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2001.11.24 sat「このオフ会に集まるということ」
高山ラーメンの「大もり」でラーメンを食べ、トヨタのツナギがZAT(Zariba of All Territory ウルトラマンタロウの宇宙科学警備隊)の制服に似ているという話をしつつ、マンデリンさんのうちにお世話になって、翌日。
一日遅れで masterpieceさんが到着した。
最近ようやくKanonを終えた(佐祐理さんシナリオ除く)ので、満を持しての参加である。
あゆシナリオに没頭したせいで、流星群を見逃したという彼を珈琲店「緑の館」に迎えて、オフ会二日目がはじまった。
「Kanon終了おめでとうございます」
「とりあえず、なにか注文を」
「じゃあ肉まん」
masterpieceさんは、真琴にはまっていた。
「真琴シナリオでは、もう涙でモニターが見られないくらい泣いた」と、ちゃんとえぐられているようなので安心である。
「SSかこうと思ったんだけど、恥ずかしくてやめた」
「ええっ!? masterpieceさんのKanonSSって、読んでみたい!」
「ぜひ掲載してください」
「その暁には、夜想曲内のリンク分類を、ヨコハマからKanonに移しますから」
「・・・・」
そんな話をしながら、旧交を温め会う。
緑の館を出た後、ふたたび温泉へ行った。
今度は「美輝の里」という温泉で、これも露天である。壁板が低いので、橋を通る車や人と眼があったりして楽しい。
温泉の後は、マンデリンさんの家で休んでから、最後に「激辛ラーメン・ミキハウス」に行った。オフ会もいよいよ終わりだ。
店内のテレビでは、いまだに発見されないビンラディンの特報が流れていた。
出されたラーメン(三辛)をすすりながら、テレビに見入る。
「ウサマ・ビンラディン・・・」
今回、何の自爆もせずにここまできたKAZZさんが、ビデオ映像を見ながら、ふとつぶやいた。彼は、わりと社会問題などを日記を書くので、その観点からみているのだろうと思った。
「ウサミミ・ビンラディン。なんちて」
masterpieceさんが、食べていたラーメンを吹きだした。
マンデリンさんは笑いだしている。
「こんな社会派な人の脳髄まで焼いてしまう、苛烈なオフ会だったのか・・・」
わたしはしみじみと思った。
※ 参考資料
KAZZさんの萌えるウサミミ(本体:舞) 別にバニーガール属性なわけではない。
そういえば、KAZZさんの愛車・レガシィは、会う度ごとにステッカーが増えている。
春。(リアクオーターガラス)
夏。(フロントフェンダー)
そしてこの冬は、ついに、
(エンジンルーム内のベルトカバー。本命?)
こういうことになっていた。
オフ会ごとに、確実に汚染度の進行が見られる。今度あうときは、どうなっているだろう。
「アルミボンネットもう一枚買ってきてエアブラシで舞の絵を描いて装着するか・・・」
いつだったか、KAZZさんがそうつぶやいていたのを思い出した。
この冬のオフ会も、終わろうとしている。
この面子で集まるようになってから、何回目のオフだろう。
思えば、最初の人間関係ができたのは「ヨコハマ買い出し紀行」によるものだった。
だが、いまではほとんど話に出ない。マンデリンさんの家でアニメDVDをちらっと見たときも、出た言葉は一様に「なつかし〜」だった。
我々は、ヨコハマ買い出し紀行を通じて知り合った。だが、話題も出ずに、いまこうして会っているのは、どういう繋がりからだろう。
こうして実体で会っていると、各人の間に、ヨコハマ以外のいくつかの共通点を感じるときがある。
何と言っても、まず Kanonにはまることである。AIRもそうだ。直接的にヨコハマと関わり合うわけではないが、どこか通じるものがあったと思う。
そして先述の車好き。これはそうでもない人が結構いるので何とも言えない。ただ、バイクや航空機、カメラなどを愛する人が多いのは広義で通じていると思う。
そしてかなりの割合で貫かれている共通点は、全員が、比較的重度のスウィートマニア(甘味狂)であることだ。
ちょっと脱線するが、その例をいくつか挙げておこう。
ワッフルに練乳とシロップをかけたうえでアイスクリームをトッピングして食べる者がいたり、生クリーム大福を昼食がわりにたべる者がいたり、納豆に砂糖をかけたり、ジャムをおかずに御飯を食べる(本人の意思かどうかは不問)者がいたりする。
しかも、オフ会ではなぜか、一口飲めば虫歯が再発するくらい甘いマックスコーヒーが配られる習慣があった(茨城県地方の参加者がいる場合)。マックスコーヒー。日本語にすると極限珈琲。甘味がダメな人には毒物寸前の甘さである。低糖・無糖という流行に敢然と逆行している珈琲だ。250mlのジュース(清涼飲料水)には砂糖30g、つまりシュガースティック9本分の砂糖が入っているというが、これだけでも驚きなのに、確実にそれどころではない量が混入されている甘さである。それをカートンで購入し、痛飲する我々は、やはりすこしだけ狂っているのかも知れない。
ヨコハマ・Kanon・AIR・車やバイク・そして甘味を愛す。
これに加えて、ざっと参加者を見渡してみれば、それらの下地にあるのは「情的な人」「情の豊かな人」という性格だと思う。ヨコハマで描かれているような情緒を愛する性格者。我々の共通点だ。それぞれの個性や趣味は別にあるが、たぶん我々は、これで集まり、これで繋がり、これに近いものを愛する集団である。
おまけだが、ヨコハマのホームページを持っている人が、岐阜県に多くいるというのも、不思議な共通点である。
しかし、岐阜県に、突出して情的な人が多いとも思えないので、これはただの素敵な偶然だろう。
この冬のオフももう終わる。
だが我々は、またオフ会のたびに集まるまろう。
Kanonの話題ばかりのオフかも知れない。
だが、この集まりはやはり、ヨコハマ買い出し紀行オフ会なのだ。
たとえ、いつかヨコハマが終わったとしても。
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2001.11.23-3 fri「車好き・星好き」
先の日記にも書いたが、ヨコハマ買い出し紀行ファンの知人は、なぜか車好きが多い。
今回一堂に会した面子でも、アルピナB3−3.0(owner:水谷さん)とBMW 318 is(owner:マンデリンさん)とレガシィB4・RSK(owner:KAZZさん)である。
三台並ぶと、みんな怖がって近づかないような、社会的バリアー標準装備の車だった。
だが運転手は「栞萌え〜」とか「舞萌え〜」とか言ってる人なので安心である。
しかし運転はすごい。移動する際、三台とも順番に同乗させてもらったが、私のパルサーで同じ走り方をしたら何回か死んでいると思った。5回しんだあたりからは数えていない。
車の話題は専門的で、私やshalさんなど、あまり興味のない人には、ついていけないものが多かった。
たとえば、BMWはスモールライトの位置が内側に寄っており、小型車かと勘違いされる事が多かったので、外側に設置しなおした、という話しを聞く。
「遠くから車幅が広く見えるので、対向車がちゃんとよけてくれるんです」
「へー、いいですね」
「私もヒゲを伸ばすようになってから、いろんな人がよけてくれるんです」
「へー・・・・・・」
やはりついていけない。
その後、気分を変えて「栃尾温泉」へ行った。200円を缶に投じて入浴する、野菜の無人販売所のような営業方式の露天温泉である。
露天なので、星空が見られるなあ、と軽い気持ちで入ったが、この季節の、この地方の空のきれいさはただごとではなかった。
湯気に煙っていて、明るい半月が船のように天空にあって、しかも被眼で視力は0.7を切っているのに、それでも天の川が見えるのだ。
天頂から流れる乳の道。それは、銀河系を横から見ている光景だった。地球から見る銀の河である。そこを月のロンリーボートが流れていく。
露天風呂の、角が丸くなった岩に頭を預けて、夜空を見上げる。
ウルトラの星(ほんとは散光星雲だけど)が肉眼で見えそうなくらいの空だった。
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2001.11.23-2 fri「shalさん・2」
浅間山の火口から使徒を確認するために降下させて、深度1400で圧壊した耐熱バチスカーフ(観測機)の気分(エヴァ第拾話「マグマダイバー」)を味わっていた午後四時半頃。
水谷さんが到着した。
彼と会うのは、春の17人オフ会、夏の聖地巡礼以来である。
私の知っているヨコハマ買い出し紀行のファンは、車好きが多い。彼も例外ではなく、アルピナB3−3.0(BMW)のオーナーだ。
その水谷さんは、ちょっと前まで、車関係の仕事でフランクフルトに行っていた。
ドイツのモーターショウの話や、在独中におきたテロ事件のいきさつなどを、皆が興味深げに聞く。
地に足のついた落ち着いたバリトンが、そのときの私には逆にきつく、じんわりとした頭痛を感じた。
「話の途中だけど・・・天野さん大丈夫?」
「なんか、ぐったりしてる・・・」
「いや、あの、さっきまでのshalさんのテンションに比べると、深海に引きずり込まれていた天野は、急速な浮上で潜水病にかかったみたいです」
「天野さん! 誤解のないように言っておきますけど、ボクは普段はこんな話しませんよ? 天野さんだから話してるんです」
「うれしいような気もするけど、本質的には何の言い訳にもなってないぞ?」
「そこまでおっしゃるなら、普通の話をしましょう!」
異常な話だったという自覚はあるようだ。
「よしわかった。じゃあ、話してみろ」
「・・・・」
「・・・・」
「・・・・」
「・・・・」
「shalさんが苦しんでる」
「ムチャクチャ苦しんでいる」
言われてみれば、深海魚が水面にのぞもうとしているような苦しみようだった。
しかたがなく助け船を出す。
「そうそう、グランガランの艦長で、シーラ様の副官やってた人、知ってる? カワッセっていうんだけど?」
「ああ、あの張り切った声の人ですね!」
水を得た魚のような反応だった。
しかも、適正な水圧を得た深海魚のそれだった。
「そう、コトセット(ザブングル)とかの声もやってる人だね・・・。あの、ええと、君はもう、そこで暮らしなさい。それが幸せだ。たぶん。」
「いや、その・・・」
さすがにまずいと思ったのか、shalさんが弁解する。
「ちがいますよ?」
「ちがわねーよ」
「学校ではこんな話しませんから!」
生まれる前のアニメの話で盛り上がる受験生学級というのも、たしかに聞かない。
でもこの高校には、球技大会のとき、そろいの「でじこTシャツ」で参加したという油断できないクラスがある。ちなみにその「でじこTシャツ」を作ったのはタカヒロ・Iさんなのだが。
これかよ、オイ。
「校風、というやつかもしれないな。春風高校みたいな」
「はい?」
「いや、なんでもない」
「普段の話題は、受験の話とか、ちゃんとしてます」
その一言で、私は、彼が受験生であることを思い出した。
「よし、じゃあ、その話で行こうか」
一息ついて、頭を切り替える。
思えば、入試直前のこの時期に、shalさんがここにいるのだ。
そして、推薦入試の経験がある私が同席していることには、なにか意味があるのかも知れなかった。
毒気にあてられて忘れていたが、最初は受験のアドバイスをしようとしていたのを、やっと思い出す。
まず、面接のシミュレーションをやってみた。
「心理学を学ぶことで、どのように社会に貢献できるのか」予想される質問である。
研究者としての心理学にのぞむ姿勢。社会で展開することを前提にした心理学(社会心理学)への取り組みなど、とつとつと語る彼の姿を見ていて、私は思った。
声優マニアで、古いゲームオタクで、そのわりに何の自覚もなく、また「新機動戦記ガンダムW Endless
Duel」(スーファミ版・1996年)が素晴らしいと誰もわからない話題をじゃんじゃん振ってくるくせに、まともな話題は話し下手という彼だが、性格的なところは、私によく似ていると思った。
そして私のような傲慢さがない。
ひととおり話をまとめたときも、
「ありがとうございました」
と、とても素直に礼も言う。
いろいろ問題はあるが、本質的な人間性において、こういう奴を、私は好きだと思った。
shalさんの考えていることを、そのまま聞く。動機も想いも覚悟もあるが、彼がうまく言葉にできず、伝えにくいあたりを整理して、語りに説得力が付くようアドバイスした。
少しは、役に立てただろうか。彼がここへきた甲斐くらいの役に。
彼はこのオフ会の5日後、関東の某大学へおもむく。二次試験を突破するためだ。
不安もあるだろう。オフ会に来ていることが、その現れかも知れない。
でも、たぶん大丈夫だ。彼の良いところが表に出せれば、小論文試験(英文)以外に問題はないだろう。
大学生活へ夢を馳せているのか、ガストを出るころ、彼がキラキラした眼で話しかけてきた。
「天野さん、ボク考えていることがあるんです」
shalさんには良いところがたくさんある。なにより社会心理学にとりくむ姿勢が真面目だ。
素直だし、謙虚であるところも美徳だと思う。
「ん、なんだ」
だが、その裏面で、
「とりあえず試験終わったら秋葉原に行きます! いや、もう今から楽しみです! 今度こそ、「同級生」と「レツゴー」のCDと「98版のYU-NO(CD-ROM)」を手に入れます!」
やはり彼は底知れなかった。
彼の東京紀行については、こちらに。
文月のらくがきにっき
※ 東京でshalさんに秋葉原案内をしてくれた文月さんの、ダメージ感あふれるレポートです。
「ウォータードラゴンと海で戦うような感じ」と、不死鳥・文月さんに言わしめたshalさんの言動から、寄道余所見の記述が、決して無茶な脚色では無いことが分かっていただけると思います。
このときついたshalさんの別名:「不死鳥を溺れ死にさせる男」(しかも本人悪気無し)
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2001.11.23-1 fri「shalさん」
2001年11月23・24日。いったい何回目になるだろうか、岐阜県飛騨地方でのオフ会が行われた。
題して
「前回の彼の登場は、これから始まる悪夢の前奏に過ぎなかった!!! 5人は理解不能な謎の敵に襲われ、ある者は恐怖の深海へと引きずり込まれてしまう!!! 生き残るのは一体誰かっ!!!
恐怖の深海ホラーオフ会!!!」
である。
すでにヨコハマの面影もない。「彼」が誰なのかはすぐに判るだろう。
メンバーは、マンデリンさん・KAZZさん・タカヒロ・Iさん・天野・そしてまだ記憶に新しいshalさんである。
これに午前中で仕事を切り上げて参戦するという水谷さんを、最近高山にできたガストで待ちながら、オフ会が始まった。
高校三年生2人と、それに比べればおじさん3人で、まったりと話が進む。
高三とはいえ、タカヒロ・Iさんはすでに進路を決定しているので余裕の参加だが、今回参加できなかったKamasuさんは受験間近と大変である。さらに、shalさんは、某大学の推薦入試の真っ最中で、現在は一次試験を通過したところだ。
彼にとっては、そういう時期のオフ会である。
私も推薦入学の口なので、先輩として、なにか有益なアドバイスができればいいな、と思った。
「推薦を選んだとき、最初は、大学の特徴などを調べたもんだよ。具体的には役に立たなかったけど「理解している」という安心感ができた」
いま思い出すと、母校・國學院大學の最大の特徴は、神道の大学であることだった。
従って、とうぜん、学内に神社がある。
「最初にそれを知ったときには、いろいろ期待したものだ」
学内に神社である。となれば、もう大学のいたるところに、巫女さんがウヨウヨ歩いていても不思議ではないと思ったのだ。
だが、学内すべてが、今で言う居酒屋『月天』の総本山のような有様で、白い単衣(ひとえ)に緋の袴という巫女の大群が、増えすぎた熱帯魚よろしく上下紅白の群体で学内を席巻しており、もう、ぶつからずにはまっすぐ歩けないぞウヒヒというような状態かというと、けっしてそうではなかった。
「神主候補ばかりがウジャウジャいやがるくせに、巫女さんはぜんぜん歩いていなかった・・・」
私は遠い眼をしてつぶやいた。
「人生の意味を求めて哲学科に入った。あくまでそのつもりで入学した。でも、巫女さんがいない神道系大学なんて完全な詐欺だよな・・・」
いきなり変な方向に話がズレだしたので、マンデリンさんが、軌道修正する。
「巫女さんものといえば『With You』しかやってないなあ」
「そっちに軌道修正かい」
「大学のことを話すんじゃなかったの?」
「『With You』! 『〜見つめていたい』ですね! あれは声がいいんですよ!」
推薦入試に話題を戻そうと思っていたところに、とつぜん、shalさんが声をあげた。『With
You・みつめていたい』というのは、二人の幼なじみのどちらを取るか、という感じの美少女ゲームで、片方の氷川菜織は、巫女さんという設定である。で、その声優は
「ならはしみきさん! クレヨンしんちゃんのみさえさん役なんですが、クレしん見るたびにボクなんかもう、ホラ、あの巫女さんの衣装がフィードバックしちゃって困ります!!」
「・・・・」
「・・・・」
誰のために話をしていると思っているのか判らないが、shalさんは巫女さんの方に激しく反応していた。
しかも、サラリと話す内容があいかわらず濃い。
クレヨンしんちゃん(の、みさえ)を見ながら、巫女さん萌えする高校生はそうザラにいないと思うがどうだろう。
(後から聞いた話しでは逆で、With You をやるたびに、みさえの姿が想起されて萎える・・・とのことでした)
そういえば、ガストに来てすぐ、Kanonの話や、近況の話をするうち、なぜかゲームセンターにある脱衣麻雀ゲームの話になったときも、こんなことがあった。
「スーパーリアル麻雀とかが有名でね」
「PVだと、丹下桜さんが声を演っていた」
「P4の香織さんがムチャクチャ強くて」
「園田健一の絵なら知ってるけど。あれはなんだっけ」
「スーチーパイ」
「声優が豪華でしたね」
最後の言葉がでた瞬間、しん・・・・とテーブルが静まった。
いい歳をした大人だけの会話に、サクッと切り込んだその言葉を、shalさんが発したからだ。
我々は、このとき、目の前にいる人物の特殊性を、今更ながら思い知っていた。
私は、彼がどのくらいの深度に生きているのか探ろうと思って、中途半端に古い声優さんの名前を聴いてみた。
「shalさん、小森まなみって知ってる?」
「はい、ラジオで」
「じゃあ、矢尾一樹は?」
「ジュドーの声をやってた人ですよね」
「山本百合子」
「ダンクーガのサラ」
「君やっぱりおかしいぞ!?」
わたしはたまらず叫んだ。
「他にもいろんな役をやってるのに、その役名で思い出すっていうのは、どう見ても戦前生まれの会話だぞこれは!」
「戦前・戦後」という用語がある。一年戦争が描かれたファーストガンダム放映開始年度1979年以前に生まれた者を一部ガンダマーは、そう区別して呼ぶのだ。ちなみにshalさんは1983年生誕なので戦後生まれである。
「むかし大事故に遭って、臓器の一部を30才前後の人から移植されたとかいう経験があるだろう!?」
「・・・ありません」
「じゃあ秘密裏に脳移植が行われていたんだ! いまの君の脳は、生きていれば30才の人物から移植されたに違いない!! その人物は筋金入りのアニメマニアで、ついでに超国家的な組織の幹部もやっていたが、あるとき裏切った仲間に監禁され、ポケモン第38話「電のうせんしポリゴン」のビデオ(テレビ放映録画版)の激しく明滅する画面を見せられ気絶したところを・・・」
「そんな大冒険した憶えないです」
「ふーん。そう。そうなの。じゃあ聞くけど、エルピー・プル(ガンダムZZのヒロイン級ロリキャラ・1986年)って好きだった?」
「え、うーん。ぼくはエルピー・プルっていうより、シーラ・ラパーナ(ダンバインに出てた女王様・1983年)かな」
がっしゃん
「天野さん! 大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫。いま、ちょっと意識が・・・」
「ダンバインといえば、エレさまも好きです。あの髪型どうやって維持してるんでしょうね」
「針金か骨格か揚力だろうよ」
「天野さんは?」
「うーんガラリアかな・・・ってそんなことはどうでもいい! 普通きみくらいの年ではダンバインなんてアニメ知らんぞ」
「ええ? ダンバインくらい知ってますよ! ねえ?」
shalさんが、傍観を決め込んでいた参加者にふる。
「いや・・・見たことはない」
「名前くらいは・・・」
「知らない」
「特にshalさんと同い年のタカヒロ・Iさん(18才)が知らないのは当たり前だ。いいか、shalさん」
「はい」
「君がいま話題にしているアニメが放送されていた頃な、君はまだ」
「こういう状態だったんだぞ。いいか? わかってるか?」
「はあ・・・」そんなこと言われても、という顔でshalさんが首をひねる。
「ところでハッピーレッスンがアニメ化しますね!」
ダンバインといえばジェリルのレプラカーンがハイパー化したときの今川演出が・・・と振ろうとした私の硬派な話題は、彼にアッサリ持って行かれた。
「ボクは、(↑)きさらぎママの立ち絵さえあればいいので別にどうでもいいですけどね。」
「君はやっぱり、底知れないポテンシャルを持っていると私は思うな・・・」
「いや、ボクなんて、会ったことないですけれどザナさんには勝てませんよ!」
「いや、いい勝負だと思う。
『大阪在住オフ会の火薬庫・一点集中盲目突破型守護月天萌妖精王』
対
『高山の人間爆弾・歩く美少女ゲーム専門店(創業30年目)・水陸両用宇宙戦車・自覚なき突然変異型天然危険物』
の異種格闘戦てことで・・・」
そこまで考えて、思い直した。
「いや、あまり異種じゃないかも知れないなあ・・・」
「そういえば、shalさんがハピレスにはまったのは、どういうきっかけなの?」
「それが、電撃G’sマガジンなんですよ!」
「シスプリか?」
「いえ、セラフィムコール」
こいつには、一体いくつの引き出しがあるのだろうか。
「でも、そこでハピレスと出会ったんです。」
「ふーん。へー。そう」
「天野さん」
「なんだよ」
「誤爆って素晴らしいですね!」
もう誰もついてこられなかった。
「この情報が氾濫する時代、気にしていなくても情報が先に入って来てしまう。時代のせいで先入観をもってしか出会えないゲームの世界で起こる誤爆って、とても幸せなことだと思いませんか。まさかこのボクが、きーママに転ぶとは思いませんでしたよ」
聞きようによっては社会的に問題ある単語だが、ここでいう「誤爆」とは、第一印象や伝聞などで「この娘に萌えよう」と決めて、ゲームプレイやアニメ鑑賞をはじめたものの、目当ての爆弾キャラではなく、まったく予想外だった萌えキャラに火がついてしまうことを言う。マルチ目当てで「To Heart」をはじめたら委員長にはまった、というあたりが身近な例だ。
shalさんの場合は、勝ち気で髪の長いおねーさん属性だったのが、無口なショートカットキャラに惚れてしまったわけだ。それまで知らなかった、新たなる萌えの世界に足を踏み外した彼は、まるで初めて恋を知った少年のように、しみじみとこう繰り返す。
「誤爆って、ほんとうに素晴らしいです」
聞いてる方は、西部劇のリンチを受けて馬に引きずられているような、一方的に引っぱり回されている感覚だった。
もしくは大きなサメに足をくわえられて、海底まで引きずりこまれていくような感じである。
もう突っ込む余力もない。
「ああ、shalさん。君はそーゆー話をするとき、なんという幸せそうな顔をするんだろう」
「shalさんって、ほんとにアニメが好きなんだ」
「君からオタク文化をとったら、何も残らないね」
「何も残らないのか・・・。ある意味で尊敬してしまうな」
我々はすでに、賞讃することしかできなかった。
すでに見守りモードに入っていた参加者からの、投げやりな讃辞。
まばらな拍手が、鳴りやまなかった。
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2001.11.17 sat「ツーリング」
ナガヌマさんとツーリングに行った。
ナガヌマさんは、私が勤めていた書店の社員さんである。その書店の業務は、生半可な忙しさでもあるまいに、退社した私を、琵琶湖へのツーリングに誘ってくれた。
ありがたいことである。
ナガヌマさんからは、200ccのオフロードバイクで、崖から落ちた話しなどを聞いたことがある。
オフ車に乗った人はみんな崖落ちして一人前になるそうだ。
「最近のってないから、ちゃんと走るかどうか心配ですよ」
彼は、そうツーリングの約束をしたときに話していた。
自分はまだ、操車する技術が未熟である。連続走行の記録も50キロほどだ。遠出の経験はない。
そんな自分がついていけるか心配で、正直なところツーリングを渋っていた。だが、こちらは400ccで、むこうは200ccのロートル(すみません)のはずだ。これならいいかな、と思って了承し合流した朝、集合場所に停車していたのは、えらく立派な大型バイクだった。
「え? ナガヌマさん、え?」
「ZX−11です」
「11って、え? 1100cc?」
「はい」
「あの、崖からブチ落ちたっていうオフ車は?」
「ああ、あれは昔の話です。いまの愛車はこれです」
「・・・・」
「・・あの」
「・・・・」
「・・・・」
「詐欺だあー!!」
話が違うともいえず、我々は出発した。
私のバルカン(クラシック)は、車体格こそ800ccなみだが、積んでるエンジンは400ccである。中型免許で乗れるのがうれしい大型(みたいな)バイクなのだが、今回はそれがむしろ裏目に出ているかもしれない。
走り出したら、排気量だけでも3倍ちかいエンジンの違いは、そりゃもう歴然だった。
言い訳を許されるなら、ライダーの重量にもかなりハンデがある。
ZX−11(通称ニンジャ)は1100cc。乗ってるライダーの体重は52キロ。
一方こちらは、400ccでライダーは94キロ(すみません。太りました。)である。 ニンジャに比べて余剰重量42キロ。20キロの米袋を2つと、日本酒一升かついで走っている体裁である(なんか悲しくなってきたな)。ちなみにバイクの乾燥重量は同じ233キロで、マシン自体は変わらないが、それ以外は残酷なくらいの差があった。
とにかく加速が違う。とんでもない二次曲線を描いて、ボウガンで射出された鏑矢のように、ニンジャが国道8号線をカッとんでいく。
その後ろを、3速でエンジンが嫌がるまで加速しないと目標を見失いかねないという、米屋のバイクみたいな速度で、バルカン(いちおうアメリカンクルーザーなんですけど)が追いすがる。
被ってる皮は両方ともオオカミなのに、こっちだけ中身は羊みたいな不公平感があった。
それでも、ナガヌマさんとのツーリングは、走りやすかった。
一緒に走っている人の人柄だと思う。先導を任せてしまったので楽だったことも大きかった。
ところで、走行中、ふつうのライダーは何を考えているのだろう。
ツーリングというのは、予定されたコースを走るだけのものだ。目的地は観光名所だが、それまでの道のりは退屈でしかない。
そう思うと、みな何を考え、または楽しみにして走っているのか不思議だった。
私の場合、知ってる街並みでは歌を歌う。
今回は、とりあえず「キャッツアイ」とか「コブラ」あたりの東京ムービー新社でメドレーを組んでみた。
知らない街では、眼にとまるもの(たとえば醒井の鱒(マス)養殖場など)をネタに、軽く日記調に思索をめぐらす。
「あー、そうそう、マスといえば、小学生の頃どっかの清流で、生まれて初めて釣ったマスが、すごくキレイで感動したっけ。帰ってからうちの池に放流したけど、すでに死んでたなあ。当たり前だけどなあ。たしかあのときは、哀しみのあまり丁寧に葬ってやろうと、ふだんは土葬するところを火葬にしたんだっけ。棺桶がわりに葉っぱを敷き詰め、タンポポをたむけに燃やしたせいだと思うけど、気持ちとしては厳粛な葬儀なのに、蒸し焼きになったマスから、ものすごくイイ匂いが立ちのぼって、なんとなく申し訳ない気分になったっけなあ」
そんなことを考えながら走っていると、ナガヌマさんが何かを指さしていた。
我に返ってふと見る。
おおきな虹が出ていた。
遠くの街の、航空法に引っかかるくらいの空に、扇のような虹がひっかかっている。ものすごく幅広の刷毛(はけ)をかざし、毛へ直接に七色の透明水彩をのせて、ザッとひと刷(す)りしたような景色だった。
景色自体はこうして憶えているが、そのとき騎上では、なにも考えられなかった。
「お題ちょうだい」のように目に入るものすべてで小話でも作ろうかと思っていたが、ただ景色がきれいで、何も出てこなかったのだ。
でも、それがとても心地よかった。
バイクに乗っているときは、何も考えないのが一番いいのかも知れない。
何も考えず、バイクから見える景色を愛でる余裕が、ただ走るだけのツーリングの価値なのだと思った。
雨に降られたので、琵琶湖畔のサービスエリアで休憩する。遠くに晴れ間が見えて、雲間から射し込む光に切り取られた湖面が、そこだけ銀入りの青い鉱石のように輝くのを見た。
滋賀の山嶺が、山眠の前に、金茶色や、濃紅や淡山吹に粧(よそお)うのを見た。その景色を、白い列車が一直線に切り取っていく小気味よさを見た。
見過ごしていたこれらが、ツーリングの価値だったのだ。
おまけ・1
帰り道に、ファミリーレストランに寄って、ナガヌマさんと世界情勢、世界で起こる紛争の数々のことを話し合った。。
民族、国家間の考え方が違うのはわかる。それで衝突してしまうのも無理はない。怨恨に根差した歴史がすでにあり、相互の理解が容易でないこともわかる。
だが、普通に生活していては、理解し合おうとすら思わない民族同士が、イデオロギーも人種も越えて、絆の両端を握ることがある。
国際結婚したナガヌマさんの家がそうだ。
彼の家族や親戚は、それまで興味もなかった奥さんの国のことに感心をもち、理解しようとする。
私が出会った人は日本人だったが、それでも、世界中の人が、ナガヌマさんみたいに国際結婚をしてしまえば、国家間の紛争はなくなると思った。
ナガヌマさんは、いや、ナガヌマさんの家は、すばらしい。この時代の現実的な世界的希望だ。
たとえその日の夜、ファミレスで時間をつぶしまくった上に途中でパンクした彼が、夜半の帰宅となったせいで死ぬほど心配していた奥さんに袋叩きにされていたとしても。
おまけ・2
ナガヌマさんに撮ってもらった、出発の時の写真
うーん、バルカンはやっぱりかっこいいぞ。
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