004.07.20 「『まこみし文庫・春』について・その1」 更新サボってずいぶん経つので一応説明しておくと「まこみし文庫」というのはゲーム「Kanon」のキャラクターである沢渡真琴と天野美汐のファンがあつまって、彼女らにまつわるSS(ショートストーリー)や、それに合わせたイラストなどを描き、二次創作文芸系同人誌として出版しているシリーズのことだ。わたしも絵描きとして参加している。ちなみに主催者のせいる氏は、そのスジでは有名な「ぱんつ」好きであり、彼の欲望がしみ出ているのか「まこみし文庫はぱんつ文庫」などとも称され、この企画はいろいろ愛されている。 2003年4月の「夏号」発行から一年かけて作られ、秋号、冬号、そして春号が先日刊行された。 確認してみると5月の15日というかなり前の話だが、この日に天野は「まこみし文庫・春」の完成おつかれさまでしたオフ会に参加してきた。 黒天野「つかれたー」 白天野「おかえり。まこみし文庫のオフ会だったな。参加ご苦労」 「いやー、せいるさんの人望というものを再認識したよー。まこみし文庫のスタッフは、潜在的にかもしれないけど『ぱんつ萌え』を実体化させるために集められた特殊部隊だったー」 「そりゃたしかに特殊だな・・・」 「それに、今回は総勢9人中絵師さんが7人という初めて且つ凄いオフ会だったし、もう情報量が半端じゃなくてメモするので精一杯だったよ」 「ふむ、いまなにか憶えてるのはあるか」 「あー」 「あーじゃなくて」
「名駅の『銀座ラ○オン』にココネさんみたいな髪型したウェイトレスさんがいたんだけど、エプロンのひもが縦結びだったのが萌えた」 「ほかには」 「『ラケル』のパンがおいしかった」「あとは憶えてねー」 「あれだけの大規模オフ会で貴様が憶えてるのはひもとパンのことだけか、このひもパン野郎」 「あーすがわらくにゆきだー」 「だーじゃなくって」 「あとはメモに書いてあるから今日は寝るー」 というわけで、乞うご期待である。
■ 2004.07.22 「『まこみし文庫・春』について・その2」 5月15日「まこみし文庫・春号」発売記念の中部圏オフ会が執り行われた。 防弾ベスト着用のポリス(最近では標準装備なのか?)がやたら徘徊してる名古屋駅で待ち合わせである。 メンバーは、せいるさん、ラックラックさん、せあらさん、高橋むぎさん、風見さん、UT(ゆーてぃー)さん、百合彦さん、こーわさん、そして天野という顔ぶれだ。初顔合わせの多かったせいか、あらためて「まこみし文庫」というネットワークの広大さを思い知らされた。狭い世界かもしれないが、そのスジでの有名人(なんかこればっかだな)がけっこういるのだ。とくに高橋むぎさんなんかは、後述するがたくさん本を出しているので、ちょっとした有名人である。 中央改札前に10時30分集合。遅れて参加のこーわさん・百合彦さん夫妻を除いて揃ったので、簡単に自己紹介して地下へ向かう。 そもそもこの集合時間は、名駅地下のレストラン「ラケル」開店時間に合わせて決められていたのだ。 オムレツなどの卵料理とパンで有名な「ラケル」の料理はたしかに美味い。だが、それ以上に主催者のせいるさんがここを選んだのは、ある人物を紹介するためであるという。 彼は彼女をこう呼ぶ。 「 さ ん ば い は や い ひ と 」 と。 「さんばいはやいひと」は、ラケルの、あるウェイトレスさんのことである。 彼の日記にもたびたび登場する彼女は、その名の通り通常の3倍の速さでテキパキと仕事をこなすという。また、その輝く笑顔をはじめとした優れた接客態度で場の空気を暖かく満たす、およそ理想的なウェイトレスだ。で、せいるさんは1ファンとして(そして、おそらくはそれ以上の愛情をももって)彼女を愛している。 開店前の店内をのぞき見て「見ました。今日はいます」と、人生の勝利を確信したかのような笑顔で報告するせいるさん。 「というわけで、今日は『さんばいはやいひと』を愛でるオフ会です」 「具体的にはガンパレードマーチの視線システムみたいなのを送り続けるオフ会」 「迷惑だろうなあ、店のひと」 そうこう言いながら開店時間となり入店となる。 「ところで『ラケル』といえば制服でも有名ですけど、せいるさんは別に制服にこだわっているわけではないんですよね」 「そうです。大切なのは『さんばいはやいひと』の中身です。みなさん、中身が大事なんです。いや別に『これだけの絵師がいれば、さんばいはやいひとを二次元化してフォルダに保存できるヨうひひ』とか考えているわけではありませんから」 「今日のねらいはそれですか」 「・・・・」 「・・・・」 「・・・・」 「ちっちがう! でもぼくががまんすることでばがもりあがるならあえてそのあくめいをうけましょうさあみなさんすけっちぶっくをだしてはやく!」 「いや、でも、どなたが『さんばいはやいひと』なのか・・・」 「青い制服きてるひとだから、すぐわかりますよ」「名札は名字だけですが、すでにフルネームでチェック済みです」 「・・・捕まらないでくださいね・・・」 「あれ?」 「どうしました、せいるさん」 「ちがった。同じ制服だったけど違うひとだった。遠目にみてたから分からなかった・・・」 「なるほど、『さんばいはやいひと』は、あっちの青い服と同系機ですか?」「はい・・・」 「互換性は?」「ありません・・・」 「せいるさんの1日がいま終わりました」 「はやー」 「なに、せいるさん、みまちがえたの?」 「ちゃんと顔で確認したんですか?」 「だって顔見るの恥ずかしいもん」 「せいるさん、二次元フィルターがかかっていただけでは?」 二次元フィルターとは、実在の人物を漫画キャラに変換して記憶してしまうある種の特殊技能であり、ある種の末期症状である。 「ちゃんと、三次元として認識してる?」 「しっ、失礼な! でもなんか雰囲気がちがうなっておもってた。あーあ、今日のオフ会は終了です。あとは適当にダラダラしててください」 「ええー(一同)」 「ラケルの96%はさんばいはやいひとでできてるんだよー」とか「ラケルはきょうしんだー」などと呻きつつ、うちのめされているせいるさん。声のトーンが気の毒なくらい沈鬱だ。 そうこうするうちに、こーわさんと百合彦さんが合流。活きのいい死体みたいな目をしたせいるさんに挨拶して着席。 「こーわさんは、ラケルの制服をみにきたようなもんですよね」 「アンミラみたいな、あんな扇情的なものではないですが、これもいいですね」 立ち働くウェイトレスをぼうっと眺めながら、せいるさんがうめく。 「ああ」 「どうしました」 「・・・(スカートを)めくりたいー」 「変態客ですね」 山嶺から岩肌を伝って流れる清流のごときすがすがしさで、こーわさんが切って捨てる。 「そんなことありませんー。めくりたい=プラトニックですからー」 「それは、多分ちがう」 「できればうしろからー」 「ちがうって」 「そして、こう鼻を・・・」 言葉の途中で、ほんの一瞬間、彼の時間が静止した。 妄想に耽溺していたせいるさんの魂を、衝撃的な現実が刺し貫いていた。すなわち さんばいはやいひと降臨 である。 昼からの勤務なんだな、と我々が推察しているのを尻目に、爆発の勢いで猛然と火を噴くせいるさんの浪漫回路。噴出し奔流となる桃色のオーラ。その勢いのまま、彼が隣の人に吠える。 「せあらさんっっ!」 「ん、なななに?」 「めくっていい!?」 「「「「「「「「「「 やめてください」」」」」」」」」」 全員が同時に制止していた。 「らっくらっくさんがおしえてくれたんですがれじでかいけいしてるときによこからかうんたーのぞくとちょっとたかいどろわーにてがとどかないんでさんばいはやいひとせのびしてるんですよあれもえですよね」 「せいるさん、いいからすこし落ち着いて」 「あの、せいるさんはちっこいのがすきなんですか?」 「いや、たまたまよこからみたときにずがーんって」 あいかわらずせいるさんは平仮名でしゃべっている。 予期しなかった法外な喜びが彼の卓越しているはずの文章能力を骨抜きにしていた。 「いいですか、みなさん。レジのときは、さんばいはやいひとの足もとをみましょう。いいですかあしもとですよあしもと」 すごく重要な秘密を打ち明けるような厳格さで彼は言った。そして笑った。 最初にも触れたが「さんばいはやいひと」について、個人的にもちょっと書いておこう。 天野は接客業で採用に携わった経験から、彼女は100人面接して出会えるかどうかの逸材であり、接客業従業員として極上レベルにあると思う。後述もするが、まず笑顔がすばらしい。作業も手早くキビキビした良い印象を残すので、同じ業務をしていても店全体の雰囲気は彼女が居るか居ないかで相当な差が出るだろう。せいるさんが惚れ込むのも頷ける。 「さんばいはやいひと」は、その接客姿勢もすばらしかったが、今回のメンバーはやや違うところに目をつけていたようだ。 彼女が注文を取りに来るたびに、一番なれているはずのせいるさんが、まるで少年のようにはにかんでもじもじしているのがなんかかわいかったが、それを尻目にメインのテーブルでは、他者のオーダー中に、7人の絵師がそれぞれに手帳やスケッチブックをもちだし、さんばいはやいひとをスケッチしはじめるという一種異様な光景が展開されていたのだ。(いや、天野こそが率先して描いてたんだが) テーブル上、もしくはテーブル下にて続々と林立するスケッチブック。なんとなくはじまったうえにモデルさんには無許可どころか断ってすらいない「さんばいはやいひとお絵かきコンテスト」 本人にしてみれば「わたしいま、何されてるんだろう・・・」と脅威を感じてもおかしくないと思うが、それでも笑顔でオーダーを取っていったのはたいした精神力だと思った。 ただ、あらゆるお客様に対して大好きな友達が遊びに来てくれたときのような嬉しげな笑顔でテーブルを飛び回っていた彼女が、その後このテーブルでだけ妙に引きつった顔をするようになっていたのは、気のせいだと思いたい。 午後になって「ラケル」を出立。その後、メロンブックス(アニメイト横の同人ショップ)を冷やかす。 「ここからは『まこみし文庫を店頭で購入して領収書を「まこみし文庫制作委員会」で切ってもらって店員に不審がられる』オフ会ですね」 「・・・たぶん、ちがいます」 とかなんとか話をしつつ店舗にはいると、正面の新刊コーナーにまこみし文庫春号が4面陳列されていた。 どよめく参加者。 こうも堂々と置かれているしかもテキスト系の同人誌というのはそうはないと、同人経験の浅い天野も思うがどうだろう。 まこみし文庫のすごさは、参加メンバー単体の価値が積算されただけのものではなく、それをまとめ、形にしているところにあると思う。そしてそれは、まさにせいるさんの努力と人徳によって実現しているのだ。 ちなみに、そのせいるさんは、いま天野の目の前にいて、無防備で「すきすきおこさまぱんつ4巻」を陶然と見つめている。なにか哲学的なことを考えているような表情にも見えた。背後でガリガリとメモをとっているわたしに気が付くそぶりもないので、気配を消したままで声をかけてみる。 「せいるさぁん」 「うわあびっくりしたっ!!」 死ぬほど驚いているせいる氏。 天野のメモ帳と「すきすきおこさまぱんつ4巻」をとっさに見比べていつもどうりに猛然といいわけを開始する。 「はっこれは、これはちがうんです! ぼくはべ」(以下256秒の弁明をいつもどうりに削除) メロンブックスでは、むぎさんの月姫(歌月十夜)本を見つけた。氏の絵柄は特徴的なので、数多ある同人誌の中でもよく目立つ。後で寄る「とらのあな」(やはり同人誌のショップ)にも氏のカレイドスター本や月姫本があった。店がつけた宣伝文句も「あの」とか「実力派の」とかかなりすごく、人気作家というのが伺える。あらためてすごい人を呼んだものだなと思う。こーわさんの「MMFTMM(Muchi-Muchi-Fu-To-Mo-Mo)」も陳列されており、作家率の高いこのオフ会にあらためて深い感慨を憶えた。 なんといっても「あの絵をかいた実体がここにいる」というのが不思議である。我知らずニコニコとしてしまった。 「ほらほら、むぎさーん。これこれー。むぎさんの『ストラトス4』本!」 「や、やめてください!」 ビニールコートされた氏の本を高々と掲げて発見を報告すると、むぎさんは本気で恥ずかしがっていた。なんか萌えた。 ひとしきり回った後、メロンブックスを出る。 ところで、百合彦さんがここでまた大量の本を買っていた。 「すごい量ですね」 「そんなにないよう。ほら小指でももてるくらい」 その小指は糸化した買物袋(手提げ部分)に、いまにも切断されそうだったが、うれしそーにポイントを数えている百合彦さんには何も言うまい。 移動しつつ隣のグッズショップのショーウインドウを冷やかす。 「『翡翠ちゃん萌え萌えバスタオル』が42000円!?」 「ひえー。すごいプレミアだ」 「『有彦くん萌え萌えバスタオル』があったらなあ」 「百合彦さん投票してたよね」 「そうだ、せいるさんへのおみやげにプリキュアドールもってくるつもりだったんですよ!」 「なんでまた」 「これが下からみると(おもにぱんつの)しわとか作り込みがすごく良くできてて! これはもぅせいるさんに贈らなくては、と。でも忘れてきちゃいました」 「じゃあ、せいるさん『娘にたのまれたんだけどねー、ぷり・・・なんだっけー』とかとぼけつつコンビニで買いましょう」 「そうですね。あ、あと領収書をもらわなきゃ」 「領収書かい」 「作り込みといえば、電撃大王についてた小野寺可憐フィギュアもかなり」 「いや、魔改造いらずの青紫春雨ちゃんも」 そんな会話をしつつ、メロンブックスそばの喫茶店「KOMON」へ移動。 このとき、せあらさんが、せいるさんと「うどんすき」を食べたときの話をしてくれた。 そのときは、うどんすきのオプションで「生きてるエビを鍋でゆでて食べる」というのがあったそうだ。 エビが暴れるのでけっこう強く箸でおさえておかなければならないが、せいるさんは率先してその作業を行ったという。 偉いなあと思っていると、せいるさんは悶えるエビを見下ろしながら熱のこもった演技でこう呟いたそうだ。 「あ、あついっ あついよぅ びくんびくんして・・・る・・・あ・・・」 無言。 寒風ふきすさぶ荒野のような沈黙。 このメンツをして無言にさすのはかなり毒素が強いネタでないとできないと思うのだが、それはともかく。 「つっこみようがないですね」 「そんなっ、あのときはせあらさんも喜んでくれたじゃないですか!」 「でもねえ」 「あ、あれはアレですよ店の、そう店の雰囲気のせいで」 「どういう店であんな台詞がでますか」 「いや、これはあくまでも創作活動のネタとして! そうだ、エビですよ! エビの声がきこえたんですよ! そそそれを代弁しただけです!」 「じゃ今度は、みさくらなんこつ風で代弁してください」 「ところで、せあらさん。いきなりなんでそんな話を」 「いや日記ネタとして燃料投下しようとおもって」 「なるほど、そこに『火のないところに黒煙まきあげる力業師』の天野さんが点火するわけですな」 「あの、みなさん、ぼくはもっと清く正しい人ですよ? ほんとですよ? あの、天野さん、聞いてます?」 ところで、まこみし文庫夏の「Dont Need to Say Good Bye」は、せあらさんが以前に描いた数ページの漫画をもとに、せいるさんがイメージをふくらまして書いた小説であるという。コミックのノベライズだ。 ちょうどせいるさんがその同人誌を持ってきていたので、みんなで回し読みしたのだが、これは自作を目の前で回覧されるという、せあらさんには地獄のような羞恥プレイだったらしい。思えばこれは、せあらさんが暴露した先のうどんすきエピソードに対するせいるさんの仕返しかもしれない。 そういえば、せいるさんは百合彦さんの絵にSS(ショートストーリー)をつけたりしたこともあった。 まこみし文庫などの場合、絵描きは常に原作ができるのを待って、それをみて挿絵を考える。いわば原作主導なので、こういう逆転はおもしろい。 SS書きの人に、絵師はありがたがられる。それは作品をヴィジュアルという別次元から再構築して見せてくれるからだろうし、なにより作品に花が加わるからだ。 だが、逆もそうだ。この絵にひそむ、絵師にもわからない情報を語釈してくれるのがうれしい。 そんなことを考えている間も、話は進む。気が付くと例によってぱんつの話だった。 「ただ白いだけでは反応しないんですよ。あのぶかぶか感が!」 「河岸を変えてもせいるさん絶好調だな」 「天野さん、今度はせいるさんと席が遠いね、大丈夫ですか? メモとれる?」 「ああ、ちょっと遠いですが、大丈夫。口パクに適当な台詞アテレコしますから。むしろ好都合というか」 「わー血も涙もねえ」 「天野さんのポジティブ思考はときとして非情だ」 「ところで、ぱんつ好きと尻好きは違うのでしょうか」 「それぼくのことですか」 「なんでむぎさんが反応を」「分かる気もするけど」 「こーわさんは、オンリー本だすくらいのふとももフェチ」 「脚の裏側のラインが好きな人はおしりすきだよね」 「表も好きですよ」 「2ちゃんねるフェチ板で、ひざこぞうスレってのがあったなあ」 「足の裏スレとか、正座フェチとかあった」 「ところで天野は正座フェチです」 「悪魔の板だ。かえってこられん」 「でも彼らをみてるととてもピュアなんですよ」 「ひざのうらのくぼみ、いいですよね」 「ラックラックさんは、こーわさんの『ふともも本』から影響うけたらしいよ」 「へえー」 「この結果は、せいるさんにも御しきれなかったらしい」 『脚はもうなおさなくていいから』 『いや、もっと脚のラインを追求したい』 『いや、ほら、もっと大事なことあるじゃん! あの、布とか! 布とか! 布とかっ!』 「あせるせいるさんが目に浮かぶようです」 「脚なんて飾りです。えらいひとにはそれがわからんのです」 「それ前にもやった」 「ちなみに、ラックラックさんは『肩ひもずらしフェチ』ね」 「それにしても、今回は絵師さん多い」 「みなさん絵を描くときに資料とかどうしてます?」 「そういえば、トルソー(全身マネキンのボディ部のみのもの(?))がほしいって最近おもうんですよ」 「あ、それわかります」「トルソーに服を着せてしわとかの資料にするわけですな」 「服と言えば、こーわさん、液晶ディスプレイのカバーに(女子校の)制服のスカートつかってるよね」 「モニタつかうときに、こう、めくるんだけど、なんかやばいよね・・・って話が本に描いてあった」 「しかも奥様のではなく、あくまで個人所有の一品らしいと聞く」 「資料として入手したけど、スカートは穿かれないと立体にならないから資料としてはダメだったんで。モニターカバーにしてます」 「百合彦さんの知人からのプレゼントだそうで」 「ええ、うちの夫はまずにおいをかいでました」 「においがしたもん」 「たぶんクリーニングの臭いだよ」 「ちがう、こころのにおいですよ。魂の鼻でかぐんですよ!」 「ふっ・・・」ふとももフェチの夫を、少年好きの妻が笑う。 「あ、笑ったな。百合彦さんのまこみし文庫イラストでは、男の子ののってるカットがよかったね。ズボンのひだまで書き込まれてるの、この子だけなんだよね。主役級さしおいてすごい力はいってるよね」 「ソンナコトナイヨー」 「マコトノムネオッキクシタヨー」 「百合彦さん、そんな不自然な答え方しなくても・・・」 「ところでラックラックさんは、せいるさんからまた変な注文なかった?」 「ありましたよ『このシーンは、田中ユタカの「初夜」のこのページのこのコマみたいに!』とか、すごく具体的なのが」 「ううむ、あいかわらずか」 「どうでもいいけど、大きな声でしょやとか言うな」 「でも、あんまり具体的に絵の指示されるのもいじりようがないんです。同程度か、まったくかぶらない芸風ならまだしも」 「『ここにあるじゃんこれ』って思うよね」 「トレースするわけにもいかんし。こういうのがちっと難しい」 「パッとだけ見て、しばらく忘れておいて、記憶をたよりに描いてみると意外に別物になるかもね」 「そういえば、春号では百合彦さんまでがついにぱんつ絵を」 「このあとがきのぱんつ絵が、いちばん悩みました。構図とか」(『まこみし文庫・春』あとがきをぜひ参照のこと) 「へえー」 「美汐が立ってて、それを下から・・・っていう構図もあったんです。でもテキストがはみ出したら格好悪いし・・・。どっちがいいかとずっと悩んでて」 「まあ、どっちにしても文月さんの鼻血はとまらないとおもいますけどね」 「なやみつつ描いて、知人の西脇だっとさんにFAXおくったら」 「そんな絵いきなりFAXでおくられたらビックリするだろうなあ」 「『あぁ、あのぱんつの本? まこみし文庫だっけ?』って言われました」 「ううむ」 「『まこみし文庫』よりさきに『ぱんつの本』で定着してますね、我々の一年間の結晶は」 「ところで、美汐さんのぱんつはこっとんぱんつでしょうか」 「でしょうね。それに美汐さん、ちょっと破れても使っていそうですよね」 「『美女で野獣』のアカネちんみたいだなあ」 「ことみはシルクだとおもう」 「名雪がしまパンなのはデフォとして」 「しましまは立体感だせるっていう利点があるから、絵師には好かれるのかも」 「どうでもいいけど、みずたまってのもフェチだよね」 「せいるさんにとっての理想のぱんつってどんなの?」 「年下、黒い髪、そして白いこっとんぱんつ!」 「いま1秒かかりませんでしたね」 「くしゃくしゃ感のあるその白い布(中身付き)を、おしたりひねったり鼻の頭でフロント部分をこすったりしたい!」 「・・・・」 「2時間くらい!」 「・・・・」 「あ、でも、やっぱりうしろから!」 「誰かとめろ」 「女性もいるし」 「いや、さっきから百合彦さんはこの喫茶店で『女装少年(松文館)』というその名のとおりの成人指定コミックを堂々と読んでるし」 「相変わらず最強夫婦だな」 「ブレーキかと思ったらアクセラレータだったか」 「せいるさん、このページのこのぱんつなんかどうですか」 「百合彦さん、あんまりお店で堂々と広げないで・・・」 「ハサミでぱんつ切り取るひとの気持ちはどうですか、せいるさん」 「ぱんつもいいですが、ぼくはスク水の水抜きをじょきじょきと切りたいです」 「・・・・」 「そっ そしてそこから手をいれておへそをなでるんですっ!」 ふと。 誰かが気が付いた。 かすかなBGMを除いて、沈黙に満たされる店内に。 そして、気が付くとほかの客がきれいさっぱり消えていたことに。 極めて毒素の強いひとつのテーブルが、知らぬ間に一般客を駆逐していたらしい。 カウンター奥の店員は、不自然なほどこちらを見なかった。 懸命に日常を護ろうとしているかのような沈黙だった。 「河岸をかえますか」 いたたまれなくなって、誰かが言った。 名駅の「銀座ライ○ン」に移る。 せっかくなのでまこみし文庫の話をした。 「まこみし文庫のあとがきは五十音順なので、天野さん一番最初なんだよね」 「毎回たのしみで」 「いやもう、せいるさんの真実をプロパガンダするにはこの立場を使わない手はないと思いました。先に言った者勝ちですから。でもせっかくのしやわせないい話を台無しにしてるのかも・・・すみません」 「まあ、後書きから先に読む人もいますし」 「基本は、まずカバー裏を確認、あとがき、それから本編ですかね」 「そういえば今回もカバー裏では七瀬さんが大暴れでした」(まこみし文庫・各巻のカバー裏を参照のこと) 「何を書くか決まってないときに、聞きましたよ 『ななちん、何が好きなの?』 『メイド服ー!』 『メイド服真琴とメイド服美汐決定』 『次の号は?』 『オーソドックスに制服』 『制服で、みえそうでみえないのが萌え』 『不可視のスカート決定』ってかんじでした」 「なるほど、今回もカバー裏の内容こゆいですね」 ちなみに、今回カバー裏の裏表紙側「見えそうで見えない不可視のスカート」を担当したのは私だ。 表紙側「足首にからまるこっとんぱんつ」は、らっくらっく氏が描いている。 ところで、今回の「まこみし文庫・春」の絵で天野が個人的にいいと思うのが、百合彦さんの絵だ。 とくに彼女が担当した「フタリ(文:文月そら・絵:百合彦)」の表紙絵が秀逸である。 なんと説明したものか困るが、この絵の奥にかなりの解釈ができると思うのだ。先にも出した「語釈」という言葉があるが、絵が情緒によって描かれるものであるなら、この絵の精神的質量はかなり芳醇であり豊かであると思う。物語を絵で表しているのではない。絵が物語を内包し、独自の温度を発している。言葉にするだけ陳腐だが、わたしはこの絵にちょっと素通りできないくらいひかれる。 その百合彦さんから、天野の絵をみるときのことを聞いた。 夜想曲のコンテンツを見るとき、まず絵(画像のみ)を見て、絵の意図を考えて、それから下に書かれた文章を読むそうだ。 絵の意味が想像したのと外れてたりするのも、おもしろい、とのことである。 いろいろ意味を込めてるつもりだったので、そういう見方をしてもらっているということが、そしてそれを聞けたのが、純粋にうれしかった。 こーわさんからはスケッチブックに描かれた同人誌表紙の原画をみせてもらった。 すごい。 その一言に尽きた。 おもに鉛筆の線だが、やはりモニタで見ていたものと、実際にその手で刻まれた物は違う。なにより線が生きているのが分かるのだ。塗りでごまかしてる自分とは違うと実感する。 「スイカ(電車賃自動精算のカード)」を駅の改札に左手で通している絵(実際、スイカのスキャナは右側にある)をみせてもらったとき、こーわさんが左利きだという話になった。 「日本って左利きに優しくない国ですよね」 そういうUTさんは、絵は左手で描き、字は右手で書くそうだ。 たいていの絵師は自分の環境がある程度標準だと思っているだろうけれど、聞いてみるとぜんぜん違っていて面白い。 高橋むぎさんとは、以前にチャットでほんの少しだけ話をしたことがある。わたしは氏の描くイラストや、そのシチュエーションが好きだった。今回は、いろいろ氏の絵の話がきけて嬉しい。 むぎさんは、ひざの上にタブレットを置いて描いていること。日記絵の主線はエアブラシで、ブラシサイズをいっぱいまで細くして、それで書いていること。色は、エアブラシのサイズを適度な大きさにして塗っていること。 あの絵の雰囲気はそれででてたのかと、納得した。 むぎさんは最近わたしの好きな志摩子さまの絵(おもに乃梨×志摩だが)をじゃんじゃん描いてるので、この機会にお会いすることができて感慨もひとしおである。 今回のオフは、やはり絵師の集まりというのが特異な点だろう。少なくとも私のまわりでこれほどの規模(そして内容の充実)は、いままでなかった。 ちょっと話がかわるが、絵とそれを描く人間の人格とは、実はまったく関係がなかったりする。 すごく綺麗な絵を描く人間や、すごくかわいいキャラクターを生き生きと描ける人間が、その内面において素敵な人間かというと、それは実はなんの関係もない。特に、絵の描けない人は往々にしてそういう勘違いをし、素敵な絵を描く人間の人格が幼稚だったり非道く利己的だったりするとショックを受けたりする。わたしもちょっと前に(いちおう絵が描けるくせに)そういう経験をした。 絵の修練と人格の修練には、なんの直接的相互作用はないのだ。 優れた人格をもっていれば、優しい絵を描くことはできる(もちろん絵心は必要だが)かもしれない。 だが、優しい絵を描ける人間が、優れた人格をもっているかどうかは、まったく関係ないのだ。 漫画家の島本和彦先生も言っていた。「十年以上マンガを描き続けてきたヤツらが、大人になれるわけがないだろう!」と。机の上で人格は磨かれない。 だが、このオフ会でえた感触を確かめてみる限り、「ぱんつ文庫」のスタッフが優れた人格者であるかどうかはさておき、まこみし文庫の絵師に不快なタイプはいない。短い時間だったし、身内びいきなのだと自分でも思うが、いい人が集められていると思う。 その共通点を結んだのは、ひとえにせいるさんの人選能力だ。 この本が好評を博しているのも、SSライターとしての知名度と実力だけではなく、(どこまで意識してのものか分からないが)絵やSS単品の実力だけでなく、それを創った人間の素地を見抜く能力と、それを束ねてきた彼の努力の賜物といえるだろう。 事実、まこみし文庫にかかわった一年を振り返る。 編集作業など全部おまかせだったこともあるが、4冊もの本に関わったというのに、絵描きとしてはすごく楽であり、そして彼のおかげでとても楽しかった。 ところで夏・秋・冬・春と出版された「まこみし文庫」は、実はまだ終わらない。 いま、せいるさんが目の前で「まこみし文庫・春」のあとで出すスペシャル号の刊行宣言をしている。 「次回はSP版を出します。中身は、ぜんぶぱんつです。カラーのみひらきからぱんつ。全編これぱんつ。お気づきの通り、SPはしろいぱんつの略です」 「せいるさんの欲望全開」「これ以上どう開く」「開ききってるな」「むしろ裏返ってる」 「ええと、この機会に宣言しておきますが、ぼくはべつに『ぱんつ描いて』とは一言も言ってません。ここにも「ぱんつは強制ではありません」とあるとおり、ぱんつの絵は、皆さんが描くのです。自然の流れで。ええ、あくまでも自然の流れで」 そのへんは、参加者がせいるさんの心境を察して、ついには百合彦さんまでもがぱんつを描いたわけなのだが、もしいけ好かない奴が主催だったら、だれもそいつの趣味になど傾倒しなかったろうと思う。だからみんなニコニコしながらせいるさんの話を聞き、そして突っ込むのだ。 「しかし、むぎさんやUTさんにまでぱんつ描かせて、せいるさんは極悪人だね。天野さんはともかく」 「ともかく?」 「むぎさんの日記でぱんつ絵みたときに日記リファで『むぎさんのぱんつ絵がもっとみたい!』って書いたら『ぱんつ絵はあんまりかくと慣れてアレなので』ってレスがあったでしょ? あのとき『しまった地雷を踏んだか』って思った」 「あと、ぼくは別にUTさんに(ぱんつの絵を)描いてといったわけではありませんよ」 「でも描かないともう呼んでもらえないかなって思って。しょうがなく、せいるさんのために」 「何度も言いますけど、ぼくだってわざとじゃないんですよ! 結果として! 自然ななりゆきで!!」 「いや、せいるさんは願ったのだ。いろんな絵でみてみたい、と」 「たしかに、そうなったらイイナアとは思いましたけど」 「妄想具現化能力ですね」 「もしくは無意識の頭脳プレー」 「いや、せいるさんって、じつはすごい策士なんじゃないですか・・・?」 「そ、そんなことありません。ぼくはあくまで純」(以下略) 勝手なこと言い合ったオフ会が終わった。 名古屋に用事のある人間以外は、中央改札あたりでそれぞれ帰途につく。せいるさんとせあらさんとらっくらっくさんと天野は「とらのあな」によった。途中の駅のホームにて、一日を振り返る。 「今回もぼくの真実は語られませんでした」 「いま第6回ですね。最終回にはなんとかでっちあげますから」 「最終回って、ぼくが死ぬときですかっ!? あとでっちあげってなんですかっっ!?」 「あはは」 「いえ、でもぼくは決めてるんです。死ぬときは、前のめりに、です」 せいるさんは、そう真剣な顔で言った。 「まこみし」は、もちろん沢渡真琴と天野美汐を愛している人間があつまってできた作品集だ。 だが、われわれはたぶん、せいるさんのひとがらに集まったのだと、ふと思う。 同時に、ああこういう真剣な一面もあるんだな、と私は思った。だが彼は小さな声で付け加えた。 「・・・鼻をつっこんで」 何を想像しているのか、しやわせそーに瞳が輝いていた。 やっぱりせいるさんだと思った。
■ 2004.07.24 「『まこみし文庫・春』について・その3」 「人の仕掛けた罠も自分で掘った墓穴も分け隔て無く踏み抜いて突き進むせいるさんのせいるさん振りが余すところ無く描写されている」などすでにメールなどでも反応盛況な先日のオフ会日記だが、もちろん本人をはじめ参加者各位には一応の確認をとってあることを付け加えておこう。 事実関係の誤認や修正箇所があったら期日までにメールでお返事を、というものだったが人によってはチャットなどで確認する場合もあった。様子は以下のとおりである。 せいるさん(以下「せ」)「オフ会日記、順調に書けているようですね。日記更新頻度あがりますようにと祈っています」 天野(いか「あ」)「それで思い出しましたがせいるさん」 せ「はい」 あ「(草稿をみせつつ)オフ会日記はアレでイイのでしょうか」 せ「モーマンタイです。笑いました」 あ「ええっ」 せ「それにしても、誰ですかここに書かれているアホなひとは。 こんなアホが居るとは信じられない。って私のことかーっ!!」 あ「いや、ほら、キャラクターですよ! 『せいる』っていうキャラ! 声優は、三浦祥朗さんあたりで!」 せ「キャラクタかい! ってそれ天野さんの二次元フィルタじゃないですか」 あ「フィルタというか、アニメとかドラマCDの脚本かくのとあまり変わらない次元ではないかと。<日記」 せ「(再読中)・・・脚本で踊ってる私は楽しそうです(笑」 「てーか、このオフレポだとこーわさんと百合彦さんになんて思われるかわかったものじゃないですよ!(笑」 あ「えー、そーかなー」 「具体的にどう思われそう? どこが心配?」 せ「ぱんつのえらいひとってリアルでそーなんだー、とか」 「ラケル制服めくってくんくんまじでしそうだー、とか」 「 誤解されまくりです!」 あ「いや、ほら」 「キャラ立ちってことで」 せ「キャラで片付けられたー!?」 あ「あと、当日それ言ってなかったですか? <くんくんふにふに」 せ「……」 あ「……」 せ「……」 あ「ねえねえ」 せ「ゴメンナサイ。 orz 」 あ「よかった。記憶があいまいだったけど、わたしこんなこと思いつかないもん。ぜったい外部入力ですって。せいるさんからの」 せ「あとラケルは96%ですよ。 86%は聞き間違いです。>@さんばいはやいひと成分」(なおしておきました) 「(このとき)むぎさんが素で笑っていたのが印象的でしたが」 「なんかすげー笑われておりました……」 あ「ところで、むぎさんLOVEーっっ!!」 「すーきーだーっ!!」 せ「あと、あれのあとUT(ゆーてぃー)さんが意外とはじけたひとだっていうのがおにーきで暴露されておりましたが」 せ「もう二ヶ月ちかく前のことですねえ」 あ「凄く楽しかったですねぇ」 せ「というか天野さんが楽しそうだったというか」 あ「せいるさんが思い通りに自爆してくださったおかげです」 せ「そんなひとに弄られるの怖っ!」 「個人的には天野さん(から、さんばいはやいひと)の接客評価が聞けたので嬉しいです」 あ「いや、あれはすごいですよ。高レベルなんてもんじゃないです」 せ「天野さんは彼女が叱るところもみられるとさらに感を深くされるかも。新人の子を叱るときの顔と、接客のときの顔のギャップがすごいんですよ。まさにプロ。あ、あとボクは一ファンでありながら三次元のひととして愛してますよ! ラブ!>さんばいはやいひと」 あ「あー・・・。せいるさん、すごいねえ」 せ「うい?」 あ「接客業の、個体識別できてる従業員の叱るところをみる、ってかなり通ってないとできないよ。たぶん」 せ「そっかな。私がいるのはお店が混む前だからかもしれません」 「じつはいうと、新人のAクルーやAトレーニーさんたち、 (さんばいはやいひとに比べて)格段にレベルが落ちるんですよ」 あ「というか、さんばいはやいひとが勤務しているときに入店した場合、可能な限り目で追ってるでしょ」 せ「うん。喋りながら情報収集してる」 あ「・・・」 せ「あ、あのー、ぼ、ぼくはお客ですから! 待ってる間だけですから!」 あ「ウンソウダネー。セイルサンノユートーリダネー」 せ「うあーん!?」 「ってもう○時ですが。大丈夫ですか? 引き止めてすみませんです」 あ「あんま大丈夫くないですが・・・日記のネタができましたので、よしとします」 せ「どれ!?どれですか!?」 あ「全部ですよ、ぜんぶ。さあ、チャットのログを保存保存」 せ「鬼だ! あんた鬼の皮をかぶった人だ!(泣」 あ「それって、つまり人じゃないんですか」 クラナドネタで終わったこのログには残っていなかったが、実はSP版では急な絵仕事を何枚か(扉絵4枚と、お着替え中の美汐さん絵とか)引き受けている。これを交換条件に、わりとすんなりあの日記にオーケーが出たのかもしれない。 ・・・・。 ぱんつの絵でせいるさんの魂を買っているような気がするのは錯覚だろうか。
■ 2004.07.26 「現場復帰」 一年前の7月に、一度は辞めた書店に戻ったのだが、およそ十ヶ月間マネジメントの仕事をした後に、現場に復帰した。 これは今年の春頃に、交通事故や鬱病や、その他いろいろ書かないほうが幸せな事情による数名の現場離脱があり、管理職をはじめ店舗要員が絶対的に足りなくなったためである。 「現場復帰」が正式に決まる前までは、上記のような状況から各店に助っ人として出張していた。一週間の予定は、 日月火:A店に出勤 水木:B店に出勤 金土:C店に出勤 というシフトで「あれ・・・わたしいつ休むんだろう・・・」と呆然と思索を巡らせた憶えがある。 実際には、この「月月火水木金金(つまり土日が無い=やすまず働け)」という旧軍の軍歌みたいなシフトは、土曜とかに臨時的にお休みをもらうことができたので、どうにかこなすことはできた。 どの店舗も、いかにも人手不足という感じだった。現場に復帰することが、もっとも会社のためになることは間違いない。 だが同時に、現場復帰という人事があったのは、わたしがこの状況を圧してなお続けるべきだと言えるほど、マネジメントの仕事で実績を出せていなかったためだ。 この人事のときには、かすかに凹んだと思う。貢献できないのが残念だった。 だが、先のシフトの間、ひさびさに従事できた現場仕事は「天野さん、なんか輝いてるね」と言われるくらいには楽しかった。 本部でマネジメントの仕事をするよりも、自分もお客様のお相手をし、商品に直接ふれる方がずっと好きなのは確かだった。 一度しりぞいてまた入ってきたという客観的視点をもった立場から、以前のような失敗をしないように、今度の現場はうまく勤めていきたいと思う。 マネジメントや経営の世界を通過し、本部システムの根幹部にあるていど通じた人間がやる店舗というのは、いろいろ見るべきところが明確になると思うので、それがどう顧客満足として発揮できるか楽しみだ。 「えー、今度からこのF店の店長をすることになった天野です。みなさん、よろしくお願いします」 実はこのF店に人事ではいるのはなんと4回目だ。初回は新入社員のときに、以後三回はどれも店長として赴任している。なかには見覚えのある顔もいるなか、従業員が迎えてくれた。 「はじめまして、アルバイトのAです。趣味はネットゲームです。とりあえずFFやってます」 「はじめまして、アルバイトのBです。好きなものは特撮です。好きなヒーローはデカマスターです」 「はじめまして、アルバイトのCです。ええと、夜は主にエロゲかギャルゲーをやってます。好きなアイテムはとりあえずスク水です」 「はじめまして、アルバイトのEです。よく読む本は耽美小説と耽美コミックです。好きなジャンルは鬼畜系とショタです。最近はとりマイアの単行本あつめてます」 「はじめまして、アルバイトのFです。主に虹裏を巡回してます」 「・・・・」 おもえば、ここほどこっちの濃度が高い店はなかったことを、いまさらわたしは思い出していた。 たのしい現場になりそうだった。
■ 2004.07.28 「パートさんとの日常会話」 聞くところによると、わたしが人事で異動してくる前に、すでに所属していた社員が 「今度の店長はすっごいオタクらしいヨ!」と言いふらしていたらしい。 誉めているのかどうか微妙な温度(いちおう暖かい)のその紹介の仕方はともかく、そっち方面で異様に期待されていた私は、人事後あっという間に店に溶け込むことができた。 だが、溶け込めたのは別に先日の日記のような彼らと話が合ったからというわけではなく、過去の店長時代に採用したアルバイト、あるいはともに働いたパートさんたちが、いまだにここに残っていてくれたからだと思う。 知った顔がたくさんいる中だからこそ、わたしは無駄な緊張もなく働くことができている。とてもありがたいことだ。 昔と同じ顔ぶれ。だが何年かぶりに再会した彼らと話すうち、だんだんと過去との違いが意識されてくる。 たとえばパートさんのひとりなどは、しばらくみない間に微妙な方向に成長してしまっていた。 F店休憩時間における、店長と女性パートさんの日常会話の一例。 「店長は、いま何にはまってますか」 「うーん『Fate(フェイト:「月姫」で有名なタイプムーンのゲーム)』かな」 「おもしろいですか」 「うん。・・・・いや、ちょっとまて」 「はい」 「君は『Fate』を知ってるのか。というか、なんでサラッ話がつながる」 「兄の影響です」 「そうか、お兄さんかなり重度のオタクだったっけ」 「はい」 「そういや君、妹キャラだったもんな。ところで君は兄に対してどんな呼び方を?」 「『ダ・カーポ』やってるときは『兄さん』と読んでました」 がっしゃん。 「店長、大丈夫ですか」 「あ、いや、ちょっと、うん」 「兄の知人は『おまえそれ命令して呼ばせてねえだろうなあ』と嫉妬の炎を燃やしたそうです」 「ううむ・・・」 「最近も、テレビアニメが放映されてる間は、期間限定で『にいさん』と呼んであげてました」 「普通は『お兄ちゃん』ですが、たまに『兄たま』とも」 「でも兄君はシスプリはやってないんだろう。前に聞いたけど」 「はい。現実をみてるから妹には萌えないと言ってます」 「・・・・ちょっと、アッチ側ではどういう世界で生きているのか知りたいんだけど、いくつか聞いてもいい?」 「はい、どうぞ」 「○○さんは、たとえば『とらぶるウインドウズ』って知ってる?」 「知りません。わたし、有名なのしか知りませんよ。『3LDK』とか」 「それ有名か?」 「回収騒ぎがあったじゃないですかー」 「そういう意味でか・・・。最近は何かゲームを?」 「『すくみず』って知ってます? ぶるこんぶるこんすくーるみずぎぶるこんぶるこんよいおみせ♪ っていう」 「歌うなあ!」 「うちのパソコン環境には、たっ・・・くさんの音源があるのですよー」 「お兄さん、すげえなあ」 「ちなみにいま(はまってるの)は『それちる』です。あと『はにはに』」 「・・・・」 私が知っている彼女は、当時はやってたビジュアル系バンドの追っかけをやっていて、ゴスロリ+包帯とゆー時代を感じるファッションを愛していた(もちろん勤務中は普通の姿だが)。採用当時、彼女は決して現在ほどこっちのカルチャーに染められてはいなかったと思う。私の記憶がただしければ、当時この子からゲームの話を聞いたのは一度だけだ。 たしか、食あたりで吐きそうになってしまい、自室から這い出して兄に助けを求めたときのことを聞いた。このとき兄君は彼女に対して一言。 「いま、あかりがおさげをほどくかどうかの大事なところだからだめだ」 と切って捨てたという。兄がやってたゲームが「To Heart 」のあかりルートというところにも時代を感じるがそれはともかく、これが彼女から聞いた唯一のゲームの話であり、会ったこともない兄の価値観がじつによくわかるエピソードだった。 「普通なら、これが原因でゲーム嫌いになるか、あるいは兄嫌いになるフラグが立つんだけどなあ」 と思ったが、彼女はいまでも、ゲームも兄も嫌いではないようだ。 情が深いのか、ゲーマーの素質があったのかよくわからないが、立派なものである。 もっとも、そういう娘だからこそ、採用したのかもしれない。 「あのお兄さんは、元気にしてる?」 「兄は最近ショーケースを買いました」 「ショーケース・・・」 「はい、ショーケース」 「食玩とかを飾るやつ? これくらいの」 小型テレビくらいのおおきさを、手で撫でるように表現してみる。 「いえ、親が心配するくらいのグレードのものです」 親が心配するくらいの差し渡しを、いっぱいに伸ばした彼女の両腕が表現していた。 「で、そこにプレミアのついているゲームソフトとかを収納してあるんです。『みずいろ』とか入ってました」 「そりゃ確かにショーケースにいれるべきプレミア品かもしれないけどさ・・・」 「普通のものもありますよ。一番おっきいフェラーリの模型で4万か6万くらいしたやつとか」 「それは比較的まともなような気がする・・・。で、その兄の影響で君もそっちのゲームとかやってるわけか・・・」 「はい。あ、そうだ店長、『ホワイト』って知ってます?」 「だから、昼間っから『ねこねこソフト』の話とかするなあ!」 だれだこんなのを採用したのは、と一瞬おもったが、それは5年前の自分である。 たしかに当時から面接時に「で、好きなガンダムは?」などと質問しバイトのオタク率を上げようとひそかに採用傾向を偏らせていたが、彼女はたしか「比較的まともな人材」として採用したはずだった。 やはり私の目は、捉えなくてもいい本質を無意識に見抜いていたらしい。そう思うと、ちょっと泣けた。 ところで彼女はF店で、とても可愛らしい、いい接客をする。たまに当日キャンセルで休む点などなどを除けば有能だ。 その姿は「この店のおおきな美点のひとつ」と店舗チェッカーに言わしめたほどの逸材である(いや、マネジメント時代にこの店の視察評価でそう書いたのは私なのだが)。ちなみに身長は153センチ。 かつてのゴスロリ少女は、当時のファッションの話をすると「いまはもう姫袖(※)の服なんて着れないです。」と笑う。 (※肩袖から手首までが締まってて、そこからおもいっきり開いてる袖) なにも変わらず、マニアックな方向に変質して「魔屈」化しただけに思えたF店でも、たしかに時間が経っているのがわかったような気がした。 それにしてもその期間、彼女をはじめ昔からのメンツは、わたしがいない間もこの店を守っていたのだ。ありがたい。まったく、長く勤めてくれる従業員というのは、得難い存在だと思う。 休憩時間もおわり、商品を整理していると、補充商品の箱から偶然「すくみず」のムック本が出てきた。彼女はそれをしげしげと見つめ、こう聞いてきた。 「店長、旧みずと新みずの違いってわかります?」 「自慢げにきいてくるなよおまえはよ」 休憩時間はともかく、いいかげん売場でこういう話をするのは、ちょっとどうかと思う。 私だって仮にもF店の店長だ。 ここはビシッと、言ってやらねばなるまい。 「いいかい、○○さん。よく聞いて」 「はい」 「プリンセスラインのエンドがスカート型になっててそこに胸元から入った水を抜くための穴が空いてるのが旧スクの特徴で新スクはZガンダム放映のころに出回りはじめてた新型で生地もナイロンからポリに変わ」(以下略) 水抜き穴とかの話でちょっと盛り上がれる女性パートというのも、なかなか得難い存在だと思うがどうだろう。
■ 2004.07.28 「パートさんとの日常会話」 聞くところによると、わたしが人事で異動してくる前に、すでに所属していた社員が 「今度の店長はすっごいオタクらしいヨ!」と言いふらしていたらしい。 誉めているのかどうか微妙な温度(いちおう暖かい)のその紹介の仕方はともかく、そっち方面で異様に期待されていた私は、人事後あっという間に店に溶け込むことができた。 だが、溶け込めたのは別に先日の日記のような彼らと話が合ったからというわけではなく、過去の店長時代に採用したアルバイト、あるいはともに働いたパートさんたちが、いまだにここに残っていてくれたからだと思う。 知った顔がたくさんいる中だからこそ、わたしは無駄な緊張もなく働くことができている。とてもありがたいことだ。 昔と同じ顔ぶれ。だが何年かぶりに再会した彼らと話すうち、だんだんと過去との違いが意識されてくる。 たとえばパートさんのひとりなどは、しばらくみない間に微妙な方向に成長してしまっていた。 F店休憩時間における、店長と女性パートさんの日常会話の一例。 「店長は、いま何にはまってますか」 「うーん『Fate(フェイト:「月姫」で有名なタイプムーンのゲーム)』かな」 「おもしろいですか」 「うん。・・・・いや、ちょっとまて」 「はい」 「君は『Fate』を知ってるのか。というか、なんでサラッ話がつながる」 「兄の影響です」 「そうか、お兄さんかなり重度のオタクだったっけ」 「はい」 「そういや君、妹キャラだったもんな。ところで君は兄に対してどんな呼び方を?」 「『ダ・カーポ』やってるときは『兄さん』と読んでました」 がっしゃん。 「店長、大丈夫ですか」 「あ、いや、ちょっと、うん」 「兄の知人は『おまえそれ命令して呼ばせてねえだろうなあ』と嫉妬の炎を燃やしたそうです」 「ううむ・・・」 「最近も、テレビアニメが放映されてる間は、期間限定で『にいさん』と呼んであげてました」 「普通は『お兄ちゃん』ですが、たまに『兄たま』とも」 「でも兄君はシスプリはやってないんだろう。前に聞いたけど」 「はい。現実をみてるから妹には萌えないと言ってます」 「・・・・ちょっと、アッチ側ではどういう世界で生きているのか知りたいんだけど、いくつか聞いてもいい?」 「はい、どうぞ」 「○○さんは、たとえば『とらぶるウインドウズ』って知ってる?」 「知りません。わたし、有名なのしか知りませんよ。『3LDK』とか」 「それ有名か?」 「回収騒ぎがあったじゃないですかー」 「そういう意味でか・・・。最近は何かゲームを?」 「『すくみず』って知ってます? ぶるこんぶるこんすくーるみずぎぶるこんぶるこんよいおみせ♪ っていう」 「歌うなあ!」 「うちのパソコン環境には、たっ・・・くさんの音源があるのですよー」 「お兄さん、すげえなあ」 「ちなみにいま(はまってるの)は『それちる』です。あと『はにはに』」 「・・・・」 私が知っている彼女は、当時はやってたビジュアル系バンドの追っかけをやっていて、ゴスロリ+包帯とゆー時代を感じるファッションを愛していた(もちろん勤務中は普通の姿だが)。採用当時、彼女は決して現在ほどこっちのカルチャーに染められてはいなかったと思う。私の記憶がただしければ、当時この子からゲームの話を聞いたのは一度だけだ。 たしか、食あたりで吐きそうになってしまい、自室から這い出して兄に助けを求めたときのことを聞いた。このとき兄君は彼女に対して一言。 「いま、あかりがおさげをほどくかどうかの大事なところだからだめだ」 と切って捨てたという。兄がやってたゲームが「To Heart 」のあかりルートというところにも時代を感じるがそれはともかく、これが彼女から聞いた唯一のゲームの話であり、会ったこともない兄の価値観がじつによくわかるエピソードだった。 「普通なら、これが原因でゲーム嫌いになるか、あるいは兄嫌いになるフラグが立つんだけどなあ」 と思ったが、彼女はいまでも、ゲームも兄も嫌いではないようだ。 情が深いのか、ゲーマーの素質があったのかよくわからないが、立派なものである。 もっとも、そういう娘だからこそ、採用したのかもしれない。 「あのお兄さんは、元気にしてる?」 「兄は最近ショーケースを買いました」 「ショーケース・・・」 「はい、ショーケース」 「食玩とかを飾るやつ? これくらいの」 小型テレビくらいのおおきさを、手で撫でるように表現してみる。 「いえ、親が心配するくらいのグレードのものです」 親が心配するくらいの差し渡しを、いっぱいに伸ばした彼女の両腕が表現していた。 「で、そこにプレミアのついているゲームソフトとかを収納してあるんです。『みずいろ』とか入ってました」 「そりゃ確かにショーケースにいれるべきプレミア品かもしれないけどさ・・・」 「普通のものもありますよ。一番おっきいフェラーリの模型で4万か6万くらいしたやつとか」 「それは比較的まともなような気がする・・・。で、その兄の影響で君もそっちのゲームとかやってるわけか・・・」 「はい。あ、そうだ店長、『ホワイト』って知ってます?」 「だから、昼間っから『ねこねこソフト』の話とかするなあ!」 だれだこんなのを採用したのは、と一瞬おもったが、それは5年前の自分である。 たしかに当時から面接時に「で、好きなガンダムは?」などと質問しバイトのオタク率を上げようとひそかに採用傾向を偏らせていたが、彼女はたしか「比較的まともな人材」として採用したはずだった。 やはり私の目は、捉えなくてもいい本質を無意識に見抜いていたらしい。そう思うと、ちょっと泣けた。 ところで彼女はF店で、とても可愛らしい、いい接客をする。たまに当日キャンセルで休む点などなどを除けば有能だ。 その姿は「この店のおおきな美点のひとつ」と店舗チェッカーに言わしめたほどの逸材である(いや、マネジメント時代にこの店の視察評価でそう書いたのは私なのだが)。ちなみに身長は153センチ。 かつてのゴスロリ少女は、当時のファッションの話をすると「いまはもう姫袖(※)の服なんて着れないです。」と笑う。
(※肩袖から手首までが締まってて、そこからおもいっきり開いてる袖)
なにも変わらず、マニアックな方向に変質して「魔屈」化しただけに思えたF店でも、たしかに時間が経っているのがわかったような気がした。 それにしてもその期間、彼女をはじめ昔からのメンツは、わたしがいない間もこの店を守っていたのだ。ありがたい。まったく、長く勤めてくれる従業員というのは、得難い存在だと思う。 休憩時間もおわり、商品を整理していると、補充商品の箱から偶然「すくみず」のムック本が出てきた。彼女はそれをしげしげと見つめ、こう聞いてきた。 「店長、旧みずと新みずの違いってわかります?」 「自慢げにきいてくるなよおまえはよ」 休憩時間はともかく、いいかげん売場でこういう話をするのは、ちょっとどうかと思う。 私だって仮にもF店の店長だ。 ここはビシッと、言ってやらねばなるまい。 「いいかい、○○さん。よく聞いて」 「はい」 「プリンセスラインのエンドがスカート型になっててそこに胸元から入った水を抜くための穴が空いてるのが旧スクの特徴で新スクはZガンダム放映のころに出回りはじめてた新型で生地もナイロンからポリに変わ」(以下略) 水抜き穴とかの話でちょっと盛り上がれる女性パートというのも、なかなか得難い存在だと思うがどうだろう。
■ 2004.07.30 「替え歌」 「『萌え』症候群〜その発病および傾向と対策に関する一考察」(とりあえずver.2.0) 「萌え」と呼ばれる一過性の発情症候群における、その発病および傾向と対策について考える。 年齢・性別・職業・ロリ・オタ・プー・2ちゃんねら・としあき・葉鍵の如何を問わず、およそ次の通り。 ・家族愛だと主張しつつも、「おにいちゃん、大好き」と、言われれば萌え転がらざるを得ない(し、やりたいことはやりたい)妹萌え。 ・異様に執着し、恋人ができても、眼鏡をかけたままやらせてくれと懇願して顰蹙をかう眼鏡萌え。 ・自分はひとのためには世話とか何もしないくせに、自分にだけは奉仕して欲しいメイド萌え。 ・純粋なものを愛しているとかいってるそのわりに、(主導権にぎれそうな)幼女にしか興味もてない、ロリ萌え。 そのほか、いきなり引きこもったり、急にサイトを作るケース。夜中にバニラアイスをどぉーうしても食べたくなる場合。グッズを集めるために借金するのなどはよくあることで、さらにはエロゲのためにパソコン一式買っちゃう方もある。 なにしろ、これらがある特定の人に力を与えるってことは、「萌え」は一種のエネルギーと考えてよい。 オタになれば一部の例外を削除すれば、およそ、目は悪くなり、脚力は衰え、不健康になるものらしい。 同人・エロ同人・フィギュア・エロフィギュア・抱き枕その他ベッドシーツまで、関連グッズなど気になったら、もう「萌え」 集め始めたら自分の部屋の面積など気にならなくなるし、デッサンの狂いとかには気付いても気付かずにいられるものらしい。 たべもの、服装、声優、口癖、すべてとにかく萌えと思うし、毎日新グッズの購入日になる。 ところが一年二年とたつうち萎えて来るんですよ。 「萌え」とは収集と刺激との戦い。 そのうちなんだか萌えてたキャラが記号に思えてきて、次第に飽きて他のキャラを見るようになる。 はじめは、 ゲーム・ドラマCD・アニメ・アンソロで萌えていたキャラがいつか、積みゲー・積み本・段ボール未開封・ゲットしただけに変わりやがて、狭い部屋、親の視線、貯金残高、近所の噂、友人の結婚、貯金・年金・保険金・家賃・通信・電気・水道、ええと、ええと、ええと督促状がくる。 とにかく、そんなふうに笑っちまったほうが傷つかずにすむって、分かってるんだ、誰だって。そうだろう。 「萌え」はいつか消えていくと誰もが言うけれど、二通りの消え方があると思う。 ひとつは疲れて飽きていくことそしてもうひとつは、愛というものに形を変えること。 情報を、消費し続けていくものが「萌え」、もらうだけが「萌え」 自分の一部にしていくものが愛、変わらぬ愛。 だから、キャラクターへの思いを語り続けられたら、それだけでいい。 おそらく 消費し続けていくものが「萌え」、もらうだけが「萌え」 自分の一部にしていくものが愛、変わらぬ愛。 だから、キャラクターへの思いを語り続けられたら、それだけでいい。 ○○○に出会えて、こころから、幸せです。 ※( )内は滑舌に自信のある場合に。 ※○○○には、あなたが萌えている人の名前を。 (原曲:さだまさし「恋愛症候群〜その発病および傾向と対策に関する一考察」より) 歌詞助言:manieraさん
絵描きと管理:天野拓美( air@asuka.niu.ne.jp )