2001.08.15 wed「文月さん再び」
旅行九日目。再び、文月さんの部屋に、天野は転がり込んだ。
文月さんというと、「美汐(みしお)」なのだが、どれくらい文月さんが美汐に魂を売り飛ばしているかというと、
「(↑)こういうの見ると、つい「あ、みしお?」って、おもっちゃうんですよ。」ということなので、
こういうのを見て「喜久子亭」かと思う私と同レベルだった。
サブキャラにはまる、という人はけっこう多い。
そして彼らは、メインキャラに狂う人と同レベルか、個人によってはそれ以上の熱狂ぶりを誇る。サブキャラしか目に入らなくなるのだ。
たぶん、そんな文月さんにKanonの定義をお願いすれば、
「美汐という美しく可哀想な少女が活躍するゲーム。その周りで植物人間や超能力者や半死人が結婚式や試験勉強をもちかけて美汐と主人公の恋路を邪魔し続けるストーリー」となるだろう。
ココネストのmasterpieceさんなら、きっと
「ココネという健気な宅配業の女性ロボットが活躍する物語。いまは大いなる序盤で、脇役の菜食主義者やストリッパーのエピソードが中心だがいずれ本編が始まる予定」という認識であろう。
こういう、ちょっと軸のずれた方々のこころをえぐり取るサブキャラの魅力は、いったい何なのか。
今日はまったりと過ごす予定なので、時間はある。とりあえず文月さんと、DCでKanonをはじめた。
文月さんによる美汐の露出チェックは完璧で、オープニングでも、美汐の登場するタイミングは、たとえ目をつぶっていても一瞬のカットを当ててしまう。
シナリオの最初の方はお互いよく知っているので、途中からはじめるのだが、セーブデータの記録場所は、当然のように美汐の登場シーンからだ。
チラチラと文月さんを観察していると分かるのだが、美汐が画面にでると、居住まいを正している文月さんである。
「また、だいぶ、えぐられてるなあ・・・」
失礼なことを考えながら、シナリオが進む。
真琴シナリオで、美汐のアップが描かれている唯一のイベントCGがあるが、文月さんが突然、その三枚目が、実は微妙に表情が変化していることを指摘した。確認したが、ほんの数ピクセルの変化で、常人ではほぼ視認できないところに反応している。というより、真琴シナリオでありながら、彼がいかに真琴を見ていないかがよくわかる。
私は驚きのあまり、彼に「歩く天野美汐」の称号を与えた。
(以下、真琴シナリオ等のネタバレ含む)
真琴シナリオでは、真琴を女性と思っていないかのような主人公の言動が目立つ。
風呂にはいったり、一緒に寝たり、彼女を女としてみていないような気がする。
ラストのものみの丘のシーンだけは別だが、これはやはりペットロスかもしれない。
それだけに、美汐とのラブストーリーが、このシナリオの本来のハッピーエンドです、とさりげなく主張する文月さんである。
他にも、名雪の嫉妬を考えながら真琴シナリオを見ると、「あの子」から「真琴」にかわるときなど恐くてイイとか、舞シナリオでは、昼飯が佐祐理さんで、夜食が祐一って、川澄家の家計は大助かりだな。とか、マンデリンさんとの共通点は、栞と美汐が一年生であること、でもたぶん栞は留年だな、
などなどKanonの話題が尽きなかった。
「しかし、単独キャラにここまで投入できるっていうのは、凄いですね。ザナさんみたいですね」
と言ったら彼は否定していた。
「そんな、ぼくが持ってるのは、フィギュアと同人誌だけですよ! あとは抱き枕(当時発注済み。現在使用中)くらいだし」
「・・・充分ておくれです」
と、いちおう、突っ込んでおいた
その後、榊原良子さんの疲れた声がいろいろたまらんDCのゲーム「北へ」をプレイするなどして、最後の夜は更けていった。
翌朝、礼を言って文月さん宅を出る。
次は、この旅行中、唯一のハーメルン関係者、薄荷さんと会う予定だ。
この人は、おちついた人なので、ようやく気が抜けると安心して出発した。
今までの濃ゆーいメンバーに比べれば、どれだけ癒されるだろう。安心である。
「わたし、みなさんと比べたら全然うすい人間ですから・・・」
薄荷さんは、以前にそう言っていた。
だが、会ってみて分かった。それは本人がそう思っていただけで、実物は、私の理解を超えていた。
進むにつれて、右肩上がりにどんどん濃くなっていった今回のオフ会内容。
とりを勤めた薄荷さんのその濃さは、残念ながら美しく比例していた。
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2001.08.14
tue「聖地・ヨコハマ:後編 〜小網代・横須賀〜 」
朝、かすみのむこうに見える、雲とも山嶺ともつかないスカイライン。
ゆっくりと暖色に染まる、ひかえめな茜の空。
消えていく中空の残月
虫の羽音。それを追う鳥の声。
旅行の八日目。
カフェアルファが見える農道で、我々は夜明かしした。
結局、星が消える明け方まで起きていて、海を見に行ったりしたが、やはり車で寝た。
日が昇る。とたんに気温が30度をこえる。
9:00ちかくになって直射日光がたまらなくなったころ、HAY!さんが到着した。
HAY!さんは一見すると普通の青年だが、口を開くと「デジキャラットのうさだハチマキ!!」といきなり属性反応したり、私がコミケで買えなかった同人CDを何故か持っていたりするからあなどれない。彼はまだKanonをクリアしていないので、今後が楽しみだ。
我々は、食料品や虫除けなどを買った後「小網代(こあじろ)の入江」に向かう予定だった。
しかし、とっくに到着しているはずのmasterpieceさんが来ない。携帯電話も通じなかった。
我々は知らなかったが、そのころmasterpieceさんはすでに、ごく近所の別の場所に到着しており、海で遊んでいたらしい。
「あはははは、あははは」「わんわん」「あはは、まてよー」
イメージ映像とイメージ音声。犬はオプション。
見捨てるような形になったが、電話が通じないのだから仕方がない。
我々は小網代へ向かった。
小網代漁港に路上駐車し、奥に分け入る。
マッキがミサゴに出くわした橋を渡り、さらに奥の方に進んだ。
入江の手前に、自然保護の呼びかけが描かれた看板があり、その足下にクーラーボックスがある。
中にはノートが入っていて、小網代の自然に触れた感想などを寄せ書きしてあった。
たまに「ヨコハマ買い出し紀行」について書いてあって面白い。我々も全員でコメントを書いた。
その小径を少し戻ると、その眼前には、ミサゴがすっぽんぽんで飛んだり跳ねたりしていた入江がある。
遠くに見えるでかいリゾートマンションが景観をブチ壊していたが、とても綺麗で穏やかな海だった。
「おおーっ これがヨコハマの海か!」
天野がはしゃぐ。
「うわー、すごい、これ全部海水? ホンモノ? さわっていいの? 塩分ひかえめ?」
岐阜県には海がない。
私とて海くらい見たことはあるが、我々岐阜県人の日常に海はないのだ。はしゃぐのも無理はあるまい。
ちょっと迷ったが、短パンだったことも手伝って、靴を脱いで海に入った。
暖かい海水が気持ちよかった。
しょっぱい水が感動的だった。
いま思うと、泳げばよかったな、と考えなくもない。
だが、クラゲがいっぱいいたので断念した。
考えてみると、もうお盆ちかいのだ。
しばらく遊んでから岸へ上がる。
他のメンバーが集まって、海辺で何かを見ていた。おおきなクラゲだった。
「動けないのかな」
「足を挟まれてるみたいですね」
「助けましょう! この細い竹で、こう・・・」
「ほー、天野さん優しいね」
「馬鹿者! ここで助けておけば、女の子になって恩返しに来るかもしれんだろう!」
「・・・・」
「・・・・」
「・・・・」
痛い視線を受けながら、天野が竹の棒で奮闘する。
「ようし、いま助けてやるぞ。そーれ」
ぶちっ
「あ」
「・・・・」
「足ちぎれたね」
「・・・・」
「・・・・」
「復讐にくるかな・・・真琴みたいに」
「・・・・」
「・・・・」
「・・・・」
「おまえは海へお帰り、そこでのんびり暮らすがいい。ありがとう、そして
さよなら、マリアルイーゼ」
「おいおい、無理矢理イイ話にするな」
「あと、なんだその名前は」
この後、仕事先から逃げ出してきたネモ船長がワイシャツ・ネクタイ・スラックスという三点セットで現れた。
そして水谷さんとも合流をはたす。
以前に面識のあった人は、天野のヒゲ面を見てたいてい笑い出すのだが、水谷さんも例外ではなかった。
そのころ、青春18切符で大阪まで帰らなくてはならないため、そろそろ出発のザナさんを送る。
衆人環視のなか、三崎口の駅で、わざわざ万歳三唱で見送った。
その後は、「ナビ」に出てきた通研を訪ね、後日再登場する文月さんと別れた。
食事の後、masterpieceさんに何度も電話をかけるが、やはりどうしても通じない。
しかたなく、聖地の巡礼を続ける。
「おじさんのガソリンスタンド」は、あいにくと休業中。「北の大崩れ」は時間の都合で行けなかったが、小網代の入江と、カフェアルファが見られたこと、カフェアルファには、近寄ったら不動産の警備システムに引っかかったこと、それ以上侵入すると通報しますと言われたことなど、いい思い出だった。
聖地と呼ばれる場所は、かなり巡礼できたと思う。
最後に横須賀中央公園に向かおう、という段になって、ついにmasterpieceさんと連絡が取れた。
中央公園で合流する約束をし、我々は出発した。
「masterpieceさん、公園の階段のぼりきった所にいるってさ!」
「そうか、よし急ごうぜ!」
「うわはははは、私の名前は乳首魔人!」
「うわーい、驚いた!」
「うひゃあ!」
というようなシチュエーションを夢想して茂みに隠れていたmasterpieceさんを、別の階段で最上階まで行ってしまった我々は、気まずくも上から発見してしまった。
なんか申し訳ない沈黙の中、masterpieceさんが合流する。
「これで大型ヨコハマサイトの管理人さんとは全員、会うことができました・・・」
と、ネモ船長が感慨深げに握手して誤魔化していた。
聖地巡礼、最後の地は「ヨコスカ巡航」で、アルファさんと先生が、水没した都市を見下ろした、あの高台の公園である。
涼気をともなう風のなか、今の人が使っている光の花が少しずつ灯っていく。
ヨコハマに出会った頃の、あるいは「ふたりの船」を描いた頃の、まだ興奮していた頃に来たかったな。
静かにしか出てこない、ちょっと物足りない感動を受けとめて、そう思った。
空が焼けて、夜が空を包む。
夜景の光だけが目に入るようになった。
「デジカメだと光量不足で撮影ができない」
「明るいレンズがないとダメだね」
そんな会話をし、ためしに撮ってみたりもする。
でも、この夜景を、みなじっと見つめていた。
ここにいる人は、全員、知っているのだ。
写真にはとらなくても、いつもより鮮明に思い出せる景色は、あるということを。
夜景を望む丘で、いろんな話をした。
未来のヨコハマの世界に空想を遊ばせたり、やはりKanonやAIRの話が出たり、そうこうするうちに、マンデリンさんの話になった。
COBRAさんが貸したたくさんのアニメビデオ。
タカヒロ・Iさんが貸した、Kanon。
天野がプレゼントした「まほろまてぃっく」他、そっち系のツボなコミック。
そして、まだコミケのなんたるかも知らないマンデリンさんを監禁してコミケ用の本造りを無理矢理手伝わせたこともあるネモ船長が、しみじみと懺悔する。
ガンダムもエヴァも知らないマンデリンさんが、いま「美坂栞」なのは、たぶん自分たちのせいだと。
マンデリンさんは人望がある。これは彼の徳であろう。
だが集まった人間が、まずかった。
完全に日が暮れたので、ここで解散となる。
名残を惜しんで、それぞれの帰途についた。
だが、マンデリンさんと、KAZZさんと、天野には、これから「ヨコハマ聖地巡礼・オプショナルツアー」がある。
埼玉県地方に多くあるという「馬車道」というパスタ系レストランでのウエイトレスさん鑑賞会だ。
ちなみに、こっちの方が目当てなのでは、というのは邪推である。
「べべべべつにこのために一泊のばしたわけではないですじょ?」などとひとりごちながら、天野はレガシィに乗り込んだ。
KAZZさんが、このために持ってきたノートパソコンを起動する。
ディスプレイには、馬車道の店舗マップが「どんなもんです」とばかりに表示されていた。
「ええと、最寄りの馬車道は相模原ですね」
ちなみに、馬車道ウエイトレスさんの制服は、紫を基調とした、単着物に袴、リボン、羽織は矢羽模様そして編み上げのブーツである。
「いざ!」
首が後ろに落ちるような加速で、車は高速道路に飛び込んだ。
秋葉原にあるという、メイド喫茶「CUREメイド」
名古屋にあるという、巫女さん居酒屋「月天」
そして大正ロマン袴パスタ屋の「馬車道」
装束フェチが集まる店というと、やはりメイド喫茶がポイント的に大きいが、正直これをやるのは恥ずかしい。
萌え属性が反映されてなお、もっとも堅実なのはやはり眼鏡喫茶「委員長」だろう。
ウエイトレスは全員眼鏡着用。採用基準は視力0.1以下で、委員長経験者もしくは現役委員長。制服支給うーんむにゃむにゃ・・・。
馬車道に着いたはいいが、天野の体力が限界だった。
机に肘をついて、経営戦略を妄想しながら居眠りする天野である。
せっかく馬車道まで来てもったいない、とは思ったが、八日間のド・ハードスケジュールの上、昨日の野宿では三時間ほどしか眠らなかったので、自業自得である。
「いらっしゃいませ」
だが、それは目が醒めるような挨拶だった。
袴に着物、それにかけた襷(たすき)が、気働きする印象を鮮烈に残す。
遅い時間で、他に従業員がいないのだろうか。甲斐甲斐しく一人で懸命に立ち働くウエイトレスの姿が目の前にあった。
仮にも店舗運営をやった者として言わせてもらうと「馬車道」の評価は、すこぶる高かった。
同系列と聞くが「すかいらーく」などとは、あきらかに接客や料理の質が違う。根本は、こころざしの違いだろうか。
こだわりをもった接客に、同じような基準で働いていた者としての、近しさを憶える。
馬車道にはファンが多く、毎日のように通う人がいるというのも、よく分かった。
最初はよほどフェティッシュなファンなのかと思っていたが、ここに通いたいのは、単純に店自体の質が高く評価されているからだ。袴は、その目立つしるしにすぎない。
料理も、メニューの写真で見た目以上のボリュームが出てきて驚く。
普通は実物の方が貧弱な印象を受けるが、ここはその逆だ。
チョコバナナピザが出てきたときは、三人の男が自分の遠近感を疑ったほどだった。
「ごゆっくりどうぞ」
ウエイトレスが、腰から頭を下げた。
その礼がつくるやすらぎが、テーブルに残る。
素敵な店だった。
その晩は、KAZZさんの実家にお世話になった。
天野は、なんとか風呂に入った後、気絶するように休んで翌日である。
朝のつもりで食べたら昼だったというサンドイッチをいただき、天野は所沢まで車で送ってもらった。
このあたりは「トトロの森」があったり「耳をすませば」のロケーションでもある「聖蹟桜ヶ丘」が近かったりしてジブリファンにはおいしい所だ。
KAZZさんと再会を約して、所沢の駅に立つ。
明日は最後の宿泊地、文月さんの家だ。
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2001.08.13 mon「聖地・ヨコハマ:前編 〜黒崎〜」
今回の旅行中、ネモ船長からもらったステッカーを、リュックのシェルに貼っておいた。
子海石先生のマーク
「あっちこっち見て歩いちゃ喜んでいる奴」のマークだ。
この旅行にはピッタリである。
旅行の七日目。今日はいよいよ「ヨコハマ買い出し紀行」の聖地、横浜・三浦海岸でのオフ会である。
集合が遅い時間なので、それに合わせて現地に向かった。
最寄りの駅は、京急久里浜線の三崎口駅だ。
ついてみると、すでに文月さんが待っていた。
二人とも聖地は初めてなので身動きがとれず、BMWのマンデリンさんが到着するまで時間を潰すべく、うらぶれた停留所のベンチで、バスを待つ行列のけげんそうな視線を浴びながら同人誌を広げて読んだり鳥の歌を歌ったりして過ごした。
夜8時頃、マンデリンさんの車が現れた。
静岡で拾ったというザナさんも一緒である。
先の大阪オフ会のときに詳しく書いていなかったが、ザナさんはとても元気な人である。
ゲノム風に言うと、充電したてのヒゲ剃りみたいに元気な人だ。
今度の再会でも、何かがブンブン唸っているような元気さだった。若いってのはいい。
車に乗り込み、最寄りの「すかいらーく」で陣をはる。ややあってKAZZさんが到着した。
今回のオフ会は、文月・マンデリン・ザナ・KAZZ・天野(敬称略)と、このメンバーに、明日はHAY!さん、masterpieceさん、水谷さん、ネモ船長が合流する予定だ。
上記の五人で今夜は車中泊である。だが、なんの装備もなく快適さの求められないキャンプなので、我々は限界まで「すかいらーく」で時間を潰した。
マンデリンさんがノートパソコンをファミレスのテーブルに持ち出して、やおら修理をはじめる。
だが、不調らしくBIOSすら立ち上がらない。KAZZさんとドライバーでCPUを外してチェックしているのだが、どういう集団と判断したのか、その様子をウエイトレスが、見て見ぬふりしている。
不調は、どうも以前にいじったことと、振動がいけなかったらしい。
何とか起動できて、マンデリンさんがひとこと呟く
「絶対安静のモバイルパソコンだ」
「意味ねぇーーっ」
みんながつっこんだ。
マンデリンさんのノーパソのデスクトップピクチャーは美坂栞である。
こちらも持参してきたKAZZさんのノーパソは、当然のように川澄舞だ。
二人ともやや自慢げである。
そして、私が文月さんからもらった舞のフィギュアを組み立てたり、文月さんがマンデリンさんから新たにもらった美汐のフィギュアを組み立てたりして、ひと目で、どんなたぐいの集団かわかるキーアイテムが机を占拠したまま、夜は更けていった。
ウエイトレスは水も持ってこなくなっていた。
ギリギリまで粘ってから、黒崎の鼻とよばれる海辺ちかくへ移動する。
ここは実は「ヨコハマ買い出し紀行」の舞台である「カフェアルファ」のモデルになっている家(別荘)がある。
当然、ロケーションも、ほぼそのままだ。だが、カフェアルファは誰かが使っているようだし、海まで行くには視界が悪いので、今夜はそのまま農道で車中泊することになった。
もはや、いまさら書くまでも無いことだとは思うが、ザナさんは抱き枕持参である。
布団どころか床もないような就寝環境でも、もう、デフォルトで持参だ。すでに皮膚の一部かもしれない。
彼は、先の日記以来、なかま内で「妖精王」の称号を欲しいままにしている。
ただ今回の事情で、以前より凄いのは、この旅行のスケジュールを家族に話したとき、彼の母君が
「じゃあ、抱き枕のカバー洗っておくから、わすれないように(もっていきなさい)」
と我が子に注意を与えたことだろう。
もはやなにも言うまい。
海近くの農道は、淡水がないせいか、ヤブ蚊がいなくてたすかる。
我々は、
星空の下で、
聖地・ヨコハマに集まった。
そして出る話題はAIRについてだった。
「いかん! 聖地まで来てヨコハマの話題がないのはいかん!」
「そうだ、しりとりしよう。ヨコハマ限定しりとり! じゃあまず初瀬野アルファの「あ」」
「あ、アヤセ、「セ」」
「セ、セリオ、「オ」」
「そりゃ「葉っぱ」の「心臓」だ! やりなおし! じゃあヨコハマの「マ」」
「マ、マッキ、「キ」」
「キ、キ、霧島診療所」
「だから、なんで「鍵」の「空気」なんだっ!!!」
もう、どうやっても手遅れだと悟ったので、結局、夜通しAIRの話になった。
AIRの同人はKanonより少ないと思うけど、それはAIRの終わり方では、外伝や後日談を作るのがかなり難しいからだよなー、などという話を空を見上げながら交わした。
ゆっくりと雲がきれて、星空があらわれてくる。
ふと、この状況に少しだけ驚いた。
「こんなにのんびりと星を見たことが、いままでにあっただろうか・・・」
ちいさな声でつぶやく。
独りだったら、こんなに長い時間、じっくりと星を見ることはまずない。
みんなに会うためにここへ来て、そして何もせずに時間をすごす。
そんな時でもないと、我々はのんびりと星を見ることも、しなくなってしまっていた。
夜空と同じいろのBMW。そのボンネットに写る星空。
誰もなにもしゃべらず、みんなでじっと星を見る贅沢な時間。
「あ・・・」
マグネシウム光のような軌跡を残して、星が流れた。
ペルセウス座流星群だった。
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2001.08.12 holy (4/4)「m&nさん」
コミケの販売スペースに辿り着いた瞬間に、私は一瞬わが目を疑った。
m&nさんが、「mさん」と「nさん」のコンビであることは、おおよそ分かっていた。
だが、その二人が夫婦であるところまでは、さすがに読めなかったのだ。
m&nさんは、とても気さくな夫婦である。
「ハレグゥのDVDが25日にでるよ〜」
「ギャラクシーエンジェルとおなじ日か」
「たいへんだね〜」
「へー、天野さん、これがONEのDVD?」
「なんか、エルフちっくな絵だね〜」
これが夫婦の会話か・・・。
コミケの帰り道、マンションにつくまで、驚きを隠せないまま、私は二人の話を聞いていた。
食後に、せっかくなのでONEのDVD(文月さんから借りた)を観てみようと言う話になったが、上映開始一分で全員いねむりをはじめたため、断念する。
たしかに居眠りして然るべき内容の無さだが、それ以前に、前日午前2時就寝→同4時起床というスケジュールでコミケに臨んでいる勇者ロボ軍団のような夫婦の生活こそ特筆すべきだろう。
気を取り直して、コミケで買い集めた同人誌のチェックがはじまる。
まだAIRをクリアしていないnさん(奥さん)のために、mさん(旦那さん)がネタバレを検閲してから同人誌を読ませているのが、微笑ましかった。
m&nさんは、仕事、家庭そして同人までこなしている。ある種の理想家庭の姿だった。
ただ、いろいろ悩みもあるようで、背丈よりも高いカラーボックスにギチギチに詰め込まれたもの凄い量の同人誌や、なかなか捨てられない漫画雑誌の処分に困ってらっしゃるようだった。
趣味を通じて夫婦がひとつになる、その秘訣があるとしたら、それは、片方が苦労して生活を繕うのではなく、同人誌という同一の目的を、二人で並んで見つめるということ、なのかもしれない。
寝る前に、他サークルのKanon 同人誌をいくつか見せてもらう。(以下Kanon真琴シナリオ、ややネタバレ)
水瀬家に貼られている一ヶ月の献立表が全日「おでん」になっていて、その右に(右手)とか(耳)とかずらーっと書いてあるのをみて真琴がガタガタ震えている、という話が面白かった。
その後、お風呂をいただいて、リビングで休ませていただく。
用意していただいた布団がやわらかい。
人情の暖かみというものが、骨に徹るくらいわかった。
お世話になりっぱなしのこの旅行中、決まって言われる「何もおかまいできなくて、すみません」という言葉。
それを聞くたびに実感する。
「旅」は「甘える」ことだ、と。
「甘える」ということは、あまり積極的に褒められた行動ではないと思っていた。
だから、休みはあるが宿賃がない、という特異な状況でなかったら、初対面の方の家に、こういう「甘え方」をすることは無かったはずだと思う。
だが、甘えることで、「人間の善さ」や「人情のありがたみ」を、こうしてしみじみと実感し、感謝できている。
そうだ、人間は甘えなければ、感謝ができないのかも知れない。
ごろん、と寝返りをうって、布団をなでる。
お世話になりっぱなしだ。
申し訳ない。
でも、なんてありがたいんだろう。
翌日、朝食の後、昼食と買い物にお呼ばれした。
二人の買い物についていく。
商店街などで後ろからついて見ていると、その人が何に興味があるのか、よく分かるという。
本や、服、食料品などにそれぞれの目がいくのだが、ガシャポンの販売機に二人同時に反応していたのには正直笑ってしまった。
帰宅後、アメリカンプロレスを観ながら洗濯機を借り、何から何までお世話になりっぱなしのまま、m&nさん宅を発った。
向かう先は「ヨコハマ買い出し紀行」の聖地「横浜・三浦海岸」である。
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2001.08.12 holy (3/4)「コミケ:激痛編」 注:1/4 からお読みください。
コスプレ広場を後にし、企業ブースへ向かう。
だが、そこでは残念ながら空振りが多かった。
「白詰草話」やエンターブレインで販売されているKEYのCDなど、人気のあるものは、早々に「売切」の札が貼られていた。聞くと昼にはほとんど完売していたという。
やはり早い時間に行った者には、それなりの役得があるようだ。
しかたなく、ゲームメーカーなどのブースを見て回る。
ところで、ずっと案内をしてくれているアムゥさんは、私が言うのもなんだが普通のまともな人で、茶髪の好青年だ。
マンガやアニメ、ゲームの類をあまり知らないし(それでも一般人に比べればかなり深いが)「うたたねひろゆき」くらいの深度の漫画家でも、もう分からないようだ。
友人関係には濃いひとが多そうだが、コミケには何故か何度も足を運んでいるにもかかわらず、ほとんど買い物をしたことがない、というもったいない人である。
だが、そんな彼も「ぴろ」(Kanon)のぬいぐるみを3000円で買っていた。
はじめてコミケでジュース以外の買い物をしたという顔で、ドキドキしているアムゥさんである。
すすめた私が背中を押してしまったようで、ちょっと後ろめたかった。
うろうろしていると、AIRグッズの販売ブースで、スピーカーからサントラが流れていた。
「青空」が流れた瞬間、通行人を含む誰もが一瞬、なみだをこらえるようにこわばったのが、印象的だった。
二人で会場をフラフラと歩く。
私の最も敬愛する漫画家・島本和彦先生の描いているパンフ連載マンガ「アニメ店長」(過去の一コマ広告を見ればだいたい分かります)が、アニメイトのブースで、大々的に飾られていた。
その中の一枚のポスターで叫ばれている台詞を見た瞬間に、私は全身を射抜かれたような衝撃を受けた。
ポスターにひとこと。
はっ
そうか、そうなんだ。自分は「ゆりかもめ」に乗車しているときも「国際展示場駅」で降りるということを、何となく恥ずかしく思っていた。客観的には、どう見ても、そっちの人なのに。
そうだ、持ったまま街を歩けないようなロリキャライラストの紙バッグとか、見つかっただけで家庭が震撼するようなゲームグッズを買うことに、ここまできて、照れてどうする!
黒天野支配率がゲージを振り切った瞬間だった。
15分後。
私を見失ったアムゥさんが、ようやく天野を発見したとき、その右手首には「ボークス」と書かれた袋がぶら下がっていた。
中にはドールが2体入っていた。
「ま、まだまだーっっ!!」
「あ、天野さん!?」
叫んで走りだす天野。追いすがるアムゥさん。
30分後。
私を見失ったアムゥさんが、ようやく天野を発見したとき、その左手首には「ケイエスエス」と書かれた袋がぶら下がっていた。
中には「ハッピーレッスン」のドラマCDが入っていた。
「・・・「ハッピーレッスン」ていうのは、12人の妹では満たされない方々が、今度は五人のママを相手にするギャルゲーなんですけど、30すぎてママ、ママ、もないだろうっていうか、お母さん全員年下なんですけど、買ってしまいました・・・」
「天野さん・・・」
「だって、宣伝ポップに「声優:三世院やよい役=井上喜久子」って書いてあったし」
「・・・・」
「この5文字のために購入・・・。2500円だから、一文字500円かあ・・・。ははは、痛いよね・・・」
いちおう笑ってくれているアムゥさんの顔には、うっすらと「激痛」と書いてあった。
※ 後日CDを聴いてみたら、井上喜久子さんの出番は、正味8分ほどでした。
2500円÷480秒=5.2円。1秒ごとに5円玉が、ちゃりーん、ちゃりーん、と落ちていくようでした。
で、でも、いいよネ! (痛)
午後三時。コミケもあと一時間で終わる。
アムゥさんと一度別れ、私は今日の宿泊先でもあるm&nさんの売場へ戻るべく、企業ブースから東館へ向かう。
呼び子がいるせいか、企業ブースはやはり喧噪が凄いのだが、エントランスはその数十倍の人数がひしめいているのに、それほどやかましくはなかった。
書店でも混雑すると店全体が、ワーンと鳴っているように聞こえる。
そう思ってみると、コミケは、人数のわりに静かなことに、気がついた。
全員黙々と目的地に向かって歩いているためだ。一見すると統率されているようだが軍団ではない。個人の集団だ。
だが、この静かさがちょっと恐ろしくもあった。
m&nさんのサークル内にお邪魔して、終了を待つ。
そして午後4時。最後を告げるアナウンスが会場に流れた。
途端にまきおこる大拍手。あちこちで三本締めや、自分らの健闘を褒め称える拍手が、激しい雨音のように沸いた。
士官学校などで全課程が修了すると、歓声が上がって皆が帽子を投げる、というシーンを映画で見たことがある。
ここでもその開放感は同じだった。
空中を飛び交うものが、ネコみみのカチューシャであることを除けば。
サークルの荷物をまとめての撤収がはじまる。
最後にアムゥさんに会ってお礼を言いたかったが、この人数の中で携帯電話など使えるわけがなく、路上にでるまで連絡がつかなかった。
申し訳なかった。
彼がこの日記を愛してくれて、すごく会いたがってくれていたのが照れくさく嬉しかった。
ありがとう、アムゥさん。
ひとりだったらこの半分も回れなかったと思う。
車に乗ってm&nさんのお宅に向かった。
「たのしかったですか?」と質問されて、正直なところ答えにつまる。
「楽しむ」という余裕はなかった。
とにかく凄かったとしか言えない。
ふと後方を見ると、東京ビッグサイトが、いまだに数万の人間をゲッポゲッポと吐き出していた。
外国から帰ってきたような感慨が、胸の奥にほんのりと生まれていた。
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2001.08.12 holy (2/4)「コミケ:コスプレ編」 注:1/4 からお読みください。
コスプレ広場へ行列が向かう途中、私の周りのコスプレイヤーの濃度がどんどん高くなって行く。東館出発から、移動だけに30分以上を要して、ようやく広場にたどりついた。
外周では、コスプレをしている人がポージングにいそしみ、その内側でセミプロとハイアマチュアのカメラマンがカウントをとり、中心核を見物人が、自然と反時計回りに移動する。
移動中に見慣れてきたせいもあるが、ゆっくり見物する余裕はあった。
印象としては「ワンピース」や「シャーマンキング」などの少年マンガ系がやはり多く、次いでギャルゲーや格闘ゲームのキャラ、それ以外は古今のキャラを思い思いに演じていた。
見たことのないキャラクターや、名前がわからないキャラクターなどがたくさんいて、なんとなくホッとしている。
古いコスプレもあって懐かしかった。プラグスーツの綾波レイや、聖闘士星矢のゴールドクロス、そして多分プロなのだと思われる、おそろしく見事な衣装とプロポーションでポーズをキメるセーラームーンなどなど。あとナディアとガーゴイル、「うる星やつら」のラムもいた。
「アムゥさん、アムゥさん」
「はい?」
「このコスプレやってる人のことは、あんまりジロジロみては失礼かな?」
「うーん」
「『んもう、お兄ちゃんのエロス人(びと)!』とか言われたらたまらんし」
「いや、見てもらうためにこういう服を作って着ているんですから、むしろ無視するほうが失礼なんじゃないですか?」
「おお、なるほど」
などと話ながら広場をまわる。
気になった点としては、男性の女装がさすがに目を引いた。
身長170センチのでじこ(男性)
体重70キロ強のぷちこ(男性)
先述のたくましいまほろさん(男性)
中でもでじこは、他にも何人か男性で見かけた。「デ・ジ・キャラット」はなぜか女装率が高い。
それを見て、ふと「ナルシスト(自己陶酔家)」についての話を思い出した。
ナルシストには、男女において根本的な違いがある。
女性は、自分以外の他者から「美しい」と認められ賛美賞賛されてはじめて「自分は美しい」と陶酔できる。従って、自己陶酔できる女性は他者から見ても、充分に美しい場合が多い。
これに対して男性のナルシシズムは、人がどう思おうが、なんと言おうが、いかなる美観の破壊や人心におよぶ迷惑をも省みず、自分の美しさに「気がついてしまう」のだ。自己の主観によって発生する観念であるため、これは端から見るとかなりアレなケースが多い。
彼らを見ていて、そんな話を思い出した。
「・・・気がついてしまったんだねー・・・」と感慨深げな目線で彼らのスカート姿を見る。
正直かんべんしてほしい、と思ったが、ただひとつ、認められる点もあった。
コスプレを見てる方としては、コスプレイヤーは、そのキャラになりきっていてくれた方が美味しい。
彼女または彼らは、装飾品や衣装を用意し、コスプレのためにプロポーションをつくり、外的な準備を果たす。
だが、内面の「なりきり」はどうだろう。
女性のコスプレイヤーは、自分を可愛く見せようとしたり、見てほしい欲求が先に立っていて、強烈な我がにじみ出ている。「カワイイかっこうをしている自分」を見せているように思えた。
私が見た範囲で、一番なりきっていたのは、キャラは分からなかったが白を基調としたピンクハウスみたいなドレスを着た男性だった。
女装男性は、それだけでまずハンデがある。
だが、男性の方が、本質的なところでキャラになりきっているのを、私は見た。
骨格的にはどう見ても男性なのに、いかなるときも、女性の立ち居ふるまいを通している。
あれは見事だった。
ただ、私がモトネタを知らず、なんのコスプレか分からないのが残念であった。
男性のコスプレイヤーというと、ジオンの軍服が暑そうなギニアス閣下(08小隊)や、全身タイツでおそらく体中汗疹(あせも)のウルヴァリン(スポーン)、暑いせいで黒コートではなく、白衣を着ていたのが残念なブラックジャック先生などがいた。あの診察カバンの中身は全部同人誌なのだろう。
男性は、先のガーゴイルも含めて誰もが暑そうな姿だったが、ただひとり、リアルなキタキタオヤジ(魔法陣グルグル)だけはものすごく涼しそうで、見ている間中、絶好調で踊っていた。
すごいと思ったコスプレはたくさんいたが、女性の写真は、結局一枚もとれなかった。
単純に綺麗だなと思う人でも、女性にカメラを向けるのは、なんだか愛情表現のような気がして気が引けたのだ。
そんなわけで今回の収穫
「ガーゴイルさま」
まあ、はじめてだし。
「どうでしたか、天野さん」
「うん、いや、いろんな意味でここ日本? って自問してました」
「KanonとかAIRとか、あとフルバ(フルーツバスケット)なんかも、もう出てましたね。それに「ちょびっツ」が多かった。」
「そこの目の前を歩いてる二人とか「ちぃ」と「すもも」のコンビ結構いるけど、よく見るとコレすもものほうが身長でかくないか? それは何か間違ってないか?」
「まあ、そういうところですから。感動したのは、何かありますか?」
「ボボボーボ・ボーボボ(ボボボーボ・ボーボボ)がいたこと」
「残念だったことは?」
「ベルダンディが休憩中にタバコ吸ってたこと・・・」
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2001.08.12 holy (1/4)「コミケ:入場編」
それはさながら頭髪の洪水だった。
東京ビッグサイト西館の、ゆっくりと登っていくエスカレータから、階下を見下ろす。
1メートル四方に5人くらいの密度で混み合った日本人の黒い頭がジョワジョワと流れていくのが見て取れた。
それだけなら、都市部の通勤ラッシュなどと変わらないイメージだろう。
ここが、それら一般社会で見られる光景と決定的に違うのは、その人間の量である。
高所から見下ろしているので、人間が、地ネズミくらいにみえるのだが、限定空間で増えすぎた齧歯類が体育館ほどの床面積一面にビッシリ並んでうごめいている感じだ。
私はそれを、やや呆然としながら見下ろしていた。
「これ」を見たことのない人にも伝わるよう、いろんな例えを考えたが、個体数が多すぎるため、人間の集団として認識できず適切な言葉がわかない。なんというか、昆虫や魚類など、ある種の生物の本能的な行動のように見える。
うちへ帰ってから辞書をあたったが、
群集:多数の人間が一時的・非組織的につくった集団で、共通の関心をひく対象に向かって類似の仕方で反応するが、一般には浮動的で無統制な集まり。(広辞苑より)
という、正鵠は射ているがパッとしない表現くらいしか見つからない。
コミケには初めての入場となる今回、行く前からその人間の多さなどは、さんざん脅されていた。
だが、実際に見て、全体像を認識できないでいる自分を発見したときに、はじめてこの人間の規模というものを、うけとめられないことで実感できたと思う。
そのうえ、上記の光景は、コミケの会場のごく一部であり、そんな光景がこの敷地内に何杯もあり、あまつさえ「今日は雨が降ったから人が少ないねー」なんて会話が聞こえてきたり「ビッグサイトは販売スペース間に余裕があって移動が楽」とか「やっぱり昼からだと、あんま人がいない」やら「レヴォとかと比べると、コミケは死にかけることとかないからいいよねー」などという話がそこかしこから聞こえてくる。
これで少ない方なのか・・・・。
いまだ呆然としている私に、アムゥさんが話しかけてきた。
「天野さん、コスプレ広場はあっちですよ」
「あ、ああうん、行こう」
私は「いっそCG合成だったら、まだ納得できるけどな」と思いながら、むらむらと蠢動する群体から目を離した。
話を少し戻そう。本日は旅行の六日目。そしてコミケット60の三日目である。
コミケ初心者の私は、掲示板で先導者を募った。快く名乗り出てくれたのはアムゥさんである。
彼は大学の先輩から、当時の寝言日記をすすめられ、その後なぜかKanonもAIRもクリアし、最近ついに当日記の完読を果たしたそうである。最近よみはじめた人には、このテキスト量は辛いだろうに。しかも、今回は案内役を買って出てくれた。ありがたいことである。昼頃に駅前で彼と会い、会場に入った。
コミケの会場である東京ビッグサイトは、大きく東館・西館に別れる。
東館は、参加サークルが同人誌などの販売をするスペースで、西館は、イベントや企業ブース、一部の大手サークル、そして西館屋外はコスプレの広場などになっている。
入場後、最初は、頼まれものを買いそろえるために、東館に向かった。
私がずっとやっている「夜想曲」は、個人の創作活動である。
それと同種の趣味人が、これだけ集まってのイベントである。いったいどんな世界が中では展開されているのだろう。躍りはやる心を抑えながら、一歩、この館へ足を踏み入れる。瞬間、わたしは凍りついた。
「急患です! 急患です! 急患が通ります! 道を開けてください!」
先陣を切る女性スタッフの金切り声とともに、会場の熱にやられたのか、ぐったりとした体重100キロはありそうな男が乗せられた担架が、おそらく少数では運べなかったのであろう6人がかりで、だばだばと目の前を搬送されて行く。
そのあまりのインパクトに記憶が飛んでいるため正確ではないが、担架班のメンバーは、最遊記の三蔵様とギルティギアゼクスのミリア・レイジと少女革命ウテナの桐生冬芽とジパングの角松洋介二等海佐とあとスタッフ帽をかぶった二人の地球人だった。
いや「だった」わけではなく、なにがしかのコスプレだったのだが、不覚にも瞬間的になにがはじまったのか認識ができず、まったく憶えていないので適当に当てはめてみた。だが、この面子が担架で病人を運んでいるのとほぼ同様の衝撃があったことだけは保証しておく。
これが、コミケ第一歩の出会いだった。
私はこのイベントの本質を、すこしだけ垣間見たような気がしていた。
スペースの位置を書いたメモを頼りに、アムゥさんに先導してもらいながら人の海を進む。コミケカタログも地図も持ってきていなかったので、彼は本当に頼りになった。
コミケに来たのは、初めてである。東京にいた時代は、アニメ・マンガから遠ざかっていたからだ。
それが社会人になってしばらくのころ、エヴァンゲリオンに引っかかって、私はこの世界に戻ってきた。
ところで、一度はなれた人間が出戻ったときには、ものすごいリバウンドがある。
「リバウンド」というのは、ダイエットなどで痩せても、それで安心して食事量ふやすと逆に以前より太ってしまうというアレだ。
ほぼ同様である。適度のダメ人間的休憩(普通の社会生活)を挟んだため、そして大学生以前とは自由になる金銭の桁が違うことなど相まってか、私の場合は、イレギュラーに弾かれた外野ゴロが、場外ホームランになるよーなリバウンドだった。
ふと外周サークルにできている、いくつもに折れ曲がった行列を見ながら、私のリバウンドもここまで来たか、と感慨深く思った。
同人誌や同人CDを買い集め、今回2ページだけ寄稿した、m&nさん(HP:遠月点)のサークル(Visual
She:今回はKanon、AIR、ガンパレの同人誌・ラミカを販売)にお邪魔する。
本日の宿泊でおせわになる御方である。この人たちのことは、また後に語ろう。
ざっと見渡したところ、東館の中で、リーフやKEY(俗に言う「葉鍵」)の占める割合は、けっこう大きいようだ。
販売スペースの一群がまるまるKanonだったりと、人気の高さがうかがえるが、この「Kanon特需」のピークはAIR発売の直前であると聞く。
KanonのファンがAIRに移ったのではなく、そのあまりに高度な内容に、ヤワなオタクども(私を含む)が凹んだためらしい。
まあ、それはともかく。
はじめてのコミケということもあり、今回はできるだけ全体像を見ることを考えていた。
カタログチェックもしてこなかったし、目当てのサークルの本も売り切れが目立ったりと、あまり本は買わず東館を出る。
その後、西館へと向かう連絡通路を進んだ。
ここで冒頭の人の海に戻る。
時速1キロくらいで遅々と進む行列の、企業ブースを挟んだその先には、コスプレ広場があるらしい。
ふと、行列が折り返すときに、その後方に目がいった。
その瞬間、私はこれから自分の向かうところがどういうところか、一発で理解した。
私のすぐ後ろには、肩幅の広い、胸板の発達した、たっくましい「まほろさん」がメイド服で立っていたのだ。
すね毛は剃っているようだったが、ヒゲのそりあとが青かった。
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2001.08.10 fri 〜 11 sat「ネモ船長」
四日目をホテルで過ごし、五日目にお世話になったのは、ネモ船長(HP:喫茶室「夕凪」)である。
日暮里から常磐線で土浦の方へ向かう。途中、待ち合わせの確認のために電話をかけた。
ネモ船長「わかりました。こっちもいま(※朝10時頃)仕事がおわったところなんで、時間をあわせて合流します」
ぷち、と携帯を切ってから、天を仰いで、なんとなく呟く。
「なんでこう「ヨコハマ買い出し紀行」を愛する人間というのは、むやみに忙しい
のだろう」
徹夜明けのネモ船長と合流し、宅にお邪魔した。
リビングでくつろいでいると「詩のボクシング」がちょうど放映されていたので、一緒に観る。
「詩のボクシング」とは全国から選抜された詩人が、一人3分で己の詩を朗読し、判定によって勝敗を決め、トーナメント形式で勝ち上がっていくイベントだ。
優れて面白い詩が、次々と出てくる。
人生の哀切を語る詩人、美しく純粋な感性のまま詩をそらんじる高校生、それぞれの視点、それぞれの紡ぐ言葉が、聞く者の詩魔を刺激する。
ちなみに「詩魔」というのは「詩情を刺激して作詩にふけらせる神秘的な力(広辞苑)」のことである。
個人的には「絵魔」というのもいて、この場合は絵描きにふけらせる神秘的な力だ。
「魔」の字がつくのは、これがたいがい「ほかにやるべきことがあるときに限ってでてくる」からである。そうでない場合の創作意欲発生は、一般に「天使が降りた」などという。
まあ、それはともかく。
こういうとき一番悔しいのが、刺激されているのに、それを形にするエネルギーが枯渇している自分をみることだ。
与えられるインスピレーションは、才能に寄るところが大きい。
だが、自分の精神世界に発生したおおまかな創造物を、削り磨き、他者にも理解できる形に再創造する作業自体は、才能というより、むしろ精神力である。
言葉を選び、探し、色を選び、探す。詩人と絵描きの仕事であり、至福の時だ。
だが、それに必要なエネルギーは、会社仕事で疲弊しているときには、おそろしく膨大なものに思える。
練りたい詩、描きたい絵が山ほどあるのに、その時間と精神力は仕事にとっておかなくてはいけないのだ。
これは悪質な責め苦である。
やがて、詩や絵の感性が、仕事で摩耗してしまうのではないか、という恐怖が出てくる。
気がつくと、若い頃はなんにでも感動できたセンスが涸れ果て、後年になって悔やむのではないか。
そんな予測まで立ってくる。
だが、私は思う。
苦労している人、仕事をやっている人でないと、佳い詩も絵も描けないのだと。
美しいだけの詩や絵は、若くても描ける。
だが、味のある作品は作り出せない。
辛酸を舐めて、死に勝る苦労の道を歩いた者にしか出せない味わいが、創作にはあるのだ。
ある漫画家が言っていた。
「結局、20才までに、何を見て、どういう人生を送ったかしか、我々は作品に反映できない」
いまの苦労は、かならず活きる。
どんな試練にあっても手放せないと信じた芸術を、自らの手で放り出さない限りは。
「詩のボクシング」観賞後、ヨコハマ買い出し紀行では、カマスの群舞が描かれた霞ヶ浦へ行く。
霞ヶ浦を、海へつながる河口かと思っていた私は、汽水湖だったことを聞いて驚いた。
その後、翌日の予習もかねて、はじめて「デ・ジ・キャラット 夏休みスペシャル」を見る。
最近のアニメは、実はあまり見ていなかったせいか
「しばらく見ない間に、放送事故みたいな番組が増えたな」
と思った。
たぶん口火を切ったのはマサルさんだろう。いや、両方とも好きなのだが。
一緒にビデオを観ながら、お疲れのところを、あちこち案内してくれたネモ船長を眺めて、ふと思う。
一方では失業者がたくさん出て、また一方では過労死者が出そうな労働環境というこの国の社会。
会社が生き残るため、という事情はよく分かる。だが、やはりこの偏りはおかしいと思えてしまう。
それを一番感じるのは、仕事上のミスが報じられたときだ。
「仕事のミス」というのは、システム上に問題があって起きるか、あるいは怠慢によって起こるもの、という考えが中心的だ。
そして、ミス=怠慢と斬って捨てる人は多い。
だが、昨今のミスの多くは、人件費削減による、人手不足と忙しさが原因であることが多いのだ。
寝る間を惜しんで、必死に働いている者のミスを、怠慢と片づけられてはたまらない。
仕事が大変そうなネモ船長が、心配である。
ちょっと前まで自分がそうだっただけに。
用意していただいた寝室には、小泉総理のポスターがなぜか貼ってあった。
それを見て、また少し考える。
今の会社組織は、人手不足の状況だが、しかしユーザーからの要望はドンドン高度になっていく。
さりとて人をふやせば人件費がかかる。それで会社が潰れては意味がない。
この矛盾。
景気がよくなれば、景気がよくなれば、と誰もが念仏のように唱えるのもよく分かる。
しかし、景気がよくなって無駄な消費が多くなれば、資源の無駄な浪費、処理できないほどのゴミの排出などの問題がある。天然資源を無限と仮定した上で、その破壊を土台とした発展に問題があることは、誰でも分かっている。
この矛盾。
矛盾ばかりのこの社会は、もうすでに壊れているのかもしれない。
構造改革と呼ばれる政策は、痛みを伴うものであるという。いわば破壊だ。
矛盾した社会を破壊するということは、あるいは建て直す、ということかもしれない。
いま私は、浪人の身である。
この社会に影響力のある位置になく、それ故に、矛盾を客観的に見られる。よく見ておこう。
そして、いずれ社会に復帰するときまでに、この矛盾した社会で、納得して生きる道と手段、そして覚悟を用意して置かなくては。
そう、前向きに思った。
ふと寝室の本棚の「電車でD」という「頭文字D」で「電車でGO!」を描いた同人誌が目に留まった。
「まあ、この1ヶ月間は、後ろ向きでもいいや」
人の家の本棚を漁って「複線ドリフト」に受けている自分がちょっと情けなかった。
翌日、茨城県本場の納豆を食べてから、ネモ船長のお宅を発つ。
今日はコミケット60の三日目。
後ろ向きに全力疾走している数十万人がひしめく人の海への漕ぎ出しだった。
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2001.08.09 thu「文月さん」
思いっきり遅刻しつつ、文月(ふづき)さん(HP:文月のらくがきにっき)との合流を果たした。
本日、旅行三日目にお世話になるのは、Kanonから、寝言日記、そしてチャットへと流れてきて最近知り合いになった文月さんである。
「いやいや、どうも初めまして」
「こちらこそ」
などと穏やかな挨拶で会話が始まるが、合流して行った先がいきなり「まんだらけ新宿店」である。
いま思えば、最初から濃い一日だった。
入り口に整然と並ぶ 1/1 フィギュアを横目にみながら階段を下りる。
さすがにこれは買えんなあ、と思いつつ進むと、ソフビのハカイダー(全長50センチほど)が突然視界に飛び込んできた。
「うっ 3万円か、買えるな・・・」
この葛藤の瞬間、天野の内部は分裂した。
黒天野「買いだ、買い!」
白天野「旅行の序盤に、こんな馬鹿でかい荷物買えるか! 軍資金もそんなに余裕ないぞ!」
黒天野「あっ 悟空道の、悟空!? しかも変身したやつが、6000円! これは買える!」
白天野「だからこんな大箱もって旅行できるか!」
文月さんは端から見ていただけだったが、たまに立ち止まって唸っている天野の内部ではそういう論戦が交わされていた。
いま思えば、この拮抗が崩れたのは、中古CDコーナーで「井上喜久子・瑠璃色アクアリウムスペシャル」の発見がきっかけだったと思う。
黒天野「うを!? これは・・・」
白天野「おお、プレスされているディスクで持っていない最後の一枚か!」
黒天野「あと欲しいのはハッピーレッスンと、群馬県高崎の倉渕ダムのビデオ(ナレーションが井上喜久子さん)くらいかな」
白天野「独立してからフットワーク軽くなったよなー」
黒天野「! こちらは同人誌の販売コーナー!?」
白天野「うわー、すごい量だな、こりゃ」
黒天野「こ、これは通販のみだった『電撃大玉』!? 単行本未収録の『あずまんが』が載ってる!」
白天野「お、村田蓮爾の画集があるな」
黒天野「Kanonのトリビュートに載ってた『笛』さんの同人誌!!」
白天野「CHOCOさんの『PIXY GARDEN』だ。ひえー、すごい装丁」
黒天野「こ、これはまさか『沖縄体液軍人会』・・・?」
白天野「Drモローもあるな・・・って、おいなんだその脇に抱えている本の数は!」
黒天野「『あしたのAIR』だって、観鈴ちんが真っ白に燃え尽きてる」
白天野「こんなうっすい本(一例:表紙込み24ページ)が、3000円もするんだぞ!? そんなに買ったら・・・」
黒天野「あ、この作家さんの全部買い」
白天野「ちょっと待てオイ!! 文月さん笑ってみてないで止めてくれーっっ!!!」
「合計38,430円になります」
白天野が行動権を復帰したとき、すでに目の前では、店員が4万円を数えていた。
呆然としている天野の横で、人懐っこい笑顔の文月さんがニコニコしながら言った。
「まだ序盤戦ですからね、さあ、次は秋葉原へ行きましょう」
「たすけてーっっ」「よっしゃーっっ」
白天野は悲鳴を上げた。黒天野は嬉々としてリュックを担ぎなおした。
そして、わずかに4時間後の午後3時半。
天野は、両手一杯の紙袋を持ったまま秋葉原の街を後にした。
ラオックスで購入したデジカメを含む出費は8万円を超えていた。
「ああ、時給701円で、死ぬような思いをして貯めた血銭(ちぜに)が・・・」
コミケでは手に入らないものばかりと分かってはいる。
だが、出費がなかなか納得できないでいる私を、文月さんが優しくカラオケに誘ってくれた。
ボックスに入るなり、二人でアニソンばかりを熱唱する。天野はややヤケクソ気味に「眼鏡の委員長」を歌いあげる。
部屋の温度が確実に上がっていく中、α波とはおよそ正反対の波動で「勇者王誕生!」やら「銀河鉄道999」やら「トムソーヤの冒険」「海のトリトン」などなど、一時間ほど歌いまくって、店を出た。天野はスッキリしていた。
文月氏「いやー、カラオケで『ウイングマン』のOP歌えたのは初めてですよ」
天 野「私も『ゲームセンターあらし』が分かってもらえた人は、初めてです」
そのまま「出っ歯が抜けたからって、実は乳歯でしたってオチは無いよなあ」などと語らいながら文月さんの家に向かった。
書くのが遅れたが、文月さんは、Kanon では美汐のファンである。最近では「ああっ女神さまっ」のスクルドもイイようだがやはり美汐である。
そんなわけで最初、ザナさん宅のような状態を思い浮かべたが、実際は、ごくまともな部屋だった。
パソコンの横に、ガシャポンで当てたのであろう、美汐のフィギュアが一個おいてあるだけで、本棚もゲームも普通のものしか置いていない。
あ、意外と普通の人なのかな・・・と思っていると、文月さんが、おもむろに椅子を運び出した。
その上に乗って、押入の上の段の戸を開ける。とたんに、部屋の様相が一変した。
ドンとばかりにテーブルに置かれた山のような同人誌。
その全てが美汐がらみである。
そして小箱の中からは、
同型の美汐のフィギュアが 何体も何体も何体も何体も出てくる。
「(↑)あそこに飾ってある美汐は、この全部(↓)の中から選んだ最高のパーツで構成されているんです」
得意気に解説をはじめる文月さんであった。
「この足の曲げ具合がいいんですよ〜♪」
と御満悦である。
サブキャラである美汐には、グッズの類が少ない。数は限られているが、それだけに小さな露出を追っていくのが大変なようだ。
ふと、押入上部の戸を見上げる。そして私は理解した。
その禁断っぽい扉には彼のこっちがわの全存在が詰まっていたのだ。
食事の後で、ソフマップで買ってきた「OVA・ONE 〜雨の章:茜・詩子〜」(ラミネートカード付き)を見る。
フライングで販売されていたDVDだ。原作のゲームが素晴らしい内容だっただけに、期待を込めて再生する。
33分後、満場一致で「これはONEではない」という結論に達した。
原作であるゲームとは、設定、ギャグ、台詞のクセ、そして性格まで一変している。絵も、特徴以外は意図的に似せないようにしているようだ。
これで「原作もの」と言えるのだろうか。
仮にONEでないとしても、内容がおかしい。引き込まれない物語、繰り返しばかりの進行、原画スタッフ6人という投げやりな製作環境、これでONEのファンが納得するだろうか。
背景に複雑な事情があるのは分かる。
タクティクスという会社で、現KEYスタッフが「ゲーム版のONE」を作った。
その後、そのスタッフがごっそり抜けてKEYが生まれ、KanonやAIRなどの大ヒットを飛ばしたのだ。
現在の「ONE」は、制作スタッフと会社が違っているのである。
「OVA・ONE」は、現KEYスタッフがONEに残した持ち味を嫌い、すべて払拭したような内容だった。
そうしなくてはいけない事情があったのだろうか。理解に苦しむ。意地の類であってほしくないところだ。
「もし道端に、ONEのDVDとそのラミカが落ちていたら、どっちを先に拾う?」
「ラミカ。DVDは鍋敷きか、コースターにする」
「2800円だから買ったようなものだな」
「内訳は、2500円がラミカで、300円がDVDな」
そんなことを話しつつ、連続して同じくソフマップで買った「劇場版・ああっ女神さまっ」のDVDを観る。
あまりのクオリティの違い、このホントに凄いデキに感動する。
絵だけをみても、およそあらゆるカットにおいて、ベルダンディの表情が美しく完璧に描かれている。その顔一枚からでも、制作スタッフのものすごい意気込みが伝わってきて、絵だけで震えが来るほどだ。
作画、演出のレベルは全体においても高く、パース付きで瞬時に展開される撃滅轟雷の巨大な魔法陣や、猫実水族館での天使の戦いなど、細かな技が光る。
舞台挨拶での合田監督の男泣きが、この作品にこめられた熱意を語っているようだった。
OVAのときも「女神さま」は素晴らしかったが、今回はおよそ最高のデキである。
内容も、何度も涙ぐむような感動的なものだし、特にラストは圧巻だった。
作中で歌われるラテン語の歌は、合唱をやっている文月さんには「わりとちゃんとしたラテン語です」とのこと。歌唱以外での発音がほとんど残されていないラテン語の世界など知る由もなかったが、井上喜久子さんを初めとする声優さんもちゃんと学習と修練を積んだ上での歌だったのだ。「発音が、カタカナっぽい」とラテン語も知らずに安易に思っていた自分が恥ずかしい。
映画本編の方も、三神の声それぞれの、演技の厚みが凄かった。
冬馬さんも久川さんも、こまかな演技まで、しかも長く演じてきた積み重ねが生きている。
それぞれが女神であることをとても大切にしていることが、なんら違和感のない「女神の実在感」をもって伝わってきた。
106分終わって、しみじみとエンディングを聴く。
「なんだ、この違いは・・・」
「ONEの方は、確かに破壊力はあった」
映画やビデオを観た後で、すぐに感想を言い合えるというのはイイものだ。
感受性が沸き立っているから、それをすぐに聴いてもらえるというのが嬉しい。
文月さんは、けっこう語れる人で、そのあと、KanonとAIRの話になる。
佳乃シナリオがミサイルだとすると、美凪は核ミサイルなみの感動で、もう、これだけでも完全に殺されたと思ってたけどAIR編は、これじゃ惑星破壊ミサイルだとか、眼鏡をかけた美汐の設定の話や、男の死に場所と女の死に場所の話、(以下少々Kanonのネタバレ)真琴シナリオはペットロスの悲しみであるという説、栞の回復はあゆがドナーになっての臓器移植によるのではないか、などなど、お互い疲れているのに、フラフラになるまで物語の感動や設定について語り合った。
東京まで来た甲斐はあった。
彼はネットで受ける印象より、ずっと豊かな男だったからだ。
翌日、同人誌のせいでかなり重くなったリュックを背負って、出発する。
日暮里のカプセルインで一泊し、その翌日はネモ船長と会う予定だ。
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2001.08.08 wed「柊
水緒さん」
二日目は 水緒(みお)さんの部屋に泊めてもらった。
たしか彼は、むかしの寝言日記がきっかけで夜想曲を知り、チャットで話すようになったのがはじまりだったと思う。光栄な話だ。
そして、いつのまにかKanonをクリアし、それどころかAIRの検証のために熊野から高野を散策したという人物でもある。
でも、もっとも太いつながりは、やはり「ヨコハマ買い出し紀行」だ。
彼の部屋は、室内でバイオリンが弾けるくらい、防音がしっかりしているため(時間帯と程度によるが)やや大きめの音量でも音楽が聴ける。
Secret Garden 、ADIEMUS 、Tony O'conner 、加古隆、ザバダックなど。
ヒーリングミュージックなどのインストゥルメンタルは少しかじった程度だったが、彼の持っているCDをいくつか聴かせてもらって、一気に世界が広がった感じがした。
ところで、彼はバイオリン弾きである。
私にとってバイオリンとは、弦の泣く音がモロに心の琴線をふるわす、弦と弓で奏でられる中でも最も憧れる楽器だ。
ただ、まともなものなら一番安くて70万円くらいが当然の世界で、大須のコメ兵で販売されている29800円のソレしか知らない人間には、かなり高嶺の花である。
70万である。わかりやすい通貨単位に変換すると、およそ、2333ガンプラ(1ガンプラ=300円)である。こんな単位を持ち出すあたりが、もうダメだ。
だから、水緒さんがバイオリンの弾き方を教えてくれたときは、本当に嬉しかった。
肩と顎でバイオリンを支えるところからはじめ、しばらく指導の後にようやく弓を握る。一生懸命教えてくれる水緒さんに感謝しつつ、弦を鳴らしてみた。
ずいこ―――――。
「・・・・う」
ずいこ――ぎ―――――。
「・・・・あの」
あまりバイオリンらしくない音がバイオリンから上がっている。
「あまのさん、ゲームでもやりましょうか」
気を使った水緒さんが、話題を変えていた。
彼のパソコンの中には、ファミコンのエミュレータがインストールされていた。
「ファミコン」である。30男は中高生の頃にはまった、あのマヨネーズ色とケチャップ色の名ゲーム機だ。
エミュレータで遊べるソフトは、さすがにファミコンバブルのせいか多数ある。最初は見慣れた「マリオブラザーズ」などで遊んでいたが、よく見ると、このエミュには、往年のクソゲーが異常に多く収録されていることに気がつく。
「『ファザナドゥ』って、いまだに遊び方がよくわからないな」
「おお、これはカノン・ヴァリスにも盗まれた『夢幻戦士ヴァリス』!」
「PC版は井戸の地下五階にいるクラーケンがものすげく強かったことと、ラストに出現する塔の謎がパソコンのカラー設定の順番で解けるという自力クリアはかなり無理そうなオチがまた魅力のわりに、次回作(ファイアー・クリスタル)はイマイチだった『ブラック・オニキス』がある・・・あ、これは『スーパーブラックオニキス』か」
「『第2次スーパーロボット大戦』・・・って第2次!?」
「ああ、懐かしい『ちゃっくんぽっぷ』に『ドアドア』!」
「それに歌まで歌える『ボコスカ・ウォーズ』がある!」
「すすめーすすめーものどーもー♪」「じゃまなーてきをーけーちらーせー♪」「おーれーごーすーたおすのだー♪」「すすめーすすめーものどーもー♪」「ああっせっかく育てた金色のナイトが・・・」「すすめーすすめーものどーもー♪」「じゃまなーてきをーけーちらーせー♪」「おーれーごーすーたおすのだー♪」「すすめーすすめーものどー(以下繰り返し)
現在19才の水緒さんがサッパリ分からないという顔で、古典ゲームで大喜びしているオヤジを見つめていた。
「いや、しかしスゴイな「バツ&テリー」「所さんのまもるもせめるも」「暴れん坊天狗」「アーガス」「スーパーアラビアン」「一揆」って、ええい、ここは聖学電脳研(※)かっ!」
※ 聖学電脳研
正式には「進め!! 聖学電脳研究部」
平野耕太がファミ通PSで連載していたゲームマンガ。なんというか「ノガミまでテクるぜ!?」という感じのマンガ。この本の所持はゲーマーのたしなみ。でもファミ通連載なのにゲーメストコミックで出版されたせいか、現在は出版社ごとブッ潰れて一般流通は無し。古本を探そう。
水緒さんも知っている長寿シリーズのソフトとしては、ファミコン版の「餓狼伝説」があったので彼にやってもらう。
彼はテリー・ボガードを操り、不知火舞との戦いだ。
何せファミコンである。
今のドリームキャストなどのレベルと比べると信じられないくらい粗いドットと色数で、それでも不知火舞が勝つと乳揺れするあたりにSNKのド根性を見た。それを眺めて大喜びしている私に、水緒さんが、一言。
「・・・負けなくちゃいけませんか」
よく分かっているなあ、と感心しているうちに、時間も遅くなってきた。
明日は、新宿で文月さんと待ち合わせである。
午前11時にアルタの前なので、移動時間を考えてそれなりに早く休まなくては行けない。
「じゃあ、最後に・・・」
と言って水緒さんが、あるサイトを教えてくれた。
半年ほど前から話題になっていたそうだが、不覚にも私はその存在を知らなかった。いまや知らぬ者とて無いバケモノサイトである。
知っている人はともかく、とりあえず、下記のリンク先を見てほしい。下段の方は、読み込みに時間がかかるので、先に両方開いておくことをすすめる。
ロボット技術の最先端
最先端ロボット技術・外伝
(みましたね?)
いや笑った笑った。
実は、これを元にした、同人ゲームがある。
私は水緒さんからそのCD−ROMを見せてもらって、それにもたちどころにハマってしまった。
そして、そのまま夜は更けていった。
だから、「先行者」のこの面白さと、同人ゲームの無駄に素晴らしいクオリティを考えれば、翌日の文月さんの待ち合わせに
思いっきり遅刻したのも無理はない
と言えるだろう。
そういうわけで、明日の日記は、遅刻した天野と文月さんとの、新宿・秋葉原めぐりである。
追記:遅刻の直接の原因は、出発直前の朝10:30まで「先行者」のゲームをやっていたから、という説も。 でも、クリアしたもん。
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2001.08.07 (2/2) tue「忙しい湖さん」
旅行の第一日目、最初の目的地は山梨県である。
今回は電車の旅だ。
以前の私にとって、電車に乗っている時間とは、ただ本を読んで過ごすだけの、つまらない時間だった。
だが、今日は、不思議と気分がいい。電車にゆられるのが、心地よいのだ。
つい「飯田線のバラード」を、飯田線でもない路線で、口ずさんでしまうほどである。
それにしても、この歌ほど、電車に乗っていて歌いたくなる歌は、他にあるまい。
電車の窓わくにもたれて、ずっと空を眺めつづける。
こんなに落ち着いた気分で、そしてその一方で、これほど踊る気持ちで空を見るのは、いつ以来だろう。
隣車線の電線ケーブルが併走する。大きな竜が、うねりながらついてくるように見えるのが、面白かった。
猛暑といわれたこの夏だが、このごろは幸い気温が低く、山梨についてみると、涼しかった。
電車を降りると、忙しい湖さん(HP:眠りの森 Project)が駅舎まで迎えに来てくれていた。
彼とは、ヨコハマ買い出し紀行や井上喜久子さんのファンとしてのつながりがきっかけで、ネット上ではたくさんの言葉を交わしながら、あまりの忙しさのため、お互いにどうしても距離をつめられなかった。
この出会いは、感慨もひとしおである。
彼は詩人である。精神の芯に詩魔を住まわせている。
彼は優しい男である。それゆえに、傷つくことが多い。
そして彼は、その持てる時間の大半を、仕事に奪われている。
彼の職業は書店員。
忙しい男であり、詩境も詩興もありながら、その精神を遊ばせることができないでいる。
そして、彼は、私がずっと以前から会いたかった人だった。
お宅にお邪魔し、お父さんお母さんに挨拶してから、遅い昼食に出る。
古い家屋を改造した料理屋で、床の間を飾るクマの剥製を眺めながら「国内で食肉可能な哺乳類(牛豚のぞく)を食べ歩きたい」とゆー無茶な夢を打ち明け、彼を困らせて遊んだ。「清水の方ではイルカの肉を食べることもあるそうですよ」と、これはこれでヤバい話題を忙しい湖さんが振ってくる。
この席で彼に聞いた話では「トドカレー」の話が面白かった。そのキャッチコピーは
「北海道に流氷とともにやってくるトドをカレーにしました!」だそうである。
そして「クマカレー」というのも同メーカーから発売されているそうだ。そのコピーもやはり
「北海道の雄大な大地に生息するヒグマをカレーにしました!」である。
「しました!」とゆーライトな感覚がちょっと恐い。
何の肉でもカレーに入れてしまうのは日本人の民族性だろうか。
このメーカーの手に掛かれば、ウルトラマンの肉くらい、平気でカレーにしてしまいそうである。
赤色と銀色の皮がついた肉が煮込まれているのを想像しているうちに、注文した鍋が運ばれてきた。
飽飩(ほうとん)という食べ物である。うどんか、太いきしめんのようで、鍋に煮込まれたまま配膳されてくる。味が染みていて美味い。
一人一鍋をいただき、天野は馬刺も食べた。満腹である。
帰ってしばらくの間くつろいでいると、すぐ夕食に呼ばれた。
鰻重と寿司である。両方で一人分のようだった。
鍋一杯たべた後だったため、正直きつかったが、御両親のお話がおもしろいし、料理も美味いので食は進む。
「ほれ、いっぱい食べなさい。若いんだから」
お父さんが、ウナギと戦っている私に、しきりに寿司をすすめてくる。
「ありがとうございます。いただきます」
山のように積まれたトロをひとつ取って食べる。
「ほれ、いっぱい食べなさい。若いんだから」
「あの、そろそろおなかも膨れてきましたので」
「ほれ、いっぱい食べなさい。若いんだから」
「いや、あの、もう腹一杯っていうか実はすでに喉一杯で、これ以上いくと、耳からトロがもれそうなんですけど・・・」
「ほれ、いっぱい食べなさい。若いんだから」
我々は、適当な言い訳をして、逃げるように家を出た。
その足で、花火大会を見物に行った。山梨では有名な大会である。
見事な大玉や、ミッキーマウスの形の花火、そして江戸時代の火薬を再現したという、じつに渋い花火もあり、とてもよかった。
「花火というのは、なんだか切ないですね」と感慨深く話しつつ、忙しい湖さんと帰途についた。
家に帰ってみると、食卓の上では献立の交代が完了しており、お中元用の箱に一杯詰め込まれたさつま揚げと、何段にも積まれた箱入りのケーキが山盛りで用意されていた。盛りの山が高くて、そのむこうにあるお母さんの温厚な笑顔が見えない。
「ほれ、いっぱい食べなさい。若いんだから」
「ありがとうございます。いただきます」
すすめられるままに、さつま揚げとケーキという不思議な組み合わせの夜食をいただく。
「ほれ、いっぱい食べなさい。若いんだから」
「このさつま揚げ、おいしいですねー」
子供が久しぶりに帰ってきたことが嬉しいのだろう。御両親の、このもてなしぶりは、ちょっと凄かった。
「ほれ、いっぱい食べなさい。若いんだから」
「ええと、すみません、なんか耳がキーンてしてきて、そろそろ毛穴から生クリームが吹き出しそうなんですけど・・・」
「ほれ、いっぱい食べなさい。若いんだから」
我々は、適当な言い訳をして、逃げるように二階へ向かった。
どうにか、忙しい湖さんとゆっくり話す時間を取る。
同僚ともなかなかできない仕事の不満話や、彼のサイトのこと、夜想曲の感想なども交えて、いろいろと、直に言い合う。
とめどもなく続く、二年間の感慨を埋める会話。そのなかで、ふと思うことがあった。
彼が仕事で苦しんでいること、辛い思いを抱えていることが、まれに彼の文章から伝わってくることがある。
彼は大丈夫だろうか。そう何度も思う。
彼の辛苦自体は、私にはどうすることもできないが、せめて「心配している」ということを伝えたかった。
それは「心配です」とメールで送ればいいことなのかもしれない。
だが、私は、直接伝えたかったのだ。
ここまで来たのは、そのためだ。
日記を読んでもらうこと、メールで意志をつたえること、さらに電話で話すこと、居ながらにしてできる様々な伝達手段がある。
これらに対して「会いに行く」というのは、手間も時間も経費も、桁違いにかかるといえるだろう。
だが、大切な想いは、直接会って伝えなくてはいけない。
そして、直接合うほど、想いを伝えられる手段はないのだ。
直接でなければ、伝わらないことは、確かにあるのだ。
その夜の終わり頃、彼は、心配してくれる人がいると分かっただけでも、嬉しいと話してくれた。
私は、そのことを伝えられただけで、こちらが救われたような気がしていた。
明けて翌日。
彼と会えたことに心から感謝し、山梨の駅で、私は忙しい湖さんと別れた。
苦労している人は、心の土が耕されている。
だからタネさえ落ちれば、深い根をもった強い花が咲く。
苦労して、その大地はドロドロのボロボロになってしまうかも知れない。
だが、美しい花は、泥水をすすって咲くのだ。
あとはただ、自分でその土を踏み固めてしまわないように、気をつけよう。
彼も、私も。
そして、種をまこう。
あずさ12号で山梨を発つ。余韻を残したまま、懐かしの渋谷駅で水緒さんと合流した。今夜は彼の部屋のお世話になる。
「まずは腹ごしらえしますか」
そういう彼に引かれて、永福町のラーメン屋へ入った。
出されたラーメンはドンブリの大きさが尋常ではなかった。
よくいう洗面器サイズ、というより、どちらかというと洗面台サイズだった。
飽飩と馬とウナギと寿司とさつま揚げとケーキが、腹の奥の方で静かに存在感を出していた。
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2001.08.07 (1/2) tue「出発のオフ会ジプシー」
書店の現場から退いた7/20。そこから8/20までの1ヶ月間は、溜まりに溜まった有給休暇の消化期間である。
「いまなら、まだ何か事件を起こしても「無職」じゃなくて「会社員」で報道されるんだよなあ」
などと考えながら、この間の予定を練る。
「・・・せっかくだから、何かやっとくか」
8/7からの10日間、天野は旅に出た。
会社勤めの間、どうしても都合がつかず、ネットでしか会えなかっ友人たちの顔を見るためである。
今回は、関東地方の友人に会う旅行で、予定は以下のとおりである。
8/07:忙しい湖さん(山梨県)と会う。そのまま宿泊。
8/08:水緒さん(東京)と会う。そのまま宿泊。
8/09:文月さん(東京)と会う。そのまま宿泊。
8/10:身辺の整理のため、日暮里のカプセルホテルに宿泊。
8/11:ネモ船長(筑波)と会う。そのまま宿泊。
8/12:アムゥさんとコミケに行く。その後、m&nさん(東京)と会う。そのまま宿泊。
8/13:「ヨコハマ買い出し紀行」の聖地、横浜へ行く。ヨコハマオフ会と合流し、そのまま車中泊。
8/14:ヨコハマオフ会の後、KAZZさん宅(埼玉)へ。そのまま宿泊。
8/15:再び文月さん(東京)と会う。そのまま宿泊。
8/16:今回唯一のハーメルン関係者、薄荷さんと会う。その後、岐阜へ帰る。
見ているだけで息切れしてくるようなスケジュールである。
この旅行の内容を、明日から徐々に書いていこうと思う。
シリーズタイトル
「会ったこともないような友人(全員が激しき偏愛のカタマリ)を頼りに、東京を泊まり歩き、年に五日しか働かないダメ人間どもが無税で荒稼ぎするエロスと混沌の祭りを経て、はじめてたどりついた聖地で待っていたものは何故かAIRの座談会オフ会リポート」
ふつう二ヶ月で一冊を消費する日記メモ(40枚綴り)を、十日間で、二冊まるまる使いツブした、通常の12倍濃度の日記である。
したがって、できるだけ「あっさり」とした風味で書いていきたいと思う。
ご期待ください。
参考資料:出発時のありさま
身長:174センチ
体重:95キロ(まずいな)
スリーサイズ:上から順に、110・100・110(これもちょっと)
装備:ボブルビーのシェルリュックと腕時計
(内容:着替え・携帯電話・日記用メモ帳・スケジュールや旅行経路を書いたノート・財布・健康保険証・文庫本)
黒い目線は、警察で一泊できるくらい、目つきがヤバかったため。
うわー・・・。不審・・・。
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