2000.11.29
wed 〜 2000.11.30 thu
ハードディスクレコーディングへの道・番外編 「きれいな手」
前二回の日記をまとめると、こうなる。
ビデオ |
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Performa5440 |
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ピンジャック |
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ピンジャック |
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G4 |
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CD−R |
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MP3プレーヤー |
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愛車パルサー |
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イーサカード |
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LAN |
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スピーカー |
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残るは、MP3プレイヤーを車のスピーカーにつなげることだ。
先日マンデリンさんと会う機会があったので、この接続などにつきあってもらった。
岐阜のオートバックスで、以下のアイテムを購入する。
カセットテープ型のスピーカーアダプター
(カセットデッキに挿入し、MP3プレイヤーの音声をスピーカーに流すためのアタッチメント)
シガーライターから電源をとるアダプター
「もし規格が合わなかったら、返品していただいて結構ですので」
というオートバックスさんの言質を頼りに、店の駐車場で早速つないでみる。
電源の方は、規格違いで一度返品したが、適合するものと交換できた。
「じゃあ、カセットの方を」
アダプターをガチャコとセットする。
しかし、上手く動かない。考えてみればカセットデッキはかなり調子が悪く、またカセットテープというメディア自体を利用しなくなっていたので、ここ一年ほど全く使っていなかった。デッキは壊れていたのだ。
「ああ、ダメですね。とりあえず出しましょう」
マンデリンさんが、カセットの取り出しボタンを押す。
だが、反応が無い。
「あれ?」
かこかことイジェクトボタンを押すが、カセットデッキは完全に沈黙している。
さっきまで「返品可能」という言葉に安心しきっていた二人の男が2秒ほど脳死した。
「えっ? ええっっ!?」
こういうとき立ち直りの早いのは、やはり車慣れしている方らしい。
いくつかの操作を試したが、どうやっても取り出せないので、カセットデッキごと摘出することになった。車に常備しているらしいラジコン用の道具で、内装の分解にかかるマンデリンさん(職業:車の整備士)である。
そしてそれを途方に暮れながら見ている天野(書店店長)である。
いくらオートバックスが良心的でも、たとえば粉々になった商品は返金してくれまいなあ。などと天野の不注意で起こしたトラブルなのに物騒な解決方法を思案しながら、無傷で奪還しようと奮闘するマンデリンさんを手伝う。
マンデリンさんの手は、かっこいい。
テキパキとオーディオ周りのカバーを外していく様子を見ながら、そう思った。
彼の手は、よく見るとオイルが染みついている。毎日のように車をいじっている手だ。その手が車内の一切を傷つけることなく、みごとにテープデッキを外していく。車への理解が少ないからか、自分にはそれが、とても格好良く見えた。
「ああっ女神さまっ」の森里螢一の手も、オイルが染みついている。彼の手を「こりゃあ、毎日いじってるな」と評したセリフを思い出した。
「とれました」
ニコニコしながら、マンデリンさんはものの数分(だったと思う)で、件の商品を取り戻す。いやな顔一つしない彼のところに、なぜ女神が降りてこないのか、不思議なくらいだった。
カセットデッキを介することはあきらめた。
今度は、車載のラジオに電波を飛ばして音声を出すアイテムを、先のアダプターの返金で買う。
MP3プレイヤー |
−−− |
発信器 |
〜〜〜〜〜 |
ラジオ |
−−− |
スピーカー |
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(↑電波) |
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こういう感じだ。
ラジオの周波数と、発信器の周波数を合わせて音声を送る仕組みなので、
「ちかくの車が傍受することもありますから、あまり変なものは聴かない方がいいですよ」
とマンデリンさんが忠告してくれる。
むしろ聴かせたいくらいですから好都合です。
と内心で思っていると、それを察してか、マンデリンさんが笑った。
私も笑った。
数日後。
「取り扱い説明書〜♪ (中略)ページ開くだ〜けで〜、こころがとーじ〜る〜♪」
井上喜久子さんの変な歌が、愛車から電波に乗っていた。
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2000.11.26 holy 〜 2000.11.28
tue
ハードディスクレコーディングへの道・後編 「物欲地獄」
前回のあらすじ:車の中で、好きな歌を思い切り歌うために、苦労して環境を整えたが、肝心のCDプレイヤーがシャカった。いまさら北朝鮮の陰謀だろうか。
現在、車の中に残るオーディオ設備は、ハングル放送だけは良く拾う音質の悪いラジオと、自分の喉だけである。
運転中、何度も未練がましく、CDプレイヤーのイジェクトと再生を繰り返してみたが「ツツツ・・・」と音が飛ぶばかりで、満足に聴けたものではない。
「チョコレートで、できた富士山(ツツ・・・)毎日たべるの(ツツツ)幸せをか〜みし〜めるの〜」
「井上喜久子さんは怪獣かああーっっ!!」
歌詞が飛んで、ただでさえ謎な歌が、完全に正体不明である。
とにかく、早急に環境を整備しなくてはなるまい。私は、焦燥にかられ、車を飛ばした。
当初、車載のCDプレイヤーでCD−Rを聴こうと思っていたが、
一枚のCD−Rに録音できる量は、普通のCD一枚分でしかない。
たぶん72分程度だ。
所持している100枚近いCDの中から、たとえ、オリジナルのベスト盤を編集しても、結局かなりの枚数になるだろう。
だが、MP3ならどうか。
MP3とは、通常のCDなどで使われている、AIFF形式のファイルを、音質の劣化もほとんどなく十分の一程度の容量に圧縮する音声データの形式のことである。(・・・と思う)
「しかしMP3をCD−Rに焼いても、普通のCDプレイヤーでは聴けないしなあ」
と思っていたら、それを読むことの出来るMP3プレイヤーがあった!
MP3再生可能ポータブルCDプレイヤー / マンボX
MP3形式なら、一枚のCDに相当な曲が入る。一曲4MBとして、630MBのCD−Rになら157曲入る計算だ。
つまりこのMP3/CDプレイヤーは、157曲入りのCDを再生できるハードなのである。
「こ、これを車に積もう!」
決意すると早い。「これください」と駄菓子でも買うように購入。29000円と、意外に安かった。
となると、やはりCD−Rは必要だ。
ADTEC社製
マック・ウインドウズ両方に対応・USB接続
(上記のマンボXはウインドウズ用だが、ハイブリッド設定で焼けばマックで焼いても大丈夫)
御存知、CDを焼く機械である。30000円ほどで購入した。
さあ、良いものが買えたし、今日は帰るかと思った矢先に奇妙なものを見た。
真ん中のがサブウーファー。
Sound Sricks という。
これである。
パソコン用のスピーカーだ。
デザインが宇宙っぽくて(またかオイ)気に入ったので、つい買ってしまった。
実は、それまでのスピーカー環境は、G4本体についているオマケみたいなスピーカーしかなかったのだ。
正面中央・直径三センチ。
机の隅からいじけたような音楽が漂う感じがする。
CD−Rだけのつもりだったが、たくさん買い込んで帰る。
でもこの買い物で、望んでいた環境は、ほとんど揃った。
今回の、一連の環境整備のおかげで、私のパソコン環境は一変した。
お粗末なものだがハードディスクレコーディングが出来るようになったし、パフォーマとG4をネットワークでつなげることが出来たので、フロッピーもMOもCD−RもZIPも使えるようになった。スピーカーのおかげで、自宅の音楽環境も格段に良くなったし、ビデオやカセットデッキからの録音をきっかけとして、長らく構築者のわたしですら把握できていなかった各種配線を整理することもできた。
帰りの車中、これからどんなCDを作ろうか考えた。
最初に作るCDは、実はもう決まっている。
オリジナル編集盤の「ぼくらのベストだ、おねえちゃん!」だ。
いや、もう、とうぜんである。
このために、いろいろ集めたと言っても、いいだろう。
昨夏に出た、井上喜久子さんの、いわば公式ベストアルバム「ぼくらのベストだ、おねえちゃん!」は、最近ファンになった人から、この道10年のベテランさんまで、幅広く満足いただけるアルバムとして発売されたが、選に漏れた何でもない曲が好きだったりする自分としては、やはりオリジナル編集盤を作りたかったのだ。
現在までの出費・94200円(税別)も、このための必要経費と思えば、ぜんぜん惜しくなく、むしろ安くすんだと思っている自分は、もうダメかもしれない。
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2000.11.23 thu 〜 2000.11.25
sat
ハードディスクレコーディングへの道・前編 「復活の日」
私は、家で音楽を聴く習慣があまりない。ほとんどが運転中に車載のCDプレイヤーで聴く。
もう十分御存知のことと思うが、私は歌が好きである。しかも聴く以上に、歌うのが好きだ。
最近では、歌うついでに運転している、といった趣すらある。
歌う曲を選ぶとき、そのCDを持っていれば、問題はない。
だが、ビデオの音声(映画やアニメの主題歌など)やカセットテープでしか所有していない曲で、ぜひ声の限りに歌いたい曲などがある場合は、どうしたら良いだろう。
カセットに編集していたこともあったが、愛車純正のカセットデッキは一昨年に壊れた。
だが、CDプレイヤーの方は、調子は悪いが使える。一時は完全に壊れたかと思ったが、最近は持ち直しているのだ。
ならば、CD−Rに歌いたい曲を編集して焼けば良いのではないか。
そんな思いつきが、今回のやたらドタバタしたパソコン環境激変の出発だった。
録音準備
まず、取り組んだのが、カセットやビデオからの録音だ。
すっかり忘れられていた愛機・Performa5440には、LANのコネクターはないくせに、ピンコードのコネクターがあり、ここから、音声も映像も、録ることが出来る。意外に優れモノである。
ネットからダウンロードできる「Quick Recorder 1.0」など、外部からアナログ録音し、データ化できるソフトを使えば、AIFFファイルとして保存することも可能である。
さらに録音内容は「YAMAHA
Wave Editer TWEv2.00 for Macintosh」で編集もできる。どちらも無料のフリーウエアだが、とても良いソフトだ。
ソフトのダウンロードが完了し、喜び勇んで録音の用意をした。
ちょうどそのときビデオで観ていた「サンダ対ガイラ」で、パラボラマニア支持率ナンバーワンの光線兵器・メーサー車に攻撃されて、逃げまどうガイラの叫びを録音してみようと思う。
「キシャーッ」という叫び声がよく擬音語で使われるが、原点はこれだろうな、と考えながら、とりあえず「キシャーッ」を録った。
「キシャーッ」
(「フランケンシュタインの怪物 サンダ対ガイラ」より・MP3)
成功である。
Soundというファイルが発生し、Quicktimeで再生すると、ガイラの「キシャーッ」という悲痛な叫びが聞こえる。
これができるとなれば、当然ライブビデオなどのCD化も出来るはずだし、カセットやあるいはゲーム機の音声でも、音声データに出来るわけだ。
ためしにこんなのも作った。
イハドゥルカ
「エルツヴァーユ」より・MP3
アナベル・ガトー
「0083 〜 .スターダストメモリー」より・MP3
ファイルが出来てゆくのを見ながら、改めて
「ハードディスクレコーディング」
という言葉の、マニアな響きに陶然とする。
余談だが、ハードディスクレコーディングの目的は、カセットやビデオなど音質の劣化が予想されるメディアから、音声をファイル化しておこうと思ったことでもあった。これは「LPをCD化!」のホームページから影響された。
録音トラブル
そんな調子で、テストは完了した。
早速、「車の中で歌う」用に、ライブビデオ「スーパーロボットスピリッツ・ライブツアー」を録音してみる。
これは、水木一郎や、影山ヒロノブ、MIO、堀江美都子、ささきいさおらが出演して、アニソンやら特ソンを歌いまくるライブのビデオなのだが、実に「歌いたい人向き」なビデオなのである。
テープを巻き戻し再生。タイミングを見て、Quick Recorder 1.0 の録音ボタンを押(クリック)した。
録音後60秒で、いきなりフリーズする。
パフォーマが一分の録音に耐えられなかったのだ。
「・・・録音限界一分?」
エジソンが100年前に作った蓄音機以下である。
一分しかできないハードディスクレコーディング。
これでは「たまごのうた(井上喜久子さんの名曲)」すら録れない。
私は途方に暮れた。
あちこちのハードディスクレコーディングのサイトを見ると、たしかに、ハードディスクへの負担が大きいとは書いてある。
半ばあきらめて風呂に逃避しているとき、不意に思いついた。
ネットワーク構築
HDへの負担が大きいなら、余裕のあるG4へファイルを保存すればいいのだ。LANで、G4とパフォーマを接続できれば、これは可能である。
だが、以前にも書いたとおり、パフォーマにはLAN用のコネクターが設計されていない。
しかし、ネットで検索してみると、パフォーマでハードディスクレコーディングをしようという無茶な人は、けっこういたのだ。
それらサイトで、パフォーマ用イーサカードの存在を知り、即、購入を決意する。
そのカードを取り付けることで、イーサケーブル(俗に言うLANケーブル)が使えるようになるのだ。これでG4とのネットワークが可能になる。
検索の末、選んだパーツ屋は、北海道にあった。
買いに行く暇もないので、これは、はじめてのネット通販に挑戦した。
とにかく一番信用できそうな店を選んだつもりだ。ここ「きゅ〜びっく」は、私が7500円のカードを注文しようとメールを出したところ「PCIスロットが空いているのでしたら、こちらの4400円の方がお安いですよ」と教えてくれた素晴らしい店で、立地条件度外視で、一発で好きになった。
入金後、ほどなくしてイーサカード(4400円)が届く。手配も早い。
PCIスロットが空いていたので、そこに差し込み、設定を施した。
これで二台のPC間に、ようやくまともなネットワークが構築できた。
それにしても、久しぶりに使うと、パフォーマの遅さに驚く。すっかりG4に慣れ、もうG4でなくてはダメなカラダになってしまったのを感じた。
ダブルマジンガー
G4とパフォーマの接続、そして再起動。両機はお互いのハードディスクを、ちゃんと認識しており、データのやりとりも可能になった。
感動的である。
一時期はもう、愛着があって手放せないのに、使い物にならないと思っていたマックが活躍できるのが何より嬉しい。
マジンガーZとグレートマジンガーが協力して暗黒大将軍と戦っているのを見るような喜びである。
(30代以下にはわからんネタだなあ)
だが、それ以上に、データのやりとりをメールでやっていた空しさからの解放が心地よかった。
直線距離で2メートルも離れていないところに設置してあるのに、わざわざプロバイダまで電話をかけて、限界まで圧縮したファイルを長時間かけて送信する馬鹿馬鹿しさからの解放だったのである。
それはともかく、このネットワーク構築により、パフォーマは、プリンタサーバーおよび録音マシーンとして復活することができ、さらに、十分な時間のハードディスクレコーディングが可能となったのである。
先の「スーパーロボットスピリッツ・ライブツアー」は、正味100分以上あるのだが、現在の環境で楽々録音できた。
容量的にも、最大1.99GBまで録れることを確認している。
もう問題はない。
次は、マックの中に蓄えた音声データの出力方法だ。
これにはCD−Rを使おう。
マック上で編集した曲を焼き、車内でおもうさま歌うのだ。
ああ、いままでアカペラでしか歌えなかった歌が、存分に歌えるようになるなあ。
希望の未来を思い描きつつ、いざCD−Rを買いに出発しよう。
愛車のエンジンをかけ、井上喜久子さんのセカンドアルバム「ただいま」のCDをセットする。
まさに、その瞬間だった。
車載のCDプレイヤーが壊れたのは。
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2000.11.21 tue 〜 2000.11.22
wed : 私信です。
親愛なる友へ
君の苦しみが、わかるとは言わない。そも、おこがましくて、そんなことは言えない。
だが、君を少しでも助けたいと思う。
遠くにいて、実体では何もしてあげられないが、せめて、私の一番大切なものを送る。
心を休ませるのに、この贈り物は、きっと役に立つと思う。
君は気にするかもしれない。
だが、私は、何の気負いもなしに、実に自然に、これを送ろうと思った。
一番大切なものを、もらって欲しいと思った。
そう思える友がいることが、嬉しいんだ。
どうか、うけとって欲しい。
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2000.11.19 holy 〜 2000.11.20
mon
コミックを買うお客様で、とても神経質に美本を選んで購入される方がいる。
その方たちは、破損、キズ、折れ、わずかな印刷の気泡などをチェックし、ちりも留めぬ状態の本を、かなりの時間を費やして厳選し、購入される。
先日みたお客様は、おそらく最上の美本を求めていたのだろう。20冊くらい積まれた新刊の、真ん中あたりを掴んで抜こうとした途端、てもとが狂ったのか不器用なのか覚悟がなかったのか、全部の本を床にぶちまけてしまったことがあった。
新品のツルツルした本が、掃除してあるとはいえ土足で往来する床に、ドサドサと音を立てながら叩きつけられ、こすりつけられ、折れ曲がる。
一部始終を見ていた私は、本を戻すために駆け寄った。
そのお客様と共同で、落とした本のほこりを払い、山を戻した。
そして、一瞬の沈黙。
お客様は、結局、本を買わずにその場を去った。
「おきゃくさま・・・」
至高の美本を求める者としては、一度でも地面に落ちたような本に用はないのだろう。
たとえ、それが自らたたき落としてキズモノにした本であったとしても。
「おきゃくさまーっっ!!」
私はなんとなく、心で叫んだ。
前置きが長くなったが、私個人としては、あまり本の状態にはこだわらない。
もちろん、書店員としては、店頭の書籍は大切にしているつもりだし、借りた本は手を洗ってから丁寧によむ。
だが、私物としての書籍は、扱いが雑で、風呂にも持ち込むし、ベッドで寝転んで読むし、そのベッドがまた日当たりが良いものだから、しばらく置いておくと、うっすら褪色したりする。カバー絵が気に入っていると、ちょっと悲しいが、基本的に「書籍は読んで楽しむことが目的」としているので、それほどショックではない。
高校の頃に出会い、愛読した笹本祐一の「妖精作戦」シリーズなどは、実際かなり楽しんで読んだ本で、最終的には、手汗で背表紙が溶けるまで読んでボロボロにしてしまった。
この作品は、当時ほんとうに読んでいて楽しく、その面白さも切なさも、すべて味わい尽くそうと思って読み込んだ。
本は酷い状態になってしまったが、私は、この本を十分に楽しめたし、その状態の本に、愛さえ感じる。
これが自分の読書である。
内容を楽しむことが全てで、状態にはこだわらない。
美本を所有することは、読書家としての夢であるというが、私はその気持ちを疑問に思う。
真に「得る」とは、「所有すること」ではない。
読書を楽しんでいるとき、私は、本の状態を気にして、意識を割きたくないと、素直に思う。
そうして、もっとも心地よい状態で本を読みたいと思う。
その本を、心の中に得るために。
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2000.11.17 fri 〜 2000.11.18
sat
いま生きていない人が、どういう人であったか。
それは、その人の残した作品から分かる。
それが絵画であっても、音楽であっても、物語であっても、同じだ。
作品には、その人の考え方、価値観が込められているからである。
作品は、作者の価値観を雄弁に語る。
後世に残れば、その作品を愛する人の心を代弁するものとなる。
また、そういった作品は、観賞者に大きな影響を与える。
従って、「私はこの作品が好きだ」という言葉は
「この作品には、私の言いたいこと、好きなこと、求めているものが書かれている」
という意味だけでなく
「私は、この作品から影響を受けて、今の自分になった」
という意味も含まれている、と言えるだろう。
それだけに、何かを薦められたとき、私は、その人の人柄を考えてしまう。
「この本は面白かったよ。読んでみたらいいよ。」
という言葉を聞くとき、それが、心のどこかで軽蔑している人のすすめる本だと、読む気がしないものなのだ。
「ああ、この本を読むと、こんな風になっちゃうんだな」
こう思う。
この判断は、その作品自体には関係がない。推薦者が、読者をつまづかせているのだ。
だから、コミックの売場において、
「何か面白いマンガは、ありませんか」
と問われることを、私はとても誇りにしている。
人が本を語り、本が人を語る。
本は面白い。
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2000.11.15 wed 〜 2000.11.16
thu いちおうKanon日記
いまは小説版を読みすすめている、Kanonのことである。
Kanonをプレイする前につまずく人は、たいてい絵で引いてしまうと言う。
慣れればカワイイのだが、目のでかさなどで、驚くのだろう。
このページの画像の一部は、ソフトハウス『Key』の作品の素材を使用しています。これらの素材を他へ転載することを禁止します。
確かにKanonのキャラは目が大きい。
ツリ目の舞ですら、目のパーツの下端は、鼻よりも下にある。
名雪や、笑顔の時の佐祐理さんなど、見える部分から眼球の大きさを想定すると、ゆうに野球のボールくらいはありそうだ。眼窩に握り拳が入りそう、と書けばその大きさも実感できるだろうし、コンタクトレンズなど作ろうものなら、煮沸消毒には鍋を使用しなくてはならないだろう。そして
頭蓋骨の形状は、もう恐ろしくて想像できない。
だが一方で、真琴シナリオのバッドエンドで検査入院する件(くだり)があるが、その際のCTスキャン写真を、恐いモノ見たさで拝見したい気もする。きっと物凄いものが写っているに違いない。
そんなことを考えながら、真琴シナリオの小説を読んでいる。
ふと、もしかして、Kanonのキャラに記憶喪失が多いのは、
巨大な眼球に圧迫されて、脳障害を起こしている
だけなのではないか・・・という説を考えついた。
すると、真琴の記憶喪失も、舞の力も、栞の病も、名雪の寝汚なさも、眼球の圧迫による脳障害かもしれない。
彼女らの目玉がもう少し小さければ、悲劇は起きなかったかもしれないな・・・。
真琴シナリオがまだ悲しくなる前、例によって風呂で読書しながら、そんなことを考えた。
こんなことをズラズラ書いてKanonのファンに何か言われまいかと、やや心配である。
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2000.11.11 sat 〜 2000.11.14
tue
Kanon とAir ( kanonのメーカー「Key」の最新作) をやるためだけに、Virtual PC を買ってしまった。
自分を馬鹿と呼称することを承認する。
バーチャルPCとは、マック上でウインドウズ環境を実現することのできるエミュレーションソフトだ。
パソコンを初めて買う人がよくもつ疑問に「マックとウインドウズ、どっちを買ったらいいだろう」というのがある。
これに類似する疑問で「バックアップ用には、CD-Rか、MO か」などというのもある。
だが、これに対する答えは、実は一つしかない。
「両方買え!」 である。
だが、そうもいかないので、エミュレーションソフトを買った。
ウインドウズも使えるマックというのは、シャア専用ガンダム(実在)のよーな矛盾した存在な気がするので、ホントは良くないのだが。
まあ、それはともかくバーチャルPCだ。
これをインストールして起動すると、ハードディスク上にDOS環境が新設されるので、その後で、Windows95
/ 98 / 2000 などがインストールできる。
とりあえず、Windows95 を入れる。これは呉服屋のパソコンに付属していたものだ。
だが、これがなぜかセットアップできない。 E:¥>setup とやるが、ダメ。でもマニュアルによると間違いないはず。
やむを得ず、何から何までお世話になりっぱなしのマンデリンさんに助けを求めて電話する。
だが、午後九時に電話したとき、氏は、もう寝てらっしゃった。Kanonの名雪のよーな生活かと思ったが、おそらく仕事でお疲れなのだろう。申し訳なく思いながら事情を話す。
寝起きなのに落ち着いて聞いてくれたマンデリンさんの指示で、DIR/P というコマンドを入力、インストール用ディスクの内容を見る。
「そこに setup っていう項目は、ないですか?」
「ありません」
どうやら呉服屋のパソコンに Windows 95 はあらかじめインストールされており、兄から「これやで」と渡された「W95JPN_COMP」はインストールディスクではないらしい。なるほど、インストールできないわけだ。
「わかりました。ええ、すみません。ありがとうございました」
丁寧にお礼を言って、電話を切る。
ひとしきりビルゲイツを呪ってから、Air のディスクを手に取り、しみじみと見つめた。
「罰が当たったのかなあ。入手方法がアレだったからなあ。」
今日中にオープニングだけでも見ておこうと思ったが、無理だった。ちょっとだけ反省である。
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2000.11.09 thu 〜 2000.11.10
fri
これなど、もうどうやっても新明解的「読書」の定義にはあてはまるまいが、風呂で本を読む、という趣味を持っている。
吉沢深雪の「バスルーム」という、お風呂の楽しみ方の本がきっかけだった。
まず、湯船のふたを半分ほど閉めて、その上に肘をのせる。
本は濡れないようにタオルで保護して持ち込み。手に着いた湯を拭くタオルも用意するので、体を洗うタオルを含めると三本用意する。でも最近は慣れたので二本で十分だ。わかってくださいよ。(難しいギャグ・・・かも)
風呂で読む本は、文庫や漫画が良い。できれば内容を一度読んだものなど、軽く読めるものが、好ましい。
以前「沈黙の艦隊」を、風呂に持ち込んで初めて読んだとき、あまりの面白さに二時間ほど拘束され、シーウルフと戦うときには足の爪がふやけだし、サミットがはじまる頃には意識が混濁した。本はとても面白かったが、大変な目にあった。
本がダメになるのでは? と心配している人もいる。微細な染みも許せぬ人には、もちろんすすめられないが、それほど深刻なダメージはない。
実際、聞いてみると、けっこう風呂で読んでる人は多いようだ。
風呂で読書(・・・いや、ええい、これで行くか。)は良い。
冬場などでも、かなり汗をかくので体に良さそうだし、半身浴という健康法にもなる。
とくに夜勤昼勤の交代で、突然に生活時間が変わり、体は起きているのに、強制的にでも眠らなければならないとき、「風呂で読書」は有効な手段だ。
以前は、風邪薬などを使用していたが、長湯の後なので、これだと割に眠りやすい。
ただ入浴するだけでは20分も入っていない私だが、本さえあれば、一時間でも二時間でも入っていられる。
そして、
風呂疲れで幸せに眠る。
ああ。
今日も素晴らしく心地よい。
お風呂で読書は、わたしの大切な、冬場の楽しみだ。
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2000.11.07 tue 〜 2000.11.08
wed
自分もショックだったので、うれしさ半分なのだが「読書」解釈へのレスポンスが多い。
呉服屋にあった古い新明解の解釈がアレなのだが、書店にあったものを見ると、第五版とある。こちらが最新版だ。
もしかして、昔とは解釈が違うかもしれないと思い、すがるような気持ちでめくってみる。
読書:「(研究調査や受験勉強の時などと違って)一時(イットキ)現実の世界を離れ、精神を未知の世界に遊ばせたり、
人生観を確固不変のものたらしめるために(時間の束縛を受けることなく)本を読むこと」
「寝転がって漫画本を見たり、電車の中で週刊誌を読んだりすることは、勝義の読書には含まれない」
漫画はおろか、電車の中すら禁じられてしまった。
読書というものへの、並々ならぬ情熱すら感じる名解釈だが、これをすべからく適用すると「読書人口」は絶滅の危機に瀕するだろう。
うちひしがれているとき、ふと広辞苑のCD-ROMがインストールしてあったことを思い出した。
こちらを調べてみる。
読書:「書物を読むこと」
あまりの素晴らしさに手が震えた。
販売ノルマ達成のために11000円も出して買った甲斐があったなあ、としみじみ思う。
これで10月27日から11月9日までの読書週間において、広辞苑的には、ちゃんと「読書をした」と言えるだろう。
だが、やはり教養や人生観のために書物を読むのが本当なのだろうと思う。寝転がったりせずに。
真の読書人への道は、とても遠い。
今日のように、Kanonの名雪シナリオの小説を風呂に持ち込んで、ダラダラ読んでるうちは、ぜんぜんダメと言えよう。
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2000.11.05 holy 〜 2000.11.06
mon
ガブリエル・バンサンが死んだ。
9月24日のことだった。
ガブリエル・バンサンは、私の知る限り、絵本作家である。
ブックローン社から、多くの著作を出しており「くまのアーネスト」のシリーズは、全て購入した。
このシリーズに出会ったのは、友人にすすめられて読んだ「セレスティーヌ」がきっかけだった。
他愛のない話だが、とても感動し、涙を流して読んだ。
本を集めるようになって、気がついたことがある。
この人のデッサン力だ。
ハッキリ言って凄まじい。
写真そっくりに絵を描く人はたくさんいる。バンサンの絵は、その対極にある。線や書き込みが少ないのだ。
だが、丸を四つ描くだけで、事故で横転した車を見せた画家というものに、私は初めて出会った。
わずかな線と色だけで、この人は、リアルなものを見せてしまう。
絵を描かない者には、けっして分からないだろう。何でもない、素朴な絵に見えると思う。
だが、この当たり前のように描かれている絵が、絵描きの端くれの目には奇跡のかたまりに見える。
実際、この絵を、ガブリエル・バンサンは、それほどの苦労もなく描いているのだろう。
天才だ、と素直に思う。
この人は、かつて裁判所でのスケッチを仕事としていた経歴をもつ。その画集も出ていた。
技術はここで磨かれたかもしれない。
だが、この人は、やはり天才だった。
亡くなって、あらためてそう思う。
享年72才。
惜しい人だったが、天才にしては長生きした方だと思う。
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2000.11.03 fri 〜 2000.11.04
sat
友人に聞いた話で、ちょっと信じがたいことがあったので、確認してみた。
「読書」という言葉の意味である。
読書:「研究調査のためや興味本位ではなく、教養のための本を読むこと」
「寝転がって読んだり、雑誌・週刊誌を読んだりすることは、勝義の読書には含まれない」
新明解国語辞典を、パタリと取り落とす。
わ、
わたしは、
読書というものを、したことがないかもしれない。
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2000.11.01 wed 〜 2000.11.02
thu
私が建てたわけではないので、自慢にならないが、いま住んでいる家は、けっこう大きい。
呉服屋を営む店舗と住居、事務所、蔵、と三つの建築物から成っている。小さな庭に、昔は池もあった。
この「蔵」なのだが、見るからに呪われた感じがする建物で、雷雨の時に稲光に照らし出されたりすると逃げ出したくなるくらい恐い。
何年か前、入り口から迷い込んだネコが、蔵の中で腐れ死にするとゆーこれ以上必要ないのについたオプションも効いていて、私は高校以来、あまり近寄っていなかった。
その蔵を、こんど取り壊すことになった。
やれやれである。
久しぶりに入る蔵は、昔のような恐いイメージは無かった。
蔵の中には、あいかわらず電気もない。採光用の窓でうっすら見える程度の内蔵物は、最近しまい込んだものから、戦前から置いてあるような貯蔵品まで様々である。
骨董的価値のあるものもいくつかあったので、買い取ってもらい、古く売ることもできないものは廃棄することになった。
旅行用のスーツケースなど、まだ使うものは家の方に運び、かさばるものがなくなると、こまごまとしたものの整理になる。
手伝いながらなので、全てを見たわけではないが、とにかく古いものが多い。
全編 旧仮名使いの文学全集、光線治療器、 歴史資料かと思うような結婚式写真や、それらを包む新聞紙の古さが際立つ。「旅順陥落」という文字が見えたような気がしたくらい古い。
出し抜けにオオカミの毛皮が出てきて死ぬほど驚く。
死んだ父が、アラスカへ行ったときに買ってきたものらしい。
オオカミには思い入れもあるし、保存しておきたかったが、抜け毛が酷く、あきらめる。
「おお、ガン患者の髪の毛みたいに抜けよる」と母が不穏当なたとえで、オオカミの毛皮をむしっていた。
生え代わり時期の犬並み、と訂正させようと思ったが、これはオオカミに対して失礼だなと悩んでいる内に、残念ながら廃棄されてしまった。
わたし個人の荷物もあった。
「ドラグナー(D-1)」のプラモデル。これはオープニングバージョンの、俗に言う「バリグナー」に改造しようと頭、ボディともに改造中に、なんとなく「バオー」のフィギュアが作りたくなって放り出した品だ。造形はほぼ終了、あとは表面処理と塗装だけというところまで、こぎ着けている。でも捨てた。
サバゲーをやっていた当時に買ったガスガンのウージーを発見した。ベレッタM93Rが出たばかりの時代のものでSMGとしては珍しかった。フロンガスを使うガスガンだったので、敬遠するうち使わなくなってしまったっけな、と思っていると、奥の方から、SS-9が掘り出される。これもサバゲーをやっていた頃に友人からもらったエアガンで、命中精度が良いため、よく使われていたライフルである。
そして、X1のゲームソフトが出てきた。あまりの懐かしさにしばし動きが止まる。
「スパルタンX」や「デゼニランド」である。探せば「ちゃっくんぽっぷ」や「サラダの国のトマト姫」「テグザー」「ファンタジアン」最も燃えた「ホバーアタック」なんかもあったかもしれない。実際には、マイコンベーシックマガジンのプログラムを入力したカラオケ5分テープが山ほど出てきた。
他にもテープラックの中には、「マミのラジカルコミュニケーション(15年前)」などの録音テープやらもたくさん混じっている。ただ、よく見ると半分は矢尾一樹と横山智佐とミンキーヤスだった。
さらに、中学のとき書いた小説の原稿が一部だけ出てきて驚く。
良く憶えていないが、愛した女性はレプリカントだったというオチのブレードランナーもどきの話と、ボイジャーを拿捕した宇宙人が地球の情報をもとに送り込んだ斥候が、地球人の女性と恋仲になって、使命との葛藤に苦しむとゆー、スター・マンのような話だった。う、ううむ。
中高生時代を象徴するようなアイテムばかりが出てきて、何とも懐かしかった。
仕事で疲れているのに、休みの日には家の片づけ、というのは正直いやだったが、日記のネタが出来たので、善しとしよう。
そう思っていると、奥の方から、古い写真が見つかった。私のものらしい。
兄:「おーい、写真がたくさん出てきたぞー。どうするー?」
私:「とっとくー」
しばし考えてから、私はつけ加えた。
私:「「知ってるつもり」で使うかもしれないしー。」
写真入りの段ボールが、激しいツッコミとなって、私に投げつけられた。
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